ジャイアンツで日本一へ――吉田友樹に聞く投打のキーパーソン【「eBASEBALL プロリーグ」読売ジャイアンツ集中インタビュー4】

砂拭

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■前編記事

ジャイアンツ吉田友樹――2年目の二刀流へ備えて【「eBASEBALL プロリーグ」読売ジャイアンツ集中インタビュー4】

※本インタビューで言及されている選手データは、「実況パワフルプロ野球2018」ver.1.14時点の内容になります

ボール半分だけ外す精緻な駆け引き

――パワプロは実在のプロ野球12球団の選手を操作できるゲームですから、使用できる選手がとにかく多い。その点で昨シーズンの吉田選手は、他球団の選手の能力を覚えることに若干不安を感じていました。

吉田:
今シーズンのジャイアンツの試合はほとんど見ているので、セ・リーグの選手はほぼ覚えましたよ。今シーズンから復帰された原辰徳監督は、僕がよく野球を見ていたころにも監督をされていたので好きなんですよ。

――やはり実際に選手を見ると見ないのとでは、大きな違いがありますよね。

吉田:
そもそも去年はプロ野球自体をあまり見ていなかったので、選手データを見てもまったくわからなくて。誰だろうこの人……という感じでした。

――確かにプロ野球に疎いと、選手は膨大な無機質のデータというか、暗記作業になってしまいますね。

吉田:
選手を知っていれば、能力と印象の紐付けができるんですけど、去年はそれができなかったのできびしかったですね。

――パワプロあるあるですが、プロ野球を観戦していてもパワプロを基準にして見ることが増えたのでは?

吉田:
ありますね。岡本和真選手を見ていて、「広角打法」だろこれ。みたいな(笑)。

――それでは今シーズン、読売ジャイアンツで戦っていく上でキーになる選手を挙げていただけますか。

吉田:
やっぱり今シーズンで引退してしまった阿部慎之助選手ですね。今のジャイアンツで唯一僕が子どものころから見ていた選手なので。阿部選手でホームランが打ちたいです。

ジャイアンツでプレイする上では「ファースト 岡本選手」が多いと思いますが、最近は阿部選手をファーストに起用することが多いです。パワプロではかなり能力を下げられてしまいましたが、まだまだ強いですよ。

――昨シーズンの阿部選手は「代打○」を活かした代打の切り札でしたが、今シーズンは「代打○」が消えています。

吉田:
あと「逆境」というビハインドで能力が上がる特殊能力も消えてしまったので、代打で出すメリットがなくなってしまいました。ならスタメンで出すほうがいいということですね。

――代わりの代打枠は誰になるでしょうか。

吉田:
石川慎吾選手が面白い能力になっていて、対左投手Bに弾道3という能力になったのでかなりありだと思っています。

――吉田選手は昨シーズン、決してバッティング面では強力ではない吉川尚輝選手を使いやすい選手として挙げていました。

吉田:
確かに吉川選手は昨シーズンまですごい打ちやすい選手でしたが、ミート打ちの仕様が若干変わったせいで、少し打ちにくい選手になってしまったんですよね。

今までアウトローの通常ストレートは、強振からミート打ちに切り替えて対応していましたが、今シーズンは100%強振で打ちにいくので。

――舘野選手もそのコースに対応するための練習をされているとお話いただきました。切り替え打ちで内野の頭を越すのも難しいわけですか。

吉田:
難しいですね。個人的には、今シーズンのミート打ちは弱いと思っています。

――次に、投手陣でキーになる選手を挙げていただけますか。

吉田:
まず、今のパワプロの「球速環境」だと、ジャイアンツの投手陣ははっきり言って弱いです。安心できる先発は山口俊選手くらいなので、厳しいですね。調子次第では、クローザーのデラロサ選手の先発もありえます。

――山口選手は、昨シーズンに吉田選手が得意投手として挙げられていました。そこは追い風といえるでしょうか。

吉田:
そうですね。でも、エースとして比較をすると、菅野智之選手の能力が大幅に下がってしまったのはきついです。昨シーズンの絶対的エースだったので。

――山口選手とデラロサ選手の起用が鍵になる?

