弦パパ&福岡鉄拳勢と歩んだ鉄拳の申し子弦選手の歩み

【この記事は約7分で読めます】
小学生の頃から「鉄拳」界隈を賑わせ、EVO 2014での準優勝をはじめ、MASTERCUP.やTHE KING OF IRON FIST TOURNAMENTなど、数々の大会で活躍したプレイヤー弦(げん)選手。
大学受験のため約1年間の活動休止期間を経て、2019年5月にオランダを本拠地とするプロゲーミングチーム「Team Liquid」への加入を発表し鉄拳界隈へ舞い戻った。
老舗の名門チームであるTeam Liquid初の鉄拳プレイヤーであり、今後の活躍に注目が集まっている。
復帰後初の海外大会となったTaipei Major 2019では5位と上々の滑り出しに成功。7月6、7日に控えるWellplayed Challengerなど、鉄拳ワールドツアー2019(以下、TWT)に挑んでいく彼にインタビューを実施。
鉄拳界の若手注目株が歩んできた歴史や見据える将来を訪ねてきた。
ゲーセンの鉄拳勢に揉まれた小学生時代
――鉄拳を始めた頃の話からお聞きしたいのですが、鉄拳以前に格闘ゲームのプレイ経験はあったのでしょうか?
弦:
いえ、まったくなかったです。ゲーム自体もそんなにやったことはなくて。
――そうなんですね。でも、鉄拳を始めたきっかけが「小学1年生の頃にゲームセンターでデビル仁がビームを出しているところを見たこと」だと格ゲープレイヤーWikiで見ました。ゲーセンには行ってたんですか?
弦:
お父さんとお母さんがメダルゲームとかが好きで、よくついていってたんです。そこで鉄拳を見つけてやってみたくなったんです。
お父さん(※)はめちゃくちゃ鉄拳が上手いわけではないんですけど、昔はいろんな人に僕の負けた相手の対策とかを聞いてくれたり、ときには怒ってくれたり、大会で遠いところまで連れて行ってくれたりしました。
※弦選手の鉄拳の活動を全面的にサポートするお父さん。「弦パパ」の愛称で界隈では有名
――小学1年生だとゲームセンターで鉄拳をプレイする同年代の友だちとかはいなかったんじゃないですか?
弦:
鉄拳をやってる人自体があまり多くなかったですし、同年代だと全然いなかったですね。
僕が通ってたゲームセンターには何人か鉄拳をやってる人がいて、その人たちにずっと対戦してもらってました。
――鉄拳勢ってマイルドヤンキーが多いって聞いたことがあるんですけど、そういった人たちとはすぐ打ち解けられました?
弦:
ゲームセンターって自分が小学校のときからそういうちょっと怖い人たちがいっぱいいて、台パン(※)されたりとかはあったんですけど、対戦が終われば優しくしてくれて、かわいがってくれてありがたかったですね。
自分が小学生だったこともあるとは思いますが、みなさん優しくしてくれて、そのおかげで鉄拳が強くなれたと思います。
※台パン:筐体を必要以上に叩く行為。破損する可能性もあるので決してやってはいけない
――最初に出た大会は?
弦:
膝杯(※)という福岡の大会が始めて参加した大会です。
最初は出るつもりではなくて、お父さんにお願いして見学に連れて行ってもらったんですけど、大分から来ていたチームに欠員が出てしまったらしく、そのチームから誘われて急きょ出ることになりました。確か小学校2年生か3年生の頃なですけど、今でもよく覚えてます。
急な話でびっくりしちゃったし、みんな僕の試合を囲んで見ていたので、めちゃくちゃ緊張しました。結果は最初の予選かなんかで負けちゃって終わっちゃったんですけど……。
※膝杯:福岡で開催された大会。現在は膝まったり杯の名称で開催されている
コンボを覚えるため飛鳥使いに張り付き
――使ってたキャラクターは、やっぱりデビル仁だったんですか?
