えいたが問い続けるプロゲーマーのあり方とスタンス(後編):倉持由香のゲーマー交遊録【第4回】

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class="p-emBox">揺れるプロゲーマーの定義で倉持公認プロ誕生!?
倉持:えいたくんは、プロゲーマーのあり方について思っていることがあるとか。
えいた:
倉持さんはオレがプロゲーマーだと思ってる? これは正直に言って! プロゲーマーってなに?
倉持:確かに、プロゲーマーの定義って難しいよね。スポンサーが付いて、ゲームをしているプレイヤーっていうイメージかな。あとは、賞金で生活できているプレイヤーとか?
えいた:
その定義だと、オレはプロゲーマーではございません! 賞金では生活できてませんって、なっちゃう。はっきりした基準はないんだと思うけど、だいたい3つぐらいの定義にわかれるんだよね。
- スポンサーが付いている
- 賞金で生活できる
- ゲームを媒体としてお金を稼げている(メディアに出ているなど)
でも、どれが正解っていうわけじゃないよね。だって、「賞金で生活できる」っていう定義で見ると、チョコちゃんやはつめちゃんはプロゲーマーじゃなくなっちゃう。一方で、「ゲームを媒体としてお金を稼げている」という観点だと、完全なプロゲーマーだよね。
「お金をもらったらプロゲーマー」っていうのが一番わかりやすいのかも知れないけど、じゃあ例えば倉持さんに、オレが渡航費と月給1万円をあげるから海外大会に行ってきてってなったら、倉持さんはプロゲーマーなんでしょうか。
倉持:うーん、当てはめてしまうとプロゲーマーになっちゃいますね。
えいた:
チームに所属してたときはなにも考えなかったんだけど、いざ自分が曖昧な立場になったときにすごく考えるようになったんだよね。実際、今はGameWithはスポンサーじゃないんだよね。プロゲーマーとしての契約は終わっていて、GameWithという事務所に所属している状態。
自分なりのプロゲーマー像っていうのがあって、それに照らし合わせると、自分は違うなっていう違和感はずっとあったんだよね。そのことを最初ふ~どさんに相談したんだけど、「(プロゲーマーの)基準なんてないし、その肩書をなくす必要はないんじゃない。(プロゲーマーを名乗ることで)ゲームに興味を持つ人が増えるかも知れないし」っていう回答をもらいました。
ウメハラさんにも同じ相談をしたんだけど、「いいんじゃない」でした。これは投げやりに言ってるんじゃなくて、やりたいようにすればいいという意味で。
最終的に会社にも話をして、「プロゲーマー」というタイトルを取ることにしたんだよね。そういう意味では、今だにプロゲーマーとはなにかっていうことがわからない。
倉持:そう言われてみると、かなり定義はあやふやだよね。ライセンスの問題もあるし……。
えいた:
マゴさんはTOPANGAに所属しているけど、Red Bullみたいなスポンサーは今はないよね。だから、プロゲーマーではないという見方もできるけど、オレの中でマゴさんは完全なプロゲーマー。志の点でも、ファンへのサービスもプロだよね。
こうやって、考え始めるとわからなさすぎる。どうしたらいい?(笑)。特に、最近プロゲーマーと名乗る人が増えてきてるよね。もちろん、人口が増えてくるとそれだけ認知が広がるのはわかるんだけど、こういう曖昧な状態で広まっていくのは、繁栄なのか衰退なのか……。
あと、求められているものが違う問題もあると思う。テレビが求めているプロゲーマー像と、ゲーマーが求めているプロゲーマー像にギャップがあるように思うんです。でも、プロを名乗る以上、求められたら対応が必要。そういう意味では、チョコちゃんなんかはプロゲーマーだと思う。チョコちゃんは叩かれたり、炎上したりすることはあるけど、メディアに出てアピールしている点においては、評価されていいはずだよ。
倉持:これは難題だね。
えいた:
そうなんだよね。わかっている前提で聞くけど、オレはプロゲーマー? 今、倉持が決めて! 頼む!!
