鉄拳女子ゲーマーたぬかなーー良いことしたら褒めて!悪いことしたら叩いて!(前編):倉持由香のゲーマー交遊録【第10回】

倉持由香

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おかげさまで、この連載も10回目を迎えることができました。これに合わせて、今回は連載初の女子ゲーマーに話を聞いてきました! 第7回のゲストのどぐら選手と同じCYCLOPS athlete gaming(以下、CAG)所属のたぬかな選手は、鉄拳で活躍する人気選手。自己分析でも今年は好調と話すたぬかな選手に、大阪で行われるTWT(Wellplayed Challenger)の意気込みを聞きにいったら、ガッツリ女子トークになっちゃって超ロングインタビューとなりました(笑)。

たぬき顔だから「たぬかな」とちゃいます

倉持:連載恒例の質問からインタビューを始めます! たぬかなさんは、取材でどんな質問をされたらうれしいですか?

たぬかな:
そりゃもう、勝った試合のことですね! 「○○○の試合で強豪選手を倒しましたよね」とかいわれると、やたらと喋りだします。逆に、負けた試合の話だとあんまり話さなくなります(笑)。

倉持:そしたら、のちほど聞かせてください!「たぬかな」の名前の由来を教えてください。

たぬかな:
本名が「谷加奈(たにかな)」なんで、それをもじってます。なんで「たぬ」なのかですが、出身地の徳島県って何でか知らないけどたぬきが有名なんですよ。

倉持:たぬきですか? 知らなかったです。

たぬかな:
たぬきの聖地みたいで、野良猫並みにたぬきがいます。それも、あって「たぬかな」にしました。

倉持:たぬかなさんの「たぬ」は、たぬきの「たぬ」なんですね。

たぬかな:
そうなんです。「たぬき顔やから、たぬかななんや」と思っている方がいるみたいですけど、自分がたぬき顔とかは思ってないんで、そこは訂正しときます(笑)。

倉持:1日のスケジュールはどんな感じですか?

たぬかな:
平均すると、お昼の12:00に起床。

倉持:これまでインタビューしてきたゲーマーもだいたいそんな感じですね。

たぬかな:
でも、盛って12:00です(笑)。実際は、15:00~16:00ぐらい。

起床後は、ご飯を食べてからゲームセンターに行って、24:00の閉店までやってます。帰って1:00ぐらいから朝6:00まで配信みたいな感じです。ただ、最近はゲーセンの通信環境があまり良くないので、行かないことも多いです。

日によっては、17:00起床とかって日もあります(笑)。

倉持:私もそれぐらいの日ありますよ(笑)。対戦会に行くときは、昼間からですか?

たぬかな:
CAGの対戦会は19:00からなので、調子が良いときは18:00ぐらいまで寝続けて、万全の状態で対戦会に行きます。対戦会は23:00までですが、終わってから誰かの家に集まってやることもありますね。

倉持:家対戦会もやるんですね。ゲーセンに行ってたときは、アーケードでの練習が多かったですか?

たぬかな:
行ってたときはそうなんですけど、家庭用版が先にアップデートされることもあって、あんまりゲーセンにみんな行かなくなっちゃってるんですよね。

ゲーセンに行ってたときは、みんなと会って対戦するのが楽しかったので、そっちが中心でした。

倉持:ゲーセンが好きなんですね。たぬかなさんの格ゲーとの出会いはゲーセンですか?

たぬかな:
高校が建築科だったので、男子が多かったんですよ。それでよく学校帰りに男子とゲーセンに行ってたんです。その流れで鉄拳に触れるようになりました。

倉持:そのときの鉄拳のバージョンはなんですか?

たぬかな:
鉄拳6のBRの中期ぐらいですかね。段位の高いプレイヤーもいたんですが、同級生の男子らは初心者ばっかりだったので、その中でライバルみたいになって強くなっていきました。

倉持:もともと、ゲーム自体は好きだったんですか?

