頭脳派プレイヤー板ザンはマニアック専門のMだった!?(後編):倉持由香のゲーマー交遊録【第8回】

倉持由香

【この記事は約6分で読めます】

■前編記事

倉持由香のゲーマー交遊録【第8回】:(前編)

DNGに入ってなかったらスト5はやってない

倉持:板ザンさんはプロゲーマーの中でもメディアに登場する機会が多いですが、なにか気をつけていることはありますか?

板ザン:
特に思いつかないな……。逆に教えてほしいぐらい(笑)。

倉持:板ザンさんはバラエティー力が強いというか、スタッフ側の要望をちゃんと理解しているな~と思いますね。

板ザン:
なるほど、社会人経験が生きているのかもね。お客様のニーズに応えることが最優先だから(笑)。

ただ、タレントや芸人の方がグイグイいくあたりは見習わないととは思うけどね。

倉持:所属されているDetonatioN Gaming(以下、DNG)はどんなチームですか?

板ザン:
スト5が出た直後ぐらいにDNGに入ったんだけど、これがなかったら間違いなくスト5はやってないね。

倉持:えっ、どういうことですか!?

板ザン:
ちょうどその頃、カードゲームにハマってたんだよね。バーチャ村からスト村に引っ越して、今度はカードゲーム村へ引っ越すのかと思ってた。前編で話した適正もあるし、自分でも挑戦してみようかと考えている頃だったし。

でも、DNGに入ってストリートファイターをやる方針だったから、スト5を始めたんだよね。結果的には良かったと思ってる。プロゲーミングチームとしては老舗のほうだし、サポートもしっかりやってくれているから、いいチームだしやりがいもあるね。

倉持:ありがとうDNGですね! 対戦部屋などで、強いなと思うプレイヤーはいますか?

板ザン:
みんな上手いよ。確実にレベルは上がってきてるし、自分も置いていかれないようにしないとなと思う。

倉持:切磋琢磨し続けてるんですね。Capcom Cup 2018では、ブラジル遠征からの準優勝という結果になりましたがいかがでしたか?

板ザン:
周ってよかったなと(笑)。ただ、大会を周るのはエネルギーが必要なことなんだよ。6週連続海外ということもあったから。

しかも、日本に帰国できたら休めるかというとそうでもなくて、練習して体を作って海外へ行かないと結果が出ないんだよね。その間に別の仕事が入ることもあるし……。

そういう意味では無理して回る必要はないんだけど、途中まで来てるし、周り切ったほうがいいかなと判断した。でも、ブラジル行きは2、3週間悩んだよ。結果的に、ブラジルの成果が実ったのでよかった。

倉持:6週連続はエグすぎるスケジュール……本当に実って良かったです。ブラジルはどうでしたか?

板ザン:
ブラジルでは、プレイヤーの家に5、6泊したんだよね。文化やどういう生活をしているのかにも興味があったので、ホームステイ気分だったね。

ただ、英語が通じない人もいて、言葉の壁が厚かったな。

倉持:板ザンさんは英語できる勢ですもんね。英語が通じないのはキツい……。海外では現地の食事を楽しむ方ですか? 人によっては、安定のマックがいいという人もいますが。

板ザン:
現地の食事を楽しむほうなんだけど、かなり海外に行ってるから、あまりこだわらなくなってるね。確かに、マゴさんなんかはマックでいいって言ってたね。

人読みのスキルを活かす板ザン流レクチャー

倉持:Capcom Cup 2018はいかがでしたか?

板ザン:
アビゲイルでいい動きができてたから、ある程度自信はあったんだよ。Justinには苦しい戦いだったけど、大逆転できたしね。

最後に負けたのは悔しいけど、自分の成長も感じたし、満足できている部分もあるから。準優勝は悔しいけど、うれしい結果でもあるね。

倉持:バーチャ村からの反応はどうでしたか? 応援ツイートをたくさん見かけました。

板ザン:
みんな見てくれていたみたい。オレはスト5においても、バーチャファイターのプレイスタイルを踏襲しているんだよね。じゃんけんの要領でいかに博打をして、いかに読み勝てるかが大事なゲームだけど、それがまさにザンギエフ(投げキャラ)に直結してる。

相手の心境を読み取って仕掛けていくという点は、バーチャファイターで培ったものが生きていると思う。そういう意味では、バーチャ村に恩返しできたかな。

倉持:板ザンの恩返し! バーチャファイターは高速でじゃんけんをするようなゲームと聞いたのですが、スト5とはだいぶ違いますか?

板ザン:
そうだね、違うね。そんな中でも投げキャラは、バーチャファイターのノウハウが活かせるから助かってる。

倉持:もし、スト5で投げキャラがめちゃくちゃ弱かったら、他のキャラを使いますか?

