「勝てなくて電源切った」Team Liquid弦選手復帰の裏側

Mako(WPJ編集部)

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■前編記事
弦パパ&福岡鉄拳勢と歩んだ鉄拳の申し子弦選手の歩み

1年間のブランクから復帰して受けた勝てない衝撃

――大学受験のために1年間くらい鉄拳をプレイしなかったわけですが、久々にプレイしたときの感覚はいかがでしたか?

弦:
久しぶりにプレイしたのはゲーセンではなくて家庭用だったんですけど、相手が出す全部の技がガードできなくて、タイミングもわけわからなくなって、誰にも勝てなくなってたんですよ。

勝てなさすぎて、すぐに電源を落としちゃったくらいで。そのくらい勝てなくて、めちゃくちゃ悔しかったですね。

――1年間もの間、鉄拳をまったく触らなかったのって過去にないですよね?

弦:
そうですね。中学3年生で高校受験を控えたときは、半年間くらいは触ってなかったんですけど、1年間丸々触らなかったのは今回が初めてです。

――今は復帰して間もないので感覚を戻しているところなのかと思いますが、ご自身で思っている過去最高に上手かったピークっていつですか?

弦:
自分が一番自信があったのが、「鉄拳タッグトーナメント2」のときですね。自分で言うのもあれですが、結構センスあったと思います(笑)。もちろん、センスだけでやっていたわけじゃないですけど。

――現在はその頃のポテンシャルには戻っていないですか?

弦:
なんというか、感覚的に今の方が実力が上がってる気はするんです。あとはゲーム性に慣れていないとか、対策が追いついていない感じですね。

――6月には復帰後初の海外大会「Taipei Major 2019」に出場しました。

弦:
海外大会は本当に久々でしたが、自分の今持ってる力をすべてを出せたと思います。

結果としては5位でしたが、世界で戦うことができたのはいい経験でした。

研究熱心なチームメイト竹内ジョンくん

――「ストリートファイターV」に出場した同じTeam Liquidのネモ選手や竹内ジョン選手と一緒に映ってる写真をTwitterで見ました。

弦:
ジョンくんとは同じ部屋だったんですけど、彼は本当に真面目というか、寝る前もストⅤの動画を見たりして、ずっと研究しててすごいなって感じました。

僕も、動画を見るのは本当に大事だと思いましたね。

自分が久々に鉄拳をやってすぐに電源を切っちゃったときに思ったんですけど、「今、鉄拳をやっていても勝てないな」って感覚になったんですね。

そこで、強い人はどんな動きをしてるんだろうと思って、とりあえず動画を見まくりました。

強い人が何を考えてこの動きをしてるんだろう、何を考えてこのボタンを押しているんだろう、何を考えて下がったり攻めたりしてるんだろう、って考えて、「もし、自分だったらこのときどうしてただろう」と思ったことと照らし合わせながら。すべての動きに理由があるはずなんです。

そのおかげで今戦えていると思っているので、やっぱり何も考えずに鉄拳をプレイするだけではだめで、研究もしなくちゃいけないですね。

――Team Liquidに入った決め手は?

弦:
やっぱり、1年間好きな鉄拳をやめてまで受験勉強に時間をかけたので、大学にはちゃんと通いたいなっていう思いはあったんです。そう考えていたところに、「大学はもちろん優先して大丈夫だし、行けるときに海外の大会に行こう」と暖かく言ってくれて本当にうれしくて……、それが決め手ですね。

――そもそもの話なんですけど、受験が終わったらプレイヤー復帰しようと思ってたんですか?

弦:
やっぱり鉄拳はめちゃくちゃ好きなので、やり込みたいなって強く思ってました。

そう思ってたときにTeam Liquidに声をかけていただいて、本当にうれしかったですね。

――大学に行きつつ、プレイヤーとして大会に参加する生活が始まったばかりだと思うのですが、鉄拳に使う時間は確保できていますか?

弦:
学校自体は今は遅くても17:00くらいに終わるので、家帰ってから毎日3時間は少なくてもやってるので、人並み程度はやれているのかなと。

週末は出れるときは大会に出て、海外にも行ってって感じです。

――大学も福岡ですか?

弦:
福岡です。

――大会は国内外含めていろいろな場所で開催されていると思いますが、移動もありますしかなり負担がありそうです。

弦:
海外だとやっぱり10時間以上も移動で時間がかかるときがあって、それはさすがにきついです。

前日に寝ないで、飛行機で寝るようにしたりして対策しています。

強豪ひしめくTWTへ向けて攻めのクオリティ向上に励む

――7月6日、7日に鉄拳ワールドツアー2019(以下、TWT2019)のチャレンジャーカテゴリ大会「Wellplayed Challenger」が開催されます。弦選手にとってTWTはどんな存在ですか?

