マルチゲーマーどぐらの魅力は卑屈でやらかす人間味(前編):倉持由香のゲーマー交遊録【第7回】

倉持由香

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この連載で話をうかがったプロ選手からもよく名前が出てくるどぐら選手が今回のゲストです。えいたくんからは、「『過激発言は、どぐらさんの枠で』。彼は楽しんでくれるから」とまでいわれたことのある、ある意味、懐の深いどぐら選手ですが、実際インタビューしてみたら面白い話満載。結果、今回もロングインタビューになっちゃいましたが、ゆっくりお楽しみください!

僕は卑屈な人間なんです

倉持由香(以下、倉持):最初に恒例のこの質問からです。どぐにゃんは、インタビューで何を聞かれるのが一番うれしい?

どぐら:
勝ったときのいい思い出を聞かれるのが、基本にはうれしいですね。2014年に、ガリレオとEVOの決勝をやったときがあってんけど、覚えてる?

倉持:うん、どぐにゃんがウィナーズ側だったやつ。

どぐら:
結果は僕が2位で、ガリレオが優勝したんやけど、すごくいい試合だったのね。実際、EVO2014の全タイトルの中でてベストバウトに選ばれたんです。すごい光栄なんやけど、あれオレは負けてるからね。「あの試合良かったですよね」ってよく言われるけど、オレ負けねんけどって(笑)。

倉持:優勝したときの話をしてくれ、ですね(笑)。

どぐら:
あれ良かったねっていうけど、負けてるオレからすると、結局ガリレオがすごかったよねって言いたいのかと思うぐらい僕は卑屈です(笑)。

倉持:今まで、卑屈だな〜とはあんまり感じなかったけど。

どぐら:
いや、卑屈な人間は卑屈な部分を表に出し続けたらやっていけないから。それでも、以前よりはだいぶましになったよ。

 

倉持:それはどうして?

どぐら:
ちょっと余裕が出たのかも。プロになる前とか、ほんまにすごく早くプロにならなくちゃ!っていう部分があって。周りの人がオレより先にプロになったって聞いたら、なんでやねんっていう気持ちもあったし。

でも、自分もプロになって、大会でちょこちょこ勝てるようになってきてからは、全然そういう気持ちにならなくなったね。そういう意味では、今は卑屈じゃないかもしれないですね。でも、根っこは卑屈。

倉持:卑屈な根っこの部分はあるかもしれないけど、今はかわいい奥さんとお子さんに恵まれて……。

どぐら:
おー、メディア用のコメントをありがとうございます(笑)。

倉持:えー、そういう意図じゃないよ! もしや、根っこの卑屈な部分が出てるのこれ?(笑) 話題を変えて、プレイヤーネームの由来を。どぐらは漫画から来てるんだっけ?

どぐら:
「魔神冒険譚ランプ・ランプ」って漫画の登場キャラクター「ドグラ・マグラ」から取りましたね。

倉持:一時期使ってた生駒デビルは? どぐにゃんは奈良県出身だよね。生駒っていうのは地名?

どぐら:
そうですね。奈良県の生駒ってところが地元です。バーチャファイターの文化なんだけど、新宿ジャッキーみたいに「地名+キャラ名」という命名法則があったんです。それと鉄拳のキャラ、デビル仁を合わせて生駒デビルにしてました。

倉持:「板橋ザンギエフ」みたいな感じですね。

どぐら:
そうそう。その文化が鉄拳にもあって、オレもそれに合わせました。

地元のゲーセンに通い詰めた高校時代3年間

倉持:どぐにゃんはやってないタイトルないじゃないかと思うぐらい、マルチにゲームをプレイしてますよね。

どぐら:
昔からのゲーセン出身のプレイヤーには多いタイプだと思う。友だちとゲーセンに行くでしょ。そこで新しいゲームに出くわしたら、これいっしょにやろうぜってなるからね。

いろんなゲームがあって、ちょっと遊ぼうぜってなって、3ヵ月ぐらいでもうええかとなるゲームはあるけど、スト4はずっと盛り上がりが続いたっていうのはあります。

倉持:ゲーセンに行くようになったきっかけは?

