世界最強を決める地は日本――ウメブラ主催うめきの夢

Mako(WPJ編集部)

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「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」(以下、スマブラSP)で、プレイヤーでもあり、国内最大規模のコミュニティ大会「ウメブラ」の主催者うめき選手へインタビュー。

1,000以上の参加者をほこるウメブラの運営は苦労が絶えない。それでも続けるのには、ウメブラで叶えたい夢があるからだという。

使用キャラクターであるデイジー一筋に至った理由など、プレイヤーとしての側面も合わせて聞いてきた。

運営のために免許も取る若き日のうめき

――うめき選手といえばウメブラの運営の人というイメージが強いです。

うめき:
そうですね。いろいろな企業の方とお会いすることがあるんですけど、ウメブラのことを知ってくれている人は多いです。

――そもそも、ウメブラはRainさん(※)が開催していたPioスマを引き継いだのがはじまったきっかけなんですよね?

※Rain:スマブラDX時代から活躍するトッププレイヤーで、ウメブラの前身であるPioスマを主催していた。現在はよしもとゲーミング所属

うめき:
そうですね。Rainさんが主催をしていたときはプレイヤーとして参加していただけでした。

大会に参加したときの経験値がすごくて、毎月2~3回は何かしらの大会に参加していたんですけど、それでも足りないと思っていました。世界最強のプレイヤーを目指していたのですが、全然強くなれていないなと感じていましたし、緊張しがちという弱点もあったので、とにかく大会の数をこなしたかったんです。その頃の自分の熱量はすごかったですね。

そして、大会が足りないと感じてたので、自分で開こうかなと本気で悩みだしたんですけど、ちょうどその時期にRainさんが大会運営をやめると言い出したんですよ。誰も引き継がなければ終わりますと。

Pioスマがなくなってしまうと、関東の大会がなくなってしまうので、だったら自分が引き継ごうと思い立ったというのがウメブラが始まった経緯です。

――ウメブラという名前はもちろん、うめき選手の名前が由来?

うめき:
ですね。当時のコミュニティサイトでどんな大会名がいいか聞いたところ、「ウメブラ」がしっくりくるとのことだったので。

Pioスマとかそれまでの大会は会場名をもじったものだったんですけど、あまりにもウメブラを希望する声が多くて、この大会名になりました。恥ずかしかったんですけど、これしかないなって感じがあって(笑)。

――ウメブラを始める以前に大会運営の経験はあったのですか?

うめき:
いや、まったくなかったです。

プレイヤーとして参加しているときも、椅子や机を片付けるなどのお手伝いはしたことがありますけど、それ以外に運営の人たちがやっていることを見ていたわけでもなくて、やりたいという気持ちだけが先行して始めた感じです。

――実際に運営の立場になってみて、大変だったことはいろいろあったと思いますがいかがでしたか?

うめき:
かなり大変でしたね。あのときの自分の熱量がすごすぎて、今だったら正直できないだろうなって思います(笑)。

まず、機材を運ぶために車の免許は絶対に必要なんですけど、持ってなかったんですよ。

でも、やるならすぐにでも開きたかったので、急いで合宿で免許を取りに行きました。1カ月で免許を取得して、そのすぐ後に1回目のウメブラを開催しました。

たしか、Rainさんが主催をやめてから1カ月半後くらい、2013年の1月だったと思います。

1人でやってた機材搬入や予期せぬトラブルも

――初開催の日のことはよく覚えているんじゃないですか?

うめき:
車を持ってなかったので前日にレンタカーを借りて、朝4:00くらいに起きてた記憶があります。

Pioスマ時代のスタッフの方がそのまま手伝ってくれることになったんですけど、自分が人にものを頼むのがすごく苦手で荷物の搬入は1人でやっちゃってました。

1人で倉庫に行って、ブラウン管テレビを20台くらい車に詰めて……。しかも、その倉庫が2階にあってエレベーターもなかったんですよ。1時間くらい車と倉庫を行ったり来たりしてましたね。大会が終わったらまた倉庫に戻って20台を戻して……。終わるのは深夜2:00くらいでした。

で、翌日の朝にレンタカーを返してそのまま仕事に向かう、というのが毎月の恒例でした。今だったらそこまでできないだろうなって思います。無理です。

――1人でそこまでやっていたとは……。

うめき:
きついなと思ったときは、個人的な友だちに手伝ってもらってました。ご飯をおごるのが報酬で。

――その方はスマブラ関係ではなく?

うめき:
スマブラは全然プレイしていない、ただの友だちですね。

――運営でヒヤッとした瞬間ってありますか?

うめき:
これまで何回も開催してきましたが、一時期は300人くらいの参加者で同じ会場で開催していて、運営も同じことの繰り返しだったんですけど、イベントって同じことをやっていても、なぜか何かしらのトラブルが発生するんですよ。

参加しているプレイヤーは競技として参加しているので勝つか負けるかの真剣な世界なのに、電気がいきなり落ちたりとか。

2on2のグランドファイナル、3本先取のうちの最後の1本、しかも全員ラスト1ストックという一番熱い場面で、スタッフがコードを引っ掛けて電源が落ちてしまったこともありました。あのときはめちゃくちゃ謝りました……。

――想像しただけで冷や汗が出てきますね……。今はスタッフの方も増えているんですよね。

うめき:
スタッフ自体は大体45人くらいいて、大会当日はそのうちの20~30人くらいが手伝ってくれます。

それでも手が足りない部分、椅子と机の搬入などは参加者に手伝ってもらって成り立っているという状況です。申し訳ないことですが、手伝ってもらわないと開催できないのが実情です。

――イベント運営経験のある人はいろいろなところで求められているかもしれないですね。

うめき:
人手が足りなくて困っている主催者は、経験者を欲していることをもっと発信するといいかもしれないですね。

ウメブラのスタッフもそうですけど、イベントスタッフの経験がある人って意外といると思うんで。スタッフ側としても経験の1つになるでしょうし。

世界最強を決める場はウメブラで!

