オートチェス:オリジン世界大会で見た日本人の勇姿――女性の活躍や今後の大会構想は?

Mako(WPJ編集部)

【この記事は約7分で読めます】

「Auto Chess:Origin(オートチェス:オリジン)」(以下、オートチェス)の世界大会「Auto Chess Invitational 2019」が10月25日~27日の3日間にわたって、中国の上海にて、開催された。

世界中の各地域からトッププレイヤーが出場したこの大会に、日本からはtuttu選手とBomeron選手が出場。本稿では、彼らの活躍や現地の盛り上がりをお届けしていく。

死のグループで争った日本人2名

2019年に生まれの注目eスポーツタイトルは? と聞かれたら「オートチェス」と答える人は多いのではないだろうか?

麻雀に例えられるそのゲーム性は、従来のゲームにはない思考が求められ、プレイした人はまったく新しい体験に魅了されたことだろう。

本作の世界大会が上海で実施され、世界各国から32名のプレイヤーが出場。A~Dの8名ずつのグループに分かれて試合を行い、上位4名が準決勝へ。準決勝も同様に上位4名が決勝へと進み、優勝を争うことになる。

グループリーグは、各グループごとに試合は3セット実施。各セットの順位に応じてポイントが与えられ、3セット終了時の合計ポイントで最終的な順位が決まる。

これは準決勝、決勝も同じ仕組みだが、準決勝は4セット、決勝は6セット行われる。1セットだけ1位をとったとしても、すべてのセットで高いアベレージを出さないとなかなか上位になれないのがこのルールの特徴的なところだろう。

最初のグループは抽選によって決められ、tuttu選手とBomeron選手はなんと同じBグループに。

日本人選手がそろって決勝へ進む光景を見てみたかったところだが、Bグループは、「ハースストーン」のトッププレイヤーでもあるJinsoo選手(韓国)や北米大会1位通過のChuck選手(アメリカ)、アジア3位通過のYeQen選手(ベトナム)ら強豪揃い。日本人の立場としては、tuttu選手とBomeron選手がいきなりぶつかってしまうこともあり、見応えのある試合となった。

試合は、第1セットはBomeron選手が1位、第2セットはtuttu選手が1位に輝くという日本人両名の活躍に会場が沸く展開に。

しかし、tuttu選手は3セット目で最下位をとってしまい、総合ポイントでは惜しくも5位という結果に終わってしまう。

Bomeron選手は第1セットの1位にはじまり、6位、4位と強豪相手に食い下がり、総合3位で準決勝へと駒を進めた。

試合中は各プレイヤーの構成がモニターにリアルタイムに表示される。倉庫の駒も見れるようになると、さらに観戦が楽しめそうだ

グループB第1セット

グループB第2セット

グループB第3セット

出場が決まった際に涙を流したほどこの大会への思い入れが強かったtuttu選手。

普段は早い段階で構成を決めるスタイルが持ち味なのだが、「普段とは違う感覚で視野が狭くなってしまった」と大舞台の緊張感に飲まれてしまったことに悔しさをにじませていた。

1位になった2セット目も、本人としては納得のいくプレイングを発揮することはできなかったようだ。

「負けて思ったのが、もうこんなチャンスあるのかわからないのが嫌なこと」と試合後に語ってくれたtuttu選手。もし、またこういった大会があれば絶対に参加したいと、今後を見据えた表情で初日を終えた。

2度の1位獲得でBomeronが波に乗る

続く大会2日目の準決勝。

Bomeron選手は、Jinsoo選手、Chuck選手、YeQen選手ら死のグループBを勝ち抜いた精鋭たちに加え、グループAの上位4名を交えた準決勝グループAへ臨む。

第1セット、ドラゴンメイジ構成で1位を勝ち取る好調な滑り出し。しかし、アサシンで構成を育てきれずに2セット目は6位、3戦目はウォリアーで7位に沈んでしまい暗雲が立ち込める。

しかし、第4セットでふたたび1位に輝き、見事、決勝進出を確定! 長時間にわたる試合でも集中力を切らさないメンタルが光った準決勝であった。

準決勝第1セット

準決勝第2セット

準決勝第3セット

準決勝第4セット

不運な展開でも粘るBomeron 優勝は韓国トッププレイヤーの手に

そして大会はいよいよ最終日の決勝戦へ。前述のとおり決勝戦は6試合の合計ポイントで順位が決められる長期戦。準決勝にも増して、各セットで高いアベレージの順位を残すことが求められる。

決勝進出プレイヤーは以下のとおり。

  • Jinsoo選手(韓国)
  • Seiko選手(ドイツ)
  • Bomeron選手(日本)
  • kong選手(中国)
  • Chuck選手(アメリカ)
  • Arch Devil選手(中国)
  • Shredded選手(パキスタン)
  • Land選手(韓国)

kong選手やJinsoo選手らが順調に上位に入っていく中、Bomeron選手は下位が続く非常に苦しい展開。

あと少し駒を重ねられれば……、という場面も多く、もどかしい状況が続いていき、最終的に7位でフィニッシュ。試合後に「こういうこともあるゲームなので……。」とやりきった表情だが悔しさも隠しきれずに話していた。

優勝には、2位に1ポイント差という接戦を制した韓国のJinsoos選手が輝いた。

オートチェスだけでなく、ハースストーンやTFT(LoL)でも世界トップレベルの実力を持つJinsoo選手。グループリーグから安定感のある試合運びで優勝を勝ち取った

決勝戦第1セット

決勝戦第2セット

決勝戦第3セット

決勝戦第4セット

決勝戦第5セット

決勝戦第6セット

次回大会は未定ながらも期待ができそう!?

賞金総額100万ドル、世界中からトッププレイヤーを集めた大規模な大会となった今大会。会場にて、開発元であるDragonestのCEO、Loring Lee氏も戦いの行方を見守っていた。

Lee氏が今大会で特に関心を寄せるのは、中国のLucky選手の存在。彼女は今大会唯一の女性プレイヤーで、ステージに登場した際の歓声もとりわけ大きく、注目を集めた1人だ。

他のタイトルを含め、グローバルな大会に女性プレイヤーが進出することは極めて少ないことである。

また、会場に訪れていた観客にも女性は多かった。カップルで観戦していた人や自分もオートチェスをプレイしながら観戦するなど、今後も女性プレイヤーの存在感が目立つタイトルとなる可能性はありそうだ。

さらに、今後の大会のプランを尋ねてみたが、まだ具体的なものを話すことはできないと前置きしつつも、日本で大会やプロリーグを開きたいという考えは胸に秘めているとのことで、朗報を待ちたいところだ。

「オートチェスを日本で1番流行るeスポーツゲームにしたい」という力強いメッセージもいただけたので、来年の展開を楽しみにしてほしい。

【あわせて読みたい関連記事】

eスポーツの未来を憂う人たちへ――DOTA AUTO CHESSの魔力

2019年、DOTA AUTO CHESSを知らずしてeスポーツは語れない。数々の対戦ゲームに精通するちょもす氏がその魅力を解説。

記者プロフィール
Mako(WPJ編集部)
スマホゲームの攻略サイト、情報メディアを渡り歩いてウェルプレイドジャーナルに流れ着いた超絶新進気鋭の若手編集者。イベント取材では物販やコスプレイヤーに釘付けになりがち。

関連記事

ちょもす

注目記事

新着記事