立ちふさがる強豪たちに破壊王はどう立ち向かう!? 「鉄拳」で快進撃をつづける彼の内側に迫る【前編】

まさかり仁
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プロライセンス制度が導入され早数カ月。今日までに多くの強豪プレイヤーがライセンスを獲得し、プロデビューを果たしている。これを新しいプロゲーマーの基準として見据え、獲得を狙っているプレイヤーも数多くいることだろう。

そんな多くのプレイヤーが求めるライセンスを「鉄拳」でいち早く獲得したのが、「闘会議 2018」で行われた大会のベスト4に入賞した破壊王選手だ。

【鉄拳 プロチャンピオンシップ】出場選手紹介PV「破壊王」

「鉄拳」のプロゲーマーとして先陣を切った彼がどんな心境であるのかを尋ねるべく、今回は彼にインタビューを行った。

話を聞くと、驚いたことに破壊王選手はもともとライセンスを取ろうとして大会に参加していたわけではないという。プロの称号を与えられ、最初は右も左もわからない状態。そんな彼が、初めての「鉄拳」との出会いから、ライセンス取得、そしてプロとして活動する決意を固めるまでの話を語ってくれた。

聞き手:まさかり仁
執筆:セスタス原川
■破壊王
大阪府出身。鉄拳シリーズのキング使い。“関西の盾”と称されるほどの防御型スタイルで、「鉄拳7」ではキングの最高段位に君臨。「闘会議 2018」で行われた大会で4位となり、プロライセンスを獲得。

【大会実績】(一部抜粋)
2015年 鉄拳20周年特別賞金制大会 鉄拳7 無差別3on3部門 3位
2015年 MASTERCUP.8 鉄拳7 準優勝
2016年 YNC ユウノビ杯 MASTERCUP AC TEKKEN7 FINAL 5on5 優勝
2018年 バンダイナムコエンターテインメント公式 日本王者決定戦 鉄拳7 3位
2018年 EVO Japan 2018 鉄拳7FR 9位

Twitter:@1206_king

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「鉄拳」との出会いは偶然。プレイヤーネームも偶然!?

――:そもそも「鉄拳」シリーズを最初に遊んだのは、いつころでしょうか。

破壊王:
最初に遊んだのは「鉄拳5」です。中学生のころに友達とゲーセンに行って、不思議と「遊んでみようぜ」という流れになったのです。今思えば何の脈略もなく本当に偶然でしたね。ただ、そのとき僕は「子持ちししゃも」というプレイヤーネームのペク・トー・サン使いと、「おにぎり先生」というキング使いにボコボコにやられてしまって……。 
 
 
――:彼らにやられたことで、やる気に火が付いたということですね。

破壊王:
はい。この出来事は今でも覚えていますね。とにかく悔しかった。そこから土日は朝から友達の家に行って、「鉄拳」の家庭用版で練習しつづけました。それこそ寝ている友達を横目に、自分は「鉄拳」をやるという……気付いたらそれほどハマってしまいました(笑)。

それを機に、ゲーセンに通いながら腕を磨く“鉄拳生活”が始まりました。当時は地元大阪にある「エンジョイパラダイス」というゲーセンに通って、ゲーセン友達と一緒に競い合っていました。
 
 
――:ちなみに「破壊王」の名前の由来についても教えてください。プロレスラーの橋本信也さんから由来しているとよく耳にしますが。

破壊王:
よく言われるのですが、じつはそれは誤解です。僕は「鉄拳」をはじめた中学生のときから「キング」(※)を使っていたのですが、プレイヤーネームを考えるとき、友達に相談したら「破壊王とか強そうちゃう?」とその場の思い付きで生まれたのです。それに、“キング”と“王”も合っているので。

……と、そういうよくわからない理由でつけてしまったプレイヤーネームを、かれこれ十数年使っています。 

※キング:ジャガーの覆面がトレードマークのプロレスラー。
投げ技を中心としたキャラクターとして、その威力も高い。数少ない“投げコンボ”をもつ。
画像は「TEKKEN7」キャラクターエピソードトレイラー2より


 
――:「破壊王」も斬新な名前だと思いますが、「鉄拳」のプレイヤーはユニークな名前の人が多いですよね。

破壊王:
多いですね。いろいろいますが、「加齢」(※)なんかは特にそうですよね。

見た目をそのまま名前にしただけ。しかも、加齢は中学生から見た目が変わってなくて、むしろ今の方が若くみえます(笑)。彼に関しては当時「中学生でその見た目!?」みたいな感じでしたから。今は25、6歳でその見た目なら「ちょっと老けているかな?」くらいなので、歳を取ってマシになったかなと。

※加齢:鉄拳プロプレイヤー。破壊王選手とは、同じ大阪府出身の盟友。
同郷だったふたりは、その名前を全国に轟かす前から互いに腕を競い合っていた。
WELLPLAYED JOURNALでは、彼の単独インタビューを掲載している。
破壊王選手とのエピソードについても語られているので、こちらも併せてチェックしてほしい。


 
――:破壊王選手は今や日本屈指のプレイヤーですが、いつから自分が強くなったと感じるようになりましたか。

破壊王:
2009年9月に開催された「MASTERCUP.3」(鉄拳の5on5大会)に出場してちょっと活躍してからは、急に野試合も勝てるようになりました。シリーズタイトルでいえば、「鉄拳6 BLOODLINE REBELLION」のころです。

その前は「鉄拳」の聖地と言われる大阪のゲーセン「モンテカルロ」に行くようになったのですが、そこではずっと負けつづけていて、大会に出場してもパッとしませんでした。でも、宮田さんという師匠にいろいろと教えてもらったおかげで、強くなることができました。
 