弦:
TWTのFINALSで優勝できたら本当に一番強いチャンピオンだと思ってます。

――他に思い入れの強い大会ってありますか?

弦:
2014年に準優勝したときしか出ていないですが、EVOですね。

今年は出場しますが、壇上のベスト8までは通過点というか最低ラインだと思っているので。普段の大会でもそうですけど、海外大会となると特に1回戦目から本当に強いプレイヤーとあたるんですよ。

2014年のときも、最初の予選で日本の選手だったんですけど、ギリギリ負けてしまうかもしれなかったです。そこから巻き返して勝てたんですけど、それでやっとエンジンがかかって一気に準優勝までいったんです。なので、最初から気が抜けないなって思います。目標はやっぱり優勝ですね。

――Wellplayed Challengerに向けて取り組んでいることは?

弦:
攻めのプレイが好きなので攻めるんですけど、1つの攻め方だと読まれてしまうので、攻めのバリエーションを増やしています。違った攻め方とかあえていきなり攻めを緩めたり。

――今大会で注目しているプレイヤーは?

弦:
いろんな人が参加してくると思うんです。韓国とか海外からも来るし、日本人プレイヤーもたくさん参加してくる。本当にみんな強いので、全員がライバルというか注目しているプレイヤーですね。侮れない人ばかりです。

――できれば当たりたくない人も特段いるわけではなく?

弦:
うーん……強いて言うなら、同じ地域の長崎のチクリンさんとこの前10先をやったんですけど、本当に強いんですよ。なので大会ではなるべく当たりたくないなって思いますけど、今後、何度も対戦する機会があると思うので勝てるようにもなりたいです。

――プロライセンスを獲得したら誰に最初に伝えたいですか?

弦:
やっぱりお父さんとお母さんですかね。昔って今みたいにオンラインじゃなくて大阪や東京に行かないと対戦できなくて、遠いのに連れてってくれて、他にもいろんなことに協力してくれて強くなれたので。

――そう言えばなんですけど、大学進学は昔からしたいと考えていたんですか?

弦:
そうですね。鉄拳をやりたかったんですけど、将来を考えたら、いいところに就職したいなって考えてて、そのために大学は出ておかないとなって思って。

――ちなみに将来就きたい仕事ってあるんですか?

弦:
自分が憧れているのは、銀行員とか。安定した仕事。

――意外な答えでした……! 鉄拳ではリスクを追って攻めるけど、私生活は安定志向?

弦:
全然リスクを負いたくないです(笑)。

――最後にTWTとは関係ないのですが、やっぱり中学1年生でEVO 2014準優勝ってかなりインパクトだったと思うんです。当時を振り返って、印象深く覚えていることとか改めて考えてみて何かありませんか?

弦:
EVO 2014は、ただ行っただけじゃなくて、それまでの下準備があったんです。地元の福岡でいろんな方と対戦したり、まったりさんという人の家に泊まって合宿をしてほとんどのキャラクターの対策をしてもらったり、大会の勝ち方を教わったりして、万全の準備をしていきました。

周りに支えてもらったおかげで、初戦は危なかったですけど、最後まで楽しくプレイできたのはよく覚えています。緊張とかはなくて、とにかく楽しかったですね。

試合中はヘッドフォンしてるんですけど、会場4,000人くらいいて、背中に歓声がぶつかってる感覚で本当にすごかったです。今年は久しぶりに出場するので、今から楽しみ。


弦パパ、地元福岡の鉄拳勢、Team Liquid。いろいろな人のサポートを受け、鉄拳の申し子は帰ってきた。

Wellplayed ChallengerをはじめとしたTWTはもちろん、EVOなどの大舞台での活躍を見れることに興奮せずにはいられない鉄拳ファンも多いのではないだろうか。

既報のとおり、Taipei Major 2019では5位まで勝ち進むなど、ポテンシャルは折り紙付き。まずは大阪、Wellplayed Challengerで躍動する彼の姿を見てほしい。

Get Ready for the Next Battle.

写真・大塚まり

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記者プロフィール
Mako(WPJ編集部)
スマホゲームの攻略サイト、情報メディアを渡り歩いてウェルプレイドジャーナルに流れ着いた超絶新進気鋭の若手編集者。イベント取材では物販やコスプレイヤーに釘付けになりがち。

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