ギガース使いの用心BΩYは流行りを捨てリスクを背負って戦う

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■前編記事
アモーレ用心と呼ばれるほどファンに愛される
――用心BΩY選手の鉄拳プレイ配信には、平日にもかかわらず同時に150人ぐらい集まっていました。鉄拳配信でこれだけの人が来るのは珍しいと思うのですが、人を集める工夫をされてるんでしょうか?
用心BΩY:
視聴者が少ない頃から、コツコツと配信を続けていたら増えていっただけなので、特に何かしてるわけではないです。ただ、最近は配信時に視聴者がたくさん来ても、アーカイブがあまり再生されていないんですよね。そこで、ファンの方からもらったギガース使いだとひと目でわかる画像を、サムネイルに設定するなどの工夫はしてます。
加齢。選手と一緒に、鉄拳7のシーズン2を高い段位でプレイしてるときがあったんですが、このときは1,700人ぐらいが見に来てくれてました。それなりに人が増えて生配信の急上昇の欄に載り、そこからさらに人が増えて急上昇の中でも上位に表示されていたようです。
そこで僕を知ってくれて、鉄拳はプレイしていないけどあなたの配信は見ちゃいますとか、あなたの配信を見てから鉄拳を始めましたと言ってくれる方が出てきて、本当にうれしいです!
――それは素敵なことですね! 日によっては、1回の配信時間が5時間を超えることもあるようですが、ずっと集中してプレイできるのでしょうか?
用心BΩY:
僕は黙ってゲームするほうが苦手なので、視聴者の方に見てもらいながらゲームするのが合ってるんですよね。なので、1人でトレーニングモードを10分やってるだけで辛くなってきます。
しかも、使ってるギガースの自由度が低いこともあって、他のキャラだったらできることでもできない場合が多いんです。それをどうやったら克服できるかを模索して、できることとできないことを判別してるんですけど、1人だとイライラしてくるんですよね(笑)。
僕は自分の配信を見直すことが多いんですが、自分に対してつっこみを入れたり、面白かったと思う発言や、逆に今のは余計だったなという発言にも気づくことができます。これを繰り返すことで、視聴者の方たちがどんなところを面白がってくれているのかがわかってきました。
――配信でもよく言われている「アモーレ」は、用心BΩY選手のキャッチフレーズですか?
用心BΩY:
そうです(笑)。
昔、雀荘で働いていたことがあって、その頃は昼夜逆転の生活をしていました。配信時間もおのずとそうなるわけで、そのおかげかイタリアの人が配信に来るようになったんです。僕が昼夜逆転で配信していた時間が、イタリアの方にとっていい暇つぶしの時間帯だったみたいです。
その人からコメントで「用心BΩYが知ってるイタリア語を教えてよ」って言われたので「アディオス」って言ったらそれはスペイン語って突っ込みを受けました(笑)。
そこで、「愛してる」はイタリア語で何て言うのって逆に聞いてみたら「アモーレ」だと教えてくれたんです。これをきっかけにアモーレっていいなあって思って、使うようになりました。
最初はアモーレって言っても反応は悪かったですが、今ではフランスの方が配信を見に来て、コメントに「アモーレ用心」って打ってくれるほど浸透しました(笑)。
ファンにアモーレ、対戦相手にアモーレと、ありがとうの代わりに使用してます!
プロライセンス付与に関係なくTWT大阪では本気モード
――「Tekken World Tour 2019」(以下、TWT)の大阪大会は、用心BΩY選手にとってどんな大会ですか?
用心BΩY:
知らない強い選手が出てくるような大会です(笑)。
去年のTWTには、他の出場者が強いのはわかるけど、もっと強いのもいるんやぞって思って意気揚々と出場したらボコボコにされたんですよ。名前を聞いたことがある選手ならまだわかるんですけど、あんまり聞いたことない人でも強くて……びっくりしました。
――TWT大阪に向けて、どんな練習や対策をしていますか?
用心BΩY:
オンラインを中心に練習していたんですが、鉄拳はオフライン対戦が大事だよって言われてからは、家が近い選手と対戦したり、若手の選手を呼んでオフラインでも練習するようになりました。
でも、シンガポール大会に出場してオンラインもオフラインも重要だってことに気づいたんです。オフラインはラグのない快適な環境なので、大会の配信台の動作が重いとイージーミスをするんですよ。
オンラインとオフラインの両方をしていれば、ラグの有無に関係なく対応できるので、バランス良くやったほうがいいと思いますね。両方の練習をやった結果、イレギュラーな重さにも対応できるようになれました。
――TWTの大阪に参加する選手の中で注目しているのはだれですか?
用心BΩY:
チクリン選手かな。盟友っていうのもあるし、最近すごく勝ってるし注目はしてますね。
――今話題のパキスタンのArslan Ash選手はどう思いますか?
用心BΩY:
以前に10先やったときは10対8で負けたんですけど、この8勝は僕が強いわけではなくて、Ash選手がギガースに慣れてなかったことによる勝利なんですよね。彼は強いんですが、対戦し慣れてないキャラとの対戦はあまり強くないようです。
ただ、Ash選手についてはほとんど情報がないんですよ。他の選手とかだとYouTubeとかで調べれば動画もたくさん出てきますが、Ash選手にはそういう情報がないので対策しにくいですね。実力も世界トップレベルですけど、情報量が少ないから対策が立てられないのも大きいです。
ですので、Ash選手が今後も勝ち続けていくには対策され出してから、どうやって勝つかですね。でも、ポテンシャルのある選手であることは間違いないので、今後も好成績を残していくんじゃないかなって思います。
――TWT大阪で当たりたくないなと思う選手はいますか?
