DBFZ世界大会王者かずのこでも「勝つ自信はない」【前編】

WPJ編集部

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2019年1月28日(日本時間)、「ドラゴンボールファイターズワールドツアー2018/2019」のツアーファイナルが開催された。

約半年にわたって世界各地で行われてきたサーガイベント(予選大会)と、前日に行われた最終予選を勝ち抜いた8名による頂上決戦を、GODSGARDENのかずのこ選手が制した。

ギルティギアシリーズをはじめ、さまざまな格闘ゲームで実績を残し、今回「ドラゴンボールファイターズ」(以下、DBFZ)で頂点に立ったかずのこ選手にインタビューした。

格ゲーに愛された男とDBFZの出会い

――2018年はDBFZでの活躍が目立ちますが、ギルティギアやストリートファイターシリーズで結果を出している中でDBFZをメインにプレイしているのは何か理由があるのでしょうか?

かずのこ:
ドラゴンボールという作品がそもそも好きで、ゲーム性も自分の好きなアークゲーの系譜だということだったのが大きいですね。

あとは、ゲームが変わるとプレイヤーも全然違ってきて、まったく新しい人たちと戦うことになると思って、それも見越してDBFZをやろうかと思いました。

ストリートファイターだと、新作が出ても相手にするのは大体同じプレイヤーじゃないですか。若手のプレイヤーは増えると思いますが。

その点、DBFZはまったく新しいゲームなので、新しいところに飛び込んでみたいという気持ちになり、大会に出ているところです。

――ゲーム性という部分では、同じく3対3の「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」に近いのかと思いきや、新しいシステムが多いですよね。

かずのこ:
ゲーム性が似てるのは悪いことではないんですけど、まったく同じゲーム性になるのは、新規プレイヤーが入りずらい要因になると思います。

その点では、DBFZは独自のシステムが結構あったので、新しい業界になるんじゃないかという期待を持てましたよね。

――今のところ、その期待に応えてくれているゲームになっていますか?

かずのこ:
そうですね。

DBFZがきっかけで知り合ったプレイヤーもすごく多くて、応援してくれる人も増えました。それは新しいゲームを始めたからこそなのかなとは感じていますね。

DBFZで格ゲーを始めた人とも、知り合いになりましたね。

――結構難しいゲームという印象があったので、DBFZから始める人ってあまりいないのかとイメージしていました。昔から「MELTY BLOOD」みたいな展開が速い格ゲーをやっていた人たちが参入してくるのかと。

かずのこ:
まったく未経験者というわけではないんでしょうけど、DBFZで初めて本格的に格ゲーを始めたという人と結構出会います。ドラゴンボールという有名なIPもあって始めたのかなと。

あとは、まったく新しいゲームでこれまでの格ゲーと違うシステムだったから、始めたという人もいるんじゃないですかね。

――そんな人たちに向けて、格ゲーを上達するために、「これをやれば速く上達する」みたいなコツや考え方ってありますか?

かずのこ:
やっぱり対人戦ということを常に意識して練習することが一番大事かなと思います。

トレーニングモード(以下、トレモ)で連携を調べる人が多いけど、それはあくまで理論上の話。

それよりも、人との対戦だとくらっちゃうよねっていう連携とかを練習したほうが良いと思っています。トレモで練習するにしても、対人戦を意識して強い連携を見つけるのが大事になります。

これはDBFZに限ったことでなくて、他のゲームにおいてもそうです。あくまで対戦で勝つのが目的でやっていると思うので。

例えば、ギルティギアだとチップというキャラクターが理論上最強だと言われているんですけど、大会で優勝するのが必ずチップというわけではない。

理論上は毎回チップが優勝するはずなのに、なんで毎回優勝しないんだろうと自分の中で考えて、やっぱり対人戦ということを念頭において大会に臨まないと勝てないだろうなという思考に至りました。

――では、使用するキャラクターの選び方はどう考えているのでしょう?

