「あっ、R6Sなら1位になれる」貴族の直感が野良連合を作った

Mako(WPJ編集部)

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レインボーシックス シージ(以下、R6S)の世界大会「Six Invitational 2019」でベスト4に入り、Twitterのトレンドにもなった野良連合。普段、R6Sやその他FPSのシーンを追っていない人にも、その名が知られることになった出来事と言えるだろう。

今回は、そんな野良連合のPapiliq選手とmerieux選手、そしてオーナーの貴族氏にインタビュー。チームの成り立ちやゲーミングハウスでの生活、過去のやらかしエピソードを聞いてきた。

直感型実業家の貴族が見出したR6Sの可能性

――最初にチームの成り立ちからお聞きしたいのですが、いつ頃から活動を開始したのでしょうか?

貴族:
野良連合を立ち上げたのは、2016年の3月ですね。丸3年が経ったところです。

――R6S部門は最初はPS4版から初めて後にPC版へ移行したんですよね。

貴族:
そうです。自分は芸人でもマジシャンでも、ミュージシャンでもなく、本業は実業家で、会社を複数社やってるオーナーというか、名刺上では会長をやってるんですよ。

ビジネスをやるときに、何事も直感を大事にしてやってきて成功してきたのですが、R6Sが2015年の12月に発売したときにちょっとやってみて、直感で「このゲーム、日本一になれるな」と思ったんですよ。

もともとFPS自体はプレイしていて、こういう図体をしてるんですけど昭和60年生まれのゲーセン世代で「ザ・キング・オブ・ファイターズ」とかをかなりやってましたよ。FPSを最初にやったのはNINTENDO64の「ゴールデンアイ 007」でしたね。

――ゴールデンアイは64世代ならやってますよね。merieux選手、Papiliq選手はやったことありますか?

Papiliq選手:

いやー、やってないですね。

貴族:

そして、eスポーツという言葉自体も僕は2014年くらいから知ってたんですよ。まだ日本では黎明期といった感じで、今みたいにプロチームがいっぱいあったころじゃないですよね。今もまだ正直、黎明期だとは思いますけど。

それでも、アメリカとかヨーロッパで盛んだったのは当時から知っていました。

そのときはeスポーツのビジネスをやるなんて思ってなかったんですけど、R6Sをやったときに直感的に、本格的にやってみようかなって思って。

僕リアルスポーツがかなり好きなんです。野球とかサッカーとか。1番好きなのはサッカーで。僕の将来の目標は、65歳までにサッカー プレミアリーグのリヴァプールを買うって決めてるんですけど(笑)。

――サッカーのチームを買うってことですか(笑)?

貴族:
そう。実際一度見積もりもとってみましたからね。数百億でしたけど。

それで、スポーツビジネスというかスポーツマーケティングを考えたときに、何が流行っているかというと、日本人が世界大会で活躍したスポーツって必ず流行るんですよ。

テニスしかり、ゴルフしかり。テニスの人口が増えたのは錦織圭選手のおかげだし、ゴルフは石川遼選手のおかげ。

バレーボールも世界大会でメダルを取るようになって視聴率が上がったわけじゃないですか。世界で日本人が活躍すると、そのスポーツの人口が増えるだとか、認知度が高まるだとか、メディアに取り上げられやすいというのは明らかだった。

で、eスポーツをやるんだったら、最初から世界を目指そうと思って、5年で世界を獲るって決めてメンバーを集めはじめました。

だから、PS4の初期メンバーにも、最初の1~2年で日本一になって、5年で世界一になるから、というのはよく話していて、「このおっさん何言ってんだ!?」って思われていたらしいっす。

Papiliq:
補足すると、自分やmerieuxはもともと別チームでPC版をやってきたプレイヤーで、野良連合に移籍してきました。自分は野良連合に入って、まだ半年くらいです。

――直近ではSix Invitational 2019でベスト4まで進みました。世界一も現実味を帯びてきたところですね。

貴族:
そうですね。去年の11月に行われたプロリーグシーズン8 ファイナルでもベスト4になっていて、ベスト4に2回なれたんで、まあ5年で1位になるっていうのもかなり現実的になってきたのかな。

それはひとえに選手の努力、アナリストなどの裏方のおかげもあるので、ありがたいなって感じです。

世界で戦える野良連合と世界一の差

――これまで日本のチームが成し遂げられなかったレベルの成績ですよね?

