シャドウバース世界王者ふぇぐ――大学休学から1億円までの道のり

Mako(WPJ編集部)

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2018年12月に行われたShadowverse World Grand Prix 2018。優勝賞金1,000,000ドル、日本円にして約1億円という巨額な賞金で話題を集めた大会だ。

これに優勝し夢を掴んだ、YOSHIMOTO LIBALENTのふぇぐ選手にインタビューを行った。

世界中の強豪を相手にふぇぐ選手はいかにしてその座を得たのか。そこには、彼の考えるカードゲームで勝つ哲学があった。

緊張したことに気付かないほど緊張?

――昨年末に世界一になった際、賞金1億円というインパクトで注目されました。過去にない規模の賞金額を獲得できる大会でしたが、それまでに経験した大会やプロリーグとが違う緊張感はありましたか?

ふぇぐ:
1日目はRAGEのプレイオフをかけた戦いくらいの感じで、そこまで緊張はなかったんですけど……、まぁちょっとは緊張感あるねみたいな雰囲気でした。

去年の自分を超えることが目標だったので、ベスト4には進みたかったので、1回戦目は気合が入っていて緊張しましたね。そこで勝ててとりあえずの目標は達成できたので、準決勝はそこまで緊張しなかったです。

決勝は緊張していることに気が付かなかったんですけど、1回操作をミスしてしまって、そこで自分が緊張しているのを気がついた感じです。これまでの試合で一番緊張しました。

――途中で緊張に気付いてしまった後は、思うようにプレイできなかったのでは?

ふぇぐ:
もう全然駄目でしたね。

手汗でマウスが滑ってしまって、手汗が気になったり、足がむくんでいて靴がキツいことにも気付いたり、思考もまとまらなくなってしまった。

そこからは、思ったことを1つ1つ声に出して確認しながらやりました。そうしないとまともにプレイできなさそうだったので。「いつもだったらこういう動きだけどもうちょい考えよう。」とか自問自答してなんとかプレイできました。

大学休学までしてシャドバに打ち込む毎日

――前年のベスト8を超えるという目標を果たすために、取り組んだことはあるんですか?

ふぇぐ:
去年は優勝した紅茶/PaR選手に負けてしまって、とにかく悔しくて……。今までも自分なりにシャドウバースに打ち込んでいたつもりだったんですけど、もっと打ち込む環境がほしいと思って、大学も休学して1年間シャドバに懸けようと思いましたね。自分の中で迷いはなかったです。

――大学を休学してまで……。

ふぇぐ:
休学しちゃいましたね。今年もする予定です。

僕はゲームの才能があるわけではなくて、時間をかけて努力をしないと勝てないとわかっていたので、1年間だけでもと思って休学を決めました。World Grand Prix 2018で優勝した後も、年末年始は少し休みましたけど、すぐに普段と変わらない練習量に戻しましたし。

その甲斐あって結果がでてるので、もう1年休学しようかなって。

――休学するって決めたとき、ご家族にも許可をもらわないといけないと思うんですけど、どんな反応だったんですか?

ふぇぐ:
毎年大晦日に父の実家に親戚が集まるんですけど、2017年の大晦日に周りから「大学ちゃんと卒業しろよ」っていじられていたところで休学したいと打ち明けました。

母はうすうす感づいていたようで止められはしなかったんですけど、父には殴られました。父の仕事が忙しくてちゃんと話せていなかったんです。その後にきちんと話して仲直りできて、休学もさせてもらいました。世界大会も会場まで応援に来てくれましたし。

――休学をしたことによって、シャドウバースに費やせる時間が圧倒的に増えたと思うんですけど、時間の使い方で意識したことは?

