「鉄拳」強豪プレイヤー加齢選手をプロの道へ踏み出させた“友との約束”と“決意”【前編】

まさかり仁
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2018年5月4日。「鉄拳」の世界に新たなプロが誕生した。

プロライセンス獲得の掛かった「MASTERCUP TRY FUKUOKA」で見事優勝し、文句なしのプロ入りを果たしたのは、強豪プレイヤー・加齢選手だ。大阪を拠点に活動していた選手で、「鉄拳7」では一美使いとして全国のプレイヤーから一目置かれる存在となっている。

そんな彼を語る上で欠かせない存在が、同じく大阪出身の「鉄拳」プロゲーマー・破壊王選手。同郷だった2人は、その名前を全国に轟かす前から互いに腕を競い合っていたというのは有名な話。今回のインタビューで加齢選手は、自身の“鉄拳人生”に常に影響を与えてきた破壊王とのエピソードを語ってくれた。

これまでプロの肩書きを背負うことのなかった加齢選手が、ようやくプロゲーマーとして活動することを決意した理由も明らかに。彼がどんな決意でプロゲーマーになったのか。読者であるプレイヤーの皆さんには、ぜひ知ってもらいたい内容だ。

聞き手:まさかり仁
執筆:セスタス原川
■加齢
全国で有数の強豪一美使い。全国屈指の反応速度をもち、そのプレイスタイルは鉄壁といわれるほど。また、鉄拳歴は長く、鉄拳5のころから。絶え間ない努力でキャラ対策も仕上げている。現在の大阪鉄拳界を支える人物のひとり。

【大会実績】(一部抜粋)
2015年 THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT 2015 大阪予選 学生3on3 優勝
2016年 THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT 2016 大阪ラウンド 学生1on1部門 鉄拳7FR 優勝
2016年 THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT GRAND FINALS 鉄拳7FR 4位(一美)
2018年 MASTERCUP TRY FUKUOKA 鉄拳7FR 優勝(一美)

Twitter:@Karei_kazumi

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「鉄拳7」強豪一美使い、加齢選手のルーツ

――:本日はよろしくお願いします。まずは「鉄拳」を始めたきっかけから教えてください。

加齢:
小学校6年生のとき、受験勉強のストレスでゲーセンに逃げ込んだときがありました。そのときに「鉄拳5」を見つけて、ひと目みて「やりてえっ!」と思ったのがはじまりですね。
 
 
――:後に親密な関係になる破壊王選手もそこで出会ったのでしょうか。

加齢:
破壊王と会ったのは中学生のころですね。お互いにまだ初心者だった3段、4段の段位のころにゲームセンターで知り合って一緒にプレイしたのが彼との出会いです。彼とはゲームセンターで会って遊ぶ関係がしばらくつづきましたね。
 
 
――:当時、最終的に段位はどれくらいまで。

加齢:
「鉄拳6」では、最終的に27段の武神くらいまでいきました。
 
 
――:トップ層付近の段位です。すごい勢いで腕を上げましたね。破壊王選手のほかに、師匠のような存在もいたのでしょうか。

加齢:
初めは独学でずっとやりつづけて、ちょっと強くなったのが「鉄拳6」あたりですね。その辺りから、師匠のみやたさんに教えてもらって練習をするようになりました。
 
 
――:そこまで上達したのも、当時大阪のトッププレイヤー師匠みやたの教えがあってこそでしょうか。

加齢:
みやたさんの指導は厳しかったですね。でも、全てのことをきちんと教えてもらったというよりかは、細かい部分について説明を聞くという感じでした。それだけでもだいぶ実力に影響しましたね。
 
 
――:当時はかなり練習をしたと思いますが、もちろん現在も練習は継続して行っていると。

加齢:
オンライン対戦を練習とするならば、1日の対戦時間は1、2時間くらいです。プラクティスで確認もしたりしますけど、僕はプラクティスを練習時間として数えていないので。
 
 
――:腕が上がらずに悩んでいるプレイヤーも多いと思いますが、なにかコツはありますか。

加齢:
練習に関しては、初心者の悪い癖として「まずこれをやろう、次これをやろう」と順番を決めてやってしまうことです。あれはダメですね。コンボは初めに練習する必要はありますが、「これができるまでやる」……と実践するのは効率が悪いです。
 
 
――:ではどういった方法で進めるのがいいのでしょうか。

加齢:
まずは対戦です。対戦しているうちに「なんでこれ負けているんやろうか……」と思い返してみて、「じゃあこれが必要やな」とそのときに練習するべきものを極めていくのが一番ですね。勉強とかでも同じだと思いますが、1回挫折を味わった方が乗り越えたときに得られるものは大きいのです。
 
