心がキュっとなってから強くなったスマブラプレイヤーkept
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「大乱闘スマッシュブラザーズ」(以下、スマブラ)シリーズでむらびと使いといえば、真っ先に名前が挙がるのが今回インタビューを行ったkept選手ではないだろうか?
スマブラ for 3DS/Wii U(以下、スマブラfor)の時期に大会に参入し、現行のスマブラSPECIAL(以下、スマブラSP)ではむらびとと同じく「どうぶつの森」から参戦したしずえを操り、たびたび大会で上位入賞を果たしている。
特に今作では1桁順位に入ることが多い彼だが、2018年には強くなれずに悩む心情をブログに綴っており、プレイヤー活動をやめることも視野に入っていたようだ。
その時期の心境や今現在のモチベーションを聞くインタビュー。ぜひ、件のブログエントリーと合わせて読んでほしい。
オンラインで力をつけた少数派プレイヤー
――まずはスマブラを始めた頃の話をお聞かせください。
kept:
始めて遊んだスマブラは、NINTENDO64の1作目。5歳離れた兄貴がいて、よく一緒にやっていました。
兄貴の方が強かったんですけど、同学年の友だちの中では僕が頭一つ抜けていた感じでしたね。
――その後、スマブラはDX、Xと続けていって大会に出るようになるわけですね。
kept:
そうですね。大会に出だしたのはスマブラforの頃なんですけど、それまでは地元の友だちとやったりオンライン対戦をやったりしていました。
――地元では強くて大会に行くようになったパターンですかね?
kept:
地元では強かったですね。
オフラインの大会にはもともと行ってみたい気持ちはあったんですけど、ゲームの大会とかオフ会みたいなものって得体の知れない感じがしてなかなか行けずにいたんです。Xの頃からオンライン上で仲良くしていたプレイヤーでオフイベに通っている人がいて、その人についていく形で初めて参加しました。
――初めて大会に出てみたらレベルが高くて全然勝てなかった、みたいな話をよく聞くのですが、kept選手の場合はいかがでしたか?
kept:
自分はオフライン大会の前にオンライン対戦を始めたときに壁を感じました。今言ったように地元では強いと思ってたんですけど、いざオンラインで戦ってみると全然勝てなかったんです。
それからオンライン対戦をずっと続けていって強くなってから大会に行き始めたので、オフ大会のレベルの高さと自分のレベルの差はそこまで感じませんでした。
――オンラインとオフラインでは環境がかなり異なると思うのですが、そこもあまり苦労せず?
kept:
オンとオフで決定的に違うのはやっぱり操作遅延です。普通のプレイヤーはオフラインが中心なのでオンラインでは遅延が気になるんですけど、僕の場合はその逆でオンラインに慣れちゃっていたんですね。なので、初めてオフラインでちゃんとしたゲーミングモニターでプレイしたら、遅延がなさすぎて思うようにプレイできませんでした。
でも、数試合で慣れましたね。初めて参加した大会で予選も抜けれましたし、めちゃくちゃ苦労した感覚はなかったですね。
――それからオフライン大会に積極的に参加するようになると。
kept:
そうですね。
その最初の大会で、僕の使用キャラクターであるむらびとを使っている女性プレイヤーがいて、僕より上の順位になっていたんです。さらに、よくよく見るとその人以外にもむらびと使いで僕より上の順位に入っているプレイヤーがいて悔しい気持ちになって……。それで、次の大会ではむらびと使いの中では1番上になろうと思ってのめり込んでいきました。
――むらびとをメインにしている理由は?
kpet:
そもそもスマブラXのときはリュカを使っていたんですけど、スマブラforではいなくなってたんです。後にダウンロードコンテンツで追加されましたけど。
で、スマブラforが発売される1週間くらい前に体験版が配信されたんですけど、そのときに新キャラクターのロックマンとむらびとが使えたんですね。マリオとかも使えたんですけど、さすがに新キャラを使いたかったので、ロックマンとむらびとを使ってみたら、ロックマンはクセがあって難しくて、逆にむらびとはかなりしっくりきました。
自分は復帰阻止でガンガンステージ外に出ていきたいタイプなんですけど、むらびとは復帰の距離も長くて自分のほしい性能を持っていたということで、それからずっと使っています。
――スマブラSPでは、同じくどうぶつの森のキャラクターであるしずえも使っていますね。
kept:
新作が出ると新しいキャラを使ってみたくなるんですけど、その反面勝てないと面白くないという気持ちがあって、それを両立してくれるのがしずえでした。半分くらいの技がむらびとと一緒なので、前作の経験値も活かせつつ、新キャラを触る楽しさもあって。
今のところこの2キャラでやっていて、大会で出せるレベルで使えるキャラは他にはいないですね。
――今年の成績を見ると、その2キャラ体制になってからかなり調子良いですね。
kept:
今作になってから単純にキャラがちょっと強くなったのと、相性が悪いキャラも減ったのが要因だと思います。僕個人の力量というよりは、環境がそうなったという感じです。
強くなるかやめるか 究極の2択
――去年はついにEVO2018にも参加されました。それまで参加していた大会とは規模や雰囲気、参加者のレベルなど異なるところが多かったと思いますがいかがでしたか?
