立ちふさがる強豪たちに破壊王はどう立ち向かう!? 「鉄拳」で快進撃をつづける彼の内側に迫る【後編】
「プロチャンピオンシップ」でついにノビ選手に勝利
――:2018年3月には、プロライセンス選手8名による賞金制トーナメント大会「プロチャンピオンシップ」が開催されました。思えば1回戦目はノビ選手でしたね。
破壊王:
まさか一番当たりたくないノビさんが1回戦目……まさに鬼門でした。案の定というか、0-2で負けてLosersトーナメントにまわりました。
――:ただ、タケ選手との試合は印象的でした。
破壊王:
あれは本当にギリギリの試合でしたね。最初に3タテされて、2ラウンド取られて、逆3タテして取り返すという形で息を吹き返しました。普段から加齢と対戦していることもあり、対「一美」戦はその経験が生きましたね。
最初は押されていたが、後半にまさかの大逆転
――:そのあとは、ダブル選手、AO選手、ノビ選手、のろま選手、と強豪との試合がつづくわけですが、いかがでしたか。
破壊王:
あそこでノビさんにリベンジできたのは嬉しかったですね。なにより自信につながりました。次に当たったとしても「いけそうな気がする」という気持ちになりますね。勝利の要因に「これだ!」というものはありませんが、思えば相手の下段攻撃の読みにうまく合わせられたのかなと思います。
2対2で迎えた最終戦を見事破壊王選手が制した
――:その後はのろま選手に敗れてしまいました。破壊王選手は「EVO JAPAN」でも負けていた相手になります。大会で対面したときの印象はどうでしたか。
破壊王:
もちろん強いのは知っていたので「嫌だなぁ」と思っていましたが、キャラがちょっと予想外でしたね。「ドラグノフ」で来るかなと思っていたら、まさかの「デビル仁」。そのときは「彼のデビル仁とは戦ったことないぞ……!」と動揺したものです(笑)。
――:破壊王選手からすると、「ドラグノフ」の方が良かったのですか。
破壊王:
「ドラグノフ」も厳しいですけど、その前にノビさんとも戦っていますし、ある程度対応できるかなと思っていました。でも、まさか「デビル仁」を選んできたという。あれは強かったです。
この戦いでノロマ選手に敗れた破壊王選手は2位となった
――:優勝を逃したとはいえ、2位という素晴らしい結果となりました。
破壊王:
素直に嬉しいです。やはり個人的にノビさんに勝てたことが大きな収穫です。これからまだまだ大会は開催されていきますが、今回の収穫をもって、これから自信をもって出場できるかなと思います。
――:逆に優勝を逃したのは何が足りなかったと思いますか。
破壊王:
後々見返してみると、のろまやダブルのときなど、いろいろなところで“よくみる行動をとっていた”ので、事前に観察しておけばよかったなと後悔しました。
――:大会の日までに癖を読めていたら、もしかすると……。
破壊王:
勝てた可能性もありましたね。大きく動くのか、細かく動くのか、あとで自分を動画でみると「いや、そこはそっちやろ!」といろいろ思うところがあるので、勿体なかったなと感じます。「プロチャンピオンシップ」も緊張しましたが、ただ「闘会議2018」ほどではありませんでした。多くの大会出場を経験して、次第に緊張することに慣れてきているのかもしれません。
――:また、「プロチャンピオンシップ」でみせたスペシャルな投げコンボも印象的でした。最近投げ技を多く使っているのは理由があるのでしょうか。
破壊王:
投げコンボに伴うリスクが嫌なので、とにかくチャレンジしている形です。以前までは投げを狙わないとダメージが取れないのに、守った挙句、相手に攻められて負けることがつづいたのです。加齢とかにも「あそこは行かないと勝てないよ」と注意されましたね。その反省を活かして、オンライン予選のときから「負けてもいいから詰める」というスタイルにして、そこからうまく勝ちだした形です。
不安と緊張の海外勢への挑戦
――:8月に開催される「EVO 2018」についての意気込みはいかがですか。
破壊王:
じつは、僕は海外の大会に出場したことがありません。もっと言うと海外にも行ったことがないのです。そこでいきなり「EVO」という大舞台に出る。緊張はしますが、行かせてもらうからには、最低でもベスト16……いやベスト8くらいには行きたいですね。
――:初海外が「EVO」とは、すごいハードルが高いですね。
破壊王:
嬉しい反面、プレッシャーもあります。相手にしても、日本人の腕はある程度わかるじゃないですか。でも、全く知らない人たち、始めて知る人たち、さらに外国人……。
――:不安もわかりますが、雰囲気は「EVO JAPAN」で体験できたのではないでしょうか。
破壊王:
「EVO JAPAN」は、最初の何試合かは海外の方でしたが、二次予選は日本人、決勝前ものろまなど、ほとんど日本人だったので……。最近の海外大会では、韓国プレイヤーが壇上にあがることが多いので、ぜひ日本人としてあがっていきたいですね。
――:韓国プレイヤーの勢いが注目されていますが、韓国と日本では明確になにが違うのでしょうか。
破壊王:
