コミュニティー出身の実況者k4senは試合展開すべてを把握する

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2003年に発売された「Call of Duty」(以下、CoD)は、現在に至るまでシリーズ作品が登場し続けている人気FPSシリーズ。大会シーンも盛り上がっており、日本でも世界大会「Call of Duty World League」(以下、CWL)の出場権をかけて「CWL日本代表決定戦」という大会が行われている。
このCoDシリーズを長年プレイし、公式大会の実況をしているk4senさん。本稿では、CoDの実況者になるまでの道のりから、現在のeスポーツシーンに対する考えまで、k4senさんのeスポーツ人生をじっくり紹介していく。
「お前は就職はしないんだろ」と言われた学生時代
――初めに、k4senさんの名前の由来を教えてください。
k4sen:
キーボードで適当に打っただけです(笑)。
「zzxk4sen」っていう名前で活動してたんですけど、「k4」までは適当に打って、「sen」の部分は大会で見てたCoDプレイヤーの名前から取ってます。「4」を「A」とはなかなか読まれないので、結構この名前不便なんですよね。
――それでも、エゴサーチするときは楽そうですね。k4senさんが映像クリエイターとして活動し始めたのはいつからですか?
k4sen:
2年前まで映像の専門学校に通っていたんですけど、入社を希望した企業が定員に達していて入れなかったんです。そのときすでにYouTubeをやってたり、コミュニティー大会の実況していたりしていて、映像の仕事も何件かもらっていたのでフリーランスでやろうと決意しました。
これを就職担当の先生に伝えたら、「もうお前は何言っても就職はしないんだろ」って言われましたね(笑)。
――いきなりフリーランスになることに、不安はなかったですか?
k4sen:
フリーランスになったタイミングで大阪から上京したんですが、翌月分までの仕事はあっても、それ以降の仕事があるかどうかはわからなかったので少し不安でした。でも、なんだかんだ何とかなってます(笑)。
――上京後、仕事は増えましたか?
k4sen:
かなり増えましたね。あとは、いろんな人と会えるようになりました。
仕事も自然と舞い込んできてくれて、今やってる合同会社の電影Lab.も同じようにやってます。でも、そろそろ営業もしようかなって考えてます(笑)。
――法人化して、ゲームのプレイする頻度や時間に変化はありましたか?
k4sen:
単純にプレイする時間は減りますよ。フリーのときは朝起きて、ご飯食べてゲームしてを繰り返してましたね。
でもゲームをよくプレイする分、今よりも多く配信をしていました。基本的に夜に配信して、朝に起きてから夕方まで編集し、夜にその動画を投稿してまた配信をするというサイクルで生活してました。
特にいろんなプレイヤーのクリップ動画を集めてモンタージュにする動画を好きで作っていたんですが、これが編集に20~30時間ぐらいかかってました。最近は疲れちゃってできてないですが……(笑)。
初のオフライン大会から実況への適性を感じた
――k4senさんがCoDをプレイしたきっかけはなんですか?
k4sen:
最初にプレイしたのは「CoD モダン・ウォーフェア2」なんですが、友だちの家に遊びに行ったときに、クイックショット(※)を自慢されたんですよ。
「Intervention」っていうかっこいいスナイパーライフルで次々と敵を倒しているのを見て、面白そうだなって思ってソフトを買いました。
※クイックショット(QS):敵が見えたらスコープを展開せずに自分量で照準を合わせ、スコープを展開した瞬間に撃つ素早い狙撃方法。
最初は何もルールがわからなかったので、ドミネーション(※)というルールで友だちと遊んでいたんですが、3つある旗(拠点)のうちBの旗の上にいれば良いよって言われて、ひたすらBの旗の上にいることだけを意識して遊んでるときがありました。
敵を倒すということを意識していなかったので、キルデスレートがかなり低めの0.2(5回倒されるうちに1回倒せる)ぐらいになってました(笑)。
※ドミネーション:陣地を制圧している間に増えるポイントで競うモード
――k4senさんから見たCoDの面白さはどんなところですか?
k4sen:
最初は上手くなっていくのがCoDの面白さだと考えてました。ただ、これまでは撃ち勝てば良いだけと思っていたんですが、マップごとにいろんな戦術があるので、最近はこの深みが面白さだなと考えてます。
しかも、CoDは1年ごとに新作が出るので、1年間で極める必要があるんですよ。逆にいえば参入しやすいゲームなので、気軽にぜひプレイしてもらいたいですね。
――数多くあるCoDのタイトルのうち、一番やり込んだのはどれなんでしょうか?
k4sen:
「CoD ブラックオプス2」ですね。スナイパーライフルが特に楽しくて、これを扱うのが上手いプレイヤーだけを集めたクランが流行っていたこともあったんです。とにかく、スナイパーライフルをよく使ってました。
――いろんな対戦モードがありますが、どれが一番好きですか?
k4sen:
ラウンドごとに復活ができなくて、緊張感の出るサーチ&デストロイですね。デスしたプレイヤーは他のプレイヤーの動きを見ることになるので、自分が生き残った場合は自分のプレイが見られているという緊張感も、好きな理由の1つです。
実況するときも、他のモードと比べてしっかり解説できるので好きでもありますね。これから起こることを予想できるので、観戦画面を映す担当の人も助かっていると思います(笑)。
――確かに他のモードだと選手が入り乱れて大変ですよね。
k4sen:
そうなんですよ。コミュニティー大会の実況をしているときはサーチ&デストロイの実況しかしていなかったので、初めて違うルールを実況したときは顎が外れるかと思いました。酸欠にもなりかけましたね(笑)。
――サーチ&デストロイ以外のルールだと、起こっていることは何割ほど把握しているのでしょうか?
