「君はここで勝つ運命じゃない」――G×Gリグゼを生んだ吉田アナのひと言

キズグチアロエ

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「Shadowverse」(以下、シャドバ)の「RAGE Shadowverse Pro League」(以下、プロリーグ)で活躍する選手の中に、プロリーグ19-20 1st、2ndともに個人勝率でベスト5に唯一連続でランクインしている「リグゼ」選手が存在する。

本稿では、ローテーションフォーマットで安定した成績を残し続ける、リグゼ選手のプロリーグの振り返りから、G×Gに加入するきっかけとなった運命の出会いを紹介する。

メタゲームを意識して連敗をストップ

――初めに、これまでのプロリーグの振り返りをお願いします。

リグゼ:
プロリーグ19-20 2ndは第1節から2連勝することができて、最高のスタートダッシュができましたね。ただ、途中で失速して最下位を経験したときはかなりピンチでした。

ですが、ピンチだからこそチームでしっかりと今後の対策について話し合い、G×Gの強みとゲーム内環境のことを考え、持ち込むデッキについて何度も検討を重ねてなんとかプレイオフ進出までたどり着くことができました。

プレイオフ進出は最終節でよしもとLibalentに勝利して決まったんですが、僕がふぇぐ選手に勝利したことでチームの勝ちが確定し、同時にプレイオフ進出も決めることができたので、本当に気持ちがよかったです!

レギュラーシーズンを終えた段階だと、全体で3位の個人勝率64%を記録することができましたし、1stでも個人勝率75%で4位にランクインしたので、かなり勝ちに恵まれたシーズンとなりました。

――第5節から第8節での4連敗は、観戦側にもそのつらさが伝わってきました。しかし、その後は第10節以外は負けなしでプレイオフ進出を決めましたね。持ち込むデッキについて話し合った結果勝てるようになったとのことですが、具体的にどんな工夫をしたのでしょうか?

リグゼ:
第9節まではゲーム内環境的に強いデッキを5つ持ち込んでいたんですが、第10節からは対戦相手が使用してくるであろうデッキを予想し、メタゲームを意識してデッキを持ち込みました。

その結果特定のデッキに強い構築を考えることができ、勝率アップにつながりました!

――見事な作戦勝利というわけですね。作戦の効果を最も実感できたのは、どの試合ですか?

リグゼ:
第11節の対AXIZ戦ですね。ビショップとドラゴンのデッキを、AXIZが使用してきそうなデッキに対して強い構築にしていたんですが、プロリーグを通してAXIZに初めて延長戦なしで勝利することができました。

この試合でメタゲームを意識したデッキを持ち込む作戦の有用さに確信を持つことができて、その後の節は負けなしという結果を残せました。

――プレイオフには2nd首位の「横浜F・マリノス」と、1stでレギュラーシーズン1位の「AXIZ」が進出を決めました。この展開は予想していましたか?

リグゼ:
していました。横浜F・マリノスは序盤の節のほうで、使用するデッキを共有するなどの新たな対戦ルールが適用された2ndを、完全に知り尽くしているなと感じました。プロリーグを理解したと言っても過言ではなく、安定して勝ちを積み重ねていたので、確実にプレイオフには進出をするだろうと予想していました。

AXIZも各選手の勝率がとても高いチームでしたので、2ndでも上位に食い込んでくるだろうなと考えていました。そしてG×Gは3位でプレイオフ進出(※)となりましたが、残りの1枠にはどこのチームが入ってもおかしくないほど均衡した展開でした。

※2020年1月19日に実施されたプロリーグ19-20 2ndセミファイナルで、プレイオフに4位の成績で進出したレバンガ☆SAPPOROに5-3で勝利。しかし、その後2位通過のAXIZとの対戦に敗れ、3位でプロリーグ19-20 2ndの幕を閉じた

リグゼになりきって漫才とシャドバで成功

――プロリーグ公式サイトのリグゼ選手紹介の趣味欄に「お笑い」と記載がありました。どのような芸風が好きなんでしょうか?

リグゼ:
漫才が好きですね。僕は現在大学生なんですが、1年生と2年生のときの学園祭で友人とコンビを組んで漫才をしていたんですよ。

しかし1年生のころに出場したコンテストでは最下位と、なかなかにつらい結果となりました。そこで漫才を研究してよりいっそう本気で取り組んだところ、2年生のときに出場したコンテストでは優勝することができたんです!

