「ゲームを隠す」コンプレックスからプロへ もけの格ゲー人生を辿る【前編】

WPJ編集部

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2017年、EVO2017のストリートファイターⅤ(以下、ストⅤ)部門で5位入賞を果たして名を挙げ、プロゲーマーへ身を投じることになったポノスゲーマー社員もけ選手。

2018年は「ドラゴンボール ファイターズ」(以下、DBFZ)にも参戦するが、ストⅤでは思うような結果を残すことができず。11月22日で23歳を迎えたばかりの若手格闘ゲーマーにとって苦悩の1年となった。

そんなもけ選手だが、ゲーマー人生を詳しく聞くインタビューは、本稿が初めてだという。

幼少の頃からゲームセンスを自覚していた彼は、プロゲーマーへ踏み出す決意の裏で、ゲームに対するコンプレックスを抱いていた。

ゲームを隠して過ごした学生時代

――プロになって1年と少しが経ちましたね。2018年からはストⅤに加えてDBFZでも多くの大会に参加されていますが、振り返っていかがですか?

もけ:
DBFZはある程度の成績を残せているんですが、ストⅤは去年と比べると全然勝てていない現状が続いています。

両方の大会でどんどん勝っていこうと本気で取り組んでいたのですが……。

――そもそも、DBFZを始めたきっかけは何なんでしょう?

もけ:
去年(2017年)、EVOで5位に入ったりしたこともあって、ストリートファイターをやっている人たちには僕の名前を知ってもらえたと思うんです。

でも、その他の格闘ゲームプレイヤーやファンの方たちには、まだまだ浸透していません。

ゲーマーの人たち、さらに一般の人たちにも僕のことを知ってもらうには、DBFZは適したゲームだと思い、発売したときは全力でプレイしようと考えました。

とはいえ、ストⅤの方で成績を保ちつつDBFZも、という考えが前提にあったので、なかなか勝てていないこともあって練習の割合としてはストⅤに重きを置いていた時期もあります。

ただ、気持ち的には両方に本気です。

――もけ選手の他にも複数のタイトルで活躍している方がいらっしゃいますが、同じ格闘ゲームとはいえ、2つのタイトルで戦っていくのは大変そうです。

もけ:
DBFZはまだ新しいタイトルなので、他のゲーマーたちといろいろと共有しながらやっている環境がありますね。今は僕もそれに甘えてやっていこうと思っています。

それと比べてストⅤは3年目に入ることもあって、自分で考えを見出さないと成長することは難しくなっている。

――そこまでしてでも自分の名前を世に広めたいということですか?

もけ:
僕がプロで成し遂げたいことのためには必要なことです。

ーーというと?

もけ:
話せば長くなるのですが、学生の頃は周りの友だちにはゲームをやっていることを隠していたんです。

ゲーマーであることがコンプレックスだった

――それは意外でした……。

もけ:
ゲームをやっていることに、自分の中で後ろめたさがありました。小学生のからの付き合いの幼馴染にも、本気でゲームをやっていることを話したのは去年、ポノスに所属する前か後かくらいの時期です。

それまでは、周りにはまったく打ち明けていません。

ゲームの話になっても、格ゲーをやっていることは話さない。みんながやっているモンスターハンターの話題とかでした。

周りに合わせて普通であろうとしていた気がします。その頃はゲームをやっていることが恥ずかしかったんでしょうね。

――自分が好きなことについて話せないのってストレスではないですか?

もけ:
もう慣れちゃってましたね。隠していることが普通になっていました。

でも、その時期の自分は本当に大きなことを隠して接していたんだなって今になって思います。

ある意味、コンプレックスだったんですけど、それがプロを目指したきっかけでもあるんです。

大学を卒業して社会人になっても周りにゲームを隠して生きていくくらいだったら、そんな僕みたいにゲームを隠さないでいい世の中を、僕自身が作っていきたいと考えました。

これまでの僕にいろいろな学びや楽しみをくれたゲームへの恩返しではないですが、そんな世界にするためにプロを目指そうと。

――他の人に過去の自分のような思いをしてほしくないという考えですか。

もけ:
あとは母が後押ししてくれたのも僕の中では大きかったです。

学生時代はゲームをやっていれば「勉強しなさい。」と小言を言われましたけど、本気でゲームをやっていきたいことを伝えたら、「あんたが本当にやりたいならそうしなさい」って。

むしろ、ゲームやりたいちゃうんか?って誘導してくれた気もします(笑)。

――身近な人からの後押しは励みになりますね。

もけ:
プロになっても生活できるかどうか分からない不安はもちろんありましたけど、その後押しのおかげで踏み出せましたね。

それまでは、社会人になってゲームは趣味としてやっていこうと思っていたので、休みがちゃんと取れてゲームと両立できる会社に就職できればいいなという願望は頭の中にありました。

でも、ゲームの世界をもっと良くしていきたいと就活の時期の前に考え出しました。

幼少時から感じていたゲームセンス

――そしてEVO2017で5位になったことがプロになるきっかけとなるわけですが、そもそも格闘ゲームを始めたのはいつ頃でなんでしょうか?

もけ:
たしか小学1年生の頃ですかね……。

お兄ちゃんが買ってきた「ストリートファイターEX3」と「ギルティギアイグゼクス#リロード」(通称、赤リロ)を一緒に遊んでいました。

他のジャンルにハマった時期もありますけど、格闘ゲームに関しては長期間やっていないということはないですね。

ただ、大学生になってからはプレイする頻度がかなり減った時期はありました。

――学業が忙しかったからとかですか?

もけ:
いえ、ゲームの動画をたくさん見る、いわゆる動画勢になったんですよ。海外の大会をよく観ていましたね。

それ以外は授業に出て、バイトをして、休みの日は遊んで、という普通の大学生のような生活でした。

もちろんまったくプレイしないわけではなくて、「ストリートファイターⅣ」をやっていましたけど、初期から第一線で戦っている他のプレイヤーに追いつけない。

なので、ストⅤが発売されたら絶対に本気でやろうと思っていました。

――それでEVO2017に至るわけですね。小学生の頃からうまかったんですか?

もけ:
そうですね。自分には才能があると常々思っていましたよ。

小学生の頃から、ゲームセンターで開かれていた大会に参加して、優勝はなかなかできなかったですけど、周りの参加者がみんな大人なのでそこそこ勝てたんです。

もう、小学生でここまで上手いのは自分の他にいないだろうと思いました。

というか、最近までこんなに若くて強いのは自分くらいだろうと思ってましたよ。


ゲームを隠さなくていい世界を作る。

そのためにプロゲーマーになる決意をしたもけ選手は、大阪から上京しポノスゲーマー社員として日々成長を続ける。

後編では、彼に影響を与えた格ゲープレイヤーの先人との関係を話してくれた。

写真・大塚まり

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記者プロフィール
WPJ編集部
「ゲームプレイに対する肯定を」「ゲーム観戦に熱狂を」「ゲームに、もっと市民権を」
このゲームを続けてよかった!と本気で思う人が一人でも多く生まれるように。
ゲームが生み出す熱量を、サッカー、野球と同じようにメジャースポーツ同様に世の中へもっと広めたい。
本気で毎日そのことを考えている会社の編集部。

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