ジャイアンツ強振アーチスト舘野弘樹の打撃論【「eBASEBALL プロリーグ」読売ジャイアンツ集中インタビュー3】

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■前編記事
巨人キャプテン舘野弘樹――2年目で変わった責任感と環境【「eBASEBALL プロリーグ」読売ジャイアンツ集中インタビュー3】
※本インタビューで言及されている選手データは、「実況パワフルプロ野球2018」ver.1.14時点の内容になります
「プロ」と呼ぶにふさわしい打撃理論
――自他共に「強振といえば、舘野選手」と言われるほどのこだわり。このプレイスタイルはいつから始まったのでしょうか。
舘野:
以前のパワプロはほとんどの人が強振でプレイしていましたが、「実況パワフルプロ野球2012」でシステムが変わり強振が難しくなりました。自分もそのシステムで少し熱が冷めて、数年間ほどパワプロのプレイ時間が減る時期が続きました。
そんな中で2016年にパワプロの大会が開催されると聞いて、熱が戻ってきたんです。そこで改めて「パワプロの魅力は強振で、ホームランを打つためにやるゲームなんだ!」と気づきました。
熱が冷めていた反動もあってか「全打席を強振でいくしかない!」という思いで、現在のプレイスタイルへとつながっています。
――実際に野球をやっていたころの反動もあるとか。
舘野:
野球をやっていたころは、全打席ミート打ち、バントや盗塁しかしない超小技選手だったんです。「外野の頭を越すバッティングをしよう」とすら思わなかったですね。
――強振でのこだわりをうかがう中で驚いたのが、小林誠司選手での打撃練習です。
舘野:
小林選手などパワーが低めに設定されている選手で、千賀滉大選手のフォークを2時間ほど強振で打ち続けるという練習ですね。
この練習で目指していたのは、ぎりぎりまで引きつけて打つことです。引きつけ過ぎてもファールになってしまい、わずかでも前で打つとライナーになってしまいます。最高のタイミングで打ったときだけ、外野の前にポテンと落ちる。この再現度を上げるための練習でした。
――そんな舘野選手ですが、昨シーズンは最後までバッティングに悩み続けました。まず、ボール球を振ってしまうことを挙げられています。
舘野:
ボール球スイング率は落ちてきてはいるんですが、最近は「ボール球を振ってしまうなら、ボール球をヒットにしよう」と考え始めています。やはり難しいことで、基本的には「低めのボール球は内野ゴロになる」のですが、ミートカーソルの特定の場所に当てると打球を浮かせることができるんです。
――まさしくプロと呼ぶにふさわしい技術です。もう少しご説明いただけますか。
舘野:
技術的な話になってしまいますが、まずミートカーソルはど真ん中の点が「芯」で、上下左右に「線」が入っています。
この線の部分に当てるとボールを強く叩けるため打球が浮くので、「ボール球を振ってしまう」とわかった瞬間にカーソルをずらし、あえてインパクトをずらすことで内野の頭を越すヒットになります。
正式名称がないので、一部の選手から「枠打ち」や「軸打ち」と呼ばれている技術ですね。

eBASEBALL プロリーグ 2019 #06 第1節『巨人 vs ヤクルト』より(ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment)
――これはプロ野球でも実際に見られる技術ですね。バットコントロールの上手い選手は、ボール球をコツンとさばいて内野の頭を越すバッティングをします。
舘野:
以前から理論的にはわかっていましたが、非常に難しい技術なので試合で再現するのは難しいですけどね。最近は練習のために、試合であえてボール球を振り続けることもあります。自分は積極的に振っていくタイプなので、こうしたヒットを増やしていくかもしれないです。
――選手たちは凄まじい精度の駆け引きを行なっているのですね。
舘野:
最近の上手い人同士の試合ではストライクゾーンに投げると打たれるという印象があるので、どの選手の配球もボール球を効果的に使っています。これは現在のパワプロが「球速の速い投手が強い環境」であるために、ボール球を振らせやすいということもあります。
プロ野球ではあまり考えられないことですが、「スリーボール、ノーストライク」からボール球を投げることもよくあります。
――昨シーズン中もボールの着弾地点から大きく離れたところで空振りをするシーンが散見されましたが、あれは打ち損じを避けるための手段なわけですね。
舘野:
そうですね。無理やり空振りをすることで打ち損じを避けて、ワンストライクで済ます技術です。今シーズンはこうした細かい技術の精度を上げていますね。
――今シーズンも強振を続ける上で課題などはありますか?
