企業がチームを運営する意味は?日テレ傘下AXIZの展望

WPJ編集部

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人としての成長にも注力するチーム運営

――esportsのテレビ番組を始めるのに、会社を説得するのが大変だという話を聞いたことがあります。

佐々木:
番組だけでなく、チームの運営も含めたesports事業を立ち上げる中の1つということだったので、会社を会社を説得するというか、応援してもらった感じです。事業としてesportsってすごく新しいものに見えますけど、新しいものにいきなり飛びついてもなかなかやっぱり難しいということで、自分たちの得意分野であるテレビ、そうではないチーム、この2つを並行してやっていくという形をとっています。

番組は広く一般の方に、チームはコアなファンの方に、みたいな感じにどちらもカバーしていたいなという気持ちでやっていますね。

――最初にカードゲーム(Shadowverse)部門ができて、2019年からはMOBA部門を作りLJLにも参戦。格闘ゲーム部門も選手を募集中です。このように、もともといくつかのタイトル、部門をやっていく構想があったのでしょうか?

佐々木:
そうです。マルチゲーミングチームという形でチームを立ち上げているので、今後も部門を増やしていくのは検討していますし、そうしていきたいなと思っています。

――Shadowverseのチームが始動して半年近くが経過しました。チームが成長している手応えがありますか?

佐々木:
まだ成長前というか、チームができてはじめてのシーズン中ということもあって、まだまだ成長途上というかそれ以前のところなんじゃないかとも思っています。

新しいものだからこそなのか、みなさん成長を急ぐというか、そのときどきで強いのかどうなのかというのを求める傾向がありますが、本当は人を育てるのってそうじゃないですよね。プロ選手の前に20代の若い子たちなので、人間的な基礎の部分から成長するということを含めてまだまだこれからですね。選手としてはもちろん、人間的にもちゃんと育てていかなければいけないですから。

――日本テレビ傘下という基盤があることは、チーム運営のうえで強みだと思うのですが、事業メンバーの1人としてどう考えてますか。

佐々木:
これまでのプロチームは、そもそもの成り立ちが個人であったり企業でない組織のところがたくさんあったと思うんですよね。それで結果を出して人気を獲得し、チームとして活動していくということはすごくいいなとも思うんですけど、選手が同じ世代の他の子と変わりない人生のステップアップができているのかなっていうのは疑問に思うところがやっぱりあります。

使い捨てではないですけど、そのとき強ければいいみたいな感じでいるような印象が、他のチームを見ているとちょっとあったんですよね。私たちはやっぱりそういうところはバックアップするべきだと考えていて、伸び代というか基礎的ないい人かどうか、心根が悪くないかどうかみたいなところを見て、そこから自分たちも応援していけると思った子たちを少しずつ育てていこうという気持ちでやっているので。逆に、スタッフやファンに対しての言動が応援できないようなものになってきたら、チームからの別れのタイミングだと思っています。

――応援したくなる人間性というのは選手として求められることなのかもしれないですね。他に、選手を選考するにあたって軸にしたことは?

佐々木:
企業の人材採用と同じように、面談を何段階も行いました。もちろん、途中に実技を見る機会も設けています。事業メンバーが現在は5人いるのですが、全員が1度は会うような形で、最後は偉い人が会うというように、まさに新卒採用ですね。

事業メンバー5人それぞれで見るポイントがちょっとずつ違うんですね。そのゲームがわかる人はゲームの実力をしっかり見るし、そうでない場合は実力を見るというよりかは人間性を見る担当に回ったりします。

チーム内での相性とかはあると思っていたので、すごくいいけどこの子とこの子はぶつかりそうだなっていうときは意見が割れたりしました。

――そういうのはチーム運営ならではの悩みですね。

佐々木:
会社でもそういうことあるじゃないですか。同じチームに相性が良くない人がいると、それだけで仕事が進まなくなったりするので、そういう事態にはなってほしくないので。

現役メンバーに聞いたAXIZってどんなチーム?

