ゲームを学ぶ、ゲームで学ぶーーREDEEが目指すのは最高の“ゲーム体験”

但木一真

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2020年3月1日に大阪府吹田市の大型複合施設「EXPOCITY」内に、ゲーム/eスポーツ施設「REDEE」(正式名称:REDEE WORLD)がオープンします。施設面積は1,457坪で国内最大、高さ8m、幅40mの巨大スクリーンを有する日本最大級のアリーナではゲームイベントが常時行われます。

2019年12月にリリースした際には多くの反響がありました。筆者の告知ツイートに対して読み切れないほどの返信をいただきましたし、運営として参画するウェルプレイドに対して「このタイトルのイベントを開催してほしい」というツイートがあふれました。期待の高さを実感しています。

各タイトルのコミュニティで活躍する方が自発的にツイッターで呼びかけ

eスポーツ施設へのリノベーション

筆者がプロジェクトに参画したのは2019年の4月です。本施設を主管するレッドホースコーポレーションに声をかけていただいて、プロデューサーとして企画に入りました。

「マルミエプラザ」として運営してきた施設をリノベーションし、eスポーツの施設として再稼働したい、という方向性は決まっていたのですが、中身についてはほとんど白紙状態。

私自身、Web番組などをプロデュースした経験はあったのですが、施設をプロデュースするのは初めてです。しかも、とてつもなく広い。視察に行った際には息をのみました。大変を通り越して無理なのではないかと。

プロジェクト内で議論を交わし、何度も戦略を転換しましたが、最終的に「ゲームを学び、ゲームで学ぶ」というコンセプトで稼働させることを決定しました。筆者が知る限り、国内はもちろん海外でも類を見ない施設になると思います。

以下ではこの「ゲームを学び、ゲームで学ぶ」というコンセプトについて詳しくお話しましょう。

PCバンは採用できない

eスポーツの施設というと、ゲーミングPCがたくさん並べられた場所、いわゆる「PCバン」を想像する人が多いのではないでしょうか。ハイスペックPCや最新鋭の周辺機器を用いてPCゲームをプレイするネットカフェのような場所です。新大久保の「e-sports cafe」、池袋の「LFS(ルフス) 池袋 esports Arena」といった施設が代表的です。

REDEEにおいてPCバンという施設形態を採用するには問題点が2つありました。立地と広さです。

REDEEがオープンするEXPOCITYは万博記念公園に隣接した複合型の商業施設です。訪れるお客様の多くは半径10km圏内の家族連れで、日々の生活のために利用されています。

EXPO CITYの外観

EXPO CITY内の施設として運営するには、家族連れのお客様や、幅広い年齢層のお客様に来場いただく必要があります。コアな競技系タイトルのプレイヤー(多くは10代後半から20代前半で形成されています)を対象とするPCバンではこの要件を満たすことができません。

施設の広さも課題です。1,400坪超の施設面積のうち、イベントを開催できるメインシアターエリアが3分の1程度を占め、残りは壁で区画されたエリア、キッチンを含めたカフェ用のエリア、そして幅の広い廊下で形成されています。スペースが充分すぎるほどあるのです。

PCバンの施設形態で集客できる人数は限られている、と筆者は考えています。ゲームのプレイ環境はモバイルが主流となっており、コンソールが次点、PCはその次です。友人と、または1人で外出し、PC用の競技タイトルをプレイするという需要は決して大きくはありません。PCバンとして稼働するには広すぎたのです。

このような理由から、この広い施設をリノベーションするには今までになかった施設形態を創り出すしかないという結論に至りました。

ゲームのキッザニア

REDEEをひと言で表すとゲームの「キッザニア」です。キッザニアはメキシコの企業が創設した子供向け職業体験施設で、子供たちが遊ぶ感覚で大人の世界(働く世界)を体験できます。世界20ヵ国以上で展開されており、日本では東京都の豊洲、兵庫県の甲子園に施設があります。

2018年に始まったeスポーツブームは多くの若い世代の人たちに”好きなことで生きていく選択肢としてのゲーム”を印象づけることになりました。プロゲーマーはもちろんですが、eスポーツ興行を運営する人、チームを運営する人、動画を作る人、そしてゲームを作る人といったように、関連する職業は多様です。

自分が好きなことに仕事として関わりたい、でもどうやって勉強すればいいかわからない、という人がたくさんいると思います。

ゲームの世界に対する期待を持った人たちが、学び、体験できる場所を提供したらどうだろうか。ゲームに特化したキッザニアのような職業体験施設ができないだろうか。そう考えました。

ゲーム配信を体験できるエリア

REDEEではさまざまなクリエイターの体験ができます。ゲーム使ってプログラミングを学び、ゲームにまつわるグラフィックを創作できます。ゲーム実況動画を収録し、その動画を編集できます。ゲームというコンテンツの広がりと、コンテンツを生み出す技術に触れてください。

eスポーツの体験もできます。ゲーミングPCで競技タイトルをプレイできますし、メインシアターでは巨大スクリーンを使ったゲームの対戦を行い、その対戦を観戦することもできます。eスポーツ興行をつくる現場を案内するバックツアーもあります。