たぬかな:
家には、ファミコン、PS、64、ゲームキューブなど、家庭用ゲーム機がたくさんがあったんです。格闘ゲームじゃないんですけど、父親がゲーム好きで環境は整ってました。

倉持:ほとんどのゲーム機が揃っている、いい環境ですね。

たぬかな:
私には弟と姉がいるんですけど、いろんなジャンルのゲームを遊ぶために3人で相談して、「あんたがスマブラ買って、私はどうぶつの森を買う」みたいな感じで、シェアしてました(笑)。

「半年だけな」から「続けたらええんちゃう」へ

倉持:大阪に出てきたのはいつ頃ですか?

たぬかな:
大阪に出てきたのはプロになるときなので、23歳の頃ですね。

高校で建築科に入ったのは設計士になりたくて入学しました。実際、卒業後に設計事務所で設計士として働いたんですけど、その会社が倒産しちゃったんですよね。

そこから1年間ぐらいバイトをしながら次の仕事を探しました。その後、正社員の職に就いてお金と時間に少し余裕ができて、鉄拳の大会に出るようになってからプロの話をいただきました。

倉持:プロの話は、大阪に住むのが条件だったんですか?

たぬかな:
ですね。とはいえ、私はずっと徳島に住んでいたこともあって、都会に行ってみたいっていう気持ちもあったんですよ。

倉持:大阪に出てくるのに不安とかはなかったですか?

たぬかな:
そこは期待しかなかったですね。田舎育ちなんで、「大阪に住めるぞ!」みたいな(笑)。

倉持:徳島時代にも大阪にはちょくちょく行ってたんですか?

たぬかな:
そうですね。と言っても、大会で行く程度だったんで、ゲーセンに行ってネットカフェで泊まるような感じでした。

地元にはゲーセン街や繁華街がほとんどないんですよ。ゲーセンも立地が悪くて、自転車で45分ぐらいかけて行くような感じでした。そんな寂れた日々から脱却したかったっていうのもありましたね。

倉持:自転車で45分かけてゲーセンはすごいですね(笑)。

たぬかな:
夏場は川遊びもよくしました。ガチのゴーグルをつけて、モリで川魚を獲るんですよ、でも、20歳を超えたら「モリを片手に私、こんなんでええの?」みたいな(笑)。

倉持:モリ!「獲ったどー!」のやつですね(笑)。CAGに入るとき、専業でやっていくことに不安はなかったですか?

たぬかな:
お給料に不安があったんで、面接のときにしっかり確認しました。「給料は○○○円で固定給です」って回答だったので、その不安は払拭されましたね。

倉持:固定給はありがたいですよね。

たぬかな:
ほんとそうです! CAGに入る前は固定給で働いてたので、なおさらです。でも、地元では最低賃金が安かったこともあって、CAGに入るほうがお給料が少し増えるぐらいだったんですよね。

倉持:それなら、ゲームできて給料も増えるし、専業だしいいことずくめですね。

たぬかな:
大阪だから地元よりは物価高いって言うのは理解してましたけど、「大阪、行きます!」って決めて両親に相談しました。ですが、「アホか!?」と反対されました(笑)。

倉持:ひどい(笑)。それをどうやって説得したんですか?

たぬかな:
その当時、アパレルで働いてたんですが、ランク制度があったんですよ。これは、一度退職しても、復帰するときにテストに合格したら退職時と同じランクからまた始められる制度です。この制度があったので、CAGでだめだったら戻ろうと思ってました。

倉持:それはやさしい制度ですね。

たぬかな:
そうなんです。全国にあるアパレル店なので、専業ゲーマーでだめだったら大阪で就職すればいいかと思って、両親にもこの話をしました。

半年経ってもうまくいかなかったら、徳島に戻ってくるなりして就職するからって。そしたら、「半年だけな」って。それで半年がんばってみたら、なんだかんだ上手くいって。

決定打は、地元で有名なローカルテレビ番組にも出してもらったことですかね。周りの人から、「娘さんテレビに出てたね!」って言われたみたいで、それを契機に「じゃあ、続けたらええんちゃう」って(笑)。

倉持:テレビの影響力は大きいですもんね。

たぬかな:
田舎だから、かなり大きいですね。それでちょっとは認められたかなと。

手作り小物をインスタにアップで高女子力!けど画面はバキバキ

倉持:格ゲー以外の趣味はありますか?