どぐら:
中学校1、2年生のときにドラムマニアやってたんです。当時はたまにゲーセンに行って遊ぶぐらいの感じだったんやけど、その後友だちの家に集まって格ゲーをするようになりました。

それから友だちとゲーセンへ行ってみよう! ってなったんだけど、オレはすでに何回も行ってるから案内するわ、みたいな感じで。

倉持:アーケードの格ゲーはやっぱり音ゲーと違った? 雰囲気とか。

どぐら:
そうだね。音ゲーって1人だけど、格ゲーは絶対に相手がおるから。

倉持:最初のころの乱入とか、ドキドキした?

どぐら:
今はごく当たり前にやるけど、反対側に知らない人が座って、今から乱入してあなたと対戦しますよって、勇気いると思うよ。倉持ちゃんも、15歳ぐらいのときはプレッシャーがあったでしょ?

倉持:対戦はめっちゃ怖かった! 心臓ばくばくして毎回吐きそうになってた(笑)。

どぐら:
ただでさえ、ゲーセンに女の子が来たら「女子がいるぞって」なるぐらいだし。

倉持:放課後は制服で、ずっとベガ立ちしてたもん。基本見てるだけですよっていう感じにしてたな。どぐにゃんが最初にやったタイトルは? 友だちと家でやってたタイトルってなに?

どぐら:
大乱闘スマッシュブラザーズDX(以下、スマブラDX)ですね。

倉持:ハードはゲームキューブ?

どぐら:
そう、ゲームキューブ。その次にやったのが、ギルティギアのイグゼクスっていうやつ。イグゼクスをずっとやってたんだけど、あるとき友だちがゲーセンに新しいのあるらしいぞっていう話を持ってきて、そこからですね。

倉持:そのときの勝率は? 最初からいけるやん! みたいな感じだったの?

どぐら:
ないない。友だちの4人でよくゲーセンには行ってたものの、4人の中では強いほうでも、ゲーセンいくとなんじゃこれって。

倉持:オレより強いやついっぱいおる! みたいな?

どぐら:
最初ゲーセンへ行ったときのことは今でも覚えてる。あとからわかったんやけど、初心者狩りで有名なプレイヤーと当たって、挑発や舐めプとかもしまくってくるし、こいつマジでムカつくってなったけど勝てない……。こいつを倒せるようになるまでは絶対続けようって。

これがきっかけで、ゲーセン通いが始まった感じですね。

倉持:実際、どれくらいでそのプレイヤーに倒せるようになったの?

どぐら:
半年ぐらいで勝てるようになったと思う。

倉持:その当時はひたすらゲーセンに行ってたの?

どぐら:
ゲーセンに通ってる途中に、イグゼクスの家庭用版が出ましたね。なんで、家でも練習はできました。高校生のときは毎日ゲーセンへ行ってたから、ずっと練習してた感じですね。

倉持:高校生の頃は、奈良県にいたんですか?

どぐら:
そうですね。奈良県の中で一番レベルが高いんじゃないかといわれるゲーセンが、高校から徒歩圏内にあってたんで、学校帰りには必ずといっていいほど寄ってた。わかるかな、平城京跡地の真横のゲーセン。そこに3年間通い詰めた感じで。

大阪に出ることを覚悟したぎゃすのひと言

倉持:大阪に来たのは、何歳のとき?

どぐら:
それがけっこう遅くて……。ちょっと詳しく話すと、大学卒業して一度ラーメン屋で正社員として働いたんよ。

倉持:どぐにゃん、ラーメン屋さんだったの!? 知らなかった!

どぐら:
実は就活をまったくしなかったんです。正直に言うと、就活だるいな、まじでめんどくせーって。

倉持:せっかくの新卒のチャンスなのに!(笑)

どぐら:
そんなときに、ゲーム繋がりの先輩から、「ラーメン屋のフランチャイズオーナーやるからお前来ない?」って誘われて。就活もしてなかったし、「じゃあ行きますわ!」って。

それで行ってみたら、新しい店ということもあって、メチャクチャ忙しい。本店での研修もあったんだけど、1ヵ月泊まり込みとかでしたね。

倉持:本店まで行って、泊まり込みなんてハードだね……。

 

どぐら:
そう、しかも本店は神奈川県だったんだよ。研修後からは、朝8:00から深夜1:00ぐらいの勤務でしたね。そんな生活を続ける中、「ゲームする時間がない」問題が出てきたんです。