倉持:荷が重すぎるよ!(笑)えいたくんは、ゲームにずっと貢献してきてるし、プロゲーマーだと思うよ。だって、それがプロゲーマーじゃないって判断なら、それこそチョコちゃんもプロゲーマーじゃないってことになっちゃうもん。
えいた:
やったー! プロゲーマーになりました(笑)。
倉持:実際、えいたくんの動画を見て、これまで格ゲーを触ったこともなかった女性ファンたちから、「格ゲーって楽しそう!」とか「パーフェクト勝利かっこいい!」みたいなコメントが来ているのを何度も見たことがあるし、そういった点ではゲームを通じて新しい層の開拓をしている立派なプロゲーマーでしょ。
えいた:
いいこと言ってくれるね。オレは「倉持由香公認プロゲーマー」になれたんだな(笑)。冗談はさておき、自分の立ち位置としてストリーマーに近いプロゲーマーとしてやっていきたいと思ってる。
倉持:今はまだプロゲーマーの定義が確立されてないから、えいたスタイルで突き進んでほしいな。えいたくんが新たなプロ格ゲーマーの方向性を確立することで、若手プレイヤーに向けて今後の指針になると思うよ。
えいた:
今のままじゃ格ゲー界は厳しいとは思うね。例えば、HIKAKINさんが格ゲーがすごく上手で、ストVのベスト8入りするぐらいの腕前だとしよう。そうだったら、多くの人が配信を見るだろうし、格ゲーの認知と新規ユーザー獲得に大きく寄与すると思う。自分の目指す場所は、こういうことなんじゃないかと思ってはいるよ。
見た目はときど認定ありのえいた
えいた:
前にウメハラさんに言われたことがあるんだけど、「(ストVにおける)えいたのプレイスタイルは、プラチナで止まってる」って。やっても、やらなくても止まってるっていう意味でもあるので、他の人ほどやり込みが影響しないってことでもあるんだけど。
倉持:やり込まなくても勝てるって、すごいことだね! 今プレイしている「ドラゴンボール ファイターズ」(以下、DBFZ)での経験が生かせてるってことでもあるの?
えいた:
今、DBFZをやっているのは別の理由があって、「今やらないと、絶対今後勝てなくなるから」。ストVは、昔プレイして蓄積された経験なんかが活かせるんだけど、DBFZはそれがまったくない。DBFZは、今からならギリギリ追いつけると思って、やってるんだよね。
倉持:なるほど。調整も入ったからいろいろ大変そうだよね……。かじゅ(かずのこ選手)しかり、最近結婚するゲーマーが増えてるけど、えいたくんは結婚願望ってあるの?
えいた:
結婚願望がないわけではないし、いつかは結婚するんだろうなとは思ってる。その前に、もっと安定することが必要だね。人気商売な分、一瞬にしてオワコンになってしまうリスクは常にあると思ってる。
だから、貯蓄も必要だし、安定した収入が見込めないと結婚には踏み切れないかな。
倉持:石橋を叩いて叩いて渡るタイプなんだね! 地元の名古屋に戻りたいって思うことはある?
えいた:
それはないね。主なフィールドがYouTubeと格ゲーということもあって、名古屋でないと実現できないということがほとんどない。しかも、ツイッターやDiscordで地元の仲間とも簡単に連絡が取れてるし。
倉持:それなら寂しくないね。格ゲーにおけるキャラ選びの基準はある?
えいた:
どんなに劣勢の状況でも、そこから巻き返すことができるキャラを選ぶね。逆にデカイ投げキャラは使わない。
でも、デカイ投げキャラを使っているプレイヤーの人って、マジでいいひとばっかりなのが困る(笑)。あんな意地悪なプレイするのに、みんな礼儀正しい人ばかりなんだ。これが性格悪い人だったら、こっちもクソっていえるのに(笑)。
倉持:真面目で優しい人ほど、ブン投げるタイプのキャラを使う傾向があるのかな。日常生活とのギャップ……? えいたくんが交流が深い選手はどなたですか?