たぬかな:
趣味はゲームなんで、格ゲー以外のゲームをよくやるんですよね、TPSとか。

倉持:フォートナイトをプレイしてますよね。

たぬかな:
そう! フォートナイトをやりすぎて、チームメイトにもよく突っ込まれます。みんな鉄拳をやってるのに、たぬかなはまたフォートナイトやってるみたいな(笑)。

倉持:Twitterを見てると、音ゲーもされてますよね。

たぬかな:
好きですね。昨日はダンスダンスレボリューションを踏んできましたし。ゲーセンで鉄拳の順番待ちをするときに、音ゲーがぴったりなんですよね。女の子って、音ゲーはやりやすいじゃないかな。

倉持:確かに音ゲーが一番女子率高い気がしますね。ゲーム以外の趣味は?

たぬかな:
小物作りしてます。逆にこれしかないんで推していくんですけど。

倉持:女子力高い!(笑) めっちゃ女子っぽい! どんなものを作ってるんですか?

たぬかな:
インスタにアップしてるんで、今探しますね。

倉持:作ったものをインスタにアップってめっちゃ女子!!!

たぬかな:
こんな感じのです。

倉持:かわいい! でも、たぬかなさんのスマホの画面が割れて、バキバキじゃないですか(笑)。

たぬかな:
スマホの画面を割れたまま放置してる人は、だらしないという説があるけど、私の部屋は汚いからそうなのかも(笑)。

倉持:この小物は何で作ってるんですか?

たぬかな:
これは樹脂とアクリル絵の具ですね。

倉持:建築科出身だから、物作りが好きなのかな?

たぬかな:
そうなんですよ。あとね、ゲーミングモニターを作ったやつもあるんですよ!

倉持:ゲーミングモニター!?

たぬかな:
プラ板を使って、ゲーミングモニターとかデバイスを作りました。

倉持:材料はプラ板なんですね。細かい作業で大変そう! たぬかなさんは、イラストも描かれてますよね?

たぬかな:
そうですね。でも、専門的にやってるわけじゃなくて独学なので、仕事としてはできないですけど、友だちにお願いされたら描きますね。

倉持:それにしても、多才で器用ですね。

たぬかな:
手先使うのが好きで、美術の授業も好きでした。

倉持:ゲーマーは手先が器用なほうがいいですもんね。

たぬかな:
でも、絵が上手いゲーマーっていないですよね(笑)。

倉持:前回この連載でインタビューした竹内ジョンくんは、もともとイラストレーター系のお仕事志望ということもあって、絵がとても上手かったですよ! 絵はアナログで描くんですか?

たぬかな:
アナログでも描きますし、最近iPadを手に入れたのでデジタルでも描いてみようかと思ってます。

倉持:取り消し機能もあるし、ワンタッチで着色できるし、デジタルは慣れたら楽ですよね。

Qudansに勝利ーーこの話を待ってたんだ私は!

倉持:たぬかなさんが思い出に残ってる大会や試合は?

たぬかな:
プロ1年目の「コンボブレイカー(2017年)」ですね。初めてちゃんとして出た試合で壇上に上がったんです! 逆にプロ最初の大会では9位で終わっちゃって、壇上に上がれなくてガチ泣きしてたんですよ。

倉持:檀上はベスト8からですよね?

