YutorimoyashiがMSIでDFMを応援していたのは「国際戦の難しさがわかってるから」

八木葱

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■前編記事

「プロとして絶対しちゃいけない発言だった」Yutorimoyashiが語る引退と復帰の真相

互いに意識するDFMメンバーとの関係

――moyashiさんというと数年前に言われていた「LJL最強のBOTレーン」っていう称号が印象深いんですが、今はどんな風に思ってますか?

Yutorimoyashi:
懐かしいですね(笑)。でも今は考え方が変わって、優勝したチームのBOTレーンが1番のBOTレーン、だと思うようになりました。

――どういうことでしょう?

Yutorimoyashi:
結局LoLは5対5のゲームなので、BOTの強さを他の場所に活かして、チームが勝ってこその強さじゃないですか。だからBOTだけとか、ADCだけでの比較はあんまり意味がないなと今は思ってます。もちろん、観る人が「どっちが強いか」が気になる気持ちはわかりますけどね(笑)。

――そこに甘えて1つ聞いてみたかったのですが、今シーズンのV3はYutorimoyashi、viviDというコンビです。そしてSpring Split優勝のDFMはYutapon、Gaengですよね。これが2018年と逆の組み合わせなのが気になってました。

Yutorimoyashi:
確かに、言われて気づきました。でもまぁ試合中にGaengを意識してる暇はないし、もちろんYutaponだけを気にするわけにもいかないし、案外フラットですよ。

――そういえば、moyashiさんのTwitterアイコンがGaengさんとのツーショットですよね。

Yutorimoyashi:
そうですね、今も普通に友だちなので変えるきっかけもなくて。確か、Gaengもそうなんですよ。あいつなんで変えないんだろ(笑)。

――本当ですね。でも確かに、アイコン変えるのって難しそうです。Gaengさんもですけど、moyashiさんが引退を発表した時にYutaponさんが「寂しいね」と反応をしていたのも記憶に残っています。

Yutorimoyashi:
僕的にもYutaponはリスペクトしてるというか、ゲームセンスが誰よりもすごいですよね。

単純にLoLの強さで言うと、レート的に日本人ではEviが一番強いと思うんですけど、YutaponはTOPからADCにコンバートしてっていうのも僕と一緒で、意識する選手の1人です。もし、ロールが違ったら同じチームでもやってみたかったなと思いますね。

だからライバルというよりは、何をしてくるかな、どんな動きしてるくるかなって対戦して楽しい、やり甲斐のある相手です。

国際戦経験者の視点で見たMSI

――そういえば、Mid-Season Invitational(MSI)でDFMを応援していたのが印象的でした。

Yutorimoyashi:
え、どういうことですか?

――意地悪な見方をすれば、moyashiさんからすれば、DFMは一緒に優勝したメンバー3人を獲っていったチームに見えてもおかしくないのかなというか。

Yutorimoyashi:
あはは、それはないです(笑)。むしろ選手を知ってるからこそ、気持ちがわかるというか。同じチームだった3人はもちろん、他のメンバーもリフトライバルズで一緒だったので、今こんな風に過ごしてるのかなって想像しますね。それに……

――何でしょう。

Yutorimoyashi:
僕は国際戦がどういうものかを体験しているので、そのキツさとかがわかるんですよ。だからこそ、その中で戦ってるLJLのチームはどうしても気持ち的に応援しちゃいます。

――たとえばどんなことがあるんでしょう。

Yutorimoyashi:
国際戦は移動も長いし、環境も慣れないし、機材も違いますよね。そんな中で今頃スクリムかなとか、トラブルがあるんだろうなとか、そういうことは想像します。今回のDFMはその中でもDFMらしいチームファイトだったりピックができていて、準備してきたものをぶつけられてる感じがしたので、いい感じだなって思ってみてましたね。

――今回のMSIは、世界との距離が縮まっている感覚がありましたよね。

Yutorimoyashi:
春のDFMはほんとにLJLのオールスターっていうか、このメンバーで勝てなかったらLJLの希望がないじゃんと思ってたので、いい結果を出してくれてうれしかったです。もちろん、そこにいるのが自分じゃないのは悔しいですけどね。でも、DFMに勝ってほしかったのは本当です。

――なんだか本当に、選手同士の関係性とかチームの中のことって外から見ていてもわからないなぁといつも思います。

Yutorimoyashi:
僕も自分が体験していないことはわからないですし、そういうものだろうなぁって思いますね。

ベンチプレス100kgを持ち上げる筋肉ゲーマー

――ありがとうございます。最後に聞いてみたかったんですけど、いいですか。

Yutorimoyashi:
もちろんです。なんだろ。

――えっと、moyashiさんの筋肉はどこへ向かってるんですか?

