Apexで重要なのは引き際を見極めて生き延びること

辻村美奈

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現在、Apex Legends(以下、Apex)のTeam flosの一員として活躍中のぜるにゃんだが、かつては「バトルフィールド4」(以下、BF4)や「オーバーウォッチ」(以下、OW)の解説者でもあった。

今回のインタビューではApexについてフォーカスし、楽しみ方や周辺機器の選び方、チームの組み方について話を聞く。

■前編記事

選手と解説者の両方でわかったプロゲーマーに必要な実績と人脈

FPSを知り尽くしたメンバーが開発したApex Legends

――Apexを始めた当初の印象はどうでしたか? 当時から、このゲームは流行ると予想できたのでしょうか。

ぜるにゃん:
Apexは、今年の2月にリリースされた直後から始めました。発売当日のTwitchの視聴者数などで、ある程度これは来たなというのは思いましたね。もともと仲が良かったメンバーでいろんなゲームをやっていたのですが、一番遊んでいたのがApexだったので「もちろんチーム組むでしょ」という話になり、1週間でチームを作りました。

――ぜるにゃん選手から見たApexの魅力はなんでしょうか。

ぜるにゃん:
2点あります。1つは、FPS要素の完成度の高さです。

今までのバトルロイヤル系ゲームって、バトロワ要素とFPS要素を合わせたゲームをという感じでした。しかし、Apexは違った。このゲームはRespawn Entertainmentが制作しているのですが、彼らはもともとCoDのModern Warfare 2を作っていたメンバーです。FPSを作っていた人たちが作ったバトルロイヤルだから、FPSとしての完成度も高かったのでしょうね。

例えばPUBGの場合、有利なポジションを先に取ることである程度勝ちが見越せた。しかしApexでは、そういった有利・不利の条件に影響されず、実力でごり押すれば勝てるゲームです。僕にとっては、そういったところが魅力でした。

もう1つは、試合展開の速さと言うか、能動的に動くゲームであるという点。僕のゲームの進め方にあっているのだと思います。

大会での実績を残すカギは普段のPC環境にある

――現在は、どのくらい練習しているのでしょうか?

ぜるにゃん:
平日は1日5時間程度。土日は10時間とかぶっ続けでやっちゃうときもあります。

――どんなPC環境でやっているんですか?

ぜるにゃん:
CPUはCore i7-8700、グラフィックボードはGTX 1060、メモリが16GBのPCです。

マウスは、ドイツメーカーのROCCATのKone Pureシリーズをずっと使っています。マウスパッドは、PureTrakというメーカーのTalentというシリーズです。

キーボードは最近少し話題になっているDucky Channelという台湾メーカーのものですね。miniというシリーズの1つ前のバージョンを使っています。

――素人には聞き慣れないゲーミングデバイスが目立ちますが、こだわりはあるほうですか?

ぜるにゃん:
そうですね、結構こだわるほうだと思いますし、みんなが使っていない組み合わせだとも思います。BF4をやっているときからずっと、自分が使っているデバイスをアピールするようにしていたので、同じものを使っている人を見かけると、だいたい僕のファンだったりします(笑)。

当時のBF4界隈では、Kone Pureを「ぜるにゃんマウス」と呼ぶ人もいました。

――相当こだわっていらっしゃるんですね。キーボードは星の数ほど世の中にあると思いますが、あえてそれを選ばれたポイントなどはありますか?

ぜるにゃん:
あります。オフライン大会の会場は机のサイズが限られていることも多いため、キーボードはなるべく小さいものを選ぶべきだと思っています。それと、キーボードは軸で決めるものだと思っていて、僕は赤軸が好き。「赤軸で小さいもの」を探したらDuckyのminiになりました。

マウスは、友人におすすめされたものなど、全部で10個以上使ってみました。その中で一番手になじんだのが、ROCCATのKone Pureだったんです。

実はマウスパッドにもこだわりがあって、10枚以上は実際に買って試しました(笑)。その中で自分的に一番しっくりきたのがPureTrakのTalent。ゲーミングデバイスを選ぶときはフィーリングを一番大事にしていて、しっくりきたものを使い続けると決めています。

――FPSは一瞬の操作で勝敗が分かれますから、環境の影響は大きいんですね。最近では湾曲したモニターなども出ていますが、使っていますか?