自分の中でゲームを犠牲にするか、仕事を犠牲にするかの2択になったんですが、ゲームをやめるのは不可能やから、仕事を辞めると決めて退職します。

それから、奈良県でゲーセン店員をやってたんですが、ぎゃすさんから「同棲するっていう話ってどうなってんの?」って言われました。

正直、実家が最強だと思ってたから、そんときは外に出たくなかったんですよね(笑)。でも、仕事を辞めてまでゲームを取るぐらいなら、大阪に出てプロになったほうがいいんじゃないっていわれて……。確かにそうだなと。

そしたらある日、「あんたいつ大阪に出て来るねん! ちゃんと返事せぇ!!」って言われちゃって、じゃあ行きますとなって同棲始めたのが2013年です。6年くらい前ですね。

倉持:ということは、かなり長く奈良にいたんだね。

どぐら:
奈良愛が深いんで(笑)。奈良へ来るときは教えてよ、かなりガイドできるし。

倉持:奈良には1回だけ行って、奈良公園で鹿に襲われたことある(笑)。あいつら意外と凶暴だったな。関西から東京に出てくる気持ちはいっさいない?

どぐら:
ないね。とはいえ、プロ活動をするなら東京の一択なんですよ。環境が違いすぎるからね。そこを大阪でもどうにかなったらええなって思って、やってきたわけなんですよ。実際、「大阪より東京に行ったほうがええやん」って周りにもいっぱい言われましたし。

けど、この捨てゲーともいえる行為が実って、大阪にゲーミングチームのCYCLOPS athlete gaming(以下、CAG)が生まれました。今はもう東京に行く必要は感じてないですね。

GO1、たぬかなをどぐら式メンタルケア!?

倉持:CAGには、GO1さんやたぬかなちゃんがいますが、それぞれどんなプレイヤーですか?

どぐら:
GO1は、すごいゲームが上手いやつです。ただ、こんなメンタルで今までやってこれたのかっていうのも思います。

倉持:世界大会などで戦うってことは、ある意味メンタルの削り合いみたいな部分があると聞きますが。

どぐら:
そうそう。ちょっとぐらい図太い部分がないとやっていけないと思うんですけど、GO1はメンタル最弱の可能性がある(笑)。

倉持:例えば、試合で負るとわーってなるとか?

どぐら:
負ける前からわーってなるし、負けてもわーってなる。

倉持:さすがに、勝ったらニコニコですよね?

どぐら:
勝っても「あぁよかった勝てた……」という感じ。だからやる前から、「負けたらどうしよう」みたいな。しかも、「この負けが原因で、クビになったらどうしよう」というところまでいく。

倉持:それは超ネガティブ……(笑)。

どぐら:
それがゲームプレイに影響してるんじゃねえのかって思うぐらいで。とにかく、ここまでよくやってこれたなって。

「GO1は、メンタルが強かったらドラゴンボール世界最強だろう」ってかずのこも、言ってたぐらい。

GO1本人も、メンタルトレーニングとか緊張しない方法みたいな本は買って読んでるみたい。

倉持:死活問題ですもんね。

どぐら:
GO1自身は、気遣いのできる優しいヤツです。いつもお世話になっているというか、オレののほうがGO1に迷惑かけてるんじゃないかなって感じ。友だちとしては仲良くやってます!

倉持:一般人からすると、プロはメンタルが鋼のようで、自分たちと違う人種なんだろうなって思ったりします。あんなに強いGO1さんでも、メンタルが崩れたりするんですね。逆に、親近感がわきますね。

どぐら:
そうだね、顔も大阪のおばちゃんぽいし(笑)。

倉持:大阪のおばちゃんって言われて、本人へこまないの?

どぐら:
結構周りから言われるっぽいので、あぁまたかっていう感じやと思うんで。

僕がガイコツみたいとか、カマキリみたいやって言われるのと一緒。オレなんか、ガイコツみたいって言われてもせやな!で終わるから(笑)。

 

倉持:たぬかなちゃんは?

どぐら:
そう、倉持ちゃんに相談に乗ってあげてほしいことがあるのよ。たぬかなは、匿名の心ないコメントに左右されすぎちゃう問題。

倉持:そういうコメントを見ると、悲しくなっちゃうよね。女の子だし。女の子だと、どうしても容姿について言われやすかったりするし。

どぐら:
男性よりも女性のほうが、容姿に関するコメントなんかは出やすいっていうのは、ある程度は仕方ないと思うねんな。倉持ちゃんはメンタルが強いと思うんだけど、どうしてるの?