貴族:
そうですね。とあるFPS界の重鎮の方からTwitterのDMで「サッカーのワールドカップでベスト4になったようなもん。後に続く人が出てきてうれしい」とメッセージをいただきましたし。

――では、逆に敗北した相手チームのTeam Empireや優勝したG2 Esportsといったチームとの差は感じましたか?

merieux:
自分たちが最初に出ていた世界大会だと、ものすごく壁があると感じて、言葉で表すのも難しいんですけど、個人のレベルもチームの連携力も、自分たちがどれだけがんばっても追いつけないんじゃないかと思っていました。

でも、大会を重ねるごとに、海外のチームと試合をする機会が増えたので、それに合わせた練習方法に変えて結果が出てきました。1位にもなれるんじゃないかと、少しずつですけどステップアップできている感覚です。

Papiliq:
海外チームとの差で最も大きかったのが、戦術での差です。

以前所属していたチームで世界大会に出させてもらったとき、戦術で負けるとこんなにも一方的に負けてしまうのかと痛感しました。

それと同時に、強いと言われているチームが強い理由はその戦術にあって、それ以外では圧倒的に差があるわけではないと思える部分もあって、そこさえ詰めてしまえば海外との差は埋まるんじゃないかと思いました。

野良連合に入ってから、よりその差はないように思っていますが、やはりトップのチームは個々の能力や戦術の理解度が高く、世界一になるためにはまだ自分たちに足りない部分はあると思います。

――R6Sで世界一を決める世界大会って年に何回あるんですか?

貴族:
年に4回くらいあって、優勝賞金がそれぞれ2億円くらい。仮に4回すべて優勝すれば8億ですね。

――年間で4回も大きな大会があると。それってかなり過密スケジュールになっているのではないですか?

貴族:
めちゃくちゃ過密ですね。今それが問題になっていて、もしかしたら2020年以降は減るかもしれないです。海外の選手からクレームが出ているみたいですね。

練習は週休2日の夜勤体制?

――ゲーミングハウスでの練習はどのようにして行っているのでしょう?

merieux:
今はゲーミングハウスに住んでいるのが3人だけで、あと2人が別のところに住んでいるんですね。

本来だったら、練習後に話し合いの場を作ったりしたいんですけど、まだそこまでに至ってないので、今の練習は個人練習の延長上にしかすぎないものなってしまってます。

もうしばらくしたら、みんなで同じ場所に集まって話し合いとかをできるようにしたいです。

貴族:
練習時間は、21:00から深夜の1:00くらいの4時間くらいです。大会が近くなると夕方の17:00くらいから始めて練習時間が長くなります。

あとは週休2日ですね。金曜日と日曜日が休みです。休みの日はお酒飲んだりしてます。 寮生活に近い感じですよね。出社しなくていい寮みたいな。

Papiliq:
夜勤みたいな感覚ですかね。練習以外の時間も結局ゲームやってることは多いですね。

――休みの日は大会が近づいてもお休みは週2日?

貴族:
大会が近づくと週1日になるよね?

merieux:
そうですね。金曜日だけ休みになって、大会が終わればまたもとに戻ります。

――そういった練習のスケジュールはどのようにして決まるのでしょうか?

Papiliq:
試合での感触だったり、チームの完成度を客観視して、大会までの日数を考えて、それまでにこのぐらいに仕上げたいというのがメンバーそれぞれにあって、足りないと感じたら誰かが提案しますね。それを止める人ももちろんいないです。

merieux:
練習時間が21:00からなのは、対戦相手がその時間にならないといないからでもあります。それより早く集まっても、練習ができないんです。

貴族:
R6Sは、ゲームだけでご飯を食べてる専業のチームがうちともう1チームくらいしかないんですよ。他は学生や社会人をやりつつの人がほとんどで。

なので、その時間にならないとスクリムを組む相手がいない、ということをmerieux選手は申し上げていると。

merieux:
(笑)。

Papiliq:
海外のチームとできるときは、昼から練習することもあります。


ひと目でわかる只者じゃないオーラを放つ貴族氏の実業家としての一面がうかがえたところで取材は一段落。

後編ではSix Invitational 2019で脚光を浴びた貴族氏のパフォーマンスやPapiliq選手、merieux選手が思うプロゲーマーの環境を掘り下げていく。

写真・大塚まり

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プロゲーマーとして求められるもの。それはゲームの実力だけではない。野良連合オーナー貴族氏は、社会人として当たり前のことを選手に求めている。

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Mako(WPJ編集部)
スマホゲームの攻略サイト、情報メディアを渡り歩いてウェルプレイドジャーナルに流れ着いた超絶新進気鋭の若手編集者。イベント取材では物販やコスプレイヤーに釘付けになりがち。

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