鉄拳事件簿2018【下半期編】:ちりちりの躍進からYAMASAの大逆転劇!

鉄拳事件簿2018【上半期編】
EVO2018(8月3日~5日)
8月3日~5日にアメリカはラスベガスで開催されたEVO2018。鉄拳7の参加人数は、シングル大会では世界最大規模。家庭用が発売翌年開催で参加人数が増える現象は、EVOの歴史上、初の出来事であった。
[家庭用PS4「鉄拳7」大会結果]
- 優勝:LowHigh(韓国)
- 準優勝:qudans(韓国)
- 3位:Lil Majin(アメリカ)
- 4位:JDCR(韓国)
8月事件簿:優勝以外はすべて一緒、意味はない(ちりちり選手)
「MASTERCUP 森部杯極 3on3」の活躍で、AMD、LEVEL∞からスポットスポンサーを受け、世界最大規模の大会へ初参加を果たしたちりちり選手。日本最強アマチュアが見る夢は、大会に出る以上、毎回「優勝する」としか語らない。だが、日本国内の大規模大会で優勝した実績はない。彼はただのビッグマウスなのか?
POOL1、2は軽々突破したものの、セミファイナルで韓国の新進気鋭の若手kkokkoma選手に惜しくも敗退し、ルーザーズトーナメントへ。北米、韓国の強豪しか残っていないボスラッシュに対しても、自身のプレイスタイルを貫き通して生き残った。そして、ファイナルへの進出を果たした。
天然のパンチパーマで強烈な見た目。プレイスタイルがド派手で奇抜な事でも視聴者の心をグッと掴んだ。コメントでは「GO!アフロ侍」など、海外の視聴者からも応援コメントが飛びかっていたのが印象的。
最終日のルーザーズ1回戦。対戦相手のタイの英雄BOOKに残念ながら惜しくも敗退。1,547名中、7位タイという、インパクトとしては充分な結果を残した。日本最強のアマチュアはただのビックマウスではないことを証明。しかし、大会終了後、「優勝以外はすべて一緒、意味はない。来年、また来ることが出来たら優勝します。」と言ってのけた。
実は、過去に福岡からEVOの鉄拳に参加した上位入賞者は、同じ地域やゲームセンターでプレイしている。
- EVO2014:弦(準優勝)
- EVO2017:たいせい(4位)
- EVO2018:ちりちり(7位タイ)
ちなみにその場所は、福岡県の筑豊地方。いずれも負けず嫌いのハートが強い怪物たちばかりだ。
TGS2018鉄拳プロチャンピオンシップ日本代表決定戦(9月21日、23日)
9月21日と23日に東京ゲームショウ2018(以下、TGS2018)で「鉄拳プロチャンピオンシップ日本代表決定戦」が開催された。21日に勝ち上がった破壊王、ダブル、ペコス、AO、ノビ、ノロマの6名の選手たちが、23日に優勝を争った。
[家庭用 PS4「鉄拳7」大会結果]
- 優勝:破壊王(広島)
- 準優勝:ダブル(東京)
- 3位:ペコス(神奈川)
9月事件簿:ダブル選手vs破壊王選手の逆転ドラマ
最終戦のグランドファイナルは、ダブル選手(ウィナーズ)vs破壊王選手(ルーザーズ)の対戦となった。ダブルイリミネーション形式のトーナメントなので、ダブル選手は優勝まで1セット(2勝)、破壊王選手は2セット(2勝×2)を取る必要があり、ここまで全勝のダブル選手が圧倒的有利な立場だ。
勢いのあるダブル選手が一気に先制。あと1ラウンド取得で優勝という状況を二度作るも、破壊王選手がその都度、ラウンドを逆3タテで取得。大歓声の中、1セットを先制してリセット。その後、勢いに乗った破壊王選手が2連勝し優勝を決めた。
勝利者インタビューで「まだ、足が震えてます。大舞台のシングル大会は初優勝です。ファンの応援もあったし、やっとキングを勝たせてあげることができてうれしかった。海外大会も優勝したい」と語っている。
この大逆転で何が起こったのか? 試合を見る限りでは、両者共に動きは良かった。負けた方のダブル選手は勢いもあり、終始キレがあって好調だった。9月の新バージョンリリース後も、両者のやり込み量は十分だった。ダブル選手に関しては、1日12時間以上もプレイしていた日もあったほどである。
