クラロワプレイヤー”けんつめし”の軌跡【中編】

とつ(WPJ編集部)
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2018年5月26日(土)に「第18回アジア競技大会 ジャカルタ・パレンバン eス ポーツ 日本代表選考会」で開催された『クラッシュ・ロワイヤル』の予選大会で、 マネジメント契約を締結しているけんつめし選手が優勝し、日本代表選手に選出されました。
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苦悩の中盤戦

— アジアカップで好成績を残され、満を持して日本一決定戦(※)に挑まれたと思いますが、7月、8月はあまり結果が振るわなかったように見えました。何か理由があったのでしょうか?

(※)日本一決定戦とは、2017年5月〜9月まで毎月開催されたランキング制の大会。1〜3次予選まであり、最後に残った8名で決勝トーナメントを行う。各月のポイントが加算され、5〜9月の大会が終了した時点で総取得ポイント上位30名、そしてワイルドカード枠2名を加えた計32名が、その後に行われる「クラロワ 日本一決定戦 THE FINAL」へ出場できる。画像は「クラッシュロワイヤル(クラロワ)公式」チャンネルより

けんつめし:
大会が本当に苦手でした。予選で1時間ぶっ続けで戦うとなると、集中力が持たないんです。それなのに予選で求められているのは「勝率」や「安定性」。自分が得意とするゴーレムやクロスボウは安定性に欠けていたこともあって、なかなか予選を突破することができませんでした。

— ルールに適応しきれていなかったということですね。そして、自身の得意デッキも研究されていた、と。2カ月続けて決勝トーナメントに進めず、悔しかったことと思います。その悔しいという気持ちの他に、何か感じることはありましたか?

けんつめし:
「アジア3位」という称号が、自分の首を絞めていたと感じます。「けんつめしはアジア3位なのに勝てないんだな」と色々な方に言われました。ただ、戦績を見てみると、アジアカップで優勝したTMD Aaron選手には予選で勝ったり、準優勝のSTK@水水選手には負けたりと、クラロワというゲームに「絶対はない」のだと実感しましたね。

「ずっと勝ち続ける」というのは無理なんじゃないか、と思った矢先、6、7、8月大会でRADWIMPS選手が連続で優勝しました。「普段練習している時の勝率は5分5分なのに、なぜRADは勝てて、自分は勝てないんだ」と、彼の動きを研究してみたんです。すると、RADWIMPS選手は「大会の勝ち方を知っている」のだということがわかりました。残り何分でトロフィーがどのくらいあれば安全なのか、あとどれくらいトロフィーを稼がなければいけないのか…自分は、大会での立ち回り方が全然わかっていなかったのだと学んだ3カ月でした。

8月大会、3連覇がかかった決勝戦の最終試合。激闘を制したRADWIMPS選手のプレイに注目!

研究を実戦へ移す9月

— そして迎えた9月大会。デッキの選出が今までとは違い、「三銃士」メインに変わっていました。3カ月間の研究の成果でしょうか?

けんつめし:
そうですね。ヒントはやはり、RADWIMPS選手のプレイにありました。彼は昔から三銃士が得意だったんです。三銃士そのものが、どのデッキに対してもある程度戦えるデッキであり、苦手なデッキに対してもプレイヤースキルでどうにか対抗できるということもあり、選出しました。ただ、三銃士デッキが得意というワケではなかったので、そこはRADWIMPS選手に頼んで、戦い方を教えてもらいました。

— 貪欲に勝利を求めた結果、3次予選1位通過という凄まじい結果になったわけですね。

けんつめし:
3次予選は本当にギリギリの戦いでした。初戦から連勝し、あと1勝すれば突破は安泰という場面で、みかん坊や選手にマッチングしました。この時、みかん坊や選手は0勝、三銃士の対策デッキである「迫撃砲ボウラー」デッキでした。みかん坊や選手は本当にうまいプレイヤーなので、負けて一気に順位を下げられてしまいました。