良い意味でチクリン選手で、悪い意味で破壊王選手。
チクリン選手とは大事な場面で対戦したいですね。「MASTERCUP TRY TOKYO」のときにチクリン選手と戦いたくて仕方がなかったんですけど、対戦できなくて……。ただ、「ケロットカップ」のときはプールの決勝で当たって、長い間待たせてごめんなって伝えました。対戦は負けましたが、楽しい時間でした。
一方の破壊王選手ですが、対戦相手としてみた場合、僕の成績は悪いんです。自己分析としては、動きの相性が良くないんだと考えてます。
対策として動きを変えるようにしてますが、大会で勝ったことがないぐらい負けてます。破壊王選手の使うキングが苦手っていうわけではないんですが、彼のキングには勝てないですね。当たりたくないです。
――TWT大阪への意気込みをお願いします!
用心BΩY:
プロライセンスがほしいからトップ8に入りたいわけじゃなくて、単純に上位ランク入りしたいです。本当に勝ちたいので、本気で優勝目指してがんばります!
――プロライセンスを獲得したら、最初に誰に伝えたいですか?
用心BΩY:
母親ですね。僕のファンは勝手に情報が回ってくるかもしれないですけど、ツイッターなどをやっていない母親には言わないと一生知らないままじゃないですか(笑)。
僕は実家暮らしなのですが、両親は別のところに住んでいるんですよ。でも、たまに家に帰ってきて僕がサボってる片づけとかをしてくれているので、それも含めて感謝の気持ちは伝えたいですね。
実は母親から誕生日に手紙をもらったことがあって、その中に「韓国へ行くんでしょ。がんばって!」というメッセージと餞別が入っていて、もう感動しました。なので、少なくとも練習をサボってる時間は減らしたいなって思いましたね。
今年のEVOではNapsとグランドファイナルが夢
――EVO 2019の目標を教えてください。
用心BΩY:
EVOは今年が初めてなんですけど、誰だか知らない人に負けるってことが他の大会であったので、EVOでも同じような状態になる可能性はあると思うんですよね。なので、そうならないようにしっかり練習して望みたいです。
大会の成績がかなり悪かったときがあったんですけど、そのときは最近主流の、ローリスクローリターン、ローリスクミドルリターンの戦い方をギガースでもやってたんです。でも、ギガースがそういう戦い方をするキャラじゃなかったこともあり、まったく結果を出せませんでした。なのでその戦い方をやめて、リスクを背負っていこうと決めました。
EVO 2019の目標は、本気でNaps選手とグランドファイナルで戦いたいですね。でも、グランドファイナルで会おうって言ったら「うそだろ!? オレでもきついよ」って言われました(笑)。
――最後に、ギガースのような環境的に強いわけではないキャラを使って戦ってるプレイヤーに、応援メッセージをお願いします。
用心BΩY:
「なんでギガースなの? 弱いじゃん」とか、「もっと強いキャラを使えば」「君が結果を出せないのはキャラのせいだ」ってよく言われます。
そういうときは歴代鉄拳のデカいキャラ名を挙げて、「ジャック、マードックが好きなんです。ギガースもデカいから好きなんです!」って言うようにしてます。
鉄拳って、好きなキャラ使って勝てるから面白いと思っているんですよ。なので、僕はサブキャラとかやっててもすぐに飽きちゃうんです。でも、ギガースは10時間とかやってても飽きることはないんです。好きなキャラで勝つってことは長く続ける上で重要だから、大事にしてほしいな。
以前にTwitterのタイムラインに「初心者がキャラを選ぶときは、強い弱いではなく見た目で決めたほうがいいよ」という内容が流れてきました。
そのツイートには「何回も負けることになるから、負けても自分が耐えられるようなキャラにしたほうがいい」とあって、そのとおりだなと思って感動してしまいました。
勝つことだけが楽しいなら強いキャラを使えばいいと思うんですけど、強いキャラって基本的に操作が難しいので結局練習することになります。好きだからこそ練習も長い間できると思うので、キャラ性能だけでは選ばないでほしいですね。
ギガース以外は大体強いって言われるようなときでも、そういうところを活かして戦ってる僕みたいなプレイヤーもいるんだから、あきらめずにやっていれば勝てるようになるからね。
わからないことがあれば聞いてくれたら答えるよ! 熱意と決意があればずっと教え続けるので、偽りの気持ちがない人をお待ちしています。
ユーモアあふるトークで笑いを誘ってくれた用心BΩY選手だったが、ギガースには並みならぬ愛情を注いでいることが伝わってきた。
環境的に強いとはいえないギガースで、プロライセンス獲得手前まで勝ち進んでいたことを考えると、用心BΩY選手はギガース使いにとって憧れの存在なのではないだろうか。
TWT大阪はもちろん、今後の用心BΩY選手の活躍にも注目してきたい。
写真・大塚まり
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ギガース使いで名高い用心BΩY選手は、ファンだけでなく選手からも愛される鉄拳プレイヤー。今は英語を勉強し、海外プレイヤーとの交流も深めたいと考えている。