要因は大きく3つあると分析する。1つは読み合い。ダブル選手はスピードスターと呼ばれるほど手数が多く、スピーディーな展開で相手を倒す攻撃型。対する破壊王選手は、長期戦向きのプレイヤー。よくいえば、相手の技を受け切りって勝つプロレススタイルで典型的な守り型。この試合は、最後まで粘り強く守り切った破壊王選手が読み合いを制していた。
2つめは、オーディエンスの後押し。ダブルイリミネーション形式は、ルーザーズで勝ち上がった選手が逆転して勝利するというのが最大の見所。大会における逆転は、会場を非常に盛り上げ、観客は声援で後押しする。そういった意味でも、派手なプロレス技の多いキングは観客から応援されやすい。
3つめは、運と流れ。これは俗にいわれる「流れが来ている」といったものだ。試合開始後、速攻で流れが来ていたのはダブル選手だった。しかし、試合途中から1つめ、2つめの要因を破壊王選手が押さえ、傾いた流れを自分にたぐり寄せ、派手な逆転で勝利した。このドラマは、プロライセンス選手の実力が高いレベルで拮抗しているだけに起こりえたと考えられる。
RIZIN.13×TEKKEN7 JAPAN vs. KOREA SPECIAL MATCH(9月30日)
9月30日に開催された総合格闘技イベント「RIZIN.13」にて、「RIZIN.13×TEKKEN7 JAPAN vs. KOREA SPECIAL MATCH」が行われた。メインイベントの「堀口恭司vs那須川天心」をひと目見たい25,000人の来場者がさいたまスーパーアリーナを埋めた。
[家庭用 PS4「鉄拳7」大会結果]
- 第1試合:CHANEL(アリサ) × – ○ タケ。(一美)
- 第2試合:qudans(デビル仁) ○ – × ノビ(ドラグノフ)
- 第3試合:KNEE(スティーブ) ○ – × ノロマ(デビル仁)
台風が直撃した影響で、JRが早期に運転停止を予告。試合順が変わりメインイベントが前倒しされた。その直後の試合となり、会場の半数程度が交通事情の影響で帰ってしまったものの、半数近くの10,000人程度の観客が鉄拳7の日韓戦を観戦していた。「オレのジャックは強いぞ」「昔はいっぱい遊んだな」「ナイスレイジアーツ!」などの温かい歓声や応援を耳にすることができた。
9月事件簿:esports先進国韓国チームの入場
総合格闘技イベント「RIZIN」の見所の1つは、選手入場の豪華な演出だ。巨大スクリーンに映し出されるムービー、火花や炎の特効、爆音で流れる入場曲など、徹底したこだわりが感じられる。
今回、入場前に韓国チームの選手からRIZIN運営側からプレゼントされたグッズを着用して登場しても良いか?という確認があった。運営側も快諾し、入場演出の登場時にRIZINグッズを大きくアピールして会場を盛り上げた。アウェーの韓国人選手であったが、会場のRIZINファンからは非常に好意的な歓声で迎え入れられた。
韓国ではプロゲーマーが憧れの職業として定着しており、中でも格闘ゲームでは鉄拳が好まれる。昔から対戦番組がケーブルテレビやネットで多く放送されている環境下で育ってきた彼らは、入場1つとってもプロゲーマーとしてサービス精神が旺盛で、意識とホスピタリティの高さを見て感じることができた。
MASTERCUP.10(10月20日)
10月20日にTFTホールで「MASTERCUP.10」が開催された。224チーム、1,120人が参加。11年続く世界最高峰の5on5団体戦である。
[アーケード「鉄拳7FR」大会結果]
- 優勝Team YAMASA(東京):ノビ(ドラグノフ)タケ。(一美)ユウ(フェン)バッツ(ファラン)西(フェン)
- 準優勝FursanAllstar(韓国):Mulgold(クラウディオ)Ameba(飛鳥)LowHigh(シャヒーン)CherryBerryMango(仁)Rangchu(パンダ)
10月事件簿:2017年逆5タテ敗北の準優勝からTeam YAMASA優勝へ
2017年11月25日、アーケード「鉄拳7FR」で開催された「MASTERCUP.9」(参加207チーム 1,035人)の決勝戦は、Walkergaming対Team YAMASAとなった。
Team YAMASAの先鋒バッツ選手が、Walkergamingの4人を倒し、大将の影丸選手を引きずりだした。しかし、その逆境を影丸選手がマンパワーで跳ねのけ、Team YAMASAの全員を倒し、決勝戦奇跡の逆5タテで優勝。格ゲーの大規模大会史上類を見ない、ドラマチックな結果となった。一方、Team YAMASAにとっては苦い経験となった。
