ギルティギア界のMr.最適解 まちゃぼー現役復帰はウメハラきっかけ

Mako(WPJ編集部)

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EVO2016 GGXrdR部門での優勝を筆頭に、ギルティギアシリーズで輝かしい功績を残してきたMr.最適解ことまちゃぼー選手。

ゲームをやり続けた先が見えず、一度は現役プレイヤーを引退した過去がありながらも、とあるきっかけを機に復帰し、2019年2月にはYOSHIMOTO Gamingとのマネジメント契約を発表したばかり。

今回は、そんな彼の紆余曲折なプロゲーマー人生を聞いてきた。

ギルティだけでは食えなかった懐事情

――もともとギルティギアで名を馳せていたまちゃぼー選手ですが、EVO2016での優勝をきっかけに知った人も多いかと思います。今回の取材にあたって、当時のメディアの報道やインタビュー記事がたくさん見つかりました。

まちゃぼー:
懐かしいですね。その頃のインタビューを読んでいただいた人の一部には、あんまり良い反応ではなかったように記憶してます。

ぶっちゃけてしまうと、僕から直しを入れさせてもらった記事があって、最終的に本来伝えたかったこととは少しずれてしまったと今になって感じます。

――そうだったんですか?

まちゃぼー:
ギルティギアに対して僕が不満を抱いていると思われてしまったのかなと。ただ、10年ぐらいプレイし続けているゲームなので悪く言うつもりはもちろんないし、むしろ好きでやっているので、読んでいただいた人に変な受け取り方はしてほしくなかったんです。

ですが、ギルティギアのことを悪く言っているように受け取る人もいたようで……。記事公開の後に、ギルティギアのプロデューサーと飲む機会があって、謝ったこともありました。

――インタビュー当時はどういった意図でお話されたんでしょうか?

まちゃぼー:
2017年のEVOの少し前だったかと思うんですけど、当時すでにプロゲーマーとして生計を立てていた人たちがちらほらいたんですね。で、僕はその前年のEVOで優勝したし、公式大会でもほとんど優勝していたので、スポンサーが付いてくれるだろうと勝手に思っていたんですけど、何も起こらなかったんです。

大会で結果を出す以外に自分の価値をアピールすることが足りなかったこともあると思いますが、ギルティギアだけをやっていくのは厳しい考えて、ストVもやりだしました。それはギルティギアが悪いわけではなく、そういう状況だったので、ということを伝えたかったんですよね。

ギルティギアが嫌になってストVに移ったということではなく、ゲームだけでご飯を食べていくためにという意味で。

読んだ人に曲解される可能性がある言い回しにはしたくなかったというか……。話している内容的に難しいところだとは思いますが、ちょっとトゲがあるように見えてしまったのかもしれないです。

――その当時にプロゲーマーとして生計を立てている人と自分の差って何か感じるものはありましたか?

まちゃぼー:
先ほども言ったとおり、自己アピールが他の人は違ったんだろうなって思います。ゲームをするだけではなくそれ以外の活動が少し足らなかったのかなと。

――そしてこの度、YOSHIMOTO Gamingに所属することになって、ゲームで生計を立てているわけですよね?

まちゃぼー:
2017年の冬くらいまではスポンサードしていただいたことがなく、基本的に自分だけで活動していたので、どこまでいっても遊びの延長線上だったのかなと感じています。

その後、アスリートのマネジメント事務所に入らせていただいたり、EVO2018ではスポットで駿河屋さんにスポンサードしていただいたこともありましたし、今はYOSHIMOTO Gaming所属となって、だんだんと僕の残す成果が自分だけのものではなくなってきた感覚があります。活躍することで、いろいろな人に貢献できるというか。責任感を持ってやらないといけないなとは思っています。

――自分以外の人が動いているということに責任感が生まれてくるんですね。

まちゃぼー:
そうですね。サポートしてくださってる方々のためにもという思いです。

練習だって決められているわけではないので、やろうと思えば24時間できるし、やらないならゼロでもいい。今までだったらサボった時期があっても、自分に返ってくるだけでしたが、これからはそういうわけにはいかないので、仕事と思いつつも楽しくやってる感じですね。やりがいのある仕事です。

取材などの予定のある日以外は、最低でも8時間くらいは練習しています。

ゲームのない生活を埋めたのはアニメだった

――別のインタビュー記事でもお話されていますが、一度は引退されましたよね。ギルティギアで勝つことに意味が見いだせないという理由で。

まちゃぼー:
単純に生きていくのが苦しくなったのもあるんですけど、これ以上やってもしょうがないって思ってしまったんですよね。当時もプロゲーマーはいましたが、それで生計を立てるって感覚は僕にはありませんでした。どこまでいっても遊びであって、生活がどうのこうのなるものではなかった。

大会で優勝も何回かしたこともあって、もういいかなっていう感覚になってしまって、いったん落ち着こうと思って引退しました。

――引退後はゲームはまったくプレイしなかった?