ぜるにゃん:
湾曲モニターは使ってないですね。基本的に、大会と同じ環境でプレイして体を慣らしておきたいという考えです。

会場でいつもと違う環境だと、うまく実力が出せないかもしれないじゃないですか。だから、キーボードもそこにこだわって選びましたし、モニターも大会で使われているサイズに近い24.5inchから24inchを使うと決めています。

ヘッドホンもゲーミング用ではないものを使っているので、バスブースト(低音強化)などは普段から使っていません。

状況を見極めて「逃げる」ことがApexでは必要

――Apexで特に好きな武器を教えてください。

ぜるにゃん:
今のところ、R99 SMGという武器が一番好きですね。もともとはウィングマンが好きだったのですが、弱体化されてしまったので今はR99を使うことが多いです。とはいえ、ウィングマンは今でも十分強いので、たまに使います。逆に、あまり使わないのはモザンピークですね(笑)。

――好きなレジェンドはいますか?

ぜるにゃん:
バンガロールが一番好きですね。あとはレイスも使います。バンガロールとレイスに共通することなのですが、人数差などで不利な状況でも一度逃げて1on1に持っていけるという、クラッチ(巻き返し)が強いレジェンドなんです。

僕自身、クラッチするのが好きなので、こういったレジェンドは使いやすくて。そういった意味では、ブラッドハウンドもウルト(ハンティングビースト)を使うと、バンガロールのスモークランチャーを活用したスモーク戦術(※)などができるので使いやすいです

※:スモーク戦術とは、バンガロールのスモークランチャーで辺り一帯をスモークで覆い、ブラッドハウンドの足の速さと敵を視認する能力で、一方的に敵をターゲティングし攻め込むといった戦術。

――ぜるにゃん選手が考える、Apexの戦闘のコツを教えていただけますでしょうか?

ぜるにゃん:
先述のとおり、僕はR99 SMGが好きなのですが、特に今作は移動速度も速くて銃声も響きやすく、長期間戦うと敵が寄ってきやすい。漁夫の利を得やすいゲームなんです。

短期決戦で距離を詰めて、相手に回復をさせずに戦う必要があるので、レートの高いSMG系やダメージが大きいピースキーパーなどのショットガン系を使って、短時間で戦闘を終わらせるようにしています。

――今からApexを始めようとしている方へ、楽しむためのコツを教えてください。

ぜるにゃん:
このゲームで一番大事なのは「死なないこと」。他のバトロワと違い、Apexでは死んだ味方を復活させることができます。つまり、1人でも生き残っていれば、形勢逆転ができるゲームなんです。だから、不利な状況だと思ったら、味方を見捨ててさっさと逃げればいい (笑)。

見捨るときはちょっと心がとがめるかもしれませんが、もう一度戻って回収するためだと思って割り切ることが大事。不利な状況で粘って結果的に全滅してしまうより、引くときは引いて最後にみんなで笑ったほうがいいでしょう? これを守るだけでも、順位は上がっていきますよ。

チームは自分が一番強いと思ってるメンバーと組む

――協力してプレイすることを考えると、やはり友だちと組むほうが良いのでしょうか?

ぜるにゃん:
そうですね。チームを組む上で一番大事なのは、実力面でお互いを信用できること。Apexはいろんな要素が複雑に絡み合っているので、勝敗の原因ははっきりしません。そんなとき、メンバー間で実力の差を感じ始めてしまうと、負けたときに実力がない人が責められてしまったり、その人自身が引け目を感じてしまったりといったことが起きてしまいがち。

だから、僕がチームを組む上で重要視していることは、全員「自分が一番強い」と自信を持っている人を集めることです。

――普通に考えると、プライドが高い同士、ぶつかり合ってしまいそうに思えますが。

ぜるにゃん:
確かにみんなプライドは高い(笑)。でも、プライドが高い人同士で喧嘩したところで、心の底ではみんな相手の実力を認めているから、本音を言い合ってもそんなに仲悪くはならないんです。これは、チームメンバーへのリスペクトがあるからこそ。そういう仲間とチームを組めば、思う存分プレイできますし、勝ちやすくなると思います。