吉田:
デラロサ選手は球速が速く、下に落ちるVスライダーと横に変化するスライダーを持っているので、パワプロでも本当に強い投手です。

先発エースの山口選手、抑えのエースのデラロサ選手として鍵になると思いますね。

――今シーズンのキーワードとして挙がっているのが球速ですね。

吉田:
「全力ストレート」のナイスピッチは、コースを張っていないと打てないですね。予測したうえで反応をしないときびしいです。変化球が釣り球になっているほどのストレート重視の環境なので。

――その上で、選手の間では配球の重要性が高まっている印象があります。

吉田:
通常ストレートのナイスピッチはみんな打ちにくるので、それを見越して少しだけストライクゾーンの外へはずす……そういった配球になってきてますね。

昨シーズンまでは外角低めの通常ストレートが安牌な選択肢だったのですが、みんなそれを理解して狙ってくるので、あえて外す。ボール球を振らせるピッチングをしないと点を取られます。

――そこで「全力ストレート」のナイスピッチも重要になる。

吉田:
そうです。ただ全力ストレートはナイスピッチが出なかったときは確実に打たれるので、リスクもあります。

――となると、攻撃面では「配球を読んだバッティング」が重要になるのでしょうか。

吉田:
僕は基本的に反応で打つようにしてます。ただ、カウントによって投げるコースが絞られる場面では、配球を読むこともありますね。

最近の練習では、ボール球をスイングしないことだけを意識的に考えるようにしています。

――カウントによるコースについては、プロ野球では考えにくい「スリーボールからのスイングを誘うボール球」という配球があると聞きます。

吉田:
全然ありますね。スリーボールであれば、外角低めの通常ストレートが一番打たれるリスクが低い定番です。それは当然バッターも理解しているので、ボール半分だけ外すわけです。

――ここまでのお話だけでも、大きく環境が変わっているのがわかります。

吉田:
ほかにも、変化球の使い方も難しくなっています。例えば、昨シーズンのジャイアンツが効果的に使っていた「外からのスライダー」が曲がらなくなったのは、かなりでかいですね。

特に畠世周選手のように、同じ横方向に変化するスライダーとカットボールで投げ分ける配球に影響が出ています。

――ずばり今シーズンのポイントはなんでしょうか。

吉田:
今シーズンはコースだと思います。いかにうまく「外す」かが重要ですね。ストライクゾーンからボール半分だけ外すと非常に打ちにくいです。パッと見ではストライクかボールかの判別はできないですし、ナイスピッチではなおさらです。いかにそういった球を正確に投げきるかですね。

愛着が強まったジャイアンツで頂点を目指す

――吉田選手は対戦相手からすると、ほとんどデータのない選手でした。今シーズンはデータも集まりますので、「2年目のジンクス」に警戒はしませんか?

吉田:
それはあまり意識してないですね。そもそもパワプロ自体の環境が変わったので。一応、自分の配球を見て手癖などがないかは確認しようと思っていますけど。

むしろ怖いのは開幕戦ですね。

――それはどういった理由で?

吉田:
情報ゼロの状態で試合をしなければいけないからです。開幕戦が終われば1試合分の配球が出てくるわけなので、それで大体のことはわかりますが。

――これだけ環境が固まっているパワプロで、思ってもみない奇襲などは起こり得るのでしょうか。

吉田:
全然あると思いますよ。例えば、昨シーズンの僕と大寺量亮選手(プレイヤー名「ゴジラ」:広島東洋カープ代表)の試合は、それまでジャイアンツの誰もやっていなかったバントや盗塁といった小技を駆使しました。あれは相手に「まずないだろう」と思われていたことをやって、成功したパターンです。

――データが集まる怖さもあるけれど、その裏をかく戦い方もあるわけですね。

吉田:
読み合いが発生する、面白い部分ですよね。今シーズンは試合数も増えたので、よりそういった部分が洗練されていくかもしれません。

――これはスプラトゥーンでの経験も関係するところですか?

