クラロワプレイヤー”けんつめし”の軌跡【後編】

とつ(WPJ編集部)
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2018年5月26日(土)に「第18回アジア競技大会 ジャカルタ・パレンバン eス ポーツ 日本代表選考会」で開催された『クラッシュ・ロワイヤル』の予選大会で、 マネジメント契約を締結しているけんつめし選手が優勝し、日本代表選手に選出されました。
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自腹を切ってまで現地に向かった熱き想い

— 辛いエピソードを話してくださってありがとうございました。そして、「クラロワ 日本一決定戦 THE FINAL』(以下、THE FINAL)の決勝をスタジオで観覧された後、自腹でロンドンへ行かれましたよね。THE FINAL敗退からロンドンまで、その間に何があったのでしょうか?

「クラロワ 世界一決定戦」前のけんつめし選手。その表情にもう迷いはない。

けんつめし:
本当は、悔しすぎて見に行きたくなかったんです。でも、「悔しいという気持ちを受け止めなければ、先へは進めない」と思って、THE FINALの会場へ向かいました。THE FINALの決勝大会は、RADWIMPS選手と2人で見に行きました。2人で観覧席で見ていて、「俺ら(勝ち上がって)ここに来れたよな」って話してました。

実は、「クラロワ 応援団員決定戦」いうイベントが11月にあったんですが、そこでも、みかん坊や選手達に負けてしまいました。「負けてばかりだし、ロンドンに行って何か得られるものはあるのだろうか。必死で惨めだな…」と感じ、ロンドンに行くことも躊躇したんです。引っ越しをしたばかりで、金銭面で余裕があるわけでもなかったし。

だからこそ、周りの大人にも相談しました。そうしたら、「お前はプロになるんだし、研修の一環で行くのはいいと思う。先行投資だよ」って言ってもらえたんです。

この言葉で行くことを決めました。1年に1度しかないし、プロにもなるし、一番有意義なお金の使い方じゃないですか。行くと決めてからは、早かったですね。親に相談して、「自分でつかめなかった切符ではあるけれど、自分のお金で行くので行かせてください」と交渉しました。

— 自分の成長のためにロンドン行きを決めたんですね。これまでのインタビューで、本当にけんつめし選手の熱が伝わってきました。実際にロンドンに行かれて、目の前で大会を見た感想はどうでしたか?

けんつめし:
やはり、「日本はまだまだだな」と感じました。自分もですが、緊張に飲まれやすい。あとは、海外と日本との情報量の差を感じました。海外は、国がその代表選手を応援していて、国が一丸となって戦いに来るんですよ。それに比べて日本は、一丸になって勝ちにいけていなかった。世界一決定戦のために練習しようと国内プレイヤーに声をかけあったりとか、今思えばもっとできることがあったんじゃないかと。日本が勝てなかった理由を自分も担ったかもしれないと思うようになりました。

— 現地でプロとの差を垣間見たということですね。ロンドンへ行った結果、その経験をどのように活かそうと思いましたか?

けんつめし:
自分はまだまだ勉強不足だなと実感しました。ふち選手の強さって、海外の大会を予選から全部見て、海外からデッキを輸入してくるところなんですよ。でも自分は、人のプレイングを見て学ぶということが圧倒的に足りていない。

そして、「上位プレイヤーともっと練習しなければならない」と思いました。惰性で練習するのではなく、もっと練習の質を高めていかなければ、世界では戦えないのだ、と。

それと、負けていくプレイヤーの表情を何度も見ました。胸を締め付けられるような思いを一緒に重ねていったんです。そして思いました。「こういう思いを自分のファンや応援してくれていた人たちもしてたんだな」って。

「今までは自分のためだけに戦ってきたけど、そうじゃない。自分のために戦うのはもちろんだけど、それを見ていてくれる人たちがいる」。そんなことも実感することができました。

— ロンドンでの経験が、今後のけんつめし選手の飛躍に大きくつながっていくだろうと勝手に予想しています。さて、ロンドン帰国後に動画をアップされていた、「クラロワ 世界一決定戦」に出場していた海外プレイヤーとのBO3(※)には、どのような意図があったのでしょうか?

