あそこで戦うのが夢だった――しゅーとんの「EVO 2019 スマブラSP」

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肌で感じるスマブラへの熱視線
――初めて宅オフに参加したのはいつ頃でしょうか?
しゅーとん:
中学生の頃です。親にスマブラをしに行くって言ったとき、ものすごく心配されましたね(笑)。
――親御さんからすると、見ず知らずの大人がいるところに行くと子どもがいい出したら心配するでしょうね……。初めて宅オフに参加した感想は覚えていますか?
しゅーとん:
とにかく楽しかったのを覚えてますよ。それまでは強い人と戦うのはオンラインでしかやってなくて、隣にいる人がめちゃくちゃ強いという環境がなかったんです。友だちとやっても僕が勝つだけですし。
聞きたいことをいろいろ聞いたりもできるし、本当に楽しかったですね。その後は月に1回くらいの頻度で行くようになりました。
――それから大会に出るようになって結果を出していくと。海外の大会はいつ頃から?
しゅーとん:
初めて海外大会に行ったのは、2017年2月のFrostbiteです。そこで「スマブラ for Wii U」の日本対アメリカのクルーバトルがあって、それのメンバーとして出場したのが初の海外。
海外のプレイヤーは、とにかく攻めるんですよね。攻め型が多くて、守り重視の人もいるけど少数派で、「あー、日本と違うな」ってすぐにわかりました。
――2019年上半期の世界ランキングでは日本人プレイヤーで唯一トップ10入りを果たしました。次点でがザクレイ選手が12位に入っており、2人は海外選手への対抗馬として期待されている部分があると思います。ご自身ではそういった視線を感じることはありますか?
しゅーとん:
海外に行く直前に、配信で応援のコメントをいただくことはあります。
渡航前にトーナメントが発表されることが結構あるんですけど、例えば序盤でTweek選手とあたるのがわかっていたら「Tweek倒してこいよ」みたいなことをよく言われますね。
――海外の大会といえばEVO 2019はスマブラSPになって初のEVOでした。
しゅーとん:
いろいろなゲームはいっぱいある環境で、こんなとこで自分がスマブラやるんだみたいな特別感というか……EVOの独特な雰囲気があってすごく緊張しましたね。
ただ、トップ8まで行きたかったです……。あそこで戦うのが夢だったので。
――スマブラSPは大会のトリをかざったこともあってすごい注目度でしたね。
しゅーとん:
確かに。ものすごい注目度でしたよ。エントリーが半端ない数でしたからね。
来年のEVO Japan 2020はもう2,000人以上がエントリーしてますし。
――昔からプレイしているスマブラがこんな盛り上がりを見せると思っていましたか?
しゅーとん:
いや、まったく思ってなかったです。むしろ衰退していくのかなという不安もありましたもん。このままスマブラやってもなぁって考えたこともありましたし。
Wii Uの後期、SPの発売が発表される前の雰囲気を知っていると、今の盛り上がりが信じられないくらい。あの発表で、「まだ頑張らなきゃ」って思えたんですよね。
エントリー数3,000人超のEVOは特別な舞台
――現在はSunSister所属のプロゲーマーとして活動していますが、自分がプロゲーマーになるって想像していましたか? スマブラではなかなか前例がなくてイメージしにくかったところだと思うのですが。
しゅーとん:
そうですね。「ストリートファイター」とかの格ゲーの人しかなれないのかな? みたいな感覚ではいました。
――それでも、aMSa選手やNietono選手がプロゲーマーになって道が出てきた。
しゅーとん:
まぁ、彼らはレジェンドというか、超強かったので、逆にあそこまでいかないと無理なんだろうなみたいな感じでした。
単純にすごいなって思ってましたけど、その頃は「自分もいずれプロゲーマーに……」なんて思いもしなかったですね。
――では、いつ頃に意識し出したのでしょうか?
しゅーとん:
海外で結果を出してきてからですかね。Wii UでZeRo選手(※)に勝ったりとか。
※ZeRo:チリ出身の「スマブラ for Wii U」時代の絶対王者。現在はストリーマーとして活動中
――プロゲーマーになってから変わったことは?
しゅーとん:
プレッシャーはありますね。プロだから勝つ前提みたいな。
――スマブラはSP発売をきっかけにプロチームに所属するプレイヤーがかなり増えました。しゅーとん選手が特に意識しているプレイヤーはいますか?
しゅーとん:
やっぱりザクレイですかね。今、一番乗りに乗ってるプレイヤーなので、応援したい。もちろん対戦するときは自分が勝ちたいですけど。
あれだけ活躍しているプレイヤーなので、いろいろな意味で成功してほしいですね。それが他のスマブラ勢にとっても刺激になると思います。
――ウメブラSP5で優勝したときのザクレイ選手との決勝戦はかなりシーソーゲームでした。試合中の心境は。
しゅーとん:
焦りみたいな感覚はありましたね。
ただ、負けてもザクレイが相手だったら受け入れられるので、無駄な緊張はせずに試合ができたと思います。
――緊張するタイプなんですか?