出場数が少ない規模の小さなコンテストでしたが、僕らの漫才で笑ってもらえて本当にうれしかったです。

――見るだけでなく、実際に漫才をしていたとは驚きました。漫才をやろうと決めた理由は何ですか?

リグゼ:
誰かの話を4分間黙って聞くのは、かなりしんどいじゃないですか。でも、漫才だと4分間があっという間に感じられるんです。同じ4分間なのに体感時間の長さがまったく違うことに感動を覚えて、漫才をしようと決めました。

特に、ちゅうえいさんと瀧上伸一郎さんのお笑いコンビ「流れ星」が大好きでして、相方とネタを見て研究を重ねました。1からネタを考えるのは本当に大変で、研究すればするほどM-1などで活躍されている方のすごさに気づくことができました。

実は、漫才は今でもやりたいと思っていて、同じシャドバプロの福岡ソフトバンクホークスゲーミングに所属しているバーサ選手にこの話をしたらかなり乗り気だったので、どこかのタイミングでシャドバ漫才ができたらいいなと思ってます(笑)。

――学園祭のコンテストで1年生のときは最下位だったのにも関わらず、2年生では優勝と躍進を遂げています。この1年間はどんな練習をしたのでしょうか?

リグゼ:
僕が最初にコンテストに出場したときは、漫才はボケが面白ければ成立すると考えていました。しかし、実際に披露してもまったくウケないことに気付いたので、練習方法や考えを改めることにしました。

2年生になってからは僕らの漫才を友人に見て評価してもらうことにしたんですが、漫才を披露した後に「リグゼは何で本気でツッコまないの?」と言われびっくりしてしまい、頭の中が真っ白になりました。

どうやら僕は、漫才コンビとしての僕ではなく、素の僕で漫才をしていたみたいなんです。どういうことかと言うと、友人の発言どおり本気でツッコんでいなかったんですよね。

ツッコミ役に成りきれていないことが原因でボケを台無しにしていると気付いてからは、漫才におけるツッコミ役の重要さを知ることができましたね。

その後は役になりきることを意識して練習に励み、2年生のコンテストでは漫才を成立させたことで優勝することができました!

――漫才をしているリグゼを作り上げたということですね。

リグゼ:
そのとおりです。実はシャドバプロリーグでも意識していることで、試合をするときはシャドバプロのリグゼになりきるようにしています。

今はシャドバプロのリグゼなんだと思い込むことによって、試合やシャドバに対する自分の気持ちをより真剣なものに変化させるようにしています。

これは、漫才に本気で取り組んだからこそ得られたテクニックかもしれませんね。

締切直前応募でプロになったリグゼ

――リグゼ選手がシャドバプロとして活動するまでの経緯を教えてください。

リグゼ:
よくぞ聞いてくれました。

僕は2019年1月に放送されたテレビ番組「シャド場」に、前人未到の10連勝の記録をかけて出演したんですが、猛練習をし準備万端で挑んだのにも関わらず、初戦で敗退してしまい連勝記録を更新することができませんでした。

僕が連勝企画の最後の挑戦者だったということもあり、期待されている状態での挑戦で、プレッシャーも半端なかったです。初戦負けはさすがにへこんでしまって、番組上でも暗い顔をしてしまっていたと思います。

そんなとき、番組で実況を務めていたニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんが「君はここで終わるような運命なんだよ、ここで勝つ運命じゃないんだよ」と声をかけてくれたんです。続けて「ここで負ける運命だったということは、いつか勝てる運命がやってくるということ。だから、それまでがんばってみて」と言ってくれました。

この言葉に僕は助けられて、気持ちが軽くなりました。そこで、実力がないからと言って踏みとどまっていたプロチームであるG×Gの選考への応募を決心したんです。吉田アナからもらった言葉の中に「運命」というワードがありましたが、まさしくG×Gへの応募も運命と言わざるを得ませんでしたね。

――といいますと?