Yutorimoyashi:
そこですか(笑)。最初は、運動ってマイナスなこと1つもないし、ためになると思って始めたんですけど、気づいたらハマってたというか。

――やっぱり楽しいものなんですか?

Yutorimoyashi:
んーなんていうか、筋肉は裏切らないんですよ。

――ちょっとよくわかりません(笑)。

Yutorimoyashi:
(突然の2倍速で)世の中っていろいろなものが期待と違う動きをするじゃないですか。自分ですら、「甘い物食べないぞ」って思っても食べちゃうでしょ? そうやって自分ですら自分を裏切るけど、筋肉だけは裏切らないんですよ。

トレーニングすればつくし、怠ければ落ちる。筋肉は子供みたいな感じです。子供って純粋じゃないですか、筋肉も純粋なんです。

――筋トレのいいところを1つ挙げるとしたらどこですか?

Yutorimoyashi:
(やっぱり2倍速)いいことがありすぎるんですけど、というかいいことしかないんですけど、やっぱり達成感ですかね。達成感って、人間にとって必要なものだと思うんですよ。先が見えるからこそがんばれるし、サボれば結果にでちゃう。そういうのを身をもって体験できるというか。

僕にとってはゲームと同じで、でもゲームより成果が出るのが早いし、運動するだけだから超簡単だし、筋トレやってると人間ってやっぱり動くためにできてるなって思いますね。

――筋トレすると仕事やメンタルもすべてうまくいくっていう話もありますが、あれはどうですか。

Yutorimoyashi:
それは嘘です。関係ないです。

――急に冷静にならないでください。

Yutorimoyashi:
筋トレの達成感はあくまでも筋トレのものでしかないので、仕事とかメンタルで受けたダメージは、ちゃんと解決しないとダメだと思います。筋肉はそれを解決してはくれないので。

――ストレス解消としては意味があるけど、問題の解決は別だと。

Yutorimoyashi:
やっぱり筋トレも手段だと思うんですよ。自分のメンタルがどうやってできてるかがわかるし、体がどう動くかもわかる。

――ちなみに今って何キロくらい持ち上げるんですか。

Yutorimoyashi:
マックスで100kgぐらいですね。2年前は20kgも上がらなかったんですよ。

――腕めちゃくちゃ太いですもんね。

Yutorimoyashi:
いや、全然です。でも大事なのは筋量じゃなくて、神経なんですよ。マウスを操作する筋力があっても、練習しないとうまく動かせないじゃないですか。それと一緒で、自分の筋肉の動かし方を覚えることで、重いものを挙げられるようになるんです。ゲーマーは絶対筋トレはまりますよ、やりましょうよ(再びの2倍速)。

――ちょ、ちょっと考えてみますね(笑)。それでは今日はありがとうございました。


Yutorimoyashiが発する空気は、3ヵ月前とはまったく変わっていました。

人懐っこくて、いたずらで、自分たちはいま前に進んでいるんだという確信に満ちた雰囲気は、数年前の彼に感じたものでもあります。

たしかにSpring Splitの状態は万全とは言えないものだったが、それでもやっぱり、YutorimoyashiがLJL有数のタフでチャーミングな選手だと再認識する時間でした。

Yutorimoyashiの第2章が平穏なものであることを今は願っています。

写真・大塚まり

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LJLの世界で長く活躍していたYutorimoyashi選手。2019年のSpring Splitで彼に異変が見られるようになり、シーズン終了後に引退が発表された。しかし、Summer Splitの直前に復帰が決まる。慌ただしかったオフシーズンの話を聞いてきた。

記者プロフィール
八木葱
eスポーツインタビュー&コラム。主にLeague of Legends、たまにストリートファイター、もっとたまにFPS、カードゲーム。

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