「チーターがいるとゲームがつまらなくなる」それが一番の問題

――最近、Apexでのチーター問題が話題になっていますが、ゲーム内通報機能の追加や、今年3月に行われた一斉BANについて、ぜるにゃんさんの考えをお聞かせください。

ぜるにゃん:
うーん、チーター問題については、あまり積極的に話したくはないんです。デリケートな問題をはらんでいますから。

3月の一斉BAN直後は、確かにチーターが減りましたね。でも今は、また戻りつつあると感じています。ただ、チート問題は「いたちごっこ」なので、チーターがいても気にせず、普通に割り切ってやっちゃいますね。

――ぜるにゃん選手自身、チーターに遭遇したことはありますか?

ぜるにゃん:
もちろん、あります。直感的に怪しいなと思った際は、映像でもう一度確認をするようにしています。逆に、ちゃんと確認しないで「あれはチーターだった」と思っていたら、そうじゃなくて本当に強いだけだったってこともあると思うので。それだと申し訳ないですから。

――これからApex運営の方へ期待する対応などはありますか?

ぜるにゃん:
チーターが原因でゲームをやめてしまう人もいると思うので、できればなんとかしてほしい。もったいないと思うんですよね、そんなことでゲームが嫌いになってしまうのは。運営の方もチーターが二度と使えなくなるような策を考えていただいてはいると思うので、なるべく早く対応してほしいと期待しています。

バトロワ系の大会ルール設計が難しい理由

――今後、Apexはどうなっていくと思いますか?

ぜるにゃん:
Apexの人気はまだまだ続くと予想しています。海外でもプロチームができ始めているんです。

世界的な経済誌のForbesが発表した「世界で最も価値のあるeスポーツ企業12社」というランキングがあるんですが、そこにランクされている6社がApexのチームを新しく作っているという話もあります。そういった意味では、世界的に見てもApexがこれから流行ると判断しているのかなと思います。

――FPSの大会とApexのようなバトロワ系の大会を比較すると、ルールが違いますよね。その違いについてどう思われますか?

ぜるにゃん:
Apexに関してはまだルールが定まっていないのですが、大会シーンにおけるバトロワの弱点は、ドン勝(最後の1人)が必ずしも優勝に直結しないというところだと思います。

ドン勝を獲るときの理論上の最適解は「最後の戦闘まで戦闘をしないこと」ですよね。もちろん実際は、しなければならない戦闘や、した方が有利になる戦闘もあるのでするんですが。あくまでも理論上は、「最後まで戦わず、最後に一度だけ撃ち勝てばいい」ということになってしまうんです。

しかし、それでは面白くない。そこで、キル数にもポイントが入ります。キル数にポイントが入るということは、逆にドン勝を獲らなくても大会に優勝できてしまうということ。そうなると、ゲームルールとは矛盾した現象が生じてしまうんです。その矛盾が、バトロワ系の大会シーンにおける弱点だと僕は考えています。

そのあたりの矛盾を、Apexではどう解決していくか、そこが課題ですね。

もう1点。Apexはまだカスタムマッチモードが実装されていないので、1時間で一番良かったスコアを提出するというスタイルになっています。このルールのメリットは、どれだけ積極的に戦いに行くか、キルを獲りに行くかというのが重要だという点。さらに、ドン勝ポイントも獲らなければならない。とてもシビアなんです。

要は、自分の実力をどれだけ相手に押し付けられるかということ。そういう点では、自分の実力を発揮しやすいルールだと思います。

逆にこのルールのデメリットは、直接対決がないため、運要素に勝敗が左右されてしまうという点。ある意味仕方ない部分ではあると思うのですが、バトロワのルールが今後変わっていくように、Apexにも最適なルールが見つかることを期待しています。

写真・大塚まり

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記者プロフィール
辻村美奈
PCゲーマー兼、オフィスマイカのゲームライター。プライベートではジャンルを問わず、FPS系からサバイバル系まで幅広くプレイ。ゲーム関連の記事を書くかたわら、ゲームを紹介するブログ「steam mania」も運営。

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