esports視点で見えた「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」の衝撃

瀬尾亜沙子

最近話題のデジタルカードゲーム「MTGアリーナ」をご存じだろうか? 正式名称は「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」。現時点ではまだオープンベータ(正式リリース時期未定)だが、2月15日に日本語版が公開されたばかりで、e-Sportsの視点から見ても要チェックの存在だ。

このゲームの元になっている「マジック:ザ・ギャザリング」は有名なアナログカードゲームなので、一度は耳にしたことがある人もいるのではないだろうか。この記事では、脈々と続く「マジック:ザ・ギャザリング」のすごさと、どうして今、「MTGアリーナ」に注目すべきなのかを説明していこう。

賞金制大会は毎週開催!TAKEcakeなどゲーマーからも支持

esportsの視点から見たMTGの魅力は、ゲーム性が高くて面白いことだけではない。注目すべきは、厳密な大会運営システムだ。

世界中で賞金制大会が毎週のように開催されており、形式によっては参加費として1万円ほどかかる大会にも数千人が集う。誰でも参加できる大規模大会と、予選を通過して権利を獲得したプレイヤーしか参加できない高レベルの大会があるが、どちらも2~3日間の会期内にいくつものトーナメントが進行し、ルールは試験に合格したジャッジによってきちんと管理されている。

日本のトッププレイヤーたちは、これらの大会ですでに4,000万円以上もの賞金を獲得しており(最高額は渡辺雄也選手の生涯獲得賞金406,525ドル)、成績に応じて海外大会に参戦する際の渡航費や宿泊費も無料になるため、それらも含めると5,000万円以上に相当する賞金を獲得してきた計算になる。

また、過去の大会の動画や観戦記事が残っており、昔のゲーム環境や過去の英雄的プレイヤーのことを記録で詳しく知ることが可能なのも、MTGの魅力の1つと言える。

日本でも有料の賞金制大会が年に4回程度のペースで開催されている。写真はグランプリ・千葉2018の様子

MTGは長い歴史を持っているため、多くの著名人が遊んできた。例えば、ロンドンブーツ1号2号の2人やジャーナリストの津田大介氏棋士の糸谷哲郎元竜王らが過去にMTGをプレイしていた。

また、ゲーマーとしては「ドラゴンボール ファイターズ」などで活躍するACQUA氏、「ハースストーン」で有名なブライアン・キブラー氏やAmaz氏、また「ドラゴンクエストライバルズ」全国大会初代勇者のTAKEcake氏らがMTGのプレイヤーである。さらにサイゲームス取締役の木村唯人氏は、MTG好きが高じて会社の所属チーム「Team Cygames」を結成し、チームメンバーの大会優勝を記念して「Shadowverse」のパックをユーザーに配布したりもしている。

日本語版に合わせ賞金総額11億円の世界大会がスタート!

前置きが長くなったが、MTGは積み重なる伝統に裏付けられたすごいゲームだということがおわかりいただけだろうか。このMTGをそのまま、パソコンでサクッと遊べるデジタルカードゲームにしたのが「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」(以下、MTGアリーナ)なのだ。
MTGは相手のターンの最中にも割り込んで行動できるルールなので、テンポ感が大事なデジタルカードゲームには適さないと言われてきたが、複雑なゲーム性をそのままに移植し、ストレスなく再現できている点は特筆すべきだろう。

そして去る2月15日、ついに日本語版がリリースされ、それに合わせて世界大会もスタートする。MTGアリーナはカジュアルに楽しむこともできる一方で、賞金制大会とプロ制度があるのが大きな特徴。1年にわたって開催される世界大会の賞金総額はなんと11億円! MTGアリーナをプレイするすべての人に、それを手に入れるチャンスがあるのだ。

MTGアリーナにはさまざまなプレイモードがあり、フレンド対戦やランクマッチ、「同じカードは1枚ずつ」といった特殊な形式でもプレイできる

その場でデッキを組んで戦う「ドラフト」は戦略性が高く、毎回異なるゲーム展開が面白い

今から始めてもプロリーグ入りやミリオネアのチャンスあり!

MTGアリーナは、プロ制度にも特徴がある。そもそもプロとはどういうものか? 簡単に説明しよう。

昨年の大会成績によって選ばれた世界屈指のトッププレイヤーたちが「MTGプロリーグ」を構成している。現在、プロは32名。彼らは、MTGの発売元であるウィザーズ・オブ・ザ・コーストと1年間に75,000ドル(約830万円)の報奨金を受け取る契約を結び、Twitchなどで配信を行いつつ、賞金大会で競い合うシステムになっている。

プロ制度の皮切りとなる大会「ミシックインビテーショナル」が3月末にアメリカで実施されるが、その賞金総額は100万ドル(約1億1千万円)、優勝賞金は25万ドル(約2,800万円)。つまり、プロたちは契約時に確定している75,000ドルの年収に加え、大会賞金を獲得してミリオネアになるチャンスが大いにあるというわけだ。

ここで注目したいのは、この「ミシックインビテーショナル」大会にはMTGアリーナでの成績上位者8人が招待されることになっている点。世界中誰にでも、ゲームで勝ちさえすれば大会に参加できるチャンスがあり、さらには大会で好成績を挙げプロリーグ入りの可能性も……!

現在、世界で32人しかいないマジックプロリーグだが、その中に日本人が4人所属していることをご存じだろうか。明日公開の記事では、昨年の日本ランキングトップである行弘賢選手に、プロとしての生活、プロリーグへの意気込みなどを聞いてみた。

※記事内の画像はMagic: the Gatheringおよびマジック:ザ・ギャザリングから引用させていただきました。

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記者プロフィール
瀬尾亜沙子
MTG専門誌「GAMEぎゃざ」「マナバーン」などの編集に15年以上携わってきたライター・編集者。MTGを初めとするトレーディングカードゲームの国内大会ではカメラマンも務める。

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