ふぇぐ:
僕は練習量が一番大事だと思っています。ただ、頭が空っぽで何も考えていない状態で練習しても意味がなくて、質というか密度を保った状態での練習量を増やすことが重要です。

集中しながら1日10~12時間は毎日のようにやってたので、それが優勝につながったのかなと思います。

――それ以外の時間でシャドウバースのことを考えたりしませんか? たとえば、デッキのこととか。

ふぇぐ:
僕は練習以外では何も考えないです。シャドバのことを考えるのは練習しているときだけです。それ以外の時間は趣味とかでリフレッシュします。そのおかげで長い練習時間も苦にならないです。無理してやっているわけではないですね。

シャドバは義務感でやっているわけでなくて、やりたくてやってるので、疲れたら休憩するし、遊びに行くときは遊びにいきますよ。

――ちなみに趣味はなんですか?

ふぇぐ:
お酒を飲むことですね(笑)。周りに飲む人が多いので。

練習量はシャドバのプロの中でも一番多い方だと思うんですけど、飲み会に誘われても基本的に断らないんですよね。チームメイトのSurreさんとはよく飲みます。

――その飲み会ってやっぱりシャドウバースのことを話したりするんですか?

ふぇぐ:
シャドウバースのことは極力、練習のときしか考えないようにしているのもあって、僕は飲み会のときは、シャドウバースの話はあまりしないです。

――プロリーグや大会がないオフの時期もそんな感じの生活ですか?

ふぇぐ:
なんだかんだ、シャドウバースをやることは多いですね。

今がちょうどオフなんですけど、プロになってからは2回目のオフです。1回目のオフは友だちが大会に出るための練習に付き合っていたので、シャドウバースをがっつりプレイしないオフは今回が初めて。

なので、今はNintendo Switchを買って他のゲームもやって楽しんでいます。「ドラゴンクエストビルダーズ」の2がやりたかったんですけど、間違えて1を買っちゃってそちらをやってます(笑)。

振り込まれた1億円でマンション購入計画中

――1億円を獲得してマンションを買うという話をインタビューでされていましたが、その話は進んでいますか?

ふぇぐ:
まだですね。

父親が不動産の会社に勤めていて、親孝行も含めてその会社で買おうと思っています。5月くらいには引っ越す予定ではいます。

プロリーグでプレイオフに進むつもりだったので、3月まで忙しいと思っていたから、4~5月くらいになるかなとは考えていました。でも、リーグで負けてしまって暇になってしまったので今引っ越すのもありかと思うんですけど、急いで物件を探すのも忙しくなってしまうので。

――優勝して賞金パネルを受け取った瞬間ってどんな気持ちだったんですか?

ふぇぐ:
勝った瞬間からプロデューサーの方に1,000,000ドルって書いてあるパネルをもらうまで賞金のことは忘れてました。勝ったことが何よりもうれしくて。渡されて、「やばくね?賞金額すごくね?」みたいな。

始まる前は1億円とれたらやべーなーって思ってたんですけど、いざ始まったらそんなこと考えてる余裕がなかったです。そこに思考をもっていく余裕がなくて、ずっと試合のことを考えていました。

――実際の賞金ってどう受け取るんですか? 振り込み?

ふぇぐ:
銀行振込ですね。

金額の大きさにビビって、すぐに別の銀行の口座も作って分散して管理しています。桁がちょっとおかしかったです。

――賞金額だけ見ると、1位と2位ってかなりの差がありますよね。もし2位になってたらって考えたことはないですか?

ふぇぐ:
そうなったら悔しいからもっと練習するんじゃないですかね。2017年のベスト8のときも悔しくて、もっと練習したいって気持ちだったんで、今回もし優勝できていなかったらもっと練習してると思います。


人生においてかなりのインパクトのある賞金を獲得しながらも、今年もシャドウバースを最優先に考え、大学も休学する決断をしたふぇぐ選手。その決断力がWorld Grand Prix 2018の結果につながっているようだ。

後編では、シャドウバースとの出会いから話を掘り下げていく。運が勝敗を左右することもあるカードゲームにおいて、なぜ彼は頂点に立てたのか。その理由が伺えた。

写真・大塚まり

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記者プロフィール
Mako(WPJ編集部)
スマホゲームの攻略サイト、情報メディアを渡り歩いてウェルプレイドジャーナルに流れ着いた超絶新進気鋭の若手編集者。イベント取材では物販やコスプレイヤーに釘付けになりがち。

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