「スキルや経験は必要ない」大友真吾が語るeスポーツ業界の現状

キズグチアロエ

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■前編記事

「国民的スターを生み出す」RAGEプロデューサー大友真吾の思想

eスポーツ業界で働くには高い志と胆力が必須

――大友真吾さんは、eスポーツ業界で働くためにはどんなことが求められると考えていますか?

大友:
スキルとか経験は後でもつけられると思うので、高い志と胆力ですね。未経験でチームに入って、1年も経たずして一人前になっているRAGE運営メンバーもいますよ。

CyberZでほしい人材で言えば、うちが目指しているのはeスポーツ界で未だどこもしたことがない大きなことを実現することなので、これに共感できて一緒に取り組める人です。あとは、理想と現実のギャップに目を背けずに地道な作業も胆力を持って向き合い続けられるかどうかも重要ですね。

営業の仕事だと達成目標などがあるので、個人の目標設定がしやすいと思いますが、eスポーツの大会運営だとディレクターがたくさんいて、役割もそれぞれなので、なかなか目標設定が難しいなと感じています。ですので、大きな志と胆力が必要だなと考えています。

また、ゲームが好きということは強みにはなりますが、ゲームメーカーなどとの交渉力、さまざまな人を巻き込む力なども必要になるので、ビジネス交渉力や営業力なども重要になってきます。

――ソニー生命が全国の中高生1,000人を対象に実施した「中高生が思い描く将来についての意識調査」の結果で、中学生男子の「なりたい職業」では2位に「eスポーツプレイヤー」がランクインしたようです。

大友:
このランキング結果、すごいことですよね。確かに同業で働いている人と話していても、小学生のお子さんが「フォートナイト」をプレイしているとか、タブレット端末を渡していてゲームをしていると聞いています。

そのアンケート結果を聞く限り、eスポーツのプロ選手の存在が知れ渡っているはずですので、すごくいいことだと思います。ゲームばかりに集中するのは良くないという否定的な意見もあるのかもしれませんが、志を抱いて努力し続けられる人だけがプロ選手になれると思うので、プロ野球選手になりたいと言うのと同じだと思っています。

僕も高校生まではバスケをやり込んでいて、埼玉県の代表にも選ばれていたんですよ。バスケだけでご飯を食べていけたらいいなと本気で思っていましたが、当時は国内男子プロバスケットボールリーグである「B.LEAGUE」もなかったので、大学にちゃんと行って若いうちからバリバリ働きたいと考えを変えました。

――ちなみに、現在のCyberZのeスポーツ事業にはどんなキャリアの持ち主がチームにいらっしゃるんでしょうか?

大友:
まず、新卒入社は4割弱程度で、他部署で広告事業やゲームディレクターをやっていた人がいたり、中途採用者の経歴はイベント制作の配信周りのプロから、広告代理店で営業をしていた人、そしてゲームが大好きなコミュニティー出身者など本当にバラバラですね(笑)。

「このキャリアがあるから活躍できる」と言うよりも、先ほどお伝えしたようにマインド面がとても大事になりますね。

かゆいところに手が届くPLAYHERAを目指す

――大友さんが就任予定である「PLAYHERA JAPAN株式会社」では、大会運営プラットフォームの「PLAYHERA」を展開していくと思います。今後はこちらにも注力していくのでしょうか?

大友:
PLAYHERAは大会運営プラットフォームとして現在β版を配信していて、年明けには本リリースを予定しています。そして本リリースと同時にWeb版も登場し、誰でも大会を開催できるようになる予定です。そこから本腰を入れて展開していくつもりですね。

PLAYHERAはeスポーツのあらゆるステークホルダーに必要とされる存在になるのを目標としていて、継続的かつ永続的に活動ができるようなエコシステムに創り上げていきたいです。

例えば、プレイヤーやチームがPLAYHERAで活動していけば収益をあげやすくなるとか、大会を実施しても収益を出すことが難しい現状を打破し、大会主催者にPLAYHERAで得た広告費の一部を還元するオーガナイザー収益プログラムなどを用意したいと考えています。

あとは、現在はeスポーツ大会のスポンサーになるためにはある程度まとまったお金が必要だと思いますが、PLAYHERAでは少額でもスポンサーになれるようなシステムを作りたいと思っています。そしてPLAYHERAにあるSNS機能にも、eスポーツならではの遊び心も入れられたらいいなと考えています!

――大会運営プラットフォームは他にも存在しますが、PLAYHERAはどんな差別化を行っているのでしょうか?

大友:
一時的に機能に差を付けられたとしても、最終的にできることは近しいじゃないですか。そうなったときのPLAYHERAの強みは、先ほど説明した大会主催者が収益を上げられるようになるという点ですね。

あとは、提携企業であるRIZeSTさんも我々同様に大会運営のノウハウをたくさん持っているので、他のサービスでは手の届かない、大会主催者やゲーマーが本当に望んでいることにも手を伸ばしていけることだと考えています。

――現在はeスポーツホテルと呼ばれる施設もできています。今後はどんな施設が出てくると予想していますか?

