成長を続ける男、「ストV」トッププレイヤー“だいこく”に迫る【前編】

1989年にシリーズ第一作が登場して以降、25年以上もの間、格闘ゲームの代表作である「ストリートファイター」シリーズ。
最新作「ストリートファイターV ARCADE EDITION」は2018年1月に発売・配信、さらには「ストリートファイターV」で世界一を決めるための大会「Capcom Pro Tour」もスタートしている。
Capcom Cupに出場するため、そして優勝するために海外大会を遠征している猛者がいる。その名も「だいこく」。ストリートファイターVにおいてトッププレイヤーであり、強気な攻めと大舞台でも萎縮しない強いメンタルで強豪プレイヤーたちと日々戦っている。
そんな彼にロングインタビューを行った。大きく飛躍した1年、そして既に始まっているCapcom Pro Tourについての意気込みを余すことなく伝えていく。
だいこく:ウェルプレイド所属のプロゲーマー。強気な攻めと大舞台でも萎縮しない強靭なメンタルで戦うプレイヤー。豊富な実戦経験から繰り出される一撃で数々の強豪プレイヤーを沈めている。
名前:だいこく
Twitter:daikoku_GO
Openrec:WP|だいこく
Blog:配信者だいこくのブログ
戦績
2017年 ThaigerUppercut Championship 2017 7位
2017年 Manila Cup 2017 9位
2017年 TWFighter Major 2017 5位
2018年 ストリートファイターV ARCADE EDITION 闘会議GP大会 9位
2017年のだいこく選手を振り返る
――:「NorCal Regionals 2017」の後にも、「EVO」までに海外大会を転戦していたと思いますが、自分のプレイを出せていたと思いますか?
だいこく:
普段通りのプレイはできていたと思いますが、単純に自分の実力不足だったと実感しています。負けてから動画を見返すんですよ。すると、ダメなところがいくつも見つかる。あまりにもできていないことが多すぎるので、負けて当然だったかなと、今は思います。
――:そして、格闘ゲームの祭典「EVO 2017」を迎えるわけですが、いかがでしたでしょうか?
だいこく:
まず、ウィナーズプールでフランスのEvans選手に負けてしまったんですね。内容も悪い上に、ウェルプレイドのみなさんが後ろで見ていたので、顔面蒼白でした。ですが、どうにかルーザーズプールを勝ち上がり、再度、Evans選手に当たったので、きっちりリベンジを果たしました。
その後、この大会中当たりたくないなと思っていたFilipino Champ選手に当たってしまいました。彼の使うダルシムが、キャラ相性的にもあまり良くないと思っていたので、「あー、当たっちまった」と。結果は負けでしたが、フルセットで投げと打撃の択で読み負けたので、納得はしています。
Filipino Champ選手相手に最後の2択までいけたことで、成長したなと感じましたね。
――:この「EVO 2017」以降、めきめきと頭角を現し、素晴らしい結果を残されていますが、ご自身の中で何かが変わったのでしょうか?
だいこく:
ありがとうございます(笑)。単純に実力がついてきたのだと思います。実際、「EVO 2017」に相当賭けていたんですよね。本当は「EVO 2017」で結果が残せなかったら、そこでスポンサード契約が終わりだった。ただ、現地でウェルプレイドのみなさんが自分のプレイややり込みを見てくれて、「これからも行ってきなさい」と言ってもらえたことが本当に嬉しくて。
そこから俄然やる気が出て、今まで以上にゲームをやり込みました。その結果、これまでの海外大会以上の力も出せるようになったし、何よりやり込んだことを認めてもらえたことによって自信もつきました。
――:「EVO 2017」の後、新規プレイヤーをはじめ、いわゆる「動画勢」がだいこく選手のすごさを感じた大会が「TWFighter Major 2017」だったと思います。
だいこく:
この大会のプールは、自分史上最高にきつかったんですよ。日本最強のダルシム使いであるYHC-餅選手や、世界で3本の指に入るラシード使いであるOil King選手がいて、プールを見た時は「終わったな」と思いました。
しかも5位以内に入らないと、次の「Canada Cup 2017」で優勝しても「Capcom Cup」には出れなかったんです。普段練習していたキャラだったので、自信をもって戦えましたし、練習した甲斐もあって、2人にかなり良い内容で勝つことができました。
そのあと、sako選手を倒した日本の若手・ヤマグチ選手をどうにか倒して、そして、ときど選手と当たりました。
――:同大会で多くの人が盛り上がったのが、だいこく選手がときど選手を倒した試合だと思います。あの試合は何が違ったのでしょうか?