えいた:
どぐらさん、かずのこさんの2人は、今でも仲良くさせてもらってます。どぐらさんが東京に来たときは、ほぼ確実にご飯に行ったりいっしょにゲームしたりするかな。
倉持:ほんと仲良しだよね。えいたくんの記憶に残る一戦といえば?
えいた:
うーん、2つあるんだけどいい? 1つは、ELEAGUEでのウメハラさんとの一戦だね。あのときはいい試合ができたという実感もあったし、ウメハラさんとはあの一戦の後、飲みに行ったんだよね。
もう1つは、小路KOGさん(※)との一戦。EVOでの一戦なんだけど、ベスト16ぐらいのときに、ストIVで小路KOGさんと当たったのね。結果、オレが勝って小路KOGさんを見たら泣いてたんだ。そのときに、泣きながら笑顔で「オレの分もがんばってくれ!」って言ってくれたのね。これははっきり記憶に残ってる。
※:こうじケーオージー。BBTAGを中心に、ストリートファイターシリーズやKOF14、DBFZなどのプレイをするプロゲーマー。
倉持:これはいいエピソード。泣くほど悔しかったのに、負けた相手に「がんばって!」って言える小路KOGさんはカッコいいね。最近は、街を歩いてて「あっ、えいたさんだ!」みたいになることも多い?
えいた:
あるね、でもうれしいからファンサービスはするよ。YouTuberになってからは、声をかけてもらえる機会が増えたね。一時期、髪を白くしているときがあって、そのときは目立つこともあって。
倉持:えいたくんは、普段は変装してる?
えいた:
それ答えちゃうと、逆にバレちゃうじゃん!(笑)特にしてないよ。
倉持:ウサギのロゴが特徴のブランド「CUNE」を着てたり、昔からえいたくんは見た目には気を使ってるよね。ゲーマーとしては珍しいタイプ!
えいた:
ときどさんが提唱してるんだけど、「プロゲーマーの地位向上のためにも、見た目に気を使おう」って。見た目の印象は強いから、ちゃんとしようとしてるかな。前にときどさんからは、「えいたは……合格だ」って言われたよ。
倉持:ときど認定ありなんだ!
えいた:
ときどさんが言ってたのは、「普段から気を使う必要があるから、事務所にいるだけのときでも、スウェットは着ない」と。でも、次に会ったときスウェットだった(笑)。「ジム帰りなんだよね」って言ってたけど。
倉持:嘘でしょ!?(笑)ときどさんって、すごく真面目な人っていう印象なんだけど、いろんな人に話を聞いているとちょっと抜けてるところがあるんだよね。
えいた:
だから、みんなときどさんのことが好きなんじゃないかな。
倉持:ギャップがかわいい(笑)。esports番組がいくつも始まって、メディア露出の機会が増えてるから、見た目はほんと大事だよね。
えいた:
ただ、オレはあまりesportsのくくりでは呼ばれないんだよね。
倉持:そうなんだ!? トッププレイヤーなのにね。
えいた:
どうなんだろ。ふ~どさんに言わせれば、「えいたは中堅だよ」ってなるよ、きっと。
倉持:確かに言いそう(笑)。
えいた:
オレの頭の中にふ~どさんがいて、いろんなアドバイスをくれるんだよ。これを、エアふ~どって呼んでるんだけど(笑)。
ライト層の動画勢が定着しにくい格ゲー界の問題
倉持:キャリアプランについて、考えてる?
えいた:
プロゲーマーって、キャリアパスが確立されていないよね? そう思わない?