舘野:
多くの選手が「どうすればホームラン(長打)を打たれないか」を研究していて、全体的にピッチングのレベルが上がってきているんですね。配球の研究も成熟してきているので、強振だけで戦うのは正直難しいところがあります。
あと現在のパワプロは「球速環境」といわれていて、単純に球速が速い投手が強いという環境になっているのでホームランは打ちにくいですね。
――昨シーズンも「ミート打ちの練習はしている」とお話いただきました。
舘野:
ミート打ちのことは今シーズンも考えていますね。実際にチームでの練習では何度もやっています。
ただ、やっぱりミート打ちはしたくないんです。個人的にはパワプロは強振率100%か0%しか存在しないと思っています。1回でも逃げて99%以下になったら、それは0%と同じなんです。
キャプテンに聞くパワプロにおける読売ジャイアンツの特徴
――キャプテンを務める舘野選手には、パワプロにおける読売ジャイアンツの特徴をうかがいつつ、注目選手を挙げていただこうと思います。まず今シーズンは、実際のプロ野球と同様に先発投手を一定数は揃えないといけなくなりました。
舘野:
今年のジャイアンツはとにかく先発投手の数が足りません。山口俊選手に次ぐ2番目の先発投手ですら悩んでしまいます。
※投手は1球投げるごとにスタミナを消費する。1試合目でスタミナを全て消費すれば、基本的に2試合は投げられない。eペナントレースは3試合で1カードと区切られており、昨シーズンは投手のスタミナが「カード内でのみ」持ち越されるルールだった。つまり、カード毎にスタミナはリセット(全回復)されるので、例えばタイガース戦の3試合目に先発した投手が、次のベイスターズ戦の1試合目に先発するということが可能だった
――昨シーズンより1イニング短い、5イニング制への変更もあります。中継ぎ投手の役割はどうなるのでしょう。
舘野:
5イニングで練習をしていていると、ピッチャーの打席にすぐ代打を出してしまうので、中継ぎの枚数がかなり必要だと感じます。
――先発投手に長いイニングを求めないという変化が起きているわけですね。
舘野:
特にビハインドの状態では反撃の時間が少ないので、投手には積極的に代打を出すことになります。
――そんな投手運用の中で、キーになる投手はいますか。
舘野:
自分は田口麗斗選手がすごく投げやすいですね。自分にとっては、昨シーズンの菅野智之選手的な先発エースになるかもしれないです。変化球はスライダーくらいしか頼れないんですが、持っている特殊能力が強いです。
――パワプロの対人戦では明確に弱い変化球が決まっており、プロ野球で活躍した選手がそのままeBASEBALL プロリーグでも活躍できるとは限りません。
舘野:
ルーキーながらローテ投手として5勝をあげた高橋優貴選手や、中継ぎ左腕としてフル回転した高木京介選手などがそうですね。
高橋選手はパワプロでも珍しい大きな変化のスクリューを投げる投手ですが、このスクリューがパワプロでは打ちやすい球種で。
高木選手もスローカーブとチェンジアップという、プロ相手では確実に打たれる変化球がメインになる投手なのできびしいですね。
――実は昨シーズンの舘野選手は、菅野選手以外を起用したときに敗戦するという特徴的な成績を残しています。これについては、操作する選手によって得意不得意が露骨に出ていたと反省の言葉を残されています。
舘野:
今年は練習でも、毎試合違う先発投手を起用するようにしました。基本的には使わないと思う投手でも、調子の兼ね合いで起用する場面があるかもしれないのでとにかく満遍なく練習していますね。
――では、野手についてもうかがっていきたいと思います。
舘野:
野手陣は強力ですね。プロ野球では怪我で出場できなかった吉川尚輝選手もセカンドで起用できますし、三塁はビヤヌエバ選手が不動のレギュラーです。
――後半戦以降は二軍暮らしが続いているビヤヌエバ選手が不動のレギュラーというのがeBASEBALL プロリーグらしいですね。
舘野:
「プルヒッター」に弾道4を合わせ持っているのが強力ですね。しかも左投手に弱いジャイアンツ打線のなかで「対左投手A」という能力まで持っているので、欠かせないバッターです。自分のなかでは最も鍵になるバッターだと思っています。
――eBASEBALL プロリーグならではという意味では、阿部慎之助選手のキャッチャー復帰を期待してしまいます。
舘野:
eBASEBALL プロリーグでもきびしいですね。キャッチャーの適正値がかなり低く設定されていて、肩の能力値も低いので。キャッチャーで起用するとすれば、よほどの緊急事態のみだと思います。
――昨シーズンでは、高田和博選手(プレイヤー名「TKD」:東北楽天ゴールデンイーグルス代表)が発明した「ファーストバレンティン」……守備適性のない強打者をファーストに置くという采配が流行しました。ジャイアンツも外野手のゲレーロ選手をファーストに起用していましたが、今シーズンは?