※:BOとは「Best of」の略。BO3の場合、最高で3ゲーム行い先に2回勝利した方の勝ちとなる。

「クラロワ 世界一決定戦」にも出場していた、CMcHugh選手。

けんつめし:
ロンドンから帰国後、「世界大会で戦っている選手との実力差はどれくらいなんだろう?」と疑問に思ったんです。マルチ対戦でマッチングして、海外の選手に勝ったりするので、自分が「どのくらい通用するのかな?」って。視聴者からもやってほしいと言われたことが後押しになりました。実際、海外選手とは「Lively Colors」(※)時代から入っているLINEグループで仲が良かったので、自分の武器だなと思いましたし、自分にしかできないことだなと思いました。実際に戦ってみて、けっこう勝てたので自信にもつながりました。

(※):「Lively Colors」とは、みかん坊や選手やNaooo選手、isaporon選手ら、数々の強豪選手を輩出した古豪クラン。現在もStear選手を筆頭に数々の強豪選手が在籍している。

2017年を振り返って

— 最後に、2017年のベストバウトを教えてください。

けんつめし:
すごく悩みますが、5月の決勝大会でのRADWIMPS戦ですね。仲が良くて、実力も拮抗していて、BO1という運要素もあった中で正々堂々とガチでぶつかりあった試合でした。

これを選んだ理由は、あそこが分岐点だったと思うからです。仮にRADWIMPS選手が勝っていたら彼がアジア大会に出ていただろうし、あの1戦に負けていたら今の自分はいなかったと思います。東京にも出てきていないし、ストーリーも何もない人間になっていただろうなって。初めての公式大会で、しかも一発目の試合でRADWIMPS選手に勝てたことが、本当に自分の分岐点だった。

日本一決定戦5月大会、けんつめし選手の進む道を決定づけた試合。

— RADWIMPS選手のお話が多く出てきましたが、やはり、けんつめし選手にとってのライバルはRADWIMPS選手でしょうか?

けんつめし:
ライバルは”みんな”ですね。「ずっとうまい」という人はいないし、みんながうまくて、みんなに調子の波がある。「この人がライバル」って絞っても、あっさり負けてしまうこともある実力が拮抗したゲームなので、これから戦う人は全員ライバルです。しかも、ダークホースが出てくることもわかっているんですよね。だって、自分自身もダークホースだったので。今どれだけ警戒しても、うまい人が出てくるのはわかっているので、切磋琢磨しながらみんなでうまくなっていきたい。もちろん、全員を倒して自分が絶対に1位になる、という気持ちでいますよ。

— 今後も多くの人に警戒されていくことになると思います。ところで、「けんつめしといったらゴーレム」と言われるほど、ゴーレムのイメージが強いけんつめし選手ですが、やはりデッキにこだわりはありますか?

けんつめし:
もちろんあります。ゴーレムというカードは、自分のクラロワ人生の始まりでした。元々、人と同じデッキを使うのが嫌いだったんです。だから、あまり注目されていなかったゴーレムと相性が良かった。今ではゴーレムの第一人者とか、ゴーレムがうまいと言っていただけるようになってすごく光栄ですし、そう言われるからには、もっと実力つけていかなければと思っています。

— 最後に、すでに新しい戦いが始まっている2018年、目標といったものはありますか?

けんつめし:
プロとして活動する最初の年なので、YouTubeと結び付けて、みんなのために活動していきたいです。「日本と言えばけんつめし」「クラロワと言ったらけんつめし」と言われるようなプレイヤーになって、日本のクラロワシーンを引っ張っていきたい。そして何より、優勝したいですね。オフ大会でもいいし、日本一決定戦でもいいんですが、とにかく優勝。負けて感動があるということも素敵だとは思いますが、勝って感動を与えたいです。

— けんつめし選手の熱い気持ちに感化されるような熱いお話がうかがえました。本日は長い時間ありがとうございました。

けんつめし:
ありがとうございました。これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!

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記者プロフィール
とつ(WPJ編集部)
高校生の頃、FPSに魅了され、esportsシーンに興味を示し、現在はゲームを最大限に楽しむ集団「ゴジライン」でesports応援団長という雑な役職についている雑食ゲーマー。重度の動画勢で「より観戦を楽しむためにゲームを触る」を軸に、多くの読者にesportsの魅力をお届けするため日々奮闘中。得意ジャンルはFPSとMOBA。現在の悩みは社会人になってから16kg増えた体重と肌荒れ。

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