「FIFA」などサッカーゲーム界のW杯で活躍を見せるマイキー選手の軌跡【前編】

セスタス原川
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デジタルハリウッド大学では、新たな部活動としてesports部が発足した。そこで、世界的サッカーゲーム「FIFA」において活躍しているプロゲーマー・マイキー選手が顧問として部員の指導を担当する。

マイキー選手は、国際サッカー連盟(FIFA)が主催する世界大会に出場した経験もある、サッカーゲームにおいて日本を代表するプロゲーマー。世界大会で32人のみが通過できる予選を勝ち抜ぬくという快挙を成し遂げており、世界に通用する実力を持った選手の1人だ。

今回は、デジタルハリウッド大学内に発足した大学公式のesports部へ入部を希望する学生たちの入部審査が行われた。審査では学生たちがトーナメントによる大会を行い、その様子をマイキー選手が直々にチェックを行う。

本稿では、その審査を終えたあとのマイキー選手のインタビューの模様をお伝えする。彼のプロゲーマーとしての生い立ち、顧問に就任した感想などを語ってもらった。また、世界を舞台に戦ってきたからこそ言える日本のサッカーゲーム事情など、興味深い話も聞くことができた。

執筆:セスタス原川

 

マイキー:「自分より強い相手に挑戦してみたい」、 そう思った事をきっかけに競技として、 サッカーゲームの大会に出場するようになり、 サッカーゲーマーとしての活動を本格的に始動。

そこから約9年間、 常に世界のトップレベルで戦いつづけ、 2015年にFIFA部門の最高峰の大会であるFIFA Interactive World Cupに初出場、 昨年ロンドンにて開催された2017年大会にも出場し、 世界の強豪選手としのぎを削ってきた。

今シーズンから名称がe WORLD CUPへ変更となったこのワールドカップだが、 今大会も見事にオンライン予選を通過し、 2018年4月にヨーロッパで行われたオフラインでの予選決勝大会や5月にパリで開催されたFIFA e Club World Cup 2018にも出場した。

名前:マイキー
Twitter:@SubaridasMikey

大会実績
ウイニングイレブン (KONAMI)
・PES /WE World Finals 2010 日本代表選抜大会 優勝→世界大会出場
・PES /WE World Finals 2011 日本代表選抜大会 優勝→世界大会 準優勝

FIFA (EA SPORTS)
・東京ゲームショウ2012 FIFA12部門 優勝
・Red Bull 5G 2013 SPORTS部門FIFA14 優勝
・FIWC FIFA 14 オンラインランキング 2位 97連勝
・ESWC 2014 日本予選 優勝 →世界大会出場 2勝2分3敗 5位
・ESWC 2015 日本予選 優勝 →世界大会出場 2勝3分2敗 5位
・FIWC 2015 Grand Finalist
・ESWC 2016 Grand Finalist Best16
・第1回日本eスポーツ選手権大会 準優勝
・FIWC 2017 Regional Final ROW 優勝

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入部審査(学内トーナメント戦)の模様

インタビュー前に、入部審査(学内トーナメント戦)の模様を紹介。今回の入部審査では、プレイステーション4版「FIFA 18」を使用したトーナメント戦が開催。

▲審査会中は、マイキー選手が学生のプレイを背後からチェック

▲各試合後には、マイキー選手からの講評も

流れとしては優勝者を決めるものだが、審査基準は何も勝利することだけではない。当然スキルも必要とされるが、各々のプレイスタイルや個性、伸びしろなども審査の対象となり、後日行われる面談を持って最終的な入部者が決まるという。

当日は、「FIFA 18」経験者はもとより、これまでほかのサッカーゲームで腕を磨いてきた学生たちが多数参加。当初、入部審査中の室内は、学生たちの声援やシュートを放ったときの歓声など盛り上がりを見せたが、試合が進むにつれてその展開も激しさを増し、気が付くと室内は静まり返り、皆画面を凝視し、試合展開を見守っていた。