舘野:
今シーズンから「適正のないポジションで起用するとエラー率が上がる」という調整が入ったのですが……それでもゲレーロ選手のファースト起用はあり得ますね。ショートバウンドでの送球などは捕球できなくなりましたが、ファーストゴロは処理できるので我慢できる範囲です。
――昨シーズンの舘野選手は序盤にバッティングの調子が上がらないという悩みを持たれ、自身をパワプロの特殊能力になぞらえて「スロースターター」と表現しました。なにか対策は立てられているのでしょうか。
舘野:
「スロースターター」についてはどうしようもないので、1番坂本勇人選手、2番亀井善行選手の並びを変えます。
――何気ないことに聞こえるかもしれませんが、舘野選手は長年この打順の並びにこだわりを持っていました。
舘野:
2010年あたりからこの打順でプレイしてきましたね。けれど今シーズンは、亀井選手と比べて坂本選手の能力が突き抜けて高いので、歩かされる(敬遠される)確率が上がります。プロ野球のほうでも坂本選手のあとに丸佳浩選手がいることで、勝負を避けられない状況を作っています。パワプロでも同じ状況を作りたいです。
――今シーズンからイニング数が6回制から5回制に短縮されたことも大きい?
舘野:
そうですね。上位打線に徹底して強打者を置くことが基本になります。
――舘野選手の亀井選手愛は強く、背番号も亀井選手が最初につけていた35番を選ぶほど。そのこだわりを捨ててでも、というわけですね。
舘野:
本当は亀井選手を上位打線で起用したいです。でも、坂本選手との兼ね合いや自分自身が序盤に弱いことを考えると、打順を変えないわけにはいかない。
どんな打順になるかは、開幕を楽しみにしてもらえたらと思います。
目指すは読売ジャイアンツのリアルとゲームの同時優勝
――今シーズン、戦いたい選手はいますか。ちなみに昨年はこの質問に、前田恭兵選手(プレイヤー名「マエピー」:埼玉西武ライオンズ代表)と答えていました。
舘野:
前田選手はオンライン対戦が始まったころから対戦していて、2017年の札幌大会では自分が勝ったのですが、その後の全国大会で負けてしまった……という関係性がありました。その前田選手も今年はパ・リーグへ行ってしまったので。
――なかなか関係性の深い相手がいない?
舘野:
昨シーズンに自分が黒星を喫した坂本選手(前・広島東洋カープ代表)とm.o.m.o選手(前・中日ドラゴンズ代表)がプロ選手として残ることができなかったので、なかなか難しいです。
やはり、辻恭平選手(プレイヤー名「ベルガモット」:阪神タイガース代表)ですかね。昨シーズンの開幕戦のメインステージだったのにも関わらず、塩試合をしてしまったので……。自分がパワプロをプレイしてきたなかで、あそこまで打てない試合はなかったというくらい不出来な結果だったんですよね。
――スコアは1対0。得点は菅野選手の犠牲フライのみという、2018年の巨人阪神戦らしい勝負と話題になりました(笑)。
舘野:
お互いに昨シーズンのドラフト1位で、今シーズンも継続契約をいただいているので、今年はレベルアップしているという姿を見せられたらと思いますね。
eBASEBALL プロリーグでもジャイアンツとタイガースの試合は「伝統の一戦」と呼ばれる試合にしていきたいので。
――倉前俊英選手(プレイヤー名「カイ」:広島東洋カープ代表)の名前が挙がるかと思っていました。舘野選手が熱望していた首位打者、本塁打王のタイトルを獲得した選手ですので。
舘野:
なるほど、全然考えてませんでした。それはありですね。
お互いにピッチングよりもバッティングを得意としているので、空中戦でホームラン数を稼ぎあう試合になりますよ。
――では最後に、意気込みや目標をお願いします。
舘野:
今年はプロ野球でジャイアンツがリーグ優勝しているので、チーム全員が「優勝しなければ」という思いをより強めています。
まずはeペナントレースを制覇し、eクライマックスシリーズも勝ち抜け、e日本シリーズまで行ったら……あとは「絶対に勝つ」という強い意思を持って挑戦していきたいです。
また昨シーズンは、目標にしていた個人タイトルが取れなかったので絶対に取りたいです!
――ありがとうございました!
2019シーズンは開幕戦から9得点を上げ白星スタートを決めた舘野選手。その過程には、強振で打ち崩すための日々の練習があったことは想像に難しくない。
ジャイアンツという球界随一の注目を集める球団名を背負って狙うは日本一。eBASEBALL プロリーグの舞台にて、バットの真芯で捉えた音を聞かせてくれるに違いない。
写真・Yumiko Mitsuhashi
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