AXIZでは、ゲーミングハウスでの生活、練習やフィジカルトレーニングの導入など、さまざま角度で選手たちのサポートを行っているという。

今回、実際に日々練習や試合にはげんでいるAXIZの選手に、チームの一員としての日常をメールインタビューした。また、LJLに2,019年から参入したMOBA部門には、チームの現状と今後の展望を聞いてみた。

手厚いサポート環境とPR力がAXIZの強み

――サポート環境が手厚い印象がありますが、特にいいと思うところ。もっとこうしてほしいといころなどがあれば教えてください。

ROB:
ゲーミングハウスでの共同生活により、選手間のコミュニケーションがとりやすいことはとても助かります。毎日顔を合わせて議論ができますし、特に試合直前はリビングに集まり練習しています。

ミーティングや面談も定期的に実施してくれて、常に選手側の要望に耳を傾けてくれるのはありがたいことです。

チームでの公式配信の内容作りは、現状スタッフの方に任せっきりになっていますが、ここは選手も関わっていきたいですね。

GEMO:
特に良いと思うところは、選手の動画を撮ってSNSに投稿してくれるなど、プロデュースに力を入れてくれているところです。リーグ初戦で勝ったときに、おいしい焼肉屋さんに行ったことも良い思い出です。

ROB:
初めてのeGGの収録では、収録があることを聞かされておらず、気がつけば目の前にDAIGOさん、生駒里奈さんがいました。スタジオ、メイク、収録、すべてが初めてのことだったのでとても印象に残っています。

――フィジカルトレーニングはゲームにおいても役に立っている感覚はありますか?

ROB:
長時間の練習を行うときに疲れにくくなったと思います。運動を挟むことで心身ともにリフレッシュできますし、姿勢も改善されました。

GEMO:
長時間の練習でも疲れにくくなったのは僕も強く感じます。

LJL新規参入MOBA部門はプレイオフ進出なるか?

――今季から参入した新しいチームですが、まずは今季の目標をお聞かせください。

Gariaru:
新規参入ですが、目指すのはSeasonプレイオフです。

Day1:
4位です。(チームメイトからは「控えめだなっ!」とツッコミが)

Uinyan:
チームの勝利はもちろん、個人としてMVPを目指します。

NoA:
チームとして5位。現実的に勝てるであろうチームにはしっかり勝ちたいですから。

――DetonatioN FocusMeを筆頭に強豪と戦っていくことになります。現状、戦力差を感じることはありますか?

Gariaru:
はい。経験値が違います。試合やプロとしても経験値が少ないのでAXIZはまだまだこれからだと思います。

Day1:
LoLはチーム力が重要なのですが、AXIZはチーム連携がまだまだです。これは練習でカバーする以外ないです。

Uinyan:
個人として日本一のTOPレーナーのEviさんと戦うのですが、LJLで戦うのがはじめての私はもっと練習が必要だと感じています。

NoA:
個人のスキルもそうだし、チームとしての力の差もあるので埋めるための練習が必要です

――他のチームにないAXIZの強みは?

Gariaru:
新規チームなので、チームの特色はまだないです。むしろそれが強みで、これからの伸びしろはどこのチームよりもあると感じています!

Day1:
笑顔が素敵! みんな明るくて、チーム練習や食事しているときは結構笑い合っています。

Uinyan:
ネームバリュー! 日本テレビ傘下のesportsチームということで、ほかのチームにはないメディアを持っていることです。

NoA:
チームの運営主体がしっかりしていることです。どのチームよりサポート体制は整っていると感じています。

――LJLが開幕しました。今のところ感じている手応えや反省点をお聞かせください。

Gariaru:
まだ始まって間もないので、手応えはこれからです。ただ、チームとしての反省点がいっぱいあるので、1つずつ直していきたいと思っています。

Day1:
私は去年まで解説者としてLJLに携わっていたので、まだ自分のブランクを埋めきれていないです。そのために誰よりも練習します!

Uinyan:
チームの最年少、さらにはチーム唯一のLJL1部の試合に初参加なので、まだ萎縮している部分があります。これからはもっとのびのびとプレイしていきたいです。

NoA:
どのチームも実力があるので厳しいリーグだと思っています。チームで戦えるように、団結した動きが必要だと感じています。

――よしもと∞ホールで行われる試合は、その盛り上がりが話題になっています。実際に試合に出てみた感想は?

Gariaru:
去年の会場よりもお客さんの顔が見える。これは選手とってとても嬉しいことです。応援してくれるファンの方の顔が見えるのは励みになります。

Day1:
お客さんから選手の表情が見えることで、競技らしくなりました。

Uinyan:
会場のモニターや音楽、登場など、演出が観客目線になっているので、配信で見ることもいいですが、会場で熱気を感じやすく楽しめるような試合になっています。

NoA:
選手からしてもお客さんからしても距離が近いことが熱気を感じることができるのでよいところだと感じています。

写真・大塚まり

記者プロフィール
WPJ編集部
「ゲームプレイに対する肯定を」「ゲーム観戦に熱狂を」「ゲームに、もっと市民権を」
このゲームを続けてよかった!と本気で思う人が一人でも多く生まれるように。
ゲームが生み出す熱量を、サッカー、野球と同じようにメジャースポーツ同様に世の中へもっと広めたい。
本気で毎日そのことを考えている会社の編集部。

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