マルチアングル配信で輝いた「STAGE:0」LoL部門優勝のN高の勇姿
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8月15日(木)、高校生のeスポーツ大会「Coca-Cola STAGE:0 2019 」(以下、STAGE:0)の決勝大会2日目、「リーグ・オブ・レジェンド」(以下、LoL)の決勝トーナメントが開催され、全国7会場で行われた予選ブロックを勝ち抜いた8校が、シングルエリミネーションのトーナメントで優勝を目指して争った(準決勝までは1本先取、決勝戦のみ2本先取)。
YouTube、Twitchなどで配信も行われ、多くの視聴者が日本一の高校が決まる本大会の行方を見守ったが、KDDIは新しい配信の試みとして「マルチアングル配信」を実施。応援するチーム、選手を集中的に観戦できた。
本記事では、KDDIの担当者に聞いたマルチアングル配信の狙いや、普段LJLを観戦するLoLプレイヤーの意見をまとめ、マルチアングル配信のメリットをまとめていく。
劇的な展開の決勝戦はN高が制す
決勝トーナメントまで駒を進めた高校は以下の8校。
- 北海道ブロック代表:札幌新陽高等学校(北海道)
- 東北ブロック代表:仙台城南高等学校(宮城県)
- 関東ブロック代表1:朋優学院高等学校(東京都)
- 関東ブロック代表2:横浜高等学校(神奈川県)
- 中部ブロック代表:松本工業高等学校(長野県)
- 関西ブロック代表:ルネサンス大阪高等学校(大阪府)
- 中国・四国ブロック代表:岡山県共生高等学校(岡山県)
- 九州・沖縄ブロック代表:学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校(沖縄県)
1発勝負で負けたら敗退となってしまうというプレッシャーの中、岡山県共生高等学校(以下、岡山共生)と学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校(以下、N高)が決勝戦へ進出した。
両チームともにBOTレーンにエースを配し、BOTレーンの序盤の有利をどちらが握るのかが注目された岡山共生 VS N高。
ゲーム1は序盤から各レーンで激しい戦いが行われ、僅差で進行。そんな中でも、White and Pink選手が、ミッドレーンで躍動しペースを握る。
岡山共生もTOPとBOTにプレッシャーをかけるも、一歩及ばず、初戦はN高が制した。
続くゲーム2。
N高校がゲーム1の勢いそのままに、テレポートで数的有利を作り出し序盤から流れを引き寄せる。
しかし、岡山共生もやられてばかりはいられない。
徐々に集団戦をしかけ盛り返し、一気にバロンバフも獲得……の寸前、N高のvandolp選手がスティール!
プロシーンでも1年に1回あるかないかというビッグプレーにより逆転したところ再逆転された形の岡山共生。普通であれば心が折れてもおかしくはないところだったが、粘り強くチャンスをうかがい集団戦を仕掛け、勝利をもぎとった。
岡山共生が劇的な展開でゲーム2を制し、その勢いのまま泣いても笑っても最後のゲーム3へ。
ここまで、序盤から積極的に展開するN高と、後半に巻き返しを狙う岡山共生という構図が続いたが、ゲーム3でもその様相を呈する。
ゲーム2敗戦のショックがあるであろうN高がきちんと展開を作れるかに勝敗が委ねられたように思えたが、N高はまったく動揺はしていなかった。
岡山共生の隙を見逃さず攻めきったN高が一気に試合を決め、STAGE:0 LoL部門の初代王者に輝いた。
高校生の激闘を捉えたマルチアングル配信
解説のRevol氏が「日本一の高校を決めるにふさわしい試合」と評したSTAGE:0決勝戦。
現地には選手の保護者や友人らしき観客たちが集まっていたのはもちろん、YouTubeやTwitchなどでの配信でも多くの視聴者が観戦を楽しんでいたのだが、その配信において目新しい試みが実施されていた。
通常、LoLの配信は広いマップの一部がフォーカスされ、試合の展開によって画面に表示する場所を切り替えるのだが、特定のチームや選手の動きを追いたいというニーズに応えた12アングルのマルチアングル配信が行われたのだ。
KDDIが実施したこの配信は、試合を行い各チームのゲーム画面の2アングルに、選手個別の10アングル、計12アングルを1タップで簡単に切り替えて観戦を楽しめるというもの。
応援しているチームや選手を、試合中ずっと見続けることができるのは新しい観戦体験ではないだろうか。
※League of Legends Championship Series(北アメリカのリーグ)、League of Legends European Championship(ヨーロッパ)では、同様の機能などを搭載したPro Viewが有料で提供されている(参考:https://jp.lolesports.com/news/pro-view-leveling-esports-viewing-experience)
2020年に実用化される5Gを見据えたeスポーツの新しい観戦体験として、STAGE:0の場で実施されたようだ。
KDDI コミュニケーション本部宣伝部長の馬場剛史氏によると、関東予選に訪れた際に、保護者などのゲームに詳しくない人にとっては観戦はハードルが高いと感じ、実際、観戦していていもよくわからないという声も聞かれたという。
今画面に映っているのは自分の子どもが操るキャラなのかどうか、瞬時に把握できない。それに対し、「誰が見てもわかりやすいものにして、よりeスポーツを普及していきたい」という狙いから、マルチアングル配信を実施したという運びだ。
今回はLoLで実施されたが、「タイトルごとに視聴しやすい環境はいろいろ作れると思います。我々の技術と視聴される方の体験と合うものがあれば、今後もどんどんやっていきたいとですね」と、確かな手応えを感じているようだ。
eスポーツに限らず、例えばボルダリングでは正面から捉えた映像だけでは壁の難しさが伝わらないところ、何台ものカメラで捉えた映像を自由に切り替えることで、その難易度や臨場感が伝わる配信ができると、過去の事例も紹介してくれた。
また、2020年の5G実用化にあたっては、エリアに関する課題を抱えているという。
現在の4Gのように全国的に普及させることは一気にはできないもので、局所的に順次広がっていくものとのこと。どういう場所を抑えてスポーツと連携していくかは、今後、整理していく構えだ。
STAGE:0は全1,475校がエントリー(3タイトルの合算)しており、「これだけ競技人口がいるのであれば、視聴者も相当いると思う」と馬場氏もeスポーツの観戦シーンに可能性を見出していた。
一方のチームを応援する配信は“新しい”
今回のマルチアングル配信には、各チームにそれぞれ実況、解説、応援の演者がアサインされ、割り当てられたチームを応援する立場で試合を盛り上げたのも1つの特徴だったと言えるだろう。
通常、実況や解説は中立の立場であることがほとんどで、国際戦の日本語配信で日本のチーム、選手を応援するスタンスでいることはあるが、今回のように片方のチームに力を入れて応援配信を行ったのは、マルチアングルがもたらした構図ではないだろうか。
普段、LJLを観戦している人からの感想としては、
- それぞれチームに対して実況、解説がいるのはすごくいい
- 選手個別のアングルに実況解説がない(ゲーム音)のみはやや寂しい
- 選手個別のアングルに選手の顔が映ってると最高だった
といった意見が寄せられた。
ちなみに、会場では、スマホで選手個別のアングルを視聴しながら、ステージのスクリーンと合わせて観戦するというスタイルで観戦している人も見かけた。自宅での配信視聴だけでなく、現地での観戦も新しい体験が発見されたようだ。
マルチアングルで可能になる観戦はもちろん、まだ見ぬ配信コンテンツの動向にも目を光らせておきたい。
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