板ザン:
いや、スト5をやめると思う。カードゲーム村に引っ越すかな(笑)。

というのは冗談として、本当に投げキャラが使えないとなると、他のキャラを模索するだろうね。でも、王道キャラは使わないと思う。

倉持:見事決勝に進出したストリートファイターリーグですが、ビギナークラスとハイクラスにそれぞれ教えてみていかがでしたか?

板ザン:
ビギナークラスでは吸収できることがたくさんあるので、教えやすかった。逆にハイクラスの子は、ポテンシャルはあるんだけど大会で緊張するタイプだったので、どういうアドバイスをすればいいのか悩んだね。

でも、勝たせてやりたくて、自分なりにアドバイスはしたよ。

倉持:どんなアドバイスをしたんですか?

板ザン:
緊張を少しでもほぐすために、「普段の練習も大会と思ってやる」「大会は自宅だと思って臨む」とかかな。それを聞いてくれて、大会本番では靴下を脱いで臨むようになったね。

倉持:いつもの環境だと思ってリラックスできたんですね。人に教えるのは得意なほうですか?

板ザン:
自分では面倒見がいいタイプだとは思ってるけど。ある意味、これも人読みかなと。

というのも、その人が何を求めているのか? をちゃんと把握する必要があるからね。どういう性格の人で、どういうプレイをしたいのかがわかると、的確なアドバイスができる。

倉持:アドバイスも人読みなんですね。初心者はいきなり難しいことを言われてもついていけないはずなので。板ザンさんから見て、教え上手な人はいました?

板ザン:
マゴさんかな。その人の足りないことを見極めるのがうまいよね。マゴさんは「とにかく、オレについて来い」タイプで面倒見もいいので、うまくハマると最高の先生になると思う。

80%の全力と20%の余裕が強さの秘訣

倉持:板ザンさんが好きなバーチャファイタープレイヤーと、ストリートファイタープレイヤーをそれぞれ3人挙げてください!

板ザン:
バーチャ神のちび太とホームステイアキラは、かなり好きだな。この2人は、「バーチャファイターって、こういう風にやるんだな」と教えてくれたからね。

倉持:ちび太さんは板ザンさんがバーチャファイターをやり始める前から、神のような存在だったんですか?

板ザン:
そうそう。当時から別格で、発想力がずば抜けてた。踊るように戦う、誰にもできないような戦闘スタイルもすごかったし。

ホームステイアキラは、読み合いも強かったし、満遍なく能力値が高いプレイヤーだったな。

もう1人は、大須晶だね。

倉持:バーチャ勢から「バーチャ5神を決めるなら大須は絶対入る」と聞いたことがあるんですが、やはり実力者だったんですか?

板ザン:
大須さんは発想力がぶっ壊れている感じだね。不思議なリズムと不思議なタイミングのダンスな戦闘スタイル。アキラという王道のキャラで、王道でない動きをするだよ。

倉持:今はカメラマンとしての活動と、ガンプラおじさんのイメージが強いけど、大須さんはすごかったんですね……! ストリートファイターからは誰を挙げますか?

板ザン:
Oil Kingは結構好きだね。自分がラシードを使うとしたら、Oil Kingのように運動量の多いラシードにしたいと思う。

伝説的プレイヤーのAlex Valleも好きで、技出しも面白くて、抱かれてもいいぐらいかっこいいよね。

もう1人は、2011年のEVOで準優勝したLatifかな。言葉はそんなにわからないんだけど、ゲームのプレイを通じて、彼の精神力の高さがうかがい知れるんだよね。魂があるっていう感じで、そこがすごく魅力的。

倉持:プレイを通じて魂を感じる……! トップ層はすごい世界で闘ってるんですね……。

倉持:板ザンさんは、試合中にニコニコされていることが多いですが、それは意図的にそうしてるんですか?

板ザン:
絶対楽しんでやったほうがいいってのはあるよね。

倉持:あのCapcom Cup 2018決勝でもニコニコしてましたもんね。あれを観て、板ザンさんは本当に楽しそうにゲームをする方なんだなぁって思いました。

板ザン:
ただ、これがいいかどうかは判断が分かれるよ。自分でその動画を見返したときに、ヘラヘラしてるように見えるなとも思ったし。

ときどはマーダーフェイスだし、ももちはすごい集中力だしね。でも、さすがにオレも余裕がないときは、ニコニコできないよ。

これはオレの持論なんだけど、100%を注ぐと普段見えていることが見えなくなったりするというか、どこかに余裕を持ってないとうまくいかないと思うんだよね。だから、80%ぐらいで臨んで、なにかあったときのために20%を残しておくぐらいがいいと思ってる。

これはレアキャラを使っているからなのかもしれない。この余裕が新しい発想を生むこともあるからね。

倉持:余裕を持つっていう考え方を持っている人は、この連載では初めてかもしれないです。

板ザン:
仕事に対する姿勢にも同じことが言えると思ってて、100%でやっていると急なトラブルが発生したときに対応しきれなくなるから、常にバッファを持たせておくことが重要になる。

こういう発想は、社会人経験が活きているのかもしれないね。

ザンギエフ使いは我慢できるMが多い!?