▲試合後に健闘を称える学生たち

インタビュー中も語っているが、マイキー氏いわく、“サッカーゲームならではの大会模様”と独特な雰囲気について言及してくれた。試合の末、優勝者が決まり、入部者は後日個別面談をもって決まっていく。入部者は「FIFA 18」を主とした国内におけるesports活動が中心になり、今から彼らの活躍が楽しみである。
 
 

“プロゲーマー・マイキー”誕生までの経緯

――:審査会、お疲れさまでした。ここからはインタビューに移らせていただければ幸いです。まずは、マイキーさんご自身のことについてお伺いしたいと思いますが、そもそも最初に「FIFA」を遊んだきっかけを教えてください。

マイキー:
元々サッカーゲームがすごく好きで、20年くらい遊びつづけています。その流れが途絶えることなく、今も自然と遊んでいるという形ですね。
 
 
――:現在は「FIFA」を中心にプレイされていますが、サッカーゲーム以外のジャンルのゲームに触る機会もあるのでしょうか。

マイキー:
いえ、基本的にほかのゲームはやっていません。もちろん遊びでやったりすることはありますけど、遊びの範疇を出ない程度で、一般の方と変わらないプレイ時間くらいです。やはりと言いますか、サッカーゲームをプレイするのがほとんどです。
 
 
――:マイキーさんは実際のサッカーの経験もあるとのことですが、それはいつくらいのころから。

マイキー:
サッカーは元々幼稚園くらいからやっていました。だから小さいころからサッカーが好きで、その流れでゲームにハマっていった形です。実際のサッカーも好きなので、今でもサッカーの試合を観戦する機会は多くありますね。
 
 
――:今はプロとして本格的にゲームに取り組んでいますが、プロゲーマーになったタイミングはどのくらいの時期でしょうか。

マイキー:
流れで今の立場になったというのはありますが、きっかけになったのは初めて「FIFA」の世界大会に出場したときですね。2014年くらいの話になります。そこが大きな転機になりました。
 
 
――:それがきっかけでこの道に入り、上位を目指すようになったのですね。

マイキー:
この道に入ったとはいっても、当時はそれだけで食べていけるとは思っていませんでした。単純に世界大会に優勝したいという想いでつづけていたら、たまたまこうなっていたというのが正しいです。それを目標にしてやってきたのではなく、勝つためにつづけていただけ。そのような中で運良く、スポンサードやマネージメントをしていただけるようになったという形です。
 
 
――:ジャンルは異なりますが、格闘ゲームのプロ選手にお話を聞くと、同じようにプロを目指してやっているわけではないという方は多いですね。

マイキー:
恐らく今プロゲーマーとして活動している方はそういう人が多いと思います。気が付いたらプロになっていたという。今ではプロゲーマーの存在が認知され始めているので、これからの世代はプロを目指して、そのために何かをする人が出てくるのかと思います。
 
 
――:まさに今回のesports部に参加するような人たちですよね。

マイキー:
僕ら世代では、格闘ゲームのウメハラさんのような当時からのトッププレイヤーを除けば、同じように「勝ちたいから」という理由でゲームをやっていて、そこからプロになった人が多いのではないかと思います。格闘ゲームでは早い段階でそういう話も出てきましたが、僕の場合はジャンルの違いもあって、プロという存在との関連性は薄かったですね。


 
 
――:普段の練習はどのくらいされているのでしょうか。

マイキー:
じつは、毎日ずっとやっているというわけではありません。基本的に週末のウィークエンドリーグというモードがあり、それを毎週末にやっています。これは「FIFA 17」から導入されたモードですが、これが世界大会に繋がっているのです。このモードの戦績によって世界大会に出場できるかが決まる、いわばオンライン予選になっています。週末はそれを、ほぼ強制のような形でやっていますので、大会を目指す人たちはこれを週末に何十時間もプレイしているんです。
 