ちなみに、格ゲー史に残る決勝戦奇跡の逆5タテは、2013年2月10日にアーケード「鉄拳TAG2 アンリミテッド」で開催された「MASTERCUP.5」(参加125チーム 625人)でも起きている。
優勝したのは「東京ヒップホップ愛好会」。決勝戦で相手チームの先鋒ゼウガル選手に、4人抜きで王手をかけられている。そのときは、大将ペこス選手が、その逆境をはねのけ、元祖決勝戦奇跡の逆5タテで優勝。
奇しくも、MASTERCUP.9でまんば選手は二度目の奇跡を体験。Team YAMASAのユウ選手、ノビ選手は5年前とは逆の敗者側に立つことになった。
MASTERCUP.10は、前回と同じチームメンバーで出場。しかも、決勝戦の相手は韓国チーム。スポーツと同様に鉄拳でも日韓戦は非常に盛り上がる。
現在、鉄拳シーンにおいて、韓国は世界最強と言われている。近年、個人戦の主要な大型大会はほとんど優勝しているからだ。しかし、その強豪をも倒し、Team YAMASAとして念願の優勝。決勝奇跡の逆5タテで敗北した全大会の記憶を塗り替える快挙となった。このようなドラマチックな展開は、普段からどんな大会でも起こっているわけではなく、MASTERCUPにかけるプレイヤーの想いや熱量が奇跡を起こしているのではと考える。
大会前にリーダーのユウ選手が「昨年、決勝の舞台に置いてきた魂(ソウル)を回収する」と死亡フラグにも取れる発言を何度かしていたが、見事な有言実行となった。
闘神祭2018→19予選(11月4日)
「闘神祭2018→19」は、タイトー主催のアーケード全国大会。全国のゲームセンターの店舗予選で勝ち上がった選手やチームが銀賞状を獲得し、各地のエリア決勝に進出。そこで勝ち上がると、全国決勝大会進出の金賞状を手に入れることができる。
2003年から2012年にエンターブレイン(現Gzブレイン)主催の「闘劇」というアーケード全国大会が全10回開催されていた。鉄拳は2006年の闘劇以降、3on3形式のチーム戦で開催されている。
[アーケード「鉄拳7FR」大会結果]
- 店舗名:ゲームパニックつくば
- チーム名:グリーンめにやさしい
- へぽけん(クマ)、UYUゆうゆう(シャオシュウ)、DHGみぃみ(アスカ)
11月事件簿:最多3名の女性プレイヤーが本戦へ
闘劇から続く全13回の歴史の中で、3名の女性プレイヤー(るりたゃん選手、ゆうゆう選手、みぃみ選手)が全国大会へ出場したのは過去最多。闘劇でマキシ選手が数回本戦出場。闘神祭2017でたぬかな選手がベスト4。まだ予選が終わっていないこともあり、さらなる女性プレイヤーの本戦出場が期待される。
11月4日にゲームパニックつくばで開催された店舗予選において、プロゲーミングチームの「Walkergaming」戦にてへぽけん選手が3タテで勝利。チームの総合力は高い事もあり、2019年3月23日、24日で開催される全国決勝大会でも上位入賞なるか?
闘神祭の切符GET♪
We can participate in TO-SHINSAI tournament next year 3/23-24.
We got a participation ticket! pic.twitter.com/4P5jrCviUg
— ゆうゆう UYU|YUYU (@YUYU_FGC) November 4, 2018
第10回eスポーツワールドチャンピオンシップ(11月9日~11日)
11月9日〜11日に開催された「第10回eスポーツワールドチャンピオンシップ」。32ヵ国の強豪が台湾に集結。日本代表は、TGS2018の鉄拳プロチャンピオンシップ日本代表決定戦で優勝した破壊王選手が参戦した。日本ではまだなじみが薄いが、世界的には「ゲームの世界大会」「オリンピック」と呼ばれている。
[家庭用Steam「鉄拳7」大会結果]
- 優勝:Sora(サウジアラビア)
- 準優勝:破壊王(日本)
- 3位:CHANEL(韓国)
- 4位:TEJAN(インド)
11月事件簿:破壊王選手とSORA選手の逆転劇とは?