大友:
これは予想というか希望なんですが、eスポーツの常設アリーナが出てほしいですね。eスポーツ大会を開催できる施設はあると思うんですけど、アリーナではないじゃないですか。

具体的に言うと、相撲の両国国技館、野球でいう阪神甲子園球場みたいな、eスポーツと言えばここという聖地ができるといいなと考えてます。

現在は色んな会場でさまざまなタイトルの大会を実施していますが、eスポーツの聖地ができればそこにタイトルが集中するでしょうし、週末に聖地を訪れれば何かしらの大会がやってるなんて最高じゃないですか。

韓国にはすでにeスポーツ専用競技場の「ソウルeスタジアム」があり、その中にはOGN GiGaアリーナという会場などもありますし、100名同時対戦ができたりしますが、日本でも今後でてきそうではありますね。

――RAGEを主催しているCyberZさんは、施設事業には取り組まないのでしょうか?

大友:
現在動いているものはないんですけど、先ほど紹介したPLAYHERAは地方の施設や地方大会とか、eスポーツ大会の経験がない方にも使ってもらいたいんですよね。PLAYHERAをベースに実施すれば、主催者も出場者側も慣れてきますし、選手の成績も横断管理できると思います。

今後は地方のアナログなオフライン大会がもっと大きな規模にできるかもしれないので、PLAYHERAを通じてeスポーツ大会の促進もしていきたいとは考えています。

JeSUはeスポーツの発展に欠かせない存在

――一時期は、東京ゲームショウ2019で起こった賞金絡みの話題で持ちきりでした。消費者庁から「興行性があるeスポーツイベントは、それだけで仕事として認められる(景表法に抵触しない)」と回答がありましたが、これはつまり、日本eスポーツ連合(以下、JeSU)が発行するプロライセンスは不要ということなのでしょうか?

大友:
はい。確かにライセンスがなくても「仕事の報酬」として認められる場合は賞金の提供が可能と明示されていました。でも、僕自身の考えですがeスポーツシーンを拡大していくにあたってプロという存在は必要だと思っています。

特に、eスポーツにはたくさんのタイトルがあります。タイトルごとにプロが存在するという、統一化するのが難しいプロ認定の問題について切り込んでいくということは、賞金を渡せるかどうか以前に、eスポーツをより良いものにしていくという面で考えるとポジティブに感じますね。

そして、今後は賞金授与の仕組みとしてのイメージが強かったプロライセンスを、もっと価値あるものとしていくことが必要になってくるのかなと思います。

――ジュニアライセンスには「原則として賞金を受け取る権利を放棄する」という規約がありますが、なぜこのような規約が存在するとお考えですか?

大友:
世界的に見るとジュニアでも賞金を獲得しているケースもありますが、個人的には義務教育期間中に、何百万円もの賞金を出してしまうと、お金のために学業を捨ててゲームに専念するケースも考えられますので、教育モラル上よくないなと思います。

RAGEも16歳以上の参加条件を決めているので、一定の教育を経て、何事にも適切な判断が下せるようになってから賞金を獲得できるようになるほうがいいのかなと考えています。

――世間への広まり方もあり、現状JeSUに対して印象が良くない方々も一定数存在すると思います。これらの層のイメージを変えるためには、今後どんな動きが必要になっていくと考えていますか?

大友:
JeSUの中でもいろんな委員会が発足されていて、eスポーツをより良くしていこうという動きが顕著にみられるので、それを世の中にもっとアピールしていきたいですね。

しかもこの委員会はCyberZを始め、ドワンゴさんやJCGさん、RIZeSTさんといった一部領域で競合となる企業の方が集まっているんですよ。でも、その人たちが利害関係を無視して、eスポーツの現状や今後の課題などを話し合って建設的な議論ができているので、それを世の中にもっとアウトプットできれば、JeSUの取り組みが外から見えるようになり、印象も変わるのではないかと考えています。

――最後に、eスポーツファンに向けてひと言お願いします。

大友:
RAGEは複数のタイトルがある複合型イベントですので、ゲームタイトルにファンをつけることはもちろん、RAGEにファンを付けたいと考えています。

特定のタイトルだけを追いかけてきた方に、複合イベントの面白さを体験してもらえれば、eスポーツの楽しみ方も広がると思うので、まずは11月23日に開催が予定されているRAGE 2019 Winterにぜひ来場していただければなと思います。

まだ発表していないタイトルもあるので、続報も楽しみにしてください。


大友真吾氏はこれまであまりフォーカスされていなかった大会主催者への還元システムを考えるなど、eスポーツの発展に尽力していることから、今後のeスポーツシーンには欠かせない人物であることは間違いないだろう。

そして、そんな彼がプロデュースする、RAGEの会場に一度足を運んでみてはいかがだろうか。

RAGE公式サイト

写真・大塚まり

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記者プロフィール
キズグチアロエ
「#コンパス」にどっぷりハマり、「#コンパス」に人生を捧げると決めた、傷口だらけのアロエ。
「#コンパス」に携わるクリエイターたちと、仲良くなりたいフリーライター。
どんなヒーローでもそこそこ扱え、特定のヒーローというよりもヒーロー全員が好き。

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