――1,000人規模にまで大きくなったウメブラですけど、今後こうしていきたいというビジョンはあるのでしょうか?

うめき:
今は1,000人なんですけど、2,000、4,000、8,000人と増やしていって会場も大きなところでやりたいですね。

というのも、ウメブラで目指している夢があって、公式にスポンサーについてもらいたいというのと、東京ドームとかめちゃくちゃでかい会場で最高峰のイベントを開きたいんです。世界大会とかができたらいいですよね。

今だとEVOがそれに当たるのかと思うんですけど、ウメブラで世界大会というのがゴール地点としてはきれいなんじゃないかなと。

スマブラって日本のゲームなので、全世界で最強なのは誰かを決める場所は、海外ではなくて日本でやりたいなと思ってるんです。

今現在も海外のトッププレイヤーの一部が来日することはありますけど、トッププレイヤーだけが来ればイベントは盛り上がりますけど、ゲーム自体が盛り上がるかはまた別。もっといろいろな人に来てもらわないと大会として大きくなっていかないので、そういう人たちが行きたいと思うイベントにしていきたいです。

EVOやGenesisはトッププレイヤーじゃなくても行きたいと思う、価値のあるものなんですよ。それをウメブラでやれたらなと思っています。

そのためには自分の力だけでは無理です。任天堂さんにご協力していただかないと難しいと思っていて、何年、何十年先になるかわからないですけど、いつかできればいいなと夢見ています。

――規模が大きくなってくると会場選びも難しくなりそうですね。

うめき:
会場についてはちょうど困っているところなんですよ。

5月1、2日に開催したウメブラJapan Major 2019は1,000人規模の大会だったんですけど、それ以降の会場が取れていない状態でして……。

来年に東京オリンピックがある関係で取りにくくなっているみたいです。

ウメブラは費用的な事情で大田区産業プラザPiOなどの公共の施設をお借りして開催しているんです。めちゃくちゃ安いんですよ。

そのおかげで2,000円の参加費で今まで成り立っていたんですけども、それ以外の施設を借りるとなると会場費が3倍くらい高くなってしまうので、参加費を見直さざるを得ないのかなと思っています。

これって、参加費を2,000円から引き上げなければ解決しない問題で、逆に言うと参加費を上げるだけで解決することでもあります。

でも、2,000円ですら高いと言う人たちがいる中で参加費を高くすると、参加する人が減っちゃうじゃないかという懸念もあって……。

――本末転倒になっちゃいますね。

うめき:
よくウメブラを開いてほしいという声はいただくんですけど、お金は払いたくない人たちも多くいて、それだと開催できないということを言っても伝わらないのかなって気がしてます。

――現状の2,000円という価格は決して高くはないと個人的には思います。

うめき:
これが5,000円とかになるとどうなるかわからないですよね。

スマブラができて、試合が見れて、協賛していただいている、とんがらし麺(日清のカップ麺)やレッドブルがもらえて、1日過ごせるイベント。僕だったら5,000円は全然出せるんですけど。

参加費を値上げしないなら、まだ見つかっていない会場を頑張って探さなきゃいけないんですけど、そうしている間に時間が経って、ウメブラやらなくなっちゃったねって感じになってしまいますね。

ものすごい大富豪のお嬢様と僕が結婚できれば1発で解決です(笑)。

――今現在のウメブラが注力しているところはどこでしょうか?

うめき:
意識しているのは、自分自身がプレイヤーで大会当日はプレイヤーとしての活動がメインでやっているからこそ、自分が気持ちよくプレイできる環境を目指しています。

自分が運営でなくてただの参加者だったら、例えば日の光が入ってくるとかがちょっとでもあれば駄目ですから、そういうプレイヤー目線で考えられているのはあるんじゃないかなと思います。

なのでリピーターというかずっと参加してくれている方がいるのかなと。


大会格付けランキング「PGR」にて日本初のS tier認定され、活躍した選手への注目度がことさら大きいウメブラだが、現在は会場探しという大きな問題に直面している。

もし参加費が高くなってしまっても、その価値がある大会。それはまさに、うめき選手が語る世界最強を決める大会ではないだろうか。そのためにも、より大きな会場で開催されることに期待したい。

前編ではウメブラについて話していただいた。続く後編では、プレイヤーとしてのうめき選手はどんな人なのか、スマブラとの出会いから聞いてみた。

写真・大塚まり

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Mako(WPJ編集部)
スマホゲームの攻略サイト、情報メディアを渡り歩いてウェルプレイドジャーナルに流れ着いた超絶新進気鋭の若手編集者。イベント取材では物販やコスプレイヤーに釘付けになりがち。

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