弦:
いえ、その当時はキャラクターは飛鳥を使っていました。
デビル仁はビームは簡単に出せたんですけど、ビームだけじゃ勝てないじゃないですか(笑)。なのでコンボを覚えようと思ったんですけど、どうしたらできるのかよくわからなくて。
結局、ゲームセンターに飛鳥を使っている人がいて、その人の手の動きをずっと見て覚えました。自分から話しかけて「教えてください」とはなかなか言えなかったので。
――使うキャラクターはどういった観点で選んでいますか? 単純に好きなキャラクターなのか、相性を考えてマルチに使えるようにするのか。
弦:
今の鉄拳って強いキャラとそうでないキャラがはっきりしていて、弱いキャラで強いキャラに勝つのはなかなか難しかったりするんです。なので、キャラ愛だけでやっていくのは厳しいものがあります。
だからみんな強いキャラを使ったり、複数のキャラを使ってるんだと思います。自分もそうですね。
――プレイスタイル的にはリスクを追ってでもリターンのある選択肢をとる印象があります。それは理想とするスタイルなのでしょうか?
弦:
単純に自分が攻めるのが好きなのもあるんですけど、見ている人からしても、攻めて大きい技を当てて勝つっていう戦いが見たいんじゃないかと思ってて。
プレイしているときも、どんなにガードが上手い相手だとしてもどうやって崩していこうかって考えるのがめっちゃ好きで、それが理想のプレイスタイルですね。
国内外にライバルだらけの鉄拳界
――ライバル視しているプレイヤーっていますか?
弦:
フィリピンだったらAK選手(※1)、韓国だとULSAN選手(※2)、日本だとBくん(※3)もなんですけど、やっぱり同世代の強いプレイヤーはライバル視しちゃいますね。
※1 AK:幼少期から鉄拳をプレイするフィリピンのプレイヤー。EVO Japan 2019では準優勝の成績を残している
※2 ULSAN:韓国トップクラスの若手プレイヤーで一美使い。世界最強の呼び声高いKnee選手が苦手とする相手でもある
※3 B:2019年3月に行われた「鉄拳プロチャンピオンシップ 日韓対抗戦」で当日予選を勝ち抜いて日本代表になった高校生プレイヤー(当時)。現在は弦選手同様、大学へ進学
――では、尊敬するプレイヤーは?
弦:
うーん、今まで自分を強くしてくれた人たちがたっくさんいて選べないくらいなんですけど……、ノビさん(※)は初心者向けの講習をいっぱいやったりしていて、本当にすごいなって思います。
仲が良いところだと、福岡のピコハンっていうプレイヤーは、大会も今までずっと一緒に出てて、そばにいたら落ち着いてプレイできる、パートナーみたいな存在です。
5 on 5の大会とかはピコハンのお兄ちゃんのゆったりゆーきという方も一緒に出場していました。福岡勢と組んで優勝したいっていう気持ちがあったんです。
――九州などの地方でも大会やイベントが開かれていて、強いプレイヤーが多い印象があります。
弦:
昔は東京や大阪に強いプレイヤーが多かったんですけど、最近特にそうですね。
長崎にはチクリンさんもいますし、九州が目立っている気がしますが、全国に強いプレイヤーがいると思います。
――EVO2014、THE KING OF IRON FIST TOURNAMENTのGROUND FINALでは、JDCR選手やKnee選手、LowHigh選手といった韓国人プレイヤーや日本のトッププレーヤーであるノビ選手らに敗れてしまいました。その当時に感じた彼らとの差は?
弦:
自分が圧倒的に防御面が弱くて負けてしまったなと思っています。
攻めが得意なのに、相手にビビって全然攻めれなくて、ボタンを押す数が少なくったのが敗因なのかなって思います。
弦パパや地元福岡の鉄拳勢に厳しくも暖かく支えられトッププレイヤーとして成長してきた弦選手。
前述のとおり、Team Liquidへ加入する前は大学受験のために1年間ほど鉄拳から離れた生活を送っていた。
後編では、受験を終えて久しぶりにプレイしたときの話や、目前に迫ったWellplayed Challengerへの意気込みを聞いてきた。
写真・大塚まり
【あわせて読みたい関連記事】
「勝てなくて電源切った」Team Liquid弦選手復帰の裏側
1年のブランクを経てTWT2019に挑むTeam Liquid弦選手。インタビュー後編では、同世代のライバルや、10先でコテンパンにやられたチクリンらベテランを倒すため日々精進を続ける今の心境を聞いてきた。