eスポーツの未来を憂う人たちへ――DOTA AUTO CHESSの魔力

ちょもす

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ちょもすと申します。

ウェルプレイドジャーナルで書かせてもらうのは初めてなので、ほんの少しだけ自己紹介しておきますと、中学生で「ポトリス」の全国大会に出たあたりから対戦ゲームにハマって狂ってしまい、人生も中盤に差し掛かったのにも関わらず対戦ゲームを遊び日々を過ごしており、人生がやばい中年男性です。

カードゲーム、格闘ゲーム、RTS、ボードゲーム、将棋、ほんの少しだけFPS、およそ対戦とつくゲームはかなりの数を遊んできた自負があり、その上で文字も書くので便宜上“ゲームライター”ということになっています。

が、実際に一番伝わる自己紹介は「カードゲームの大会で立たされた人」です。何卒よろしくお願い致します。

DOTA AUTO CHESSの人口が宇宙規模

今回紹介するのは、古のゲームでありながら最大賞金額がよく話題に上る「Dota2」内におけるMod、「AUTO CHESS」についてです。

ウェルプレイドジャーナルのページを開くようなヤバイ人たちがDOTA AUTO CHESSの存在を知らないという仮定はナンセンスなのでその点は今回省略して、「DOTA AUTO CHESSの名前は最近よく聞くけれど、Dota2の容量デカすぎるし、そもそもModだし、なんだかな~」と思って遊んでいない人に向けて、DOTA AUTO CHESSを遊んでもらう記事を書こうと思っています。よろしくお願いいたします。

さてDOTA AUTO CHESS、どこが一番推せるのかと言うと、流行っていることです。人口がスーパー多いです。野良のマッチングなら本当に押した瞬間にマッチングします。

もしあなたが歴戦の対戦ゲーマーなら。人口が多いというただそれだけのことの尊さを知っているはずです。

自分では本当に好きなゲームシステムなのに、人口がいまいち増えないばかりに悲しい思いをしたり、記事を書く上でスクリーンショットがほしいのに、「対戦相手が見つかりませんでした」の画面しか撮れなかったり、そんな思い出は1つや2つではないでしょう。

人口が多いというのは対戦相手に困らないということであり、話の通じる相手もたくさん存在するということです。それってすごいことなんですよ。本当に。

DOTA AUTO CHESSの影響で、Dota2の同接が「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」を上回ったニュースが2ヵ月ほど前にあったのは記憶に新しいですが、最近では韓国の「OGN Super League」(※)の種目にも採用されたらしく、その勢いは留まるところを知りません。

※OGN Super League:韓国のeスポーツ専門テレビ局OGNが運営するeスポーツリーグ

DOTA AUTO CHESSがどこまで流行ると「え? eスポーツの未来を憂いているのにオートチェスやったことないんですか? もしかして……浅瀬の方?」とマウンティングに使っていいのかはわかりませんが、おそらく今言ってもかなり“いけそう”な選択肢にはなってきていると思います。

2019年本当にアツいeスポーツゲームですしね!

少なくともウェルプレイドジャーナルを読んでいてeスポーツの未来を憂う人は、遊ぶべきタイトルであることは明らかです。

一番の魅力は新しいゲームであること

まず、なぜこのDOTA AUTO CHESSが流行っているのかを考えてみましょう。いくつか理由はあると思いますが、僕が一番大きいと思うのはDOTA AUTO CHESSが真に新しいゲームであることです。

最近の新作対戦ゲームはどうにも人気タイトルの続編であったり、〇〇〇クローン系のゲームが多くリリースされがちです。カードゲームしかり、格闘ゲームしかり、ボードゲームしかり、RTSしかり……。

そうしたほうがさまざまな面で安心というのはもちろんそうですが、年中対戦ゲームを遊んでいる対戦ゲーム中毒からすると、物足りなさがあるのもまた確かです。対戦ゲーム中毒者でなくとも、新作ゲームを遊んでみて「ああ、ここはあのゲームのこれね」と思う場面は、ここ数年でかなりの方が経験してるのではないでしょうか。

その点、このDOTA AUTO CHESSは既存のゲームの良いとこどりをしつつも、それでいてまったく新しいモノを作り上げた奇跡のゲームだと僕は思っています。

ガチャの楽しさ、カードゲームにおけるドラフトの楽しさ、戦略ゲームの楽しさ。それが見事に融合されているのに、既存の知識では太刀打ちできない。そして対戦ゲームとして成立している。

これはもう奇跡としか言いようがありません。DOTA AUTO CHESSはeスポーツである前に、奇跡なんです。

ガチャそのものを対戦ゲームにしたり、ドラフトそのものを結果の伴った対戦ゲームにする。その発想が新しく、素晴らしいと思います。

新しいゲームの面白さ=新しい攻略ができること

新しいゲームは何が面白いのでしょうか。僕は新しい攻略ができることが面白いのだと思います。

例えば既存のゲームが元になっているようなゲームだと、クローン元となるゲームの攻略を流用すればゲームのおおよそを網羅できてしまうことが少なくないため、攻略のし甲斐がないケースがよく訪れます。

「このチャンピオンは“あの”ゲームの“アレ”だから、あのスキルを避ければ何も怖くないはず」

「このゲーム“分割”できるじゃん。範囲攻撃を避けるためにここは“分割”して出そう」

ありますよね。正直。

それで勝てることもあるので楽しい部分でもあるのですが、攻略や発見という意味では、目新しさはありません。

その点、「新しいゲーム」なら未知の世界がたくさん広がっています。このシーンではいったいどんな行動の効率が良いのか。こんなケースではどんなところに注意すべきなのか。