REDEEを訪れた人には「ゲームの世界は楽しい。この世界に飛び込みたい」という気持ちで家に帰ってほしいと思っています。REDEEで体験したことをきっかけに、将来やりたいことが見つかった、もっと学びたいという人が1人でも生まれればうれしい限りです。

コンテンツの詳しい内容を順次発表していくので楽しみに待っていてください。

大人にもゲームの世界を知ってほしい

子供がゲームの世界に飛び込みたいと言ったときに、大人はまず心配するのではないでしょうか。eスポーツやゲーム配信といった実態がよくわからない職業に子供が憧れている、そのような世界で生きていけるのだろうか、と。

筆者は「任せてください。100年続く産業なので大船にのったつもりで子供を送り出してください」とは言いません。エンターテイメントの世界に不確実性はつきものです。上場しているゲーム企業でさえ立ち向かうべき経営の波は小さくありませんし、その周辺の産業は更に大きな波に身を投じなければなりません。

無責任に聞こえるかもしれませんが“ゲームという好きなことで生きていく”からこそ、そのリスクをも飲み込まなければならないと筆者は考えます。

しかし、だからこそと言えるかもしれないのですが、ゲームの世界は楽しいのです。ゲームコンテンツにみんなが熱狂し、そこからさらにコンテンツが生まれる。新しいゲームが次々に登場し、週末になれば新しいeスポーツのイベントが開催されます。産業が常に変化し、進化しているというドライブ感は、この世界で働いている人が味わうことができる最高の体験の1つです。

ゲームを学ぶというREDEEのコンセプトは、柔軟性を学ぶということでもあります。変化の激しい世界だからこそ、常に新しいことに好奇心をもち、学び続けることが大事なのだと思います。

REDEEにはぜひ家族で訪れてください。子供だけではなく、お父さんやお母さんにもゲームの世界の広がりを体験してもらい、なぜ子供たちが憧れているのか、この世界を通じてどのようなことが学べるのかを知ってもらいたいのです。

世代とジャンルが混ざり合う

今までの話を通して、REDEEは子供世代だけに向けた施設だと思われたかもしれませんが、そんなことはありません。筆者が告知をする際に「すべてのゲーマーに捧げます」と書いたのは、あらゆる世代のゲーマーが一緒に楽しめる場所にしたいという思いを込めたからです。

ゲーム企業が行う公式大会に加えて、関西近辺で活動するゲームコミュニティーにも気軽に問い合わせしてほしいと考えています。安心してください、運営にはウェルプレイドが関わっていますから。ゲームが好きで、イベントのことを知り尽くしたスタッフがコミュニティーイベント開催のお手伝いをします。

ゲームがインターネットと接続され、オンラインで対戦・協力プレイをできるようになってから随分と時代が巡りました。今は、SNSで仲間を集め、ボイスチャットを用いて会話をし、オンラインの大会に参加できる時代です。家にいながら、充分に楽しいゲーム体験ができるのです。

そんな時代に、ゲーマーが1つの場所に集まる理由は何でしょうか。

REDEEのメインシアターには巨大なスクリーンが備え付けられています。照明や音響といった演出を含め、最高のeスポーツイベントを体験するための設備を用意しています。五感すべてを奮い立たせるような体験はオフラインならでのものです。

加えて、筆者がオフラインで実現したいと思っているのは、ゲームジャンルやゲーマーの世代を超えた交流です。

SNSや動画配信といったサービスにおけるコミュニケーションは趣味や世代が近い人同士の交流を後押しします。同じゲームタイトルをプレイしている人同士が仲良くなりやすいのは、サービスに実装されたアルゴリズムが趣味の同じ人を結び付けるからです。YouTubeのおすすめ動画にはあなたが好きなジャンルの動画だけが一覧化されているでしょう。

しかし、現実の場所にはアルゴリズムは存在しません。REDEEが用意したさまざまなジャンルのゲームとそこに集まる人がない交ぜになって、新しい結びつきが生まれます。知らなかったゲームや、年の離れたゲーマーに出会うこともあるかもしれません。

筆者は異なるジャンルや世代がない交ぜになったほうが、おもしろいコンテンツができ上がると信じています。文化とは往々にして異なるものが出会い、新しい視点がもたらされることで、発展していくものだからです。ゲームにおいても同様のことが言えるのではないでしょうか。

REDEEは2020年3月1日にオープンします。初日にはウェルプレイドフェスティバル Osaka editionが開催されますので、絶対に、間違いなく、100%盛り上がると思います。関西近辺の方はぜひぜひ足をお運びください。

大阪EXPOCITY、REDEEでお会いしましょう。

(C)Mitsui Fudosan Retail Management

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記者プロフィール
但木一真
1985年生まれ。ゲーム業界/eスポーツ業界のアナリスト。カドカワにてゲーム業界のマーケティング分析業務に従事。総務省より公表されている「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」を執筆したことをきっかけに、eスポーツ業界の専門家としてさまざまなレポートを発表。2019年4月よりフリーランスとして活動をはじめ、eスポーツ業界に関する記事執筆、コンサルティング、イベント・コンテンツのプロデュース業務を行っている。

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