「その1点が重い」…若手の育成にも励むマイキー選手、サッカーゲームの試合で求められる“精神力”の大切さを語る【後編】

セスタス原川

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【前編記事】「FIFA」などサッカーゲーム界のW杯で活躍を見せるマイキー選手の軌跡【前編】
マイキー選手は、国際サッカー連盟(FIFA)が主催する世界大会に出場した経験もある、サッカーゲームにおいて日本を代表するプロゲーマー。デジタルハリウッド大学内に発足した大学公式のesports部の顧問も務め、先日行われた入部審査では、その様子をマイキー選手が直々にチェックを行った。インタビュー前編では、そんな審査会の模様をはじめ、マイキー選手とサッカーゲームとの出会いについて語ってもらった。
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“教える側”に初挑戦

――:今回の部の顧問というものは、マイキーさんにとっても初の試みかと思います。学校の部活動からプロの選手を育てていくということですが、今回それに臨んだ率直な感想はいかがですか。

マイキー:
自分にとってはもちろん、本当に誰もやっていない試みだったので、どのようにやったらいいのか手探り状態でした。今回参加してくれた6人の学生さんの試合を見ていると、真剣に勝負に挑んで試合をしてくれていたので、思ったよりもレベルも高かったですし、その点は良かったかなと思います。
 
 
――:学生たちの前向きな様子が雰囲気から感じられましたね。そのやる気のようなものをマイキーさんも感じられたのではないかと思います。マイキーさんご自身、これまでに誰かに技術を教えるといった経験はありましたか。

マイキー:
もちろん機会はありましたが、教えると言っても試合をしてその中で教えるみたいな感じの軽いものでした。そこで終わったあとに一言アドバイスをしたりなどはありましたが、今回ように顧問と学生という、上下関係が明確な状況で教えるというのは初めてになります。


 
――:試験となる大会を終えて、優勝者の学生さんが決まったわけですが、今後の流れとしては参加者の中からメンバーを選んで本格的に指導していくという形になるかと思います。その際に選ぶ人数などは現段階で決まっていますか。

マイキー:
いえ、現段階では人数の指定は特に言われていないので、このあと個人面談を行ってから改めて人数を決定する予定です。
 
 
――:意外だったのが、試験の大会で優勝しなくても部員として選出される可能性があるということですね。

マイキー:
現状の実力は大事ではありますが、日本トップ、世界を目指すとなると、伸びしろというか、どれくらい今後の可能性を感じられるかということを重視しています。極端な話、現状プレイが上手くても伸びしろが無ければ成長するのは難しいかなと思っています。
 
 
――:今後の取り組み方について、具体的な方針は決まっているのでしょうか。

マイキー:
教え方については、やはりゲームをプレイしながら、という形になります。個人面談の内容も含めて、今後方針を決めていくことになると思います。
 
 
――:マイキーさんご自身は、ここまで成長させたいといった目標のようなものは見据えているのでしょうか。

マイキー:
正直、面談してからじゃないと決められないという部分が大きいです。理由としては、どこを目指していくのか、具体的な目標を学生から聞いてみて、その意識やモチベーションに合わせた教え方をしていこうと考えているからです。ただ、いきなり世界を目指すと言っても現実的な話ではありませんから。
 
 
――:まずはレベルに合った指導をしていく形になると。

マイキー:
はい。今のレベルで来年世界大会に出場できるかというと、正直に言って難しいと思います。それが最終目標にはなってくるとは思いますが、まずは途中途中の通過点を用意して、どう段階を踏んでいくかというのをこれから考えていきます。当面は日本のトップ層に入るなど、身近な目標を決めてもらって、そこを目指して練習をしていく形になります。
 
 
――:あとは、プロゲーマーの方々は試合に対しての精神面の部分が問われることも多いと思います。マイキーさんはテクニック以外の部分をどうやって学生たちに伝えようと考えていますか。

マイキー:
サッカーゲームの話でいうと、1点が他のゲームに比べて“重い”という特徴があります。サッカーは点を取りにくいスポーツなので、試合中にリードされてしまったとき、なかなか取り返せないその1点が重くのしかかることになります。