32ヵ国からTOP8に残ったチームは、韓国、フィリピン、日本、スイス、インド、インドネシア、サウジアラビア、オーストラリア。
事実上の決勝戦と呼ばれたのは、セミファイナル「日本代表破壊王選手vs韓国代表CHANEL選手」の優勝候補対決。激戦を制したのは、日本代表の破壊王選手となった。
このとき応援していた日本人のほとんどが、破壊王選手の優勝を確信したかもしれない。だが、一部の鉄拳プレイヤーは心配していた。決勝の相手が、サウジアラビア代表で砂漠の稲妻こと「Sora選手」の実力を知っていたからだ。今年の夏にTEKKEN World Tourの日本大会に来日。強豪プレイヤーを相手に大幅に勝ち越し、その実力が本物だと証明していたからだ。
グランドファイナルからは5試合先取制。鉄拳の個人戦としては、試合数が長めの珍しい形式だ。序盤勢いに乗り、4-2で王手をかけたのは破壊王選手。TGS2018とは逆の追われる立場になった途端、あと1試合、1ラウンド取得ができなくなってしまった。
Sora選手が見事な逆転劇で、鉄拳の世界大会で初の優勝をサウジアラビアにもたらした。彼の強みは、長期戦で読み合いに強いこと。今回のルールでそこが生きたと言って間違いない。
そして、優勝候補の破壊王選手に対して逆転を見せ続け、オーディエンスを味方につけたこと。流れをつかんだ後はぶれなかったこと。破壊王選手は、9月の事件簿とは逆の立場に立たされたのだ。追われる立場からか、試合内容的に早めに勝負をつけようと焦りがあったようにも見受けられた。
鉄拳の個人戦では、キャラクターを自由に選択して戦えるルールが多い。現在、相手のキャラクターに有利のつくキャラクターを被せて戦うのが、世界的なトレンドである。
しかし、ファイナリストの2人は、トーナメントでほぼメインでやり込んだ1キャラを信じて戦うメインキャラクター固定スタイルだった。不利なキャラクターに対しても、「練度」で勝利する。動画勢からはこのスタイルがよろこばれる。この大会の参加者の大半が、さまざまなキャラクターを使えるマルチプレイヤースタイルだったので、流行りの被せに一石を投じる結果となった。
TEKKEN World Tour Finals 2018(12月1日、2日)
12月1日、2日にオランダのアムステルダムで開催された鉄拳7の世界大会「TEKKEN World Tour Finals 2018」(以下、TWTF2018)。3月から11月まで世界各地で行われたChallenger、MASTER大会のポイントランキング上位19名が世界中から集結。1日に行われた最終予選のラストクオリファイでは約350人が参加。その中から1名が、Finalsに進出し、20名により世界王者を争った。
[家庭用 PS4「鉄拳7」大会結果]
- 優勝:Rangchu(韓国)
- 準優勝:qudans(韓国)
- 3位:KNEE(韓国)
- 4位:CHANEL(韓国)
12月事件簿:ダブル選手の敗退とパンダ使いのRangchu選手の優勝
参加者数約350名の最終予選トーナメントを無敗で駆け上がり、決勝戦に進出したダブル選手。しかし、ルーザーズから上がってきたイタリアのGhirlanda選手にリセットをかけられ敗退。優勝まで王手をかけるもTGS2018同様に、またも追われる立場で敗れてしまった。
ダブル選手は大規模大会、大舞台で優勝経験はない。並々ならぬ思いがあったからか試合後、号泣。この涙をバネに次の目標に向かって大きく羽ばたいてほしい。
TWTF2018 20名の中から勝ち上がった8名。ウィナーズでKNEE選手、Rangchu選手、Jimmy J Tran選手、qudans選手。ルーザーズでノビ選手、CHANEL選手、JeonDDing選手、Joey Fury選手。韓国5名、アメリカ2名、日本1名となった。日本で唯一残ったノビ選手は惜しくも1回戦で敗退となった。
優勝したのは世界最強のパンダ使いのRangchu(ランチュ)選手。しかし、他のキャラクターに比べてパンダは強くないとされている。「パンダはあえて強くないので使っている」と語る。
敗者復活から這い上がり、ルーザーズファイナルではKNEE選手と再戦。ここで1回戦目の敗北で吹っ切れたのか、自身の最も練度の高いパンダを使い見事勝利。グランドファイナルの昨年覇者qudans選手に対しても、パンダで勝利した。
Rangchu選手に聞いたところ「デビル仁は相性が悪すぎるけど、他のキャラを使うより、10年使ってきたパンダを使おうと思いました。」と語ってくれた。不利なキャラクターが相手でも、自分の練度を信じて貫き勝利したということだ。
TWTF2018の結果を見ても、被せスタイルより、メインキャラを使った選手がより多く勝ち上がっている。2019年は改めて、被せのキャラパワーよりも、1キャラをやり込む「練度」が見直される1年になるかもしれない。
The Walking Dead (C)2018 AMC Filim Holdings LLC.All Rights Reserved.
(C)2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. MAIN CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA
(C)SNK CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED.
TEKKEN(TM)7 & (C) BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
【あわせて読みたい関連記事】
鉄拳事件簿2018【上半期編】:プロライセンス選手とレッドブル・アスリート誕生!
鉄拳の歴史上、かつてない程多くの大規模大会や、公式・コミュニティイベントが開催された激動の2018年。目まぐるしく様変わりしていくシーンや、様々な内容の事件や出来事を振り返る。