かずのこ:
もちろん強いキャラクターなんですけど、その中でも自分にあったキャラクターが良いです。

やっぱり攻めが強いキャラクターが好きというか、攻めるキャラクターの方が強いと思ってるんですよね。

守りに入ってしまうと、攻めが上手い人からすると、どこを意識して守っているのかがバレちゃうんです。

攻める側のタイミングでコントロールできるので、攻める側の方が自分で仕掛けて展開を作りやすいですから、守っている方が動揺したら攻め側がすぐ勝つというのが良いところ。

あとは、単純に攻める方が楽しい。守っている方が楽しいという人もいますけどね。

控えめな自己分析から確立したプレイスタイル

――DBFZで守りのプレイヤーといえば、GO1選手ですね。

かずのこ:
GO1さんは、空対空がすごくうまいとかいろいろあるんですけど、とにかくまじめにゲームをやっている。まじめにやっているプレイヤーの中で一番上っていう感じですね。

あらゆる場面で理論値を出そうとするというか、全部が高水準というイメージですね。

自分ができないスタイルをやっていて尊敬するし、そういうプレイができるのが羨ましいです。

守りきれなかったら自分が駄目だという自分に厳しいポリシーを感じますね。

DBFZ World Tour Finals: Kazunoko Vs GO1 (Winners Finals)

――では、かずのこ選手自身のスタイルを客観視して、どのあたりが強みだと考えてますか?

かずのこ:
うーん……、自分自身では強みを感じる部分はあまりないですね。守りに自信がないから攻めているだけなので。

周りから言われるほど、攻めに自信があるわけでもないというのが回答になってしまいます。

――意外な答えでした。周りから評価されていることは、例えばどんなところでしょう?

かずのこ:
大会でも普段と同じ動きができるとか、相手がひよった時に一気に攻めるとか、決定力があるとか言われますけど、やっぱり自分ではそういう意識はなくて……。

逆に考えると、自分の能力をちゃんと分析できているのかなとは思います。自分の攻め能力はこのくらい、防御能力はこのくらいしかないから、こういう風に戦うしかないんだ、というように自分の限界がわかっているプレイができている。

他には、知識では他の人に勝てないから、駆け引きを重視するとか。仕方なくこうなっているのかもしれないですけどね。

自己分析ができているから、自分の良さを自信を持って言えないんだと思います。

大会に出なきゃ何のための練習なのか……

――DBFZワールドツアーでは、4つのサーガイベントで優勝してドラゴンボールを4つ手にしました。1つ持っていればファイナルには出られるので、ファイナル進出は確定という中で大会に参加した理由はなんでしょう?

かずのこ:
僕は大会に勝つために、毎日練習をしています。大会に出ないというのは、その練習が無意味になってしまうということだと思うんです。

昔は楽しいから練習しているという部分はあったかもしれないですけど、今は大会に勝つことが第1の目的。

大会に出ているのも、自分の強さを証明したいというより、毎日練習していることの意味を求めているからですね。大会に出なかったら、毎日何時間も割いて練習している意味がわからなくなってくる感覚があります。

――練習はトレモや対戦などいろいろやることがあると思います。1日に練習する時間や方法などをお聞かせください。

かずのこ:
練習時間は9時間とかですかね。

ただ、ゲームで強くなるために考えることも練習に入ると思っていて、それを入れたらもっと長時間になるかと思います。

対戦会はできる限り全部顔を出すようにしています。いろいろなプレイヤーがいる中で、自分の位置を把握していないと勝てなくなったときになぜ勝てなくなったかがわからなくなると思うんです。

大会で勝つためには、対戦会に集まる強い人たちの中でも上にいないといけないので、そこのチェックもできますし。

オンライン対戦はあまりやらないですね。大会はオフライン対戦なので。

――オフラインとオンラインってやっぱり違いますか?

かずのこ:
用途が違いますね。オフライン対戦は、自分の反応だったり対戦中の意識配分だったりのチェックになるんですけど、オンライン対戦は新しく考えた連携がちゃんと相手に刺さるかどうか、立ち回りの方針があっているのかどうかを試す場だと感じます。

いまはもう立ち回りはこういうチームでいこうと決めているし、コンボも新しく考えている部分はないので、だったら全部オフライン対戦でいいかなと。


冷静に自分の実力を見つめ、勝つために求められることを自分なりに正しく理解しているように語るかずのこ選手。

プレイヤーとして彼が持っている理論が垣間見えたところで、後編ではよりプライベートな一面に迫っていく。

写真・大塚まり

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