倉持:おなじみのネモさんとの対立関係はどう思ってますか? そもそも、始まりは何だったんですか?

板ザン:
このインタビューでも散々言ってたもんね。始まりは、因縁をつけてこられたんだよ。いつの話だかは思い出せないけど、「ザンギ許せん」みたいなことはずっと言ってましたね。

投げキャラ嫌いというは一定数いるんだけど、その中でもネモさんは別格。ある意味、頂点に立つ人(笑)。

倉持:インタビューでも「人生を無駄になるのでザンギは嫌いです」って言ってましたね(笑)。

板ザン:
オレなんて、「板橋ザンギエフ」を20歳ぐらいから名乗ってるから、この15年間ぐらいは無駄だっていわれた気分(笑)。

倉持:ザンギエフの魅力は?

板ザン:
我慢を重ねて相手に近づいて、近づいたら地獄だからなというのがザンギエフだね。

倉持:我慢するという点で、「ザンギエフ使いにはMが多い」という話もありますが。

板ザン:
そうだね。試合が始まっても80秒間何もできないこともあるからなぁ。でも、残りの10秒で逆転もできる。そこが気持ちいいんだけど、80秒間は我慢しなくちゃいけない。そういう意味ではMのほうが向いてるとは思うね。

倉持:ネモさんはドSっぽいから、ダメなんでしょうね(笑)。でも、ネモさんとの絡みもあって女性ファンも多いんじゃないですか?

板ザン:
そうかな?

倉持:今年のEVO Japanに行ったときも、女子トイレで熱い板ザンファンの方に「私すごいファンで、さっきご本人に話しかけたんですが、迷惑じゃなかったでしょうか!?」って話しかけられたんですよ。「板ザンさんは優しいから大丈夫だと思いますよ!」って答えておきました(笑)。

板ザン:
それはうれしいね! そういえば、EVO Japanでは福岡のご当地ものをたくさんプレゼントしてもらったよ。ゆっくり、いただいてます!

倉持:私の感覚では、「女性ファン多い格ゲーマー」のトップ3に入るかなと思ってます!

板ザン:
恥ずかしがり屋なもんで、そう言われるとなんか恥ずかしいね。

倉持:意外とシャイなんですね(笑)。お付き合いする女性はゲーマーがいいですか?

板ザン:
ゲームは好きでいてほしいね。タイプ的にはオレがM気質だから、Sっぽい女性のほうがいいのかな。ただ、中々いないと思うんだよね。

倉持:基本的に女性はM気質の子のほうが多そうですよね。Sっぽいゲーマー女子いるかな……。いよいよ、2019年のCapcom Pro Tourが始まりましたが、意気込みはいかがですか。

板ザン:
Capcom Pro Tourはメイン活動の1つだから、注力はします。ただ、ポイントさえ取ってしまえば行きたいとこに行けばいいということになるので、結果的に他のことができたり、自分の時間を持つことができるようになるから、そうしたいね。

全力でポイントを取って、自分の時間を作るというモチベーションで望みます。

倉持:ポイントに余裕ができたら地獄のスケジュールを避けられますもんね。今後のeスポーツ界に望むことは?

板ザン:
プレイヤー人口が増えていってほしい。興味を持ってくれている人は増えてると思うんだけど、実際にやる人はまだ少ないじゃないかと。スト5はアーケードでも展開されているので、これをきっかけにプレイヤー人口が増えたらいいなと思ってる。

倉持:アケきっかけで始めてくれる層が増えたらうれしいですね! 最後に、2019年の目標をお願いします!

板ザン:
Capcom Cup優勝ですね。最近、活動の幅も広がってきたので、別の目標も持ちたいんですよね。なので、「大会優勝以外の目標を持つ」ことを目標にしたいね。

倉持:ありがとうございました!

写真・大塚まり

【あわせて読みたい関連記事】

頭脳派プレイヤー板ザンはマニアック専門のMだった!?(前編):倉持由香のゲーマー交遊録【第8回】

早稲田大学卒業の頭脳派ゲーマーの板橋ザンギエフ選手。格ゲーに足を踏み入れるきっかけになったバーチャファイターシリーズの話を中心に、実はパズルゲーム好きな一面を覗かせるインタビュー前編。

記者プロフィール
倉持由香
ゲームに本気で取り組む100cmのもっちりヒップ、尻職人グラドルゲーマー。14歳でゲーム配信者デビューをし、格ゲーマーとの交流が深い。自宅のゲーミングスペースにはPCやゲーム機に加え、雀卓も完備。ストVでの使用キャラは、レインボー・ミカ。

関連記事

注目記事

新着記事