しゅーとん:
結構、緊張する方ですよ。EVOとかは特に。
特別な舞台だとどうしても緊張してしまいますね。
――そういう意味ではウメブラも特別な舞台ではないですか?
しゅーとん:
そうですね、SPになってからは日本の大会といえばウメブラ。ウメブラで結果を残せばヒーローみたいに言われるんですよ。
それだけスマブラの注目度が高まっているのも感じますし、緊張する大会の1つですね。
――スマブラのプレイヤーたちが今でこそ公式のリーグがありますし、いろいろな大会があって活躍する場がある状況になりましたし、ほとんどのプレイヤーが配信をしています。
しゅーとん:
まぁ僕の場合はVIPマッチを垂れ流して雑談して、みたいな感じですけど。
家にいるときじゃないと配信できないから遠征中はできないこともあって、家に帰ったときは極力配信しようみたいな意識はしています。
その面でも福岡に住んでるのって不利なんですよね。
――逆に遠征でいろいろなところに行くことになるので、普段とは違った食べ物を楽しんだりするとか、密かな楽しみってないですか?
しゅーとん:
僕、食べ物にこだわりないっすよ?
あー、でも福岡は博多ラーメンしかないので、関東に行ったら家系ラーメンとかを食べたりはしますかね。
キーコンもプロ活動も自然体な姿勢が見え隠れ
――話は変わりまして、スマブラプレイヤーのみなさんにはキーコンを聞いているのですが、教えてくれませんか?
しゅーとん:
僕、ほとんどいじってないですよ。GCコントローラーで、ほとんどデフォルト。
ピクミン&オリマーは、はじきジャンプOFFと振動OFFとAB同時押しスマッシュOFFだけです。
それ以外のキャラは、加えてCスティックを強攻撃にしてるだけです。ピクミン&オリマーはスマッシュの方が使うことが多いのでCスティックはスマッシュにしています。
「スマブラDX」ではキーコンをいじることができなかったので、DXからやっている人だったら普通はいじらないと思うんですけどね……。Xボタンを攻撃にしようとか掴みに変えようとかやったらもう無理です。脳トレみたいになっちゃって。
配信とかでキーコンを聞かれることがあるんですけど、個人的にはそんなに気になるか? って返してます。自分のやりたいようにすればいいだけなんで。操作面で困ってないならいじる必要はまったくないですからね。
あ、そういえば昔、格ゲーを始めたときにアケコンのレバーの持ち方とかを調べたことがあって、それに似てるものですかね。
――格ゲーやってたんですね。
しゅーとん:
「ウルトラストリートファイターIV」をやってました。あばだんごさんとかもやってましたよね。
――最近は逆に、他の格ゲーのプロがスマブラの配信をしているのが流行っていますね。
しゅーとん:
しかも名だたる人たちがやっていますよね。VIPに到達するのも早い。なんというか、ゲームの理解が早いですよね。
僕はスマブラに特化しているので他のゲームを始めても時間がかかると思います。配信で「スーパーマリオメーカー 2」とかやってますけど、めちゃくちゃボコボコにされますし。
――ウメブラなどの大会で勝つこととランキングの順位を上げること、どちらに重きを置いていますか。
しゅーとん:
大会で優勝を目指すのがまず第一で、そのついでにランキングがついてくるみたいな感じだと思っているので、ランキングのために優勝しようという感覚ではないですね。
――では、一番優勝したい大会は?
しゅーとん:
やっぱり注目度が高い大会で優勝したいので、EVOとEVO Japanですかね。メディアにも取り上げられますし。
来年のEVO Japanとか特にやばいと思いますよ。優勝したらヒーローじゃないですか。
――エントリー数もかなり集まっていますし、優勝の難易度がかなり高そうです。まだ少し時間がありますが、優勝への手応えはありますか?
しゅーとん:
とはいえ特別なことはやるつもりないので、それまでいつもどおりに頑張るというか。特別な練習もしてないですし。普段どおりやれればいいかなと思ってます。
――では最後に、今後の目標を教えてください。
しゅーとん:
今って“スマブラで稼げる”みたいな時代じゃないですか。なので、今後もスマブラを続けてそれで食べていけるというのが一番理想ですね。
大会で勝つのも目標にはありますけど、まずは生活できないと意味がないので、そこかなと思います。
地方在住という不利な面がありながらも、ウメブラはもちろん、海外のメジャー大会で上位に入る実力を見せつけているしゅーとん選手。
本人の希望どおり、東京へ拠点を移したら、さらに成長する伸びしろまであるという事実。まずは来年のEVO Japan 2020でそのポテンシャルを発揮してくれるはずだ。
写真・Yumiko Mitsuhashi
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SunSister所属のしゅーとん選手は、福岡を拠点に国内外の大会へに遠征をこなす地方在住プロゲーマー。移動の大変さは想像に容易いが、それ以外にもプレイヤーとして不利なことがあるという。