倉持:いや、私も気にするよ! ただ、あまりにもひどいのはミュートしてる。ブロックしたらしたで騒がれるし。この種のものには、反応したら負けというか。

どぐら:
たぬかなは、叩くコメントをすごく真に受けるんですよ。

以前、たぬかなが「鉄拳」ではないゲームの配信したことあって、「初心者なので教えてほしい」って言って始めたそうなんです。その配信に辛口のユーザーがいたみたいで、キツめのコメントをくらって、「もっと優しくせえよボケ!ほんましばくぞ!!」ってぶちぎれたことがあったみたいで(笑)。

彼女はイベント関係者の評判がすごい良いですし、愛嬌もあるから、メンタルの余裕ができればより完ぺきだと思うんです。

倉持:たぬかなちゃんは親しみやすいというか、愛嬌があってとても良い子だよね。どぐにゃんからアドバイスはしないの?

どぐら:
もちろん、するよ。でも、立場も性別も違うからね。親身にはなれるけど、本人のためになるかわからんし。でも、ほんまに良くなってほしいというか、活躍してほしいと思ってる。

倉持:どぐにゃんは、匿名掲示板などの書き込みなんかは気にしないタイプなの?

どぐら:
根が卑屈やから昔は気になってたんだけど、ここ4、5年でその自分を批判している人たちは絶対自分の人生に影響しないなって、わかってからもういいかって。

夏にチャリで走ってたら、たまに虫柱に遭遇するやん。影響があってそれぐらい。

倉持:
ちょっとモヤってするけど、人生において大きな影響はないってことだね。

どぐら:
「大会に出てるのに弱っ、クサっ!」みたいな書き込みをするやつがいても、、この人の人生豊かじゃないんだろうって思うようになったというか。わざわざ、他人の失敗や良くなかったことを匿名掲示板に書き込んで、どんだけみじめなんやろうって。

そんなことに目くじらを立てても仕方ないよな、って思うようになっちゃったね。

倉持:
気にしないようになったのはすごく良い傾向だね。タレントでも、心無い書き込みに病んで辞めちゃう方もいるし。

どぐら:
ただ、あまりにも図星なコメントだと、おいやめろって思ったりすることはあるけど(笑)。

倉持:それは刺さるからやめろ! ってのあるね(笑)。掲示板は見なきゃいいだけだけど、配信だとコメントは目に入るもんね。

どぐら:
高圧的な人は絶対来るし、こいつは何がしたいんやろって。だってアンチやとしたら、わざわざ嫌いヤツの配信に行って発言してるわけやんか。その時間をボールペン講座にでも使えよって(笑)。そっちのほうが人生実りあるやろって、思ってまうもん。

倉持:確かに。簿記資格とかの勉強した方がプラスになるよね(笑)。

どぐら:
たぬかなの話に戻るけど、ほうれい線が気になるみたいで、コメントとかで言われるとまじでキレるって。

倉持:ほうれい線は、私もアラサーになって気にするようになった! 美顔ローラーで、めっちゃコロコロしてるよ(笑)。

どぐら:
うちは、クリスマスプレゼントとして買わされてん。結構高かったわ。

倉持:いいやつは2万円くらいするからね。容姿を維持するのはほんと大変。

どぐら:
なので、女性の容姿をどうこう言うのは、やめたれよって感じやけどね。

倉持:ゲームの強さや上手さだったら、プロゲーマーだからある程度仕方ないかもしれないけど、見た目を言われるのはかわいそうだよね……。

どぐら:
ゲームは練習すればうまくなるでしょ。容姿もある一定までは努力すれば改善するけど、骨格とか無理なところはあるやん。それはやめてあげて。

倉持:自分でどうしようもできないことを言われるのはかなり傷付く。どぐにゃんは、CAGではGO1さんとたぬかなちゃんのメンタルケアをしてるんだね!

どぐら:
ケアしてるっていう自覚はないけど、助けてはいるんじゃないかなと。アットホームなチームです。

(後編に続く)

写真・大塚まり

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記者プロフィール
倉持由香
ゲームに本気で取り組む100cmのもっちりヒップ、尻職人グラドルゲーマー。14歳でゲーム配信者デビューをし、格ゲーマーとの交流が深い。自宅のゲーミングスペースにはPCやゲーム機に加え、雀卓も完備。ストVでの使用キャラは、レインボー・ミカ。

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