k4sen:
全部把握していますよ。CoDでわからないことはないですね。
豪快なビックプレイもそうなんですが、ハードポイントというルールだとポイントを獲得できる場所が変わるので、今獲得できるポイントを捨てて次のポイントを先に制圧するなど、画面を見るだけではわからないような戦術があるんですよ。
――CWL日本代表決定戦では、ハードポイントとサーチ&デストロイに加えて、復活チケットを使い切らせるか、陣地を制圧することで勝利できるコントロールというルールで対戦が行われますが、コントロールの面白さは何だと考えていますか?
k4sen:
CWLではハードポイントとサーチ&デストロイはいつもあるルールなんですが、3つめの対戦ルールは毎回変わるんですよね、ボールを相手のゴールに入れる「アップリンク」や、旗を取り合う「キャプチャー・ザ・フラッグ」というルールがあります。
その中でも、コントロールは抜群におもしろいですね。ハードポイントは何度でも復活ができるので、いろんな状況でも対応できる瞬発力が重要になってきます。それに比べてサーチ&デストロイは、どれだけ事前に準備をしてきたかとバトルの慎重さが求められます。
コントロールには、これらの2つの要素が半分ずつあるんですよ。拠点を取って勝つ方法や、30回の復活回数を使い切らせて勝つ方法があります。いろんな戦術が見れるので、個人的にはかなり面白いルールだと思ってます。
――初めはプレイヤーとしてCoDを楽しんでいたと思うんですが、どのタイミングで実況をしようと考えたのでしょうか?
k4sen:
8年ぐらい前に「CoD モダン・ウォーフェア3」で大会を開きたいという人がいて、その人に解説をやってほしいと頼まれたんです。それでやってみたら、意外としゃべれるという(笑)。
それからはもうずっとやってますね。
――緊張はしませんでしたか?
k4sen:
人がいなくて、カメラに向かって話していたのであまり緊張はしなかったですね。とはいえ、人がいるオフライン大会で初めて実況をしたときも、別に緊張はしませんでした(笑)。
始まる前は緊張してるんですけど、しゃべり始めたら緊張を忘れるんですよね。もしかしたら、実況の適性があったのかもしれません。
あと、CoDには実況者がほとんどいないんです。ただ、嫉妬しちゃうので新しい実況者は現れてほしくはないですね(笑)。
日本1位を獲得し続けるLibalent Vertexの強さは経験値
――k4senさんは、CWL日本代表決定戦の実況を担当していますよね。実況席からは、選手はどのように見えていますか?
k4sen:
カメラ越しに見ているんですが、強いチームほど自然体だなと思います。強豪チームのLibalent Vertexのリーダーは、椅子の上に足をあげて、靴下を脱いでプレイしているんですよ。これはロンドンで行われた世界大会では注意されてました。どうやら、イギリスには足の裏を見せるのはあまり良くない行為らしいですね。
逆に緊張しているチームは、顔に「やばい」って書いてあるように見えるぐらい緊張していますね。
――そうなんですね。CWL日本代表決定戦では選手と観客の距離が近いと感じました。これはなぜでしょうか?
k4sen:
これにはちゃんと理由があるんです。世界大会では選手と観戦者の距離がすごく近いんですよ。これから世界で戦うチームを決める大会なわけなので、世界大会を見据えてより実践に近い環境を作り出しているという狙いですね。
――CWL日本代表決定戦を3連続で制し世界で戦っているLibalent Vertexの強さは、いったい何だと考えていますか?
k4sen:
圧倒的に経験値ですね、踏んできた場数が違うんです。「CoD ワールドウォーII」のときの1位チームLibalent Vertexから2人と、2位チームDetonatioN Gamingから3人が選出されて、今のLibalent Vertexで一緒に戦っているんですよ。
なので、日本のマジで上手い選手を凝縮したチームってことですね。何度も世界で戦っているということもあり、経験値の差が圧倒的です。
日本がこれまでCWLに参加してこなかったこともあり、他の国のチームと比べてかなり遅れてるんですよ。なので、新モードでは日本が勝てても昔からあるルールではなかなか勝てないんですよね。でも、Libalent Vertexは昔のルールをよく練習しているみたいです。
緊張に弱いメンバーも多かったみたいですが、場数を踏んで今はもう平気らしいので、間違いなく日本ではLibalent Vertexが最強のチームでしょうね。
――国内最強というLibalent Vertexですら、CWL最高ランキングは25位タイですが、やはり世界の壁は高いのでしょうか?
k4sen:
これまでは40位ぐらいだったんですが、今は40位ぐらいのチームには圧倒的な差をつけて勝つことがあるので、確実にレベルが上がっていると思います。
ただ、トップ16のCWL Pro Leagueに参加しているチームを省いたランキングなので、まだまだこれからと言った感じです。
――トップ16チームのバトルは、どんな感じでしょうか?
k4sen:
Libelent Vertexの選手と一緒に見ても、理解できない戦術があるんですよ。なので、やっぱりトップ16チームは次元が違うんだなって思います。どうやって生まれてきたんでしょうね?
――k4senさんは、今でも選手として活動したいと思うことはありますか?
k4sen:
それはないです。Libelent Vertexを見ても「人間じゃねえ!」としか思えないんですよね。しかも、こんなに強いのに世界で25位かよって。
選手として活動するなら1位を目指すと思うんですけど、あまりにも1位になるまでの壁を知りすぎているので、選手になりたいとは思わなくなりました(笑)。
プレイヤーから実況者になったk4senさんは、10年プレイし続けている知識と経験を活かし現在の大会シーンで活躍しているようだ。後編では配信活動についてや、eスポーツを本気で愛するk4senさんの考えを紹介する。
写真・大塚まり
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