5分でわかる2019年のesports:元年から正念場へ
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日本のesports界にとって、2018年は明らかに特別な年であり、もはや何度も聞きすぎて嫌になる「esports元年」であったことは確かだろう。
JeSU(日本eスポーツ連合)の発足に始まり、クラロワリーグやぷよぷよカップ、モンスターストライク プロフェッショナルズ2018トーナメントツアー、eBASEBALL パワプロ・プロリーグなど、数多くのリーグ戦やツアートーナメントが新たに開催された。
また、アジア競技大会ではデモンストレーション競技ながら、esportsが競技種目として登録され、日本から「ウイニングイレブン」と「ハースストーン」の2タイトルで本戦まで出場し、「ウイニングイレブン」は金メダルを獲得した。
世間的にも認知が少しずつ広がっており、新語・流行語大賞のベスト10、ヒット商品番付(※)では小結にesportsが登場している。
※日経MJ2018年ヒット商品番付参照
地方自治体にまで広まるesports
esports元年としては、上々の滑り出しをした感はあるが、では2019年の動きはどうなるのだろうか。
2019年も2018年と同様にesportsがより認知され、市場が拡大していくのは間違いないだろう。
大きな大会やイベントとして予定されているものとして、いきいき茨城ゆめ国体の文化プログラムの「ウイニングイレブン 2019」や毎日新聞主催による全国高校生eスポーツ選手権、JeSU主催によるeSPORTS国際チャレンジカップなど、IPホルダー以外が主催するイベントも数多く開催予定だ。
特に高校や大学などでは、飛躍的に部活やサークルとしての活動が増えると考えられる。若手の参入はesportsの裾野を大きく広げることにつながる。
また、地方自治体や商店街クラスの規模での大会も開催も増えていくだろう。
有馬温泉ではesports大会「有馬温泉湯桶杯」が昨年11月に開催されており、秋葉原地区企業対抗戦「アキバトーナメント」が12月に開催されている。
アキバトーナメントは2019年にはアキバリーグとして、年間を通じて開催することも発表されている。これらに追随するように、日本全国に飛び火し、どこでもesports大会が開催しているような状況になる可能性はあるだろう。
もちろん、IPホルダーが開催するesportsイベントも行われる予定だ。日本で初の優勝賞金1億円で話題となった「シャドウバース ワールドグランプリ」も2019年の開催を発表しており、賞金額も昨年と同じく1億円となっている。
カプコンプロツアーも開催が発表されており、他のタイトルも継続していくとみられている。
昨年のesportsの話題性に対して、新規参入、スポンサーを考えている企業は増加しているとみられるが、予算組みの関係や準備期間の短さから、参加を見合わせている企業がほとんどだろう。そういった面では、2019年はさらなる新規参入が増加するのではないだろうか。そうなると昨年以上の市場拡大を見込め、よりesportsが浸透するとみられる。
リアルスポーツにはないesportsが抱える問題
市場が拡大していくのは、喜ばしいことではあるが、それに伴って問題点も浮き彫りになってくる。その1つに、許諾問題がある。
スポーツや他の文化イベントと違い、ゲームにはIPホルダーによる著作権が発生するので、イベントや大会を開くのに許諾が必要となってくる。
これまで、ファンコミュニティーで開催されていた小規模のイベントは黙認状態だったが、企業や自治体が絡んでくるとなるとそうはいかないだろう。場合によっては許諾が得られなかったり、巨額の許諾料が必要だったり、それらを知らずに開催し、後から問題になるような事態になりかねない。
そうなると、許諾が緩い海外タイトル中心のイベントになったり、そもそもesports自体を諦めてしまったりする結果になってしまう可能性があるので、早急なIPホルダーによる大会開催のためのレギュレーションの設定が必要になってくる。大会開催であれば無許諾でも問題ないような方向に持っていってくれれば良いのだが。
もう1つの問題は、話題が先行しすぎて、実際はそれほど世間に浸透していないと言う点だろう。
