R6S世界ベスト4でもビザでやらかす野良連合

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■前編記事
五反田で起きた世界大会1回戦「VS総領事館」
――先ほど、レインボーシックス シージ(以下、R6S)をプレイして直感で日本一になれると思ったとおっしゃいましたが、他のFPSとR6Sの違いはどういったところにありますか?
貴族:
主に比較されるのが「Counter-Strike: Global Offensive」(以下、CS:GO)だと思うんですけど、CS:GOだと、個人のエイム力で試合が決まるんですね。
その反面、R6Sにはガジェットというアイテムがあるんですけど、それを使うことによって不利な状況を有利にすることがあるんです。なので、エイムが上手いやつより、頭が良いやつ、ゲームの理解度が高いプレイヤーを5人集めた方が強いゲームというわけです。
反射神経などの身体的な部分では外国人に勝てないことはありますが、頭を使うという部分では、日本人はスマートというかクレバーな人間が多いので、いけるなと。
――過密スケジュールをこなす中で、失敗談なんかはありますか?
merieux:
いろいろありますけど、ブラジルのビザ問題は外せない話ですね。
海外って国によってビザが必要な国があるじゃないですか。オーストラリアやアメリカなんかはすぐにビザが取れたので、それと同じ感覚で、出発のちょっと前に取りに行けばいいって感じだったんですけど、ちょうど年末が近い時期だったんですよ。
で、ブラジルのビザって取るのにかなり時間がかかるみたいで、結局取れたのが1日前とかだったという。
その時期は毎日のように五反田のブラジル総領事館に通ってましたね。
貴族:
1回戦の相手がまさかの領事館だったということですね。
そこで勝利したんでベスト4になれた。領事館で負けていたらその舞台に立つことすらできなかったですから。国によってビザの取りやすさって違うんですけど、ブラジルは世界的に見ても取りにくいらしいです。
Papiliq:
貴族さんのビザが取れてなくてついてこれなかたこともありましたね。
貴族:
マネージャーにお金を渡してビザを取りに行ってもらったんですけど、そいつがパスポートの字を間違えてしまって取れなかったという。
当日、空港まで行ったのに自分だけ現地に行けなかった。
アイアンマンもハマる貴族のパフォーマンス
――Six Invitational 2019では、壇上での貴族さんのパフォーマンスも注目を集めましたが、意識してあのような振る舞いを?
貴族:
いや、もうまったく普段どおりです。
Papiliq:
貴族さんが普段とまったく変わらないからリラックスできている部分はあるのかなと思います。海外の選手もみんな貴族さんの真似をしてましたね。
貴族:
1番すごかったのが、「アイアンマン」のトニー・スタークを演じているロバート・ダウニー・Jrもやってましたからね。
――それはすごいですね……! R6Sのファンなんですかね?
貴族:
R6Sってプレイ人口5,000万人ですからね。
merieux:
海外のサッカー選手にもやってる人が結構いるらしいです。
貴族:
そうそう。
あと、渋谷で深夜にeスポーツのイベントがあって僕らがゲストで出たことがあったんですけど、そこでサイン会みたいなちょっとしたファンイベントをやらせてもらったんです。
そこに来てくれたファンの中に、普通にJリーガーがいたんですよ。結構、リアルスポーツの選手もR6Sやってるんだなって思いましたね。
merieux:
選手がゲームにハマりすぎて、禁止令を出したサッカーチームもあるって聞きました。
――大会シーンに話を戻しますが、国内で警戒しているチームなどはありますか?
貴族:
僕も選手も、ライバルはG2 Esportsだと思ってるんですよ。日本のチームを見ていないわけじゃないんですけど、僕らは世界一が目標なので。
日本のチームの人たちとはみんな仲良いので、一緒に世界行けたらいいねっていう気持ちで、変にライバル視しているということはないですね。
Papiliq:
戦術のスタイルも国内というよりは世界を意識してやってます。
日本一のチームから次世代プロゲーマーへ贈るアドバイス
――国内のチームでは最も注目されて憧れの的となる存在だと思います。R6Sのファンや選手を目指している人に向けてメッセージをいただけますか。
merieux:
僕たちがプロになり始めた頃は、それだけで食べていける状態ではなかったですけど、それでもやりたいことだったのでこの道を選びました。
もう少し経てば今よりもっとゲームで食べていくのが当たり前になっていくと思うので、本当にやりたいことなのであれば自信を持ってやるべきなんじゃないかと思います。
――merieux選手がプロになったときは将来に不安を抱くなど、いろいろ考えたのですか?
貴族:
今のプロって、なりたくてなったというよりは、ゲームが上手くて結果的になってしまったという人が多いと思いますよ。
merieux:
僕がプロになったときは大学生だったんですけど、卒業したら普通に就職するつもりでした。
それが、やっていくうちにチームから給料がもらえるようになって、生活ができるようになったので、こっちの道を選んだっていう感じです。たぶん、プロになったばかりの頃の環境では生活できていなかったと思います。
Papiliq:
なれたからなった、というのは正しいですね。
自分の友だちが、いま24歳でR6Sのプロを目指すために会社を辞めて、数ヵ月練習をして実際にチームに入ったんです。そういった例もありますし、強い意志を持ってR6Sをプレイするのはとてもいいことだと思います。
やりたいことを仕事にできることは本当に幸せなことだということは伝えたいです。
貴族:
よくイベントとかでも話すんですけど、プロゲーマーになりたい子たちは、まずゲームが上手いだけじゃなれないんですよ。
採用する側としては、SNSでの言動や社会的な常識は見ざるを得ないです。人として最低限の部分は学ばないと、どこのチームも採ってくれない。
あと、プロゲーマーになってゴールじゃなくて、あくまでスタートじゃないですか?
Jリーグだって、J1はいいですけどJ3だと働きながら選手もやってるわけで、覚悟を決めて上を目指していかなきゃいけない。食っていければいいなくらいの覚悟の奴は絶対に食っていけないです。
覚悟を持って勝負の世界に来てほしいです。
――やはり中には言動が不安な人は一定数いますか。
貴族:
たぶん、これは日本の縮図だと思ってるんですけど、ゲームが上手い子に共通しているのが、思春期のゲームプレイ時間が長いんですよ。
思春期って外で遊ぶじゃないですか? まあ遊ぶといっても僕はゲーセンだったんですけど。
なので、オフラインの友だちが少ないわけです。オフラインの友だちって、駄目なことは駄目って言ってくれる。バイトもしたこともない子たちも多いから、一般的な常識からずれちゃってる子はやっぱり多いですよね。
実際に他部門で採ったこともあるんですけど、もうすぐ炎上しちゃうんですよ。それで、スポンサーに迷惑がかかってしまい、契約が切れたこともあって。
やっぱり上手いだけじゃ駄目なんだというのを、痛みを知って学んだ感じです。
――ちなみに、腕は確かなのにSNSの言動などで採らなかった人って結構いるんですか?
貴族:
もうめちゃくちゃいますよ。それだけで学校作れるくらい(笑)。
世界大会で2連続のベスト4。FPSというジャンルでここまでの成績を収めた日本のチームは他にない。
世界を魅了する貴族氏のパフォーマンスとそれに引けを取らないプレイで戦うPapiliq選手、merieux選手をはじめとした野良連合のメンバーには、悲願の世界一を叶えてほしいと思わされた。
そのためにも、ビザは余裕を持って取りに行ってほしいのだが……。
写真・大塚まり
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