 
――:加齢選手も宮田さんに教わっていたようですが、おふたりが出会ったころの実力は。

破壊王:
出会ったころはまだ数字段でした。宮田さんに教えてもらうようになってから一気に上達しました。「MASTERCUP.3」に出場するころには風神くらいになっていましたね。

破壊王選手の強さが宿るターニングポイントとなった大会「MASTERCUP.3」
動画では、PERFECTや大逆転勝利など破壊王選手の活躍がみられる

――:すごい上達ですね。師匠の教えが良かったのでしょうか。

破壊王:
宮田さんは理論派の人間で、細かい部分まで教えてくれました。さらに人柄も良くて、ちょっと意地悪な感じもあるのですが、それがツンデレみたいな感じで……とにかく良い人でしたね。
 
 
――:自分のプレイスタイルはどんな形だと分析していますか。

破壊王:
基本守り重視で、相手の癖を読むパターンが多いですね。ただ、それも影響してか初めて戦う人に対しては弱いというのがあります。
 
 

「鉄拳」から離れようと考えるも……持ち前の実力でプロに

――:2018年1月には、「鉄拳7」の公式大会“日本王者決定戦FINAL”が開催されました。破壊王選手は、西日本1位として決勝トーナメント進出を果たしましたが、この大会を機に“一線を退こう”という話を耳にしました。

破壊王:
ええ。ちょうど結婚して、広島で仕事も始めたタイミングだったので、「鉄拳」をプレイする時間がなくなってきたのが理由です。もちろん「鉄拳」自体は辞めないけど、本格的にやるのを辞めようかなと思っていました。そうしたら、西日本1位として決勝トーナメントに進出してしまい、結果的に3位となりました(笑)。

“日本王者決定戦FINAL”。破壊王選手は、pekos選手に敗れて3位となった

――:そこからのご活躍は目覚ましいですね。2018年2月開催の「EVO JAPAN」では9位でした。印象に残った試合などはありましたか。

破壊王:
今でも頭をよぎるのは、のろまとの2戦目ですね。あれは本当に「なんでそれなん!」というもどかしさがありました。あと少し小突けば倒せる体力なのに「なにをしてんねん!」……と。自分で言うのもなんですが、あれだけはありえなかったですね。

結果は9位でしたが、まあまあ頑張ったかなと思います。あのときは、今まで勝てなかったノビさんにも勝つことができたので思い出深いです。

「EVO JAPAN」破壊王 vs のろまの戦いはリンク先より閲覧可能
 
 
――:そして、2018年2月開催の「闘会議2018」では、4位の成績で見事プロライセンスを獲得しました。

破壊王
はい。ただ、プロライセンス獲得ラインが4位だったので、本当にギリギリでした。当日はトーナメントの相手をくじ引きで決めていたのですが、とにかく「ノビさんには当たりたくないなー」と思っていましたね。最後に残ったふたりがノビさん、S.H.O.Wさんで、うまいことノビさんを避けてS.H.O.Wさんとの対戦になりました。結果3-0で勝てましたし、個人的に運が良かったなと思います。
 
 
――:やっぱりノビ選手は当たりたくない強敵ですか。

破壊王:
そうですね。ノビさんは、龍神、拳王など、最高段位を維持しているプレイヤーです。加えて、「EVO JAPAN」以前はあの人に1回も勝ったことがありません。だからずっとやりたくないと思っていました。
 
 
――:改めて「闘会議2018」を通して感想は。

破壊王:
大きい会場で戦うのが初めてなうえに、これまではチーム戦がほとんどだったため、個人戦にもなると、立っていられなくなるほど緊張してしまいました。
 
 
――:メンタル面で負けている部分があったということでしょうか。

破壊王:
はい、本当にメンタル的な意味ですね。それが影響してか、去年は特に不振の年でした。とにかく個人戦は緊張してしまって、自分より段位が低い人にもよく負けてしまいました。
 
 
――:メンタルが整ってないと、具体的にどういった部分に影響が出るのですか。

破壊王:
緊張で攻められない状態になっていました。「ここで(相手に)暴れられたら嫌だな」と思って、守りにはいってしまう。結果、相手に暴れられて負ける。最近では、その意識を変えて「負けてもいいから攻めよう」と思うようになってから勝てるようになりました。
 
 
――:プロライセンス取得後の心境はいかがですか。

破壊王:
プロライセンスを取得したことにより、「賞金大会に出場できます」というチケットくらいにしか最初は思っていませんでした。ですが、いざ実際にプロになってからは、みてくれている人に喜んでもらう、また自分の放送では積極的にアドバイスするなど、意識的な変化がありました。
 
 
――:やはり“プロ”という言葉の大きさを感じたということですよね。

破壊王
そうですね。プロという肩書の存在は大きいと思います。
 


 
幾重もの“偶然”の出会いで気が付けばプロに。なんとなく命名した“破壊王”というプレイヤーネームだが、その名を体現するかのように“飛ぶ鳥を落とす勢い”で成長をみせていった。後編では、「プロチャンピオンシップ」の振り返りをはじめ、海外勢の現況、そして今後の展望について伺った。

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記者プロフィール
まさかり仁
バンダイナムコエンターテインメント「鉄拳」シリーズの世界最高峰5on5大会「MASTERCUP」主催者。無類の大会好きで、鉄拳&ソウルシリーズをこよなく愛する。自身も鉄拳歴24年のプレイヤーであり、メインキャラは風間仁。

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