スプラトゥーン×パワプロの二刀流を実現するたいじの流儀【前編】

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第3回スプラトゥーン甲子園やE3で開催された2018 Splatoon 2 World Championshipsなど、「スプラトゥーン」の大会で輝かしい成績を残すプロゲーミングチームGGBoyz。
今回、その中心人物であるたいじ選手へインタビューし、突出した実力に至るチームの事情、たいじ本人のゲーマーとしての人生に迫っていく。
ちなみに、たいじは11月10日に開幕したパワプロ・プロリーグにも読売ジャイアンツにeドラフト会議に指名され参戦している。
スプラトゥーンと実況パワフルプロ野球(以下、パワプロ)のまったく異なるジャンルのゲームで戦う“二刀流”を実現する彼の、ゲームに対する思考を探る。
前編では、プロゲーマーとしての生活やスプラトゥーンの大会事情、GGBoyzのチームポリシーにまつわる話をお届け。
年収で家族を黙らせプロゲーマーに
――昨年、それまで続けていた仕事を退職されて、OPENREC.tvでの配信やゲーム大会への出場など、プロゲーマーとして食べていく道に進みました。どんな経緯で決断したのでしょうか?
たいじ:
仕事と両立するとなるとかなり多忙になるのと、ストリーマーに集中したほうがお金が稼げると思ったので思い切りました。退職前も毎日配信していたので、寝る時間もないほどでした。やはり両立は難しいです。
前々からストリーマー一本でいける感触は持っていましたが、ようやくやめれたって感覚ですね。
――生活の中で何か変わったことは?
たいじ:
単純に仕事していた時間をゲームに割けるってだけで、基本的にはなにも変わってないかなと思います。
毎日10~12時間はゲーム、今だったらスプラトゥーンかパワプロをやっています。
――それまで仕事していた時間をまるまるゲームにあてているという感じですね。立ち入ったことを聞きますが、退職にあたってご両親や奥様からは何か言われましたか?
たいじ:
いや、特には何も言われてないかな……。会社員やっていた頃からゲームのほうで収入がありましたし。
さすがにまったく稼いでいなかったら止められたと思いますけど、そこは年収で黙らせました(笑)。
――年収で黙らせましたか……。ぶっちゃけ年収増えました?
たいじ:
もちろん増えました。増えるのがわかりきっていたので退職したところはあります。
ただ、親も嫁もゲームに対して偏見がなくて、たとえ稼げなくても好きなことやればって感じですね。一応、嫁にはちゃんと相談しましたけど、トントン拍子で進みました。
――大阪在住とのことですが、プロゲーマーとして活動するにあたって上京は考えなかったですか?
たいじ:
東京に家があればいいなと思ったことはありますけど、嫁がもともと大阪ということもあって、なにがなんでも東京というのは、考えていないです。
とはいえ、大会出場のためにかなり頻繁に東京には来てますよ。これからパワプロのリーグが本格的に始まると、6週連続なのでさすがに疲れるのは覚悟してます。
ただ、大阪から東京まで2時間くらいなので、慣れてしまえばそこまで苦じゃないです。
自責思考がチームの絆を深める
――GGBoyzを結成してから約1年が経ちます。結成した当初はどんな雰囲気でした?
たいじ:
僕とダイナモンの2人は以前からチームを組んでいて、今後も一緒にやっていくことは決めていたんです。
えとなとやまみっちーは、対抗戦(※)で戦ったことがあって2人のことは知っていました。対抗戦を繰り返す中で、2人が特に強かったので誘いました。
やまみっちーは僕より10歳も年下、えとなも7歳年下なので、はじめの頃は向こうは気を使ってたかもしれないですね。
でも、スプラトゥーンが好きで集まった4人なので、会話も弾んで自然と打ち解けました。
※対抗戦:スプラトゥーンのプライベートマッチで行う練習試合
――スプラトゥーンが好きだという共通の思いがチームをまとめていると。他に、チームとして心がけていることはありますか?
たいじ:
負けたときに、ここをこうしたほうがいいといった反省点を話すことはよくありますね。
ただ、自分で自分の課題を見つけるのが普通になっていて、反省点は個人でしっかりと分析して改善しようという気質があります。お互いに悪いところをあえて指摘することがありません。
それがうまくいっている秘訣なのかもしれないです。
――チームの中で意見が割れることはないんですか?
たいじ:
あんまりないですね。
意見の食い違い自体があまりないし、あったとしても実際にやってみれば無理かどうかがすぐにわかるので、それが原因でチームが前に進まないということはまったくないです。
4人とも、チーム単位でなぜ負けたか敗因を考えるのではなくて、自分の動きがこうだったら勝てたと分析するタイプ。それぞれが自分で反省して、成長して、それを噛み合わせていきます。
負けてもお葬式ムードにはならないです。誰かのせいで負けたとしても、それを指摘することはなくて、むしろその本人がいち早く自分がだめだったって宣言するチームです。
――それぞれが自責思考で動けるチームということですね。強さの理由がわかってきた気がします。
たいじ:
練習はLINEで連絡をとって、20:00か21:00くらいに集まって毎日やっています。やまみちくんが結構寝坊しますけど、若いから仕方がないかなとは思ってます。本人もめっちゃ反省してるので、口うるさく言う必要はないですね。
甲子園2連覇を見据えるGGBoyz
――大会前に、対戦相手の対策をすることってあると思うんですけど、スプラトゥーンではどうやってますか?
たいじ:
スプラトゥーンにおいて対策をすることは、ブキの対策をすることになります。
警戒しているチームのキーマンが使っているブキを調べて、そのブキをいれたチームを相手に練習します。スプラトゥーンは人口が多く、募集すれば練習相手は集まってくれるので練習しやすいですね。
――E3で開催された2018 Splatoon 2 World Championshipsでは、海外ということでいつもの大会とはまた違った雰囲気だったと思いますが緊張しませんでしたか?
たいじ:
ぜんぜん緊張はしなくて、むしろ楽しいですね。一番最初に出た大会の最初の試合はさすがに緊張しましたけど、それ以降は緊張したことがないです。
海外の観客は声を出して応援する人が多い印象です。声援が聞こえてきてテンションが上がる感じがしますが、気持ちが高ぶりすぎて、普段やっていない行動をしないように、逆に気持ちのセーブを意識しています。
――スプラトゥーンの人口って増えてきてると思いますが、大会参加者のレベルはどうなっていますか?
たいじ:
絶対上がってますよ。
上位の人との戦いは常に紙一重ですけど、勝ったり負けたりを繰り返して、どのチームも成長していると感じます。高校生くらいの若いプレイヤーも多いので、これからどんどん強いチームが出てくるんじゃないかと思います。
ただ、練習ではぜんぜん負けてないので、普段通りにできれば僕らが一番強いですよ。
とにかく緊張が最大の敵ですね。僕が緊張しなくても、他のメンバーが緊張するかもしれない。どれだけ練習どおりにやれるか、これがすべてだと思います。
スプラトゥーン甲子園へ向けた練習と並行して、たいじはパワプロ・プロリーグの予選に参加。パワプロ歴4カ月ほどでプロリーグに参戦する腕前へと急成長。後編では、そのポテシャルを探っていく。
class="p-emBox"> 写真・大塚まり