DBFZ世界大会王者かずのこでも「勝つ自信はない」【後編】

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「彼女持ちが勝てるはずない」からの結婚で変わった心境
――プライベートでは、2018年11月にご結婚を発表されましたね。プロゲーマーとして意識が変わったことはありますか?
かずのこ:
なんだろう……、以前よりゲームに集中できる感じがします。
誰と一生を共にするかとか、どういう生活をしていくかとか、そういう生き方みたいなことで迷うことが、一生、この人と一緒にいようという気持ちになったので1つ減ったからですかね。
ゲーマーが結婚したいと思ったら、ゲームへ理解のある女性を探さないといけないので、その時点でゲームの練習以外のことをやらないといけないじゃないですか?
そして、入籍するとなったら相手の親に会いに行って、「自分、プロゲーマーなんですけど――。」というのを説明しなきゃいけないし。普通だったら、そんな不安定な職業のやつに娘を嫁がせられないって言われるでしょう。
そういったことを全部クリアしていって、やっとこの人と一緒に生きますというところまでこれたこともあり、今はゲームに集中できるようになりましたね。
――ご両親に挨拶へ行った際に、プロゲーマーであることを明かしてどういう反応でしたか?
かずのこ:
全然大丈夫でしたね。
嫁の方から、僕のことを教えてくれていたのですんなりといったのかと。メディアに取り上げられる機会が増えて、テレビや新聞に載ることもあったので説明しやすかったと思います。
テレビにも出て、新聞にも出て、今のところはちゃんとした収入があって、これだけしっかりしてる人だから大丈夫だよ、という形で事前に話していてくれて、そこは本当に嫁に感謝ですね。
――奥様との出会いとかって聞いてもいいですか?
かずのこ:
「ストリートファイターIV」の全国大会に向けて練習していたときに、ゲーセンで声をかけられたのがきっかけでした。なので、ゲームを通じた出会いになるんですかね。
その頃はプロゲーマーでもなんでもない、なんならフリーターみたいな感じだったので、かわいい女性に「応援しています」って声をかけられるなんて思いもしなかったです。
ゲームをやっていることと、かわいい女性に声をかけられるってイコールじゃないと思っていたので、怪しい勧誘か何かだと、3回目くらいのデートまでは疑っていました(笑)。
でも、話をしていくうちにそういうのじゃない気がするなって思ったし、僕が出演するイベントにも何回も来てくれていて、さすがに大丈夫かなと思いましたよね。
――そんな出会いから、ついにご結婚されたと。
かずのこ:
自分がゲームの練習で時間を使って、お互いの生活リズムが合わないとかもあると思うんですけど、そこも踏まえて大丈夫だなって一緒にいて感じました。
あと、自分ができないことを嫁さんはすごいできる。一般常識とかをたくさん教えてもらってます(笑)。
かわいいだけじゃなくて、人として尊敬できて、そういうのも含めて決め手になりました。
――プロゲーマーの結婚ラッシュに突入しそうな気配がありますよね。
かずのこ:
プロゲーマーっていつやめてもおかしくないので、みんなすごく不安だったと思うんですよ。でも、格ゲーのプレイヤーだと、ももちさんなんかはいろいろやっているじゃないですか?
僕らゲーマーに1つの希望を見せてくれましたよね。ももちさんだからやれてることだとは思いますが。
他にもウメハラさんだから、ときどさんだから飯が食えているみたいな考えがあったんですけど、今は思っていたよりいろいろなことができるというか、やらせてもらえるんだなって感じています。
もともとは、プロゲーマーは海外の大会にいくしかない、勝たないといけない、それしかないと思っていたんですけど、みんなも可能性を感じる状態になっていて、だからみんな結婚しているかもしれないですよね。
ゲームが上手いからモテるわけじゃない
――次に結婚しそうなプロゲーマーって心当たりってありますか?
かずのこ:
自分より年上で結婚していないプロゲーマーは、いつしてもおかしくないんじゃないですか? GO1さんとか藤村とかは、いつ結婚してもおかしくないでしょう。
いつの間にか結婚していて、今この瞬間にいきなりTwitterで「結婚します」って発表するのもありえる話ですよね。
――結婚つながりでいうと、豚劇2013でももちさんと対戦したときに、「彼女に意識を割いているやつが、彼女持っていないオレに勝てるわけない」と話してましたが、結婚までされたいまではその考えはさすがに変わってますよね?