kpet:
もう本当にすごかったです。実際に参加してみて、日本の大会よりもEVOのような海外の大会で勝ちたいという気持ちが生まれました。
ステージもすごいし、観客の盛り上がりもすごくて。あの環境で勝つ気持ちよさをかなり感じましたね。そういったところで想像以上に日本の大会とは違うと思いました。
――ご自身のブログにスマブラSP発表前にスマブラを辞める覚悟で強くなろうとやり込んだと書かれていました。
4.具体的な今後の話
EVOまでの半年間、本気でスマブラに取り組んでそれでも今のまま手応えがなければきっぱりスマブラを辞める
kpet:
ブログにも書いてあるんですけど、2016年のカリスマ3 on 3という3人チームで参加する大会に、takera、Raitoと組んで出場したんですね。それがきっかけで仲良くなって、プレイヤーとしても意識する相手になりました。
そんな2人がEVO2018までにメキメキと成績を上げているのに、僕はなかなか結果を出せない状況が続いていたんです。
3人で組んだ当時はそんなに差はなくて、なんなら自分の方がちょっと良かったくらいだったんですけど、自分だけ取り残されてしまったような感覚になってしまって……。
そもそも、自分がスマブラをやっている理由って勝てるからなんですよ。負けるプレイヤーとして続けるという選択肢はありませんでした。それなのに勝てないんだったら、大会に出るのを続けようとは思えなくて、負けるプレイヤーになってやめるか、勝つプレイヤーに成長するかの2択。
そして、負けるプレイヤーになってやめてしまう前に、やっぱり2人に追いつきたい気持ちがあって、本気でスマブラに打ち込んだらどうなるんだろうと思ってその覚悟をしました。
それからは毎週のように大会に参加するようになりました。北海道から沖縄まで、いたるところに遠征までして。
――でも、スマブラSPの発売が発表されて、やめるという選択肢はなくなったとブログにも書かれています。
kept:
そうなんですよね(笑)。
本気で打ち込んでからちょっとは良い結果が出せるようになったんですけど、とはいえ関東の大きい大会ではあまり変わりませんでした。
周りからはあのブログを書いてから強くなったねと言われることはあったんですけど、自分自身ではあんまり変わってないなっていう実感があったのでどうしよっかなーと考えていたところに、新作の発表があって。「おいおい、これはやめられねーな」と(笑)。
強くなれなかったけど気づけた座学の大事さ
――その時期を振り返ってみて、印象に残っていること、もう少しこうしてたら……みたいなことはありますか?
kept:
やっぱり遠征が多かったですね。
平日は宅オフなどでスマブラをやって、週末は基本的に各地の大会に遠征していたので、試合数をこなせたのはかなり大きかったですね。フリー対戦と大会での試合では、得られる経験値が違うと思うのでそこはよかったところです。
あとは、スマブラには座学と実技があると思っていて、その頃は座学がおろそかになってたかなーと思います。
――座学と実技?
kept:
実技は単純にプレイのことで、大会に出たりして養えるところ。
座学は動画を見てキャラや人の対策をメモするなどですね。プレイすることに意識を割いちゃっていたので、座学はもっとできたと思ってます。今も若干そうなんですけど。
――今現在はどのように練習をしているのでしょう?
kept:
うーん、対戦会に行って会場が閉まるまで対戦して、それがない日は家でオンラインで配信しつつ対戦ですね。時間的には多くて4時間くらいプレイしています。
週末は大会が増えてきているのでそれに参加してって感じです。
――大会は本当に増えましたよね。平日大会もそうですし、毎週末どこかしらで大会があって。
kept:
めちゃくちゃ増えましたね。
東京、関西、中部あたりでそこそこ大きな大会が開かれていて、そのあたりは大体行ってるので、去年、がむしゃらに大会に参加していたときほどではないですけど週末は地方に出ていることが多いですね。
2018年2月にブログで決意表明をしてからEVO2018までの半年間、kept選手は本気でスマブラに取り組んだ。そして、EVO2018から帰国後、こんなことをブログで記している。
結論から言うと、
頑張ってみたけど強くはなれなかった。
この一文打ってるだけで悲しくなってきて心がキュっとなる。
現実はそんなに甘くはなかった。
2月の決意から半年が経ってより引用
この頃にはすでに新作スマブラSPが発表され、スマブラをやめる選択肢は消え去っていたのだが、この結果から座学が足りなかったという反省を得られたのは、彼にとって何よりも財産になっていることだろう。
続く後編では時間軸を今とこれからに移して話を聞いてきた。
写真・大塚まり
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