ゲームを続ける理由をゲームの外に作るということ【後編】

髙尾恭平

みなさん、こんにちは! ウェルプレイド代表取締役/COO の高尾です。何事も思想から語り出すので、最近社内では思想オジサンと呼ばれています。ほめられてると思ってます!

さて、今回はゲームを続ける理由をゲームの外に作るということ【後編】です。前編では、ルール設計において最も大切な「ゴール」と「思想」についてお話をしました。

この後編では、「クラロワ日本一決定戦のルール設計で考えた8つのこと」を中心に、どのようにルールを設計していったのかを書いていきたいと思います。前編の内容をご覧になってから、読んでいただけると幸いです。

つまり、毎月大会があって、成績に応じてポイントが溜まって、上位にいた者が代表決定戦に出場できるというルールです。それでは、1つずつ説明していきたいと思います。

なぜそのルールに至ったのか?

1. 5月〜9月の5ヵ月間に毎月大会を実施する

  • 何回か大会を行うことで、一発勝負ではない世界を作りたい
    • 「やっぱりコイツは強い……」と、みんなが思える人を生み出したい
  • 毎月の大会の結果に応じてポイントを獲得する
    • 強豪プレイヤーが一度優勝しても繰り返し出場させたい
    • ポイント獲得をデザインすることでドラマを演出したい

※後ほど詳しく説明します。

2. 毎月の大会には1次予選〜3次予選、決勝を用意する

  • 決勝ではプレイヤーをより輝かせたい
  • ゆえに、決勝に進めるプレイヤーを適切に絞り込みたい

3. ポイント獲得上位者は10月に行う代表決定戦に進出できる

  • 日本中の猛者達による、刹那的な強いドラマを演出したい

4. 毎月大会とは別に、ラストチャンスをかけたワイルドカード大会を行う

  • すべてのプレイヤーに「ワンチャン」あると思わせたい

※公式コンテンツである「20Winチャレンジ」を活用したいという前提条件もありました。

内部資料にはもう少し詳細を書いていますが、今回のルールに至る理由のほとんどは、最初に考えた思想をベースにしているということがわかるかと思います。まれに、この時点でルールがしっくりこないことがあるのですが、この場合、実は思想が間違っているという可能性もあります。ルールと思想は密接に結びつき、どちらからアプローチしてもそれぞれを答え合わせできる素晴らしいツールだと僕は思っています。

ポイント設計は腕の見せドコロ

「毎月の大会の結果に応じてポイントを獲得する」というルールがありますが、実はこの中にも考えなくてはならないことがたくさんあります。サラッと説明するとすれば、「何位になったら何ポイントもらえるの?」を考えることになります。では、どのようにポイント設計をしていけばいいのでしょう。

実はここでも、思想が大事になってきます。今回も実際の思想を記載していきます。

1. 計5回行なわれる大会の優勝価値は高い

  • 一度でも優勝したら、30位以内には入れるようにポイントを獲得したい
  • 回数は5回しかないので、準優勝でも30位以内に入れるようにしたい(準優勝でも価値は高い)
  • (運が良ければ)一度でも3位を獲得できれば、トータル30位にギリギリ入るくらいにしたい
  • 最後の大会の優勝者(活躍者)が、代表決定戦に出られないのはバランスが悪い

2. 最終的にポイントが高ければ高いほうが代表決定戦で有利になるようにしたい

  • 一度優勝したら、もう出る意味がなくなるようにはしたくない
  • 初回大会で優勝した人も、意義ある形で2回目以降の大会に出場してほしい
  • もしかしたら、自分も30名の中に入れるかもと思わせたい
  • 圧倒的に強い人でなくても、出場し続けることで代表決定戦へのチャンスがあるようなポイント獲得としたい

3. 見たことない・知らない人が上位30名に入るのは避けたい

  • トップ16に一度は入っている状態が望ましい
  • 1ポイントで泣く、1ポイントで笑うドラマを生み出したい
  • 特に、30位前後は1~2ポイント差で決まるようにしたい

4. ポイントランカーのブランド価値は高めたい

  • トップランカーと同じ場所にいる感覚を味合わせたい
  • 同じ場所に並びたいと思わせたい
class="p-emBox"> 以上です。全体ルール設計時と同様に、上記の思想からポイント獲得における設計を行っていきます。

いざ、ルール設計へ!

と言いたいところなのですが、ここから先は超絶具体的なテクニックになってくるので、なんともテキストで伝えるのが難しかったりします。

※Excelベースでシミュレーションしながら作り上げていく作業です。割と秘伝のワザと言いますか、企業秘密的な感じではあるんですが、ここを具体的に知りたい方はぜひ個別でご連絡ください(笑)。

最終的にどうなったのか?

シミュレーションを繰り返して辿り着いた、ベストだと思うポイント設計を最終的なルールとして世に出しました。そして月日は経ち、すべての月間大会が終わり、実際のポイント数と比較できるようになりました。つまり、自分の思想に基づいて設計したルールが、残酷なまでに答え合わせされてしまうのです。あぁ怖い。

[予想]

上記が予想したトータルポイントの獲得数です。30位前後が当落ラインとなるので、ここが混戦(できるだけ横並び)になっているという部分がミソです。

[実績値と予想:答え合わせ]

オレンジ色が、実際のトータルポイント獲得数。トップが飛び抜けて高く、2位以降は予想よりも下回るという結果に。これは想定以上に上位陣の力の差があったということです。

そして、混戦ラインは想定を上回る混戦状況。つまり、1ポイントで当落が決まるハラハラドキドキ状態! 最後の9月大会が終わるまで、誰が代表決定戦に進めるかわからなかったのです。我ながら素晴らしい設計ができたと思います。


ということで、「クラロワ 日本一決定戦」を例に、ウェルプレイドが考える「ゲームを続ける理由をゲームの外に作る」ということを説明してみました。ここまで読んでくれた方には感謝感謝です。ありがとうございます。

もちろん、ここで書いている内容が「外側」のすべてではありません。大会運営・進行のスムーズさ、舞台や番組の演出、キャスティングやその他準備。ありとあらゆる部分でウェルプレイドはesportsに本気で取り組んでいます。僕たちが1つ1つの大会を大事に考えていくことで、日本のesportsの未来が明るくなっていくことを信じてやみません。ああ楽しいなぁ。

それでは、今回はこれにて!

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現在、いわゆる可処分時間の取り合いの状況になっています。そんな中、差別化の1つとしてesportsというキーワードが注目されてきています。ルール設計をするにあたり、最初の足がかりとなるのは「最終的にどういう状況が作られていることが理想なのか」ということ。ここについて代表である髙尾が詳しく説明していく。

記者プロフィール
髙尾恭平
esportsから生まれるドラマと熱狂を世に広めるべく、日々奮闘中。 2017年にはラスベガスで開催されるEVOにも選手として出場し、1次プール抜けを果たしました。 選手や観客、デベロッパーなど、あらゆる視点からesportsを捉えられることを最大の強みとしています。 休日は友達とスタジアムでビール片手にesports観戦。 そんな当たり前のようで、まだまだ実現できていない世界を本気で作り上げていきたいです。

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