 
――:最近は動画を視聴して勉強する“動画勢”も増えてきていると思いますが、動画ならではの学び方もあったりするのでしょうか。

加齢:
どのキャラのプレイを見ても、キャラが同じなら使う技は一緒なんですよ。そこで「なんでこの人たちは技を当てられるのか」とか、「相手はどんな気持ちなんだろう」など、しっかり考えて動画をみるのが面白いし、ためになると思います。
 
 
――:大会前の調整では、なにか練習に関して変化はありますか。

加齢:
基本的に、プラクティスは絶対しないようにしています。自分は相手が嫌がることをするスタイルなので、いかに対戦経験を積むか、という点を意識しています。
 
 
――:つねに相手と向き合いながらやるということですね。メンタル面にも影響してくるお話でしょうか。

加齢:
メンタル面では、公式の賞金大会のころからずっと“いかに大会を楽しめるか”というのを考えています。そのウキウキ感を持って挑めれば勝てるので。
 
 
――:確かに、大会ではハイテンションですもんね。

加齢:
いつもニコニコしながらやっていると思いますよ(笑)。
 
 

友人でありライバル。隣にはいつも破壊王の姿が

彼らの拳王をかけた一戦。プライドがぶつかりあう。

――:加齢選手といえば破壊王選手との関係ですよね。2人はどれくらいの付き合いになるのでしょうか。

加齢:
出会ったときが中学生で今は社会人なので、もう今年で、12、3年くらいの付き合いになります。
 
 
――:当時は破壊王選手と一緒に遊んでいたということで、彼も同じレベルまで腕をあげたのでしょうか。

加齢:
「鉄拳6」のころは、破壊王はキングを使って鉄拳王まで行っていました。
 
 
――:破壊王選手もすごいスピードの上達ですね……。最初はどちらが強かったのですか。

加齢:
戦績はほぼ五分でした。それは今もずっと変わらないですね。でも「鉄拳6 BLOODLINE REBELLION」は破壊王の方が強くて、「鉄拳タッグトーナメント2」は僕の方が強くてというのがありました。それでも戦績は変わりませんでしたが。
 
 
――:もうまさに盟友という関係ですよね。ふたりならではのエピソードはありますか。

加齢:
「MASTERCUP.3」のとき、富山駅で寝たことです(笑)。よくわからない電車に乗って「どうやって行けるんやろ……」となっていたら、知らん人に「鉄拳やっている子じゃない?」と言われて「そうですそうです!」と連れて行ってもらって、なんとか会場に着きました。でも帰りは終電がなくなっちゃって、富山駅の公衆電話の横で寝ていました。
 
 
――:一緒に遠征をするほど、ふたりは仲が良いって感じだったのですね。

加齢:
はい。1年前に、破壊王は結婚して僕の家のすぐ近くに住んでいたんですよ。なので、よく家に遊びに行ったりもしましたね。
 
 
――:その際にふたりで語り合ったというお話を聞きましたが。

加齢:
そのときは本当に「鉄拳」をやめようと思っていました。完全にやめる……というわけではないですが、第一線から退くみたいな。ちょうどそのタイミングで破壊王がプロライセンスを取って、やめるにやめられない立場になったのです。そこで話をして「じゃあ俺も合わせるから、一緒にプロライセンス取って戦おうぜ」という話をしました。
 
 
――:じゃあ、あの闘会議で破壊王選手がプロにならなかったら……。

加齢:
僕も破壊王も第一線から退いていた可能性がありますね。
 
 
――:そんな未来もあったかもしれないと……。そこで話しているときにプロになる決意をしたのですか。

加齢:
じつは、破壊王がプロライセンスを取って「頑張れよ、俺は退いて楽しでるわ」といったら、そこで破壊王から「いや、やろうぜ」と。「じゃあ、わかった」……という流れですね。
 
 
――:軽いですね(笑)。そんな破壊王選手とは一旦離れることになりますが、彼がいなくなったあとの大阪はどうでしたか。

加齢:
結構きつかったですね。まず全然ゲーセンには行かなくなりました。個人的には大きな変化があったのですが、大阪全体でみるとそんなに変化はないかなと思います。
 
 
――:ずばり、破壊王との関係を言葉にすると。

加齢:
ライバルであり親友、まさに盟友ですね。
 


 
鉄拳と盟友の出会いについて語ってくれた加齢選手。中編では、加齢選手の持ちキャラである一美について、そして破壊王選手と約束したプロライセンス獲得の秘話を伺った。

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記者プロフィール
まさかり仁
バンダイナムコエンターテインメント「鉄拳」シリーズの世界最高峰5on5大会「MASTERCUP」主催者。無類の大会好きで、鉄拳&ソウルシリーズをこよなく愛する。自身も鉄拳歴24年のプレイヤーであり、メインキャラは風間仁。

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