倉持:先駆者がいないのは確かだよね。ウメハラさんが先頭を走ってて、sakoさんが最年長で、彼らがどうするかの選択をみんなが見守っているというか……。
えいた:
そうなんだよ。でも、あの2人ぐらいの実力と知名度があれば、ある意味その先は見えてると思うんだ。ただ、あそこまでの人はひと握りだから、そうじゃない人どうすればいいだろうね。
倉持:そういう意味では、格ゲー業界にもっと人を集める動きが必要だね。
えいた:
オレも格ゲー業界の一員として、できることはなんでもしていきたい。だから、どんな形であれ、声をかけてほしいっていうのはある。でも、オレのこの記事はみんな見ないんだろうな……。
倉持:そんなことないよ! ちょいちょい、ネガティブ発言が出てくるな!(笑)えいたくんには、格ゲー業界に女性ファンとキッズたちを連れてきてほしいね。
えいた:
よっしゃ! ただ、動画勢と呼ばれる層に、格ゲーの閉鎖的な部分は見せないでほしいんだよね。
倉持:わかる! 動画勢はそういうのに引いちゃうからね。「女子供お断り!格ゲー界は硬派!」って雰囲気が和らぐといいんだけど。
えいた:
格ゲーの場合、プレイヤー人口を増やすのに加えて、見る人を増やすことも重要だと思ってるのね。興味を持って見に来てくれた人が、コメント欄の荒れ具合を見ていい印象は持たないよ。
倉持:普通に視聴者として見て、悲しくなるコメント欄だとちょっと嫌だよね。
えいた:
昔からある文化な分、オレはこういのが好きだっていう方も一定数いるだろうから、難しいのはわかるんだよね。
倉持:とはいえ、ライト層が増えていかないと、プロへはお金は回っていかないと思うんだよね。集客力のあるプロの方に、メーカーはお金を払うわけだから。ライト層がいなかったら、スポンサーさんもクライアントさんもいなくなっちゃうよ。そういう意味で、プロの食い扶持をファンが潰してはいけないなと思う。
えいた:
そうだね。プロを応援したいなら、なおさらだよね。どうしても、過激な発言をしたいときは、どぐらさんの枠でやって(笑)。
倉持:どぐにゃん、とばっちり!(笑)
えいた:
やっと決まった、格ゲー界の新ルール(笑)。「過激発言は、どぐらさんの枠で」。彼は楽しんでくれるから。
倉持:ごめんねどぐにゃん……業界のために犠牲になってね……(笑)。えいたくんはエゴサーチしたりする?
えいた:
めっちゃするし、毎日する! 気になるっていうのもあるけど、もらった意見を取り入れたいっていうのもあるね。
やり方としては、「さよドラ」「さよどら」の2パターンに加えて、「えいた」ではほとんどないんで「えいたさん」でサーチしてる。1つお願いしたいのが、日課でエゴサしてるんで、「さよドラ」で統一をお願いします(笑)。あと、「えいた」って表記する人は昔からの格ゲーマーなんだけど、最近の時流に合わせて「えいたさん」にしてほしい(笑)。
悪口でもいいので、みなさんの声をお待ちしてます!
倉持:私もえいた“さん”をつけて呟かなきゃ(笑)。2018年はどんな年でした?
えいた:
激動の1年でしたね。チャンネル登録者数は半年で40万人突破して、最初は環境の変化についていけなかったときもありました。今はちょっと感覚が麻痺してる部分があると思うんですが、普通は1つの動画で何十万再生とかはありえないですもんね。
自分でもこれは普通じゃないと思うようにしてて、この数字をできるだけ維持できるように考え続けた1年でした。
倉持:2019年はどんな年にしたい?
えいた:
YouTuberとしてもがんばるし、できれば格ゲーの海外大会にも行きたいですね。いろんな形で格ゲー界にも還元していきたいので、応援よろしくお願いします。
倉持:YouTuber兼格プロゲーマー兼ミュージシャン兼俳優兼えいた“さん”ですね。ありがとうございました!
写真・大塚まり
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