吉田:
それもありますね。環境は変化しますが、ブキごとの動きは結構決まってるので。相手の配信などを見ると動きはわかるので、本番でどう変えてくるかを読むというのがあります。

――今シーズン、戦いたい選手はいますか。

吉田:
三好選手ですね。前から交流があって……ガチでパワプロをやろうと思ったのも、彼のおかげみたいなところがあって。

――どんなきっかけがあったのでしょうか。

吉田:
昨年パワプロをプレイし始めてオンラインで潜っていたときに、三好選手が「普通に上手い」みたいなコメントをしてきてくれて。

それで「ああ、自分上手いんだ」と思って、予選に挑戦したんです。三好選手との交流がきっかけで、予選に行く気になった感じですね。

――ご本人が聞いたら喜ぶでしょうね。

吉田:
喜んでくれるならうれしいですけど(笑)。そんなこともあって、三好選手とは公式の場で……できれば今年の日本シリーズを再現して対戦したいですね。

――倒したい相手として、ベイスターズが挙がるかと思っていました。昨シーズンのeリーグ代表決定戦で敗れた相手が、ベイスターズ。また、吉田選手は「NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2」の決勝でもベイスターズ(ハイパービーム)に敗れているので。

吉田:
ああ確かに。ベイスターズか……そうですね。ベイスターズには勝ちたいというのはありますね。

――しかしそこまで意識はされていなかったようですね(笑)。

吉田:
そんなにないですね。対戦相手が誰であろうと勝ちたいという感じなので。単純に強くなりたいという思いがあります。

――今年のeBASEBALLは現役高校生の参入や30代選手の減少で、平均年齢が大きく下がりました。吉田選手は若い世代の多いスプラトゥーンで第一線に立ち続けており、「新世代の台頭」を感じられることも多いと思います。比較して、パワプロはどう変化すると思われますか?

吉田:
反射神経を競うゲームは10代が強いですし、パワプロも詰めていけば10代のほうが有利になる要素があると思います。でも、20代後半、30代の選手でも打てるじゃないですか。結局、パワプロは並の反射神経があれば打てるゲームなんです。年齢で壁は感じていないですね。

――ちなみに高川選手は、前田恭兵選手(プレイヤー名「マエピー」:埼玉西武ライオンズ代表)と「若い世代が出てくるのは喜ばしいことだけど、自分たちが壁にならないといけない」といった話をされていました。

吉田:
大人やな……そんな考えはまったくなかった(笑)。

でもやっぱり、ゲームは年齢を問わないと思っているので。年齢が高くても、強ければ成立しますしね。

――では最後に、意気込みや目標をお願いします。

吉田:
今年は1年を通してジャイアンツを応援したので、愛着が強くなってもっとジャイアンツが好きになりました。eペナントレースを勝ちきって、日本シリーズへ進み、日本一になりたいと思います。

個人としては、昨シーズンより絶対にうまくなっているので、全勝目指してガチでやろうかなと思いますね。

――ありがとうございました!


日本一へ向けて開幕カード3連勝の好発進を決めた読売ジャイアンツ。吉田選手も7-2の快勝で2年目のeBASEBALL プロリーグの幕開けを飾った。

他のゲームで世界随一の実績を持つだけに、「全勝」もやってのけてくれる。そんな雰囲気が漂っていた。

写真・BUN

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記者プロフィール
砂拭
フリーの編集者・ライター。スポーツ紙よりはパワプロに詳しく、ゲームメディアよりは野球に詳しい独自のポジションでeBASEBALLライターの覇権を狙う。 また、医学系出版社での経験を活かし、「健康×eスポーツ」にも切り込んでいる。

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