かずのこ:
そうですね、さすがに変わりましたね。だって、嫁さんは必ず自分の味方じゃないですか。
普段一緒に練習している人でも、大会であたれば敵。結局、最後は敵になるんですよ。
ただ、彼女や嫁さんは必ず自分の味方なんで、精神的に安心しますよね。格ゲーって精神力勝負なところあるので、安心できることはかなり大きいです。
――最近は女性人気もあるプロゲーマーが増えてきましたけど、ゲームがうまいことってモテる要素だと思いますか?
かずのこ:
ゲームがうまいというよりは、ゲームを真剣にやっている人がモテるんだと思います。
ゲームに限らず、スポーツでも勉強でも何でもそうですけど、何かに真剣に取り組んでいる姿ってかっこいいんですよ。そこにゲームが好きな人が増えてきているのも追い風になって、プロゲーマーがモテる機会が増えているのかと。
ゲームが強いけど、天才肌で全然練習しなくても大会で良い結果を残しちゃう人がモテるとは言い切れないですよね。
大会で負けて本当に悔しがっている人、涙流す人もかっこいいなって思いますし強ければいいってわけじゃない。
格ゲーが人生を面白くしてくれる
――DBFZワールドツアー ファイナルを振り返ってみていかがでしょうか。ご自身のプレイスタイルの分析同様、自信があるわけではない?
かずのこ:
大会では、練習したことを出す以外にやることがないので、自信はそんなになかったですね。
どのプレイヤーも大会で勝つために練習していると思うので、たまたま自分の方がちょっと先をいっていただけで、目指しているものが一緒なら追いつかれることも全然ある。そこに関しては自信というか、出たとこ勝負でしたね。
勝つためにやっているということは、これまでの対戦とはまったく別のものを用意してくるなんてこともあるわけです。それがある限りは、自信があるという考えにはならないです。
練習の成果はちゃんと出して、それが通用したら勝ちますよってだけの話。
なので、練習の成果を見てほしいという気持ちでいます。
――その感覚は、大会で勝ち抜いていく中でも変わらなかったでしょうか?
かずのこ:
ウィナーズファイナルでGO1さんに勝ったあたりで、自分たちのやってきた練習は間違ってなかったと確信しましたね。
――フェンリっち選手とのグランドファイナルは、リセットまで持ち込まれました。
かずのこ:
リセットまで持ち込まれたときは、向こうが動きを変えてきたことを把握していた段階だったので、焦りはそこまでなかったですね。こちらも動きを変えてうまくいかなかったら焦ってたかもしれないですね。
――試合前には「彼(フェンリっち選手)を応援してあげればいい勝負になると思うので、応援してあげてください」とコメントし、会場の観客や配信での視聴者は盛り上がりました。この発言はどういった意図でなされたのでしょう?
かずのこ:
観戦するなら、どちらかを応援する図式が面白いと思いました。
日本勢からしたら、関東vs関西という図式で楽しめたと思いますが、現地で観てくれているアメリカ勢にも、こっちを応援すれば楽しめるんだ、というのを作りたかったんです。
せっかく現地で応援してくれているので盛り上がってほしかったので思いついて言ってみました(笑)。
――実際に観客は盛り上がっているように見えましたよ。リセットされたあとの試合は優位に運びました。
かずのこ:
相手が動きを変えて来たのに対して、こっちも動きを変えることができました。これは経験によるものなのかなって考えていて、ベテラン感が出せて良かったです。
――リセットされても崩れない安定感が感じられた試合でした。では最後に、格ゲーをやってきてよかったなって思うことをお聞かせください。
かずのこ:
いろんな人に出会えましたね。
年齢が違う人と友だちになるってこともゲームをやってなかったらあまりなかったし、世界を飛び回ることもなかった。
高校2年生くらいから格ゲーをやるようになったんですけど、人生の3分の1くらいは格ゲーをやっていて、こんなに面白い人生にしてくれてありがとうって感じです。
普通に働いている人がつまらないというわけじゃないですけど、さすがに普通の人よりは面白い出来事に多く会っているとは思うんで、大事にしていきたいですね。
的確な自己分析や観客を意識したコメント、落ち着いた試合運び。
本人が言うところのベテラン感というものが、言葉の随所から溢れ出ているよう話してくれたかずのこ選手。
2019年も次々に開催されるであろう大会でも輝き続けるか、GO1選手ら同世代の強豪や今回あと1歩のところまで追い詰めたフェンりっち選手ら若手が待ったをかけるか。
いずれにしろ、その中心にかずのこ選手の姿があるに違いない。
写真・大塚まり
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