昨年はesportsイベントが多く開催され、プロ選手の活躍の場ができ、職業として確立しつつある。しかし、興行的な側面から見ると、ファンの数は圧倒的に少なく、ファンを増やす施策もほとんどできていないため、イベントのみでの収益確保はほとんどできていない。
今は選手を育てること、選手の活躍の場を増やすことに注力しており、ファン拡大まで到達していないわけだ。
IPホルダーが主催するイベントでは、ある意味プロモーションとしての活動となるので、イベントで収益を上げられなくても、目的は果たせたと言える。しかし、それ以外の企業や自治体などがイベントを行うのであれば、イベントのみである程度の収入や集客が必要となってくる。
現在、多くのイベント収益の中心はグッズ販売だ。
アニメイベントにしろ、アイドルやミュージシャンのライブにしろ、プロスポーツにしろ、イベントのグッズ販売なくして興行は成り立たない。esportsにおいては、それができていないというわけだ。esportsで扱われるゲームタイトルのグッズが多少あったとしても、そこで活躍するプロ選手やプロチームのグッズが用意されていることは稀だ。
まあ、ファンが少ないのであれば、グッズ販売をしたところで収益が増えないのは火を見るより明らかではあるが。
現状ではesportsイベント単体で収益を上げることは難しく、集客も難しいだろう。まずはファンを拡大する施策を考えていかないと、せっかく火が付いたesportsもあっという間に鎮火してしまうことは間違いない。
そういう意味では、IPホルダー以外の企業が多く参入してくるとみられる2019年はすでに正念場と言える。
投資を考えている企業は、ゲームタイトルが有名になり、プレイ人口が増えることを目標にしているのではなく、あくまでもesports事業による収益拡大を狙っている。プレイヤーの数を増やして得をするのは、IPホルダーだけなのだから。
したがって、プレイヤーの数を増やすことではなく、オーディエンスの数を増やすことが重要なのだ。投資する価値がないと判断されれば、企業はあっという間に手を引いていき、今後十数年は昨年のようなムーブメントは起きなくなる。
Jリーグのように地方に根付いた活動を行っていくのか、グループアイドルのようにファンイベントを多く開催しプロ選手とファンがもっと近づけるようにするのか、常設のアリーナを作り手軽にesportsの観戦ができるようにするのか、何かしらの施策は必要だろう。現状のように、大きな大会を開き、高額賞金を出すだけではファンは付いてこない。
これらはリアルプロスポーツでは当たり前のことではあるが、IPホルダーから資金が投入されるesportsでは、もっとも足りなく、かけ離れた案件だと言える。
ファンがesportsを支えるために
何はともあれ、2019年は、昨年以上のesports市場の拡大は見込めるだろう。それが最後の大花火となってしまうのか、そこが起爆となるビッグバンとなり得るのかは、IPホルダー、大会運営、スポンサー、選手、esportsチーム、ファンなど、すべてのesportsに関わる企業や人々の行動にかかってくる。順風満帆ではなく背水の陣であることを知り、覚悟を持って対処して欲しいところだ。
来年は早々からさまざまなesportsイベントが控えている。
1月12日にはeBASEBALL パワプロ・プロリーグのe日本シリーズがビッグサイトTFTホールにて開催。1月26日、27日に闘会議2019が幕張メッセにて開催。
こちらは「モンスト」「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」「パズドラ」「レインボーシックス シージ」の大会が開催予定だ。
さらに2月15日~17日に福岡国際センターにて、EVO Japanが開催。こちらは「ストリートファイターVアーケードエディション」や「鉄拳7」など対戦格闘ゲームの人気タイトル数タイトルで大会が行われる。
ファンや観客としてesportsを支えるには、大会を観ることが一番だ。
各大会を観にいけるのであれば観にいき、それが難しいのであれば、大会の生配信やアーカイブ動画の視聴を通して支援することができる。
ファンは部外者ではなく、視聴することでesportsを支える参加者であるのだから。
新語・流行語大賞に「esports」がノミネートされるほど注目を集めた2018年はどんな1年だったのか?象徴する出来事をピックアップして紹介し、1年を振り返る。