だいこく:
ときど選手とは、日本でいつも練習しています。もちろん負け越してはいるんですけど、絶望的な負け方をしていたわけじゃなかった。だから苦手意識は全然ありませんでした。しかも、今大会ではいつもやっていることが出せているし、何より調子が良かったので、「勝てるな」と思っていました。
結果的にはフルセット3-2でしたが、勝つことができて嬉しかったですね。何より、今まで褒められることがあまりなかったのですが(笑)、たくさんの人から「今までで一番内容が良かった」と言ってもらえたのが本当に嬉しかった。去年、一番思い出に残っている大会です。
――:そして最後の大会が「Canada Cup 2017」ですが、いかがでしたでしょうか?
だいこく:
過去最高のやり込みをして臨んだのですが、実は体調があまり良くなかったんです。特に歯がすごく痛くて、大丈夫かなと不安でした。ですが、試合が始まると、歯の痛みは消えました。試合自体も本当に良い内容で勝っていくことができました。
ただ同じプールに、韓国の強豪キャミィ使い・NL選手と、アメリカの“生ける伝説”と言われているJustin Wong選手がいたんです。
――:いつも本当にプールがきついですね。両選手との試合内容はいかがでしたか?
だいこく:
まずはじめにNL選手と当たり、かなり良い内容で勝てました。その後のプール決勝で、Justin Wong選手と対戦しました。彼のキャラは「かりん」だったので勝てるかなと思ったんですけど、本当にうまくて。
最後、体力がドットになったところで、前ステップしゃがみ大キックを当てられて負けてしまいました。負け方が良くなかったので、その後の試合が不安になりました。
そしてその後、勝ち上がってきたNL選手と再戦。最後はやはり体力がドットになり、NL選手の前ステップしゃがみ中キックが決まり、敗退でした。
――:配信で見ていましたが、Justin Wong選手と当たることになって、かりんとバーディーの相性はどうなんだろうなと思ってました。
だいこく:
実際、キャラ相性はすごく有利だったんです。ただ、Justin Wong選手の地上戦があまりにもうまくて、圧倒されました。圧倒されていたせいもあって、相手の弱点に気づくのが遅れてしまったんですよね。
――:弱点というと?
だいこく:
“かりん”というキャラクターということもあるのですが、Justin Wong選手に飛びがすごく通ったんです。その時に、「これかぁ~」と思ったのですが、もう遅くて、そのまま負けてしまいました。昔からトッププレイヤーですから、さすがうまいな、という印象でした。
――:その後、海外大会には出られていませんが、「Capcom Cup 2017」の当日予選にはなぜ出場されなかったのですか?
だいこく:
当日予選は、優勝以外本戦にいけないじゃないですか。普段の大会であれば、2位や3位でもポイントをもらえますが、あの大会ばかりは優勝しないと本戦に進めない。そして、出場者の中にネモ選手やMOV選手がいて、この段階で自分が優勝できる確率は相当低いと感じました。
「お金を出していただいてまで、優勝できる可能性が薄い大会に行く価値があるのか」と考えると、そんなことはできないと思ったんです。単純に力不足でした。もう少し実力があれば、行かせてもらっていたと思います。
――:そして、「Capcom Cup 2017」本戦。同じバーディー使いであるドミニカ共和国のMenaRD選手が優勝しましたが、どう思われましたか?
だいこく:
一言で“強い”ですね。自分がやっていない行動もやっていたし、もちろん自分がやっていた行動もやっていた。見ていて得られるモノが本当に多かったです。
だからこそ、本当に悔しかった。
自分がバーディー使いでなければ、すごいなと思うだけで終わっていたかもしれませんが、今でもバーディー使いの中では自分が一番強いと思っているので、悔しさは相当でしたね。「なんで俺は日本にいて配信を見てるんだ? なぜあの場所に立っているのが俺じゃないんだ?」と強く思いました。あの時こうしていれば良かったなとか、本当にいろいろな思いが蘇ってきました。
自分が出ていない大会で、ここまで悔しいと思ったのは初めてでした。配信を見ながら悔しくて泣きました。
自分と同じキャラクターを使っている男が世界一を獲った2017年。そして始まる新たな年とCapcom Pro Tour。彼の戦いはここで終わりではない。
これからも続く戦いに彼が何を思うのか。2018年に向けた「だいこく」選手について、「成長を続ける男、「ストV」トッププレイヤー“だいこく”に迫る【後編】」で掘り下げていく。