リグゼ:
実は番組の収録日が、G×G選考応募の締切日だったんですよ。しかも、選考に応募するには履歴書などの書類が必要でして、気持ちの迷いが見え隠れしたことや、提出書類の用意に手間取ったこともあり、応募が完了できたのは締切日の23:58でした。締め切り2分前です。

もし、シャド場で勝ち抜いていたら締切に間に合っていなかったと思うので、まさに初戦で負けたのは運命だったんです。

そして選考も無事に通過することができて、晴れてG×Gの一員としてシャドバプロ選手になれました。もしあのまま10連勝を成し遂げていたら、きっとその実績に満足してプロ選手にはなっていなかったと思いますね。

その後、吉田アナにはまだお会いすることができていないので、もし番組などで共演する機会があれば、感謝していることを伝えたいですね。

――実力の有無で踏みとどまってはいたものの、プロになりたいという気持ちは大きかったのでしょうか?

リグゼ:
僕にはプロになる資格はないと考えていたんですよね。

確かにプロになりたいという思いを抱えてはいましたが、僕の周りにはプロ選手になりたいという熱い思いをたぎらせている人がたくさんいて、その熱意を感じると僕の思いはまだまだ軽いと感じてしまい、僕は本当にプロになるべきなのかと疑問を感じていました。

ですので、吉田アナとの出会いがなければ応募はしていないと思います。

――プロになる資格について、リグゼ選手の考えを詳しく教えてください。

リグゼ:
僕はプロ選手になるには、なりたいかどうかではなく、なれるかどうかが重要だと考えています。プロはその分野における技術と、常に最大限のパフォーマンスを発揮できる強靭なメンタルが必要で、これらの要素を持ち合わせている人だけがプロになれるのだと思っています。

僕は人前に出ることは得意なので、緊張などによってパフォーマンスが落ちることはないです。ですので、メンタル面は問題ないと考えていましたが、実績がなく技術面はまったく足りていないと感じていました。これらの理由で、プロ選手になる資格がないと考えていたんです。

実際、シャドバのプレイがどんなに上手くてもプロになれない人もいると思います。

――しかし、リグゼ選手は実績がない、実力が足りないと考えている状態でG×Gの選考に応募したと思います。結果的に選考を通過したわけですが、リグゼ選手のどの部分が決め手になったと考えていますか?

リグゼ:
選考試験の1つに、流されるシャドバのプレイ動画に対して自由にトークするという内容がありました。そのプレイを簡単に説明しますと、対戦相手がピンチの状態でドローしたカードが、逆転のチャンスを作り出せる効果を秘めているという内容です。

この内容は試験終盤に実施されたものでしたので、選考対象は全員実力者です。やはりと言うべきか、ほとんどの方がドローしたカードがもたらす今後の展開を丁寧に解説します。

一方で、僕はドローしたシーンを見て「やっぱりここで負けるわけにはいかない! 見事にキーカードを引きました!!」とシリアスな状態だった選考会場で、面白おかしくプレイを解説しました。これを聞いていた周りの選考者にはウケていて、両隣にいた方は爆笑していました(笑)。

このように、プレイ以外の部分で僕の強みを表現できたのが決め手かなと考えています。

――リグゼ選手にとって、プロ選手とは何ですか?

リグゼ:
「ゲームを本気で楽しんで遊んでいる」のがプロ選手だと思います。どんな競技においても、その競技を一番好きな人がプロであるべきだし、好きだからこそプロとして活躍していけると考えています。

もちろん勝つことが大前提ではありますが、本気で楽しんで勝利し、勝つことに楽しさを見出せるのがプロ選手だと思いますね。


シャドバプロリーグで高い勝率を誇りチームを勝利に導くリグゼ選手は、漫才とシャドバの挫折経験から生み出されたプロ選手だとわかった。

後編では、スポーツで身に着けたテクニックがシャドバでも活用できたことや、一度見るとやみつきになるチーム配信を提供するG×Gの魅力が語られた。

写真・BUN

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記者プロフィール
キズグチアロエ
「#コンパス」にどっぷりハマり、「#コンパス」に人生を捧げると決めた、傷口だらけのアロエ。
「#コンパス」に携わるクリエイターたちと、仲良くなりたいフリーライター。
どんなヒーローでもそこそこ扱え、特定のヒーローというよりもヒーロー全員が好き。

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