この試合、けんつめし選手とみかん坊や選手が派手にやりあっているということもあって、ゲーム内視聴者数が2700人にも膨れ上がっていました。

その後、またあと1勝で終わりという場面でみかん坊や選手と当たり、同じデッキで再び負けてしまいました。この時は、自分の運を呪いましたね。そして、「もう後がない」と思いながら再度、対戦マッチングしたプレイヤーは、まさかのみかん坊や選手。ここで負けると予選突破が本当に厳しくなるという経験があったので、集中してなんとか勝ち切りました。これで予選を勝ち抜いたつもりだったのですが、予選突破のトロフィーが足りず、もう1戦する必要が出てきた。連続でバトルボタンを押したら、マッチングしたのがなんと、4度目のみかん坊や選手…。

この試合をなんとか勝利し、順位は8位に。その時点で残り40秒しかなかったので、急いでバトルボタンを押しました。残り15秒でマッチングし、最後の試合も勝つことができました。終わってみると結果は1位通過でしたが、残り40秒で戦っていなければ9位。予選を突破することもできませんでした(※)。4カ月ぶりの決勝出場があまりにも嬉しくて、その時はたくさんの人に感謝と喜びの報告をしました。
(※)3次予選のルールは「制限時間1時間、16名で行うトロフィー争奪戦。獲得トロフィー上位8名が決勝トーナメントへ進める」というもの。size>

— みかん坊や選手との試合での紙吹雪、すごかったですよね(笑)。そして、必死で勝ち取った9月の決勝大会。スタジオ出演されていたけんつめし選手は、5月の時とは違い、緊張していないように見えました。

けんつめし:
スタジオでプレイすることに対しては、まったく緊張はありませんでしたね。もう次の「クラロワ 日本一決定戦 THE FINAL」(以下、「THE FINAL」)しか見えていませんでした。保持ポイントで2位通過は確定していたので、ここで優勝できないようでは次のTHE FINALでベスト8には残れない。緊張してる場合ではなかったんです。なので、落ち着いて、楽しくプレイすることだけを考えていました。

そして、GC選手との試合。ダークホースだったこともあり、得意デッキも知りませんでした。1試合目は「枯渇デッキ」を出されて負けました。2試合目は「枯渇デッキ」を倒すために「エリポンクロスボウ」を選出すると、狙い通り、完璧に対応できました。

9月大会決勝リーグ。けんつめし選手とGC選手の1-1で迎えた最終試合。この激闘を制したのは・・・

もう次は出してこないだろうと思いましたが、彼はまた「枯渇デッキ」。自分は「メガナイトホグデッキ」でした。この時は「メガナイトホグデッキ」自体が強く、僕自身がこのデッキをやりこんでいたわけではなかったので、土壇場で甘いところが出てしまい、負けてしまいました。この結果を受けて、やっぱり自分はゴーレムとクロスボウしか大会で出せないな、と。そして同時に、色々なデッキのクオリティを上げていかなければならないと思いました。

立ちはだかる強豪プレイヤー達の壁

— 惜しくも敗れてしまいましたが、その後、すぐに迎えたTHE FINAL。どうでしたか?

けんつめし:
まず組み合わせ表が出た時、驚きが隠せなかったですね。

けんつめし選手のグループ。かなり厳しいグループに…。

ワイルドカード枠の1位や2位は、おそらく予選でいうと3、4位くらいの強さだと思うので、「初戦からきついな」と思っていました。開幕の1週間ほど前から、胃が痛くなるくらいの不安と緊張を抱えながら、絶対に勝ちたいと練習を続けていました。

1日目、RADWIMPS選手が第2試合で負けてしまって、誰しもが「RADWIMPS、まじかよ…」と思ったタイミングだったかと。普段は仲の良いプレイヤーですが、あの時はかける言葉がありませんでした。

編集部 注:ワイルドカード枠とは、573名もの挑戦者が集まった「一発逆転 ワイルドカード争奪戦』で見事に勝利した2名のこと。size>

一方で、すごいなと思ったプレイヤーは、みかん坊や選手。他を圧倒する、格の違いを見せつけるような内容でブロックを勝ち上がってきたのを見て、「やっぱすげえな」と思わされました。