未知の世界がたくさん広がっているということは、遊んでいて自分の力で気づく攻略もたくさんあるということです。

1つ具体例を挙げましょう。例を挙げるために、このゲームのルールをここで3つほど紹介します。

  1. このゲームには1~5ゴールドまでのユニットがおり、基本的に値段が高いユニットの方が強いが、安いユニットのほうが“ガチャ”から出やすい
  2. チェスのコマは卓全体で共有されるが、駒数に限りがある。例えば1ゴールドの《アックス》は卓全体で45体存在するが、2ゴールドの《剣聖ジャガノ》は30体しか存在しない
  3. 同じチェスのコマを3つ集めると、重ねて進化することができる

そして、このゲームのセオリーを1つ共有します。

  • 序盤の戦力強化は進化が最重要

例えば、ネットの海に溢れるDOTA AUTO CHESS攻略を読むと「序盤の戦力強化は進化が最重要」とだけ書いてあります。

なるほど、じゃあとにかくたくさん同じ種類の奴を集めればいいんだなというのは確かに正しいのですが、実際にやってみると1つの問題に直面することになります。

「俺の《ライカン》(3ゴールドのユニット)、3体目がいつになってもこなくて全然強くならなくて死んだんだけど? このゲーム運ゲーか?」と。

わざと先にルールを説明したのでお気づきの方も多いかもしれませんが、このゲームの序盤では1ゴールドのユニットが最も進化させやすく、対して序盤から運よく出た3~4ゴールドのユニットは中々進化することができません。出現率に差がある上に、駒数にも限りがあるので取り合いになるからです。

僕も最初は攻略を読んでそれに従って遊んでいたので「僕のユニット全然進化しないのに対戦相手のユニットばっかり進化しとる。このゲームクソゲーかもしれん……。」と正直思いました。

ただ、ルールをよくよく思い返してみると、「序盤で2~3ゴールドのユニットの進化を狙うのはリターンも大きいが、揃いづらいリスクもある」ことに気づいたわけです。

このことに自分で気づいた時のうれしさときたらですよ。もう最高ですね。

何かに気づいたら試したくなるのでプレイする。そして、プレイしているうちに新たな発見がある。そしてまた、それを試したいのでプレイする……とやっているだけで、まだ始めて1ヵ月ほどですが、すでに僕のプレイ時間は300時間超です。死です。まだまだプレイするたびに発見があるので、DOTA AUTO CHESSでの発見が尽きるのが先か、僕の寿命が尽きるのが先か、というところまできています。

飽きがこない理由は違うゲームがたくさんあるから

「League of Legends」や、PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDSがなぜ遊ばれ続けるかという理由の1つには、毎回違ったゲーム展開になる、という点は挙げられると思います。

DOTA AUTO CHESSもその例に漏れません。自分にどんなチェスの駒がやってくるのかはランダムですし、対戦相手との当たり方もランダムなら、どんなアイテムが落ちるかもランダム。

訪れた状況の数だけ最適な選択があるわけですから、そのたびに発見があるのも当たり前ですね。

こうして書くと「ものすごくランダム性の高い、面白くないゲームなのでは?」という疑問が沸くかと思いますが、ランダム性以上に「重要な選択の多さ」があるので、弱い人は強い人にまず勝てません。

もちろん、何度かやって順位を上回るようなことはあるでしょうが、長期的に見て勝ち越すのはまず無理と言っていいほど実力の反映されるゲームです。

「弱い人が強い人にうっかり勝つこともあるけれど、基本的には実力が反映されていて、強い人が勝つ」

この絶妙なバランス感覚こそ、最近リリースされたゲームで、流行しているゲームの必要条件と言ってもいいのではないでしょうか。

もう1つDOTA AUTO CHESSに飽きがこない理由として挙げられるのは、序盤と中盤と終盤、それぞれ違うゲームの性質を持っていることです。

すでに遊んだ人はわかると思うのですが、序盤と中盤と終盤でやるべきこと、考えることがまったく違います。

誤解をおそれずに言うと、序盤は「グラブル」を遊びながらやっても全然問題ないゲーム、終盤は「StarCraft」ばりの操作量が求められるゲームです。

序盤戦は手持ちの駒と相談してどういう方針にするかの決定力、中盤戦は終盤戦に向けてどのように移行していくかの判断力と応用力、終盤戦は細かな要素と配置要素などの知識力。

どれも重要な要素で、どれかが欠けているとなかなか1位にはなれません。

逆に言えば、自分に苦手分野があっても、得意分野を伸ばすことで、他のプレイヤーに対して自分が部分的に優位を作れることがある、ということでもあります。知り合いとの戦術談義も進むわけですね。

1つの対戦ゲームで自分にたくさんの伸びしろがある。だから面白い。これが僕の「DOTA AUTO CHESS」に対する感想です。

たくさんの発見があって、たくさんのよろこびがある。だから300時間やってしまって、すべての予定が破滅する。DOTA AUTO CHESSはそんなゲームです。

人生に疲れたあなたに。DOTA AUTO CHESS、一度遊んでみてはいかがでしょうか。

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記者プロフィール
ちょもす
「Code of Joker」の賞金制大会のために仕事を辞めてから、人生があらぬ方向に進んでしまった今を生きるゲームライター。対戦ゲームと名の付くゲームではかなり守備範囲が広く、「対戦しましょうよ!」と気軽に話しかけてきた人を初心者狩りするのが好き。 カードゲームの大会で立たされた人。

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