EVO Japan 2018 大会レポート

とつ(WPJ編集部)

「Evolution Championship Series(EVO)」とは?

毎年7月にアメリカ(ラスベガス)で開催されている格闘ゲームの祭典「Evolution Championship Series」(以下、EVO)。1996年から現在に至るまで20年以上もの歴史があり、“世界最大級の対戦格闘ゲームイベント”と称されるほど大規模なイベントへと発展している。

そんな格闘ゲームの祭典である「EVO」が2018年、遂に日本で開催された(1月26〜28日、池袋サンシャインシティ文化会館、秋葉原UDX アキバ・スクエア)。
その名も「Evolution Championship Series: Japan 2018」(以下、EVO Japan)。
本稿では、筆者が体験した「EVO Japan」について、あますところなくお伝えしていこう。

「EVO Japan」のタイトルと注目選手は?

「EVO Japan」のメイン競技種目は、以下の7タイトルです。

・ストリートファイターV アーケードエディション
・GUILTY GEAR Xrd REV 2
・鉄拳7
・大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U
・BLAZBLUE CENTRALFICTION
・THE KING OF FIGHTERS XIV
・ARMS
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各タイトルについての概要と、本大会の注目選手などを紹介しておきたい。

1. ストリートファイターV アーケードエディション

1989年にシリーズ第一作が登場して以降、25年以上もの間、格闘ゲームの代表作である「ストリートファイター」の最新作。本大会では最多の、総勢2,217名が参加するトーナメント大会となった。

「EVO 2017」で劇的な逆転優勝を果たしたときど選手や格闘ゲーム界のレジェンド、ウメハラ選手をはじめとする重鎮選手から、1月にプロチーム入りをしたストーム久保選手(AtlasBear)、ランクマッチにおいて圧倒的なポイントで1位になっているtrashbox選手、「EVO2017」のBLAZBLUE CENTRALFICTION部門で優勝したりゅうせい選手。

さらにはだいこく選手(Well Played)や竹内ジョン選手、もけ選手(PONOS)など、昨年、海外大会を経験している多くの注目プレイヤーらが参加。

また海外からは、「Capcom Cup 2017」で見事優勝したドミニカ共和国のMenaRD選手や、韓国の強豪であるInfiltration選手やxyzzy選手、香港からはHumanbomb選手やHotDog29選手など、多くのプレイヤーが来日し、本大会に参加。3日間を通して、目が離せない試合ばかりだった。

2. GUILTY GEAR Xrd REV 2

キャラクターを前面に出したファンタジー系の世界観、痛快なコンボシステム、ハードロック/メロディックスピードメタル風のサウンドなどが特徴の2D格闘ゲーム。2000年からアーケードで人気を博している「GUILTY GEAR」シリーズの最新作も、本大会のメインタイトルに選ばれている。今回は1,187名もの選手がエントリー。

注目選手は、「EVO2016」覇者のまちゃぼー選手、「ザトー=ONE」を愛してやまない“暴君”こと小川選手、「EVO2017」覇者のおみと選手、凡事徹底の努力の男・ナゲ選手など、昔からの多くのプレイヤーが参加。

GUILTY GEARというゲーム自体、日本人がかなり強いゲームだが、その中にあってもアメリカのMarlinPie選手や韓国のTOP Garen選手は、かなりの注目を集めていた。

3. 鉄拳7

3D格闘ゲームにおいて長い歴史を誇る「鉄拳」シリーズの最新作も、メインタイトルに選ばれている。総勢1,200名ものエントリーがあり、そのうち700名ほどが海外プレイヤー。国外からのエントリーが非常に多いタイトルだ。「鉄拳」というゲームは浮いた時に大ダメージが入るため、キャラクターが宙に浮いたら盛り上がりどころ。

また、昔から日本と韓国が特に強いタイトルで、日本からはタケ。選手(YAMASA)や、年末にジャックだけでなくデビル仁でも強さも見せたのろま選手、韓国からはKnee選手、Saint選手(Echo Fox)、JDCR選手(Echo Fox)に注目。そして、「鉄拳5DR」の伝説的、そして最強デビル仁であるQudans選手も来日を果たしている。

4. 大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U

本家「EVO」でも毎年メインタイトルに選ばれている「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズ。総勢58ものキャラクターが登場する今作、キャラ対策がどれほど詰められているかがカギに。

国内の有力選手が勢揃いし、海外から来た最強の刺客を迎え撃つという構図となった。
日本人選手では、「EVO 2017」で日本人で唯一、檀上に上がったソニック使いのKEN選手、そしてウメブラを2連覇したゼロスーツサムス使いのちょこ選手が有力株。他にも、あばだんご選手やにえとの選手(DNG)、古森霧選手(2GG)など、強豪プレイヤーが多い。

対して海外からは、世界最強プレイヤーの一角であるNairo選手、そして世界最強のピカチュウ使い・ESAM選手が参戦した。

5. BLAZBLUE CENTRALFICTION

「BLAZBLUE」シリーズの最新作「BLAZBLUE CENTRALFICTION」には,595名のプレイヤーがエントリー。そのうち7割程度が国内プレイヤーと、日本人プレイヤーの比率が非常に高かったが、このタイトルはなんといっても、「フェンリっち選手を倒すのは誰だ?」ということに尽きる。