まちゃぼー:
まったく触らなかったわけではないですけど、やっても週に1回、多くて2回とかになりましたね。それまでは毎日やっていたので、僕にとってはもうやってないに等しかった。

――生活ががらっとかわったんですね。

まちゃぼー:
1週間のうち、何十時間もやることがなくなってどうしようみたいな感じになっちゃって。そのときに、友だちが普段やってることを僕もやってみようかなって思って、アニメ好きの友だちにならってアニメを見るようになりました。

ちょうどレンタルビデオ店でバイトしていたので、帰りにレンタルしていろいろ見ましたよ。

――Twitterでもアニメについてよくつぶやかれていますよね。

まちゃぼー:
友だちにおすすめの作品をピックアップしてもらって、かたっぱしから借りて見て……という感じで。

――勝手なイメージなんですけど、格ゲーのプレイヤーって意外とアニメや漫画に興味がない人が多い気がします。もけ選手は「ドラゴンボール ファイターズ」をプレイしてるけどドラゴンボールはまったく読んだことがないみたいです。

まちゃぼー:
人それぞれだと思いますけど、ストリートファイター勢は意外といないですね。でも「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」(※)をやってた人は、ラノベとかアニメに出てきたキャラクターがゲームに出てくるということもあってみんなアニメ好きですね。

ギルティ勢はまちまちですかね。格ゲーやってるからアニメ見てる見てないみたいなことはないと思いますよ。

※電撃文庫 FIGHTING CLIMAX:ライトノベルレーベルである電撃文庫の作品に登場するキャラクターが登場する2D格闘ゲーム

ウメハラへの指導きっかけで闘神激突の舞台へ

――そんなアニメ漬けの日々を約1年過ごして復帰すると。きっかけは、ウメハラさんから「ギルティ教えてくれ」という連絡だったんですよね。

まちゃぼー:
そうですね。LINEがきました。ウメハラさんとはもともと、ストIV時代に僕がフェイロンを使っていたんですけど、その練習相手として仲良くしてもらっていました。

2015年の8月ですね。詳細は聞いてなかったんですけど、闘神激突(※)という10vs10でギルティを使って戦うイベントがあって練習しないといけないからぜひ教えてくれって。

※闘神激突:2015年8月22日に行われた「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」のエキシビションマッチ。ウメハラ選手率いるプロゲーマー連合軍と小川選手率いるギルティギア王者軍が激突した

――それが再びゲームをはじめたきっかけということですね?

まちゃぼー:
ですね。いざ教えるとなると、バージョンが変わっていたこともあって細かい部分を教えることができないんですと。さらに相手キャラのことも知らないといけないので、これはしっかりプレイしないといけないと思って。

――じゃあウメハラ選手からの誘いがなかったら、今も戻ってきてない可能性があるってことですか?

まちゃぼー:
ですねー、ありえます。もし戻ってきても、今みたいに専業でやっていないんじゃないかと思います。働きながらゲームみたいな感じになってたかも。なので、ウメハラさんには感謝してますね。

――そして、まちゃぼー選手自身も闘神激突に参加することになり、その少し前にはあーくれぼ2015にも出られました。久しぶりに大会で戦ってみたときに心境って覚えています?

まちゃぼー:
闘神激突は大会というよりはエキシビションマッチをするイベントという感じで、それまでギルティではあまりなかったものだったので新鮮でしたね。

対してあーくれぼは、闘劇の頃からずっとやってきた3on3の対戦で、しかも仲の良い人と組ませてもらって、帰ってきたなという感覚がありましたし、何より楽しかったです。しかも、準決勝と決勝は僕が相手チームを3タテして勝てたのでより楽しかった印象が残っています。

しばらくゲームから離れていて久しぶりに大会に出ると、勝負ごとから離れていたんだなという感じましたね。アニメを見ることは勝負要素がないので(笑)。たまに友だちと麻雀をやることはありましたけど、遊びでやってるか本気でやってるかの違いがありましたし。

今思うと、勝負ごとから離れていた生活はハリがなかったですね。ハリがあったほうが自分に向いていて、人生が充実するものなんだと、復帰したときに強く思いました。

――あーくれぼは、かずのこ選手、どぐら選手と出場されていますね。

まちゃぼー:
そうですね。組みたいと思っていたプレイヤーとチームを組んで、しかも優勝できたってのが良かったです。

かずのことは、僕が埼玉県の大宮のゲーセンでプレイしていた頃からの仲です。当時、ゲーセンに来て格ゲーをやってた人たちがどんどんやめていってしまったんですけど、かずのこも埼玉に住んでいてお互いのゲーセンに行き来して対戦するうちに話すようになりました。

どぐらさんは関西に遠征に行ったときに話したのが仲良くなったきっかけでしたね。ゲームに対する考え方が似ていると思うところがありました。

――考え方が似てるってのはどんなことですか?

まちゃぼー:
格ゲーをやっていると、ある状況のときにどうするかという判断を要求されることがよくあるんですけど、そこでのチョイスが似ていて、その理由もAはあれだからBをやったほうがいいっていう計算式がたぶん同じなんですよね。その計算式が同じだから答えも同じになるみたいな感じ。式が違っても同じ答えになることはありますが、どぐらとは計算式、要は考え方まで似ていると話していて思いました。

――事前に調べた限りだと、復帰後も順調に結果を残しているように見えます。

まちゃぼー:
多分、優勝したものだけ載せてくれているんだと思いますけど、2016年は出た大会はほとんど優勝しましたね。キャラ替えをした直後の日本eスポーツ選手権大会で4位になってしまったけど、それ以外は全部優勝したはずです。


かくして、ウメハラ選手に導かれるように選手復帰を果たしたまちゃぼー選手。現在はストリートファイターVに比重を置きつつ、GUILTY GEAR Xrd -REV2-も引き続きプレイしている。

後編では、今なお最前線で活躍を続けるベテランギルティプレイヤー、いわゆる「ギルおじ」と若手の違いなど、格ゲーの強さについて、まちゃぼー選手の考えを語ってくれた。

写真・大塚まり

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