その辺が非常にシビアなゲームで、他のジャンルのゲームとは異なる精神力が求められると考えています。そこの精神面は口で伝えるのがとても難しい部分なので、実際に試合に挑んでもらって、経験を積んで学んでもらうことになると思います。
 
 
――:精神的な部分については、学生が自分自身で学んでいくしかないということですね。

マイキー:
もちろん僕の大会での経験を話すこともできますが、それが半分も伝わるとは思っていないので。話を聞いただけでは理解するのが難しいかなと思います。
 
 

現役選手から見る“日本が抱える問題”とは

――:「精神を学ぶためには経験」ということになると、学生さんたちには積極的に大会に参加してもらうことになりますね。

マイキー:
そうですね……と言いたいところですが、日本ではそういう大会がほとんど無いです。これは国内におけるゲームの問題点になってしまいますが、コミュニティが形成できていない状態が続いています。なので、これからは学校主催でイベントなどを開いてもらって、学生たちはそこで経験を積みつつ、そういうところから国内の「FIFA」のコミュニティを盛り上げるというスタートになります。現状の日本では、世界で通用するプレイヤーを輩出しづらい環境になっています。
 
 
――:日本勢の立ち位置というのは、世界的にみてどのくらいの位置づけになっているのでしょうか。

マイキー:
先ほどの問題なども影響してか、残念ながらランクは高くないと思います。ヨーロッパなどと比べると下のランクに居る状態、ヨーロッパ、アメリカの方がプレイ人口も多いですし、実際に差を感じることも少なくありません。


 
――:格闘ゲームとかですとゲームセンターでのコミュニティがあったりして、それが活性化に繋がって世界で通用するプレイヤーが現れるきっかけになります。そのコミュニティが不足しているとなると、新しい選手が生まれる機会も減ってしまうということですね。

マイキー:
まさにその通りですね。そういったコミュニティを広げるための活動もしていきたいと常日頃思っていますが、選手としての活動も考えると、大会を開催したりというのは少し難しくなってしまいます。将来的にはそういったことも大切になってくると思っているので、今回の顧問としての活動をきっかけに、日本の「FIFA」を盛り上げる活動も今後の選択肢に入っていきます。選手としての活動を続けながら、そうした活動もぜひ行っていきたいです。
 
 
――:最後の質問になりますが、マイキーさん個人の今後の展望があればお聞かせください。

マイキー:
プロとして常に目指しているのは大会で勝つことです。そのためには、先ほどの日本の問題の観点から、国内の活動だけでは難しい部分があります。常日頃から海外に足を運んで、向こうのトッププレイヤーと練習をしないと、その領域に到達できないと思っています。

今は国内が活動の中心になっていますが、そういう意味では早く海外に行って、海外のesportsチームやクラブチームに加入して、活動拠点を移したいと思っています。結果的に自分が活躍して、その様子をきっかけに国内の「FIFA」のコミュニティが盛り上がってもらえれば嬉しいと思っています。
 


 

選手と顧問、2つの立場でesportsに関わっていくことになったマイキー選手。今後の大会での活躍はもちろん、あとにつづく選手たちを育成し、自身も実績を重ねることで日本のサッカーゲームコミュニティを盛り上げるインフルエンサーとしての活躍にも期待したい。

そして、今回教え子となる学生たちが、今後どういった成長を見せてくれるのか。期待のルーキーたちの活動も応援していこう。

【前編記事】「FIFA」などサッカーゲーム界のW杯で活躍を見せるマイキー選手の軌跡【前編】
マイキー選手は、国際サッカー連盟(FIFA)が主催する世界大会に出場した経験もある、サッカーゲームにおいて日本を代表するプロゲーマー。デジタルハリウッド大学内に発足した大学公式のesports部の顧問も務め、先日行われた入部審査では、その様子をマイキー選手が直々にチェックを行った。インタビュー前編では、そんな審査会の模様をはじめ、マイキー選手とサッカーゲームとの出会いについて語ってもらった。
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記者プロフィール
セスタス原川
カードゲームが恋人のライター。「電撃オンライン」などゲームメディアで記事を執筆中。得意分野はもちろんTCGとDCG。ライターだが選手としての一面もあり、ときと場合によって肩書きが変わる。

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