そして2日目、自分のブロックではフチ選手とKaTsUyA選手の対戦が繰り広げられました。フチ選手がさすがの戦術幅の広さで勝利し、「よし自分も!」と思いましたね。そして、いよいよ自分の試合です。相手はBoss選手。マークしていなかったのですが、ワイルドカード争奪戦を突破してきている時点で強いのはわかっていました。実際にBoss選手は本当に強く、焦りましたが、ギリギリで勝つことができました。

— 次にフチ選手と対戦しましたが、その時の心境を教えていただけますか?

けんつめし:
フチ選手との2回戦は、息つく暇もないと感じるほど緊張していました。まず、1戦目。フチ選手は「ジャイアント」を出してくると思ったので、その対策に「ペッカ三銃士」を、またもう一つのシュミレーションとして「枯渇デッキ」に対しては「クロスボウ」を、と決めて挑みました。そして1戦目、「ペッカ三銃士」で「ジャイアント」対策をしようと思ったら、フチ選手が出してきたのは「枯渇デッキ」でした。相手の使用デッキの予想を外して、負けてしまいました。

2戦目もあえて「枯渇デッキ」でくるだろうと予想し、「クロスボウ」を出したところに「ジャイアント」が出てきました。その瞬間、引き分けに持ち込もうと決断し、どうにか負けずに済みました。

3戦目。自分は「高回転三銃士デッキ」、フチ選手は「ゴーレムクローンデッキ」。デッキ相性では自分が有利だったので、「よしもらった!」と思っていました。ところが、いざ始まってみると、手札サイクルが最悪。どうがんばっても手札サイクルが合わず、序盤で諦めざるを得ないほどでした。「あー、ここで終わるのか。ここまでめっちゃがんばってきたけど、終わるんだなー」と、半ば観念していたと思います。本当にあの時のことは、思い出したくないくらい辛い記憶です。結局、「ゴーレム」をうまく処理できず、「クローン」を使われて一気に持っていかれてしまいました。

けんつめし選手とフチ選手の3試合目。デッキの愛称では有利だったけんつめし選手だが、フチ選手の勢いに一瞬で圧殺されてしまった。

— 約半年間にもおよぶ公式大会がここで終わってしまい、大変悔しかったと思います。THE FINALを通しての感想をお聞かせください。

けんつめし:
たらればの話をしても仕方ありませんが、フチ選手との戦いで、もし1戦目と2戦目のデッキ選出が逆であったなら、また違った局面になっていたと思うし、勝率は5分の試合だったと今思い出しても感じます。でも、こうやって振り返ってみても、やっぱり悔しいです。THE FINALの3日前に東京に引っ越してきて、不安もありましたが、多くのクラロワプレイヤーに応援してもらいました。そういった気持ちや期待にも応えられず、本当に悔しかった。そこに拍車をかけたのが、親からの連絡でした。母親から「よくわからなかったけど、負けちゃったね」と連絡をもらった時に思わず涙が…。たくさんの人に期待してもらっていたこともあって、悔しさと涙が止めどなく溢れてきました。まだダメなのか…という気持ちで。

アジアカップの喜びも束の間、結果を残せず、悔しさの滲むクラロワ日本一決定戦となった。「クラロワプレイヤー”けんつめし”の軌跡 vol.3」では、悔しさを胸に自腹を切ってロンドンへ赴き、そこで何を感じたのか。けんつめし選手の葛藤に迫っていく。

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記者プロフィール
とつ(WPJ編集部)
高校生の頃、FPSに魅了され、esportsシーンに興味を示し、現在はゲームを最大限に楽しむ集団「ゴジライン」でesports応援団長という雑な役職についている雑食ゲーマー。重度の動画勢で「より観戦を楽しむためにゲームを触る」を軸に、多くの読者にesportsの魅力をお届けするため日々奮闘中。得意ジャンルはFPSとMOBA。現在の悩みは社会人になってから16kg増えた体重と肌荒れ。

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