動画をよくみているのですが、もうキャラの対策が仕上がりすぎていて尋常じゃないんですよね。どのキャラを相手にしても、すごく嫌がる行動を取るのです。相手からしたら、かなりやりにくい状況で戦っている印象ですね。
――:韓国自体プレイヤーの層が厚いから、キャラ対策が日本よりできているということでしょうか。
破壊王:
というより、詰めるところを一生詰めつづけているイメージですね。やり込みの面が強い気がします。恐らく我々と比べて練習量が全然違うと思います。韓国勢は毎日配信して、毎日家庭用やっているでしょう。
――:日本のプレイヤーは、家庭用で遊ぶことは。
破壊王:
少ないですね。僕は「鉄拳」好きだしやるゲームもコレしかありませんが、今の家庭用は段位が上がるとなかなか相手がいないんですよね。その結果、「ファラン」「シャオユウ」「ラッキークロエ」など使いたくないサブキャラを使うことになって……。「鉄拳」はやりたいのに、自分のメインキャラでプレイできないジレンマがあります。
――:詰まるところ、「もっとみんな家庭用版やって!」ということですよね。
破壊王:
そうですね。対戦相手がいない問題もあるので、もっとみんなにプレイしてもらいたいです。
目指すは“個人戦で優勝”
――:今の日本の「鉄拳」の勢力図は、破壊王選手から見てどういう順位でしょうか。
破壊王:
以前までは、1位が九州、2位が関東、3位が関西というイメージだったのですが、今は関東が一番強いような気がします。
――:そんな関東で注目のプレイヤーは誰でしょう。
破壊王:
ノビさんを筆頭に、タケさん、古水さんなど、ほかにも強い人はたくさんいますよね。
――:やはり「鉄拳」といえば九州のイメージもありますが、現在九州の状況はどうなっているのでしょうか。
破壊王:
九州はチリチリ、のろま、チクリンさん、けいすけくらいしか思い浮かばないんですよね。たいせいもあんまりやってなさそうだし、ゲンも受験でやってないし……。人口の差もあるのですが、今だったら関東の方が強いのではないかなと思います。
――:出身の関西は……。
破壊王:
関西は3位ですね。
――:手厳しい。その原因はなんでしょうか。
破壊王:
純粋に「鉄拳」を本気で強くなろうと思っている人が少ないのではないかと思います。ほかの地域と頭ひとつ、いやふたつくらい差があるのではないかと思います。
――:今は劣勢の関西ということですが、大阪のプレイヤーにメッセージはありますか。
破壊王:
「鉄拳」を頑張ってほしいというのはありますが、最近はたぬかなのCYCLOPS対戦会とかもあるので、楽しみながら強くなってほしいですね。せっかくたぬかなたちが盛り上げようとしてくれているので、一緒に盛り上がってほしいです。
とはいえ、昔の自分が強くなった激しい時代に戻ってほしい気もしますけど(笑)。アレについていける人は強くなります。当時は彼らといい勝負したり、勝ったりしたら、「お前やるやん」といわれるのが嬉しかったんですよ。「お前、つよなったなー」という一言がすごく嬉しい。
――:現在広島にいらっしゃいますが、地元大阪に戻りたいと思いますか。
破壊王:
「鉄拳」的には戻りたいけど、仕事的には戻りたくないですね(笑)。
――:破壊王選手から見て、ライバルのプレイヤーはいますか。
破壊王:
もちろん、昔からライバルでありつづけているのは加齢ですね。ほかには、“打倒”という意味ではノビさんですね。あとはダブルとかもライバル視しています。
ダブルとは歳も近いし、「MASTERCUP.3」でも一緒のチームメンバーにもなったこともあり、結構対戦するのですが、めっちゃいい勝負するんですよ。だから、はっきりさせるためにもダブルには勝っておきたいと思います。そういう意味だと、のろまも目標のひとりですね。
――:最後に、今後の活動への意気込みをお願いします。
破壊王:
とりあえず、なにがなんでも個人で1回は優勝したいですね。2位はあっても、まだ優勝ない……。優勝して、「キング総会」の人たちに「キングで1位取ったぞ!」と報告したいです。
ノビ選手という壁を越え、プレイヤーとしてひとつの殻を破ることに成功した破壊王選手。しかし、彼の前には「EVO」で対面することになる韓国勢、プロとして参戦することになった長年のライバルである加齢選手など、まだまだ超えるべき壁が立ち並んでいる。
前回の「プロチャンピオンシップ」では、のろま選手という壁に阻まれ2位となったが、次回は破壊王選手が“優勝”という忘れものを取りにくるのか。そして、学生時代から続く加齢選手との勝敗の行方は。今後の「鉄拳」のプロたちの動きから目が離せない。
「鉄拳」強豪プレイヤー加齢選手をプロの道へ踏み出させた“友との約束”と“決意”【前編】
これまでプロの肩書きを背負うことのなかった加齢選手が、ようやくプロゲーマーとして活動することを決意した理由も明らかに。彼がどんな決意でプロゲーマーになったのか。読者であるプレイヤーの皆さんには、ぜひ知ってもらいたい内容だ。
鉄拳 プロチャンピオンシップ優勝者、ノロマ選手の心境に迫る
「鉄拳」初の公式プロトーナメント「鉄拳 プロチャンピオンシップ」で見事優勝した“鉄拳修羅の国の覇者”、ノロマ選手のインタビュー記事。彼が何を考え、技を振っているのか。そして、何を思い、試合に臨んでいったのか。