だいこく噺 第一回「働くという事」

ウェルプレイド所属のプロゲーマー・だいこく。「ストリートファイターV」のトッププレイヤーとして、強気な攻めと大舞台でも萎縮しない強靭なメンタルで数々の熱戦を繰り広げてきた。本コラムでは、豊富な実戦で培ってきた強さの可視化をはじめ、対戦時の思考や海外遠征の模様など、プロゲーマーとして活躍するだいこくの心情を吐露していく。
差し当たって第一回目は、プロゲーマーの彼が考える“働く”という視点。噺に耳を傾けてみると、そこには彼ならではの仕事への向き合い方が綴られていた。
だいこく噺 第一回「働くという事」
皆さん、こんにちは。プロゲーマーのだいこくです。今回から「ウェルプレイドジャーナル」で月に何度かコラムを書いていくことになりました。温かく見守っていただけたら幸いです
就活真っ只中のこの時期。一応色々な仕事をしてきた俺ですが、そんな中で出た「働く」ということについての考え方を、恐縮ですが初回では書いていこうと思います。
少しでも学生の方や就活で悩んでいる方が、楽な気持ちなれたらなと思って書きます。決して俺の考えが全てで正しい訳ではなくて、そんな中で自分の考えに落とせる部分があったら拾って下さい。
では——
そもそも皆さんは何のために働きますか?
お金のため、家族のため、好きなもの買いたいため、将来のため、はたまた生きるため……。沢山あると思います。
大体の人が理由はどうあれ「お金が欲しい」から働くと俺は思います。何もおかしい事はないし当然だと思います。
ただ、俺が世間で言う“普通“に働いている人達を見ていて、ある時、疑問に思いました。
「(みんなは)何のために働いて、生きているのだろう」――と。
そう思ったのは同級生の知り合いと飲んで話した時です。
A君は世間で評判のいい高校に入り、世間で評判のいい大学に入り、世間でいうそこそこ良い企業に入りました。ですが、休みがそんなに無く趣味もろくに無く、やる事といえばたまに飲んで会社のグチを言うのが唯一の楽しみだそうです。
俺は普通に疑問に思ったので聞きました。
「それ、なんで働いているのかが分からない。どうして?」
するとA君は
「働くに意味もないだろ。そうやって生きるのが普通でお前みたいに好き勝手生きているのがズレてんの」
そんな感じの事を言われて「なるほどなぁ……」と少し悲しくなりましたが考えました。
その人の目指す将来は“普通”に働いて、結婚し、家庭を築き、子供も育て、家を買い、車を買い、老後は静かにゆっくり暮らす――こんな感じだと思います。文字にするとスーパー楽しそうでたまに俺もこんな人生送って見たかったな、と思います。
誰しもここのルートや、やっている仕事で安泰のルートに乗りたいと思うので、いつかは「安牌しか切らない守りに入った生活」になってしまうのだと思います。
俺もいつか安牌しか切れない人間になってしまうのでしょう。
俺はそれが“大人”になることなのだと思っています。
ただ、大人になるって面白くないと思いませんか?
小学生や中学生の時に大人の人は好きでした?
俺は面白くないから大っ嫌いでした。
なんなら今も嫌いです。
大人は言います
「危ないから川に行っちゃダメ」
「子供だけで山に行っちゃダメ」
「ゲームセンターは危ないから行っちゃダメ」
これって理由を考えて“安牌を切る”なら正解なんですよ。
正解なんだけど、新たな可能性を潰してるんですよね。
だから、「可能性を広げるために本当に今しか出来ない事をやって欲しい」と思う。
この記事を見ているのが何歳の人なのか分からないけど、年齢なんて関係ありません。中学生、高校生、大学生、就活中の人、すでに働いている人、その時しか出来ないことって絶対あると思います。その時間を勿体なく過ごして欲しくないです。遊ぶことだって本当に、本当に大事なことなんです。
法律と“自分が考える最低限のルール”さえ決めたら、 “普通“の誰が決めたか分からないルールなんて気にしなくていい、むしろぶち破っていいと俺は思います。
だって今あなたが、そして俺が生きているのは、一度しか無い自分自身の人生なんですから。知らない他人の事なんてどうでもいいんです。働くことだって無駄にして欲しくないんです。あなた自身の事だから。
青臭い発言かも知れないけど、俺が言いたいのは
「夢や野望を持って働いて欲しいです」
“この夢を絶対叶えるために〇万貯めるまでここで働くぞ”とか、“俺はこの仕事で皆を喜ばせて食べていきたいんだ!”とか……そういうことです。
きちんと自分で考えて「俺はなんで働くのだろう。この仕事は本当に俺がしたいことなのか、ここで働いたお金を何の為に使うか」とか自分自身で考えて動いて欲しいです。
ぶっちゃけ、夢も働く理由もないなら自分ルールさえ守れるなら働かなくたっていいんです。夢を見つけるために旅なんかしたっていいんです。あなたが出来ること、やりたいことをやって欲しいです。
誰かが決めたルールに則って進むと普通の同じような人間になってしまいます。どうせなら自分1人しかいない存在になってみたいですよね。いや、なりましょう。
つまんない人間ばっかりなので、そういう楽しい人が沢山増えたら俺も楽しくなるなあと思って記事を書きました。脱線したままうまく伝えられなかったらごめんなさい。ただ、これからコラムの中で話していく内容の前に、“働く”ことについて改めて見直したかったんです。
人それぞれ価値はあると思うし、何が幸せかは違うと思うので、俺が言いたかったことは自分で考えて精一杯生きようということです。
駄文失礼しました。最後まで読んでくれてありがとうございました。
ps
ちなみに俺の決めたルールは
・家族・友達は何があっても守る
・女性に危害を加えない
・反社会的行動を起こさない
・(平たく言うと)法律を守る
こんなんです。今も凄く悩みながら生きていますが、ありがたいことに自分らしく好きな格闘ゲームのプロゲーマーになり、配信業もしながら楽しく暮らせています。“楽しく生きる”ということは、正解が無い分悩みまくりますが、精一杯みんなで生きていきましょう…!
■成長を続ける男、「ストV」トッププレイヤー“だいこく”に迫る

Capcom Cupに出場するため、そして優勝するために海外大会を遠征している猛者がいる。その名も「だいこく」。ストリートファイターVにおいてトッププレイヤーであり、強気な攻めと大舞台でも萎縮しない強いメンタルで強豪プレイヤーたちと日々戦っている。