 
――:短期集中でプレイしているんですね。では平日のプレイは控えめということでしょうか。

マイキー:
そうなります。逆に平日は「FIFA」をやる機会は少ないですね。週末がかなり濃い時間なので、疲労も溜まってしまいます。その反動もあって、平日にゲームを起動する機会はあまりありません。これはほかのプレイヤーにも共通することだと思います。
 
 
――:では、週末に一気にプレイして、そこでいろいろな発見をして次回に活かすという練習をされているんですね。

マイキー:
はい。その繰り返しです。ウィークエンドリーグは世界ランキングが毎回更新されるので、その上位を目指してプレイしています。もちろん、自分の試合はあとから見直して改善点を見つけたりもしています。トップ層の試合も見られるので、それを見て研究をするというのも練習の一環です。
 
 
――:ちょうど現実世界では「2018 FIFAワールドカップ(W杯)ロシア」が開催間近というタイミングですが、サッカーゲームはリアルのサッカーに近しいものになっていて、よくメディアでもゲームのCPUを使って試合の再現をしたりする企画があります。マイキーさんご自身もゲームとリアルのサッカーが重なる瞬間みたいなことはあるのでしょうか。

マイキー:
実際のサッカーを見ていて、攻撃や守備が失敗したとき「自分だったらゲームではこうやって動いて、もしかすると点が取れたかも」と考えることはありますね。もちろん結果論になってしまいますが(笑)。そういう妄想シミュレーションみたいなものは、試合を見ながらよくやっています。サッカーゲームをやっている人にとっては“あるある”だと思います。
 
 
――:やっぱりゲームをやっていると、リアルのサッカーにゲームを重ねることがあるんですね。

マイキー:
じつは逆の場合もあります。リアルのサッカーで、ゲームではないようなプレイがあったときに、それをゲームで練習してみて、取り入れられないか試してみるなど。そういった部分から、リアルのサッカーとサッカーゲームの繋がりを感じる場面はたまにあります。
 
 

試合中の静寂は熱狂している証

――:「FIFA」の試合を観戦していて印象的だったのが、熱狂すればするほどギャラリーが静かになるという部分でした。これが独特といいますか、ほかのesportsタイトルにはない雰囲気だと思います。

マイキー:
そうですね。ゴールが入った瞬間には歓声は上がったりもしますが、それまでのプレイ中は自然と静かな様子になります。声を出さないのがマナーということではないのですが、単純に見入ってしまう、リアルのサッカーも同じ部分があるのではないかと思います。
 
 
――:その独特な空気感はほかのジャンルでは聞いたことがありませんね。

マイキー:
確かにその辺は異質な部分ですね。僕もほかのジャンルのゲームでは聞いたことがありません。サッカーゲームならではのものだと思っています。
 
 
――:試合を見ているギャラリーの様子は、やはり国ごとに特色があったりするのでしょうか。

マイキー:
サクラというわけではありませんが、外国人の中でもアメリカ人なんかは特に騒いでくれますね。国によっては歓声があがることが多かったりと違いはありますが、基本的には静かな雰囲気なのは同じです。
 
 
――:「FIFA」は世界中で遊ばれている作品ですし、そういった意味ではesportsシーンの中で世界規模の熱量を持ったタイトルなんですね。

マイキー:
海外では日本以上の盛り上がりを見せている国が多数ありますよ。
 


 
サッカーゲーム界のワールドカップ(W杯)で活躍を見せるマイキー選手。後編では、“教える側”に初挑戦した心境をはじめ、現役選手から見る“日本が抱える問題”について言及。

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記者プロフィール
セスタス原川
カードゲームが恋人のライター。「電撃オンライン」などゲームメディアで記事を執筆中。得意分野はもちろんTCGとDCG。ライターだが選手としての一面もあり、ときと場合によって肩書きが変わる。

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