注目選手は、圧倒的実力で最強プレイヤーとなっているフェンリっち選手をはじめ、以前国内リーグでフェンリっち選手を倒しているMonster選手、「EVO 2014」で覇者になったこともあるガリレオ選手(PONOS)など、挙げればキリがないほどだ。

6. THE KING OF FIGHTERS XIV

 

1994年から続く「キングオブファイターズ」シリーズの最新作、「THE KING OF FIGHTERS XIV」も注目タイトルのひとつ。このタイトルは「1vs1」ではなく、3人のキャラクターを選択する「3vs3」のチームだけあって、プレイヤーたちがどのようなキャラクターを使用するかも見どころ。

古来からの強豪プレイヤーが多く参加するタイトルだ。中国のXiao hai選手をはじめ、台湾のET選手、ZJZ(ウエコショウ)選手、そして「EVO 2017」で活躍したアラブ首長国連邦のWhite Ash選手などが有力。国内では、M’選手(SANWA)やこうこう選手、そして小路KOG選手などのプレイヤーに注目が集まった。

7. ARMS

選出された種目のうち,唯一の完全新規タイトルとなる「ARMS」。Nintendo Switchを使用するメインタイトルは、EVOの中では初めてだろう。

注目選手は、「ARMS JAPAN GRAND PRIX 2017」優勝のPega選手、「ARMS JAPAN GRAND PRIX」東京大会優勝のポルンガ選手、第1回「公開スパーリング大会」優勝のしんごろー選手だろう。

「EVO Japan」観客を魅了するプレイング

「EVO Japan」でやはり大きく盛り上がったのは、最終日。ひと際大きな歓声が上がったのは、「鉄拳7」グランドファイナルで韓国のKnee選手が超高難易度コンボを決めた瞬間だ。

このラウンドの壁張り付きのあと、2度目のアッパーが入っている。これはKnee選手の操るブライアンというキャラクターにあるガード不能連携「挑発ジェッパ」と言われるもの。

「挑発をキャンセルしてジェットアッパーを撃つ」というコンボで、一見、簡単そうに見えるのだが、この「キャンセルしてジェットアッパーを撃つ」というのが1フレーム(※)もズレることが許されない。

「EVO Japan」という大きな舞台、しかもグランドファイナルという優勝がかかっている試合で、寸分違わぬ精度が要求されるコンボを決めるKnee選手に会場は熱狂した。

※フレームとは、絵の動きを1コマずつに分けたときの1コマ。転じてゲーム内の時間を表す単位。ほぼすべての格闘ゲームは1フレームが1/60秒である。

そしてもう1つ、観衆が沸いたのはこのシーン。

「ストリートファイターV」のルーザーズブラケットの1回戦、ときど選手VSストーム久保選手の試合。あと一発殴らたらスタン(気絶)してしまう、というところから巻き返し、最後にときど選手が操る豪鬼というキャラクターの、そしてときど選手の代名詞でもある必殺技「瞬獄殺」で決めたこの試合。ときど選手が瞬獄殺を決めた瞬間に、多くの観客がスタンディングオベーションで勝利を称えた。

「EVO Japan」大舞台が内包する会場の”魔物”

やはり「EVO」という名を冠しているからなのだろうか。今大会も多くの魔物が潜んでいたように思えた。「ストリートファイターV」では、初日から「EVO 2017」の覇者であるときど選手が、日本の強豪&キャミィ使いのパウエル選手に負け、ルーザーズ落ち。

ダブルエリミネーション形式のトーナメントでは、ルーザーズに落ちてしまうと単純に試合数が2倍近くに膨れ上がってしまう。しかし、ときど選手はトップ8までに並みいる強豪13人に勝利し、4位入賞を果たした。

そして、あの若手が改めて頭角を現してきた。そう、竹内ジョン選手である。まずプロゲーマーのsako選手(SCARZ)との対戦に始まり、韓国の強豪の一人、Poongko選手(AtlasBear)、そして「Capcom Cup 2017」覇者のMenaRD選手を破り、トップ32へ。

その快進撃は留まるところを知らず、格闘ゲームに愛された男・かずのこ選手(GGP)、世界最強アビゲイル・ストーム久保選手を立て続けに破り、トップ8入り。

そして最終日。初戦から「EVO」トップ8の常連であるMOV選手(GRPT)、続いて「EVO 2016」覇者である韓国のInfiltration選手に勝利し、ウィナーズでグランドファイナルへ。その後、再度勝ち上がってきたInfiltration選手に敗れ、2位という結果になったものの、今大会の台風の目であったことは間違いない。

「ストリートファイターV」の結果だけを見ると、「2016年の、強かったInfiltrationが1年間の苦悩を乗り越え復活した」と思わされる大会であった。しかしその裏では、竹内ジョン選手のような若い選手が並みいる強豪を倒して勝ち上がっていたり、ときど選手を破り、トップ32に1番乗りしたパウエル選手など、他にもヒーローが生まれていた。

そういったヒーローを見逃さず、今後インタビューや振り返り、感想戦などを行っていきたい。

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