たぬかな:
そうです。そのときはJDCRやSaintは壇上に行ってて、私も! ってなったけど最終戦で負けちゃって9位という結果でした……。

一緒に行きたかったねって慰めてくれるのもなんか情けなくて。なのに現地の記者が写真撮るんですよ。心の中では、泣き顔載せるな! ってなってました(笑)。

そういうことがありながらも、200人規模のコンボブレイカーで3位になれたんですよ。そのときの1位はJD、2位はSaintなんです。以前は届かなかったベスト8にこの2人と行けて、しかも彼らの下まで行けたのがうれしかったですね。

倉持:そのお2人の下っていうのはすごい位置ですよね。

たぬかな:
そのときの動画を今でも見返すことがあるんですけど、あの日はすごいノリノリで、普段は勝てないような人にも人知を超えた動きで勝ててました。なので、コンボブレイカー(2017年)は楽しくやれて、3位で悔しいとかはなかったですね。

倉持:大会本番でその状態にもっていけるのがすごいね。応援効果もあったのかな?

たぬかな:
声援聞こえると、元気出ますね。

倉持:アウェイな雰囲気だとその空気に飲まれちゃったりしそうですよね。2019年上半期の成績はいかがですか?

たぬかな:
成績かなり良しですね。1月から多くの大会に出たんですけど、いい感じです。

5 on 5の「HIZAまったり杯」の賞金大会で……。

倉持:Qudansさんに勝ちましたよね!!

たぬかな:
そう、私はこの話題を待ってたんだよ!(笑) わかってるねこれは!

今年2月にあった「CELL PRO CUP」という2 on 2の賞金総額20万円の大会で、女子チーム組んだらトップ8に入れました。

トップ8に行ってTeamYAMASAに負けたんですけど、女子チームでトップ8まで上がれたこともあって配信にも映してもらえました。

勝ったらStrongStyleに招待してもらえる、StrongStyle Japanという3 on 3の大会では準優勝で活躍できました。2019年が始まってからはトップ8、準優勝で調子が良いです。

シングルの大会が始まって、韓国マスターでは25位。一番レベルの高い大会だったんですけど、表の端っこですけど名前が載っているにやにやしながらRTするみたいな(笑)。志が低いと言われるかもですけど、ポイント圏内にいるというのが自分的には大事だったので。

その次が台湾のTaipei Major 2019だったんですけど、そこでは13位と少しランキングを上げました。これはチャレンジャーの大会だったので、13位までポイントが出るんですよ。なのでギリギリ滑り込んで、表の端っこ名前が載ってます。

たぬかなのおすすめ選手は太平洋の暴れん坊

倉持:普段は大阪の対戦部屋などで練習してるんですか?

たぬかな:
自宅にプレステ4が2台とPCが1台あるので家でもやりますし、破壊王さんの家に行ったりもしますね。用意された対戦部屋があるわけじゃないので、仲の良い人の家に集まってやる感じですね。

倉持:対戦をしてて「この人に勝てないな」って人はいますか?

たぬかな:
加齢さんですね。鉄拳をずっと教わってるんですよ、長いこと練習しているので、技とかテクニックで負けるのではなく、何をするかがばれてるんですよね。人読みされてるので勝てないという意味です。

韓国の大会でも当たったんですけど、その中にタケ。さん、用心BΩYさん、加齢さんが同じプールにいたんですよ。

倉持:かなりのデスプールじゃないですか!?

たぬかな:
そうですよね。用心BΩYさんには勝てんって言ってたけどなんとか勝てたんですが、加齢さんには順当に負けてしまいました。

倉持:仲の良いプレイヤーさんは?

たぬかな:
大会に一緒に行ったりしている用心BΩYさんですね。あとは、体重130kgの投げキャラを使う「太平洋の暴れん坊」っていう子がすごくかわいいんです。プロを目指しているみたいで、私PRしたいぐらいかわいいんですよね。

倉持:かわいい鉄拳プレイヤーが配信してるってツイートしてた、むちむちの子ですかね? おいくつの方なんですか?

たぬかな:
25歳かな。用心BΩYさんもプロ目指してて太平洋の暴れん坊とも同じぐらいの順位なんでお互いに切磋琢磨してますね。

(後編に続く)

写真・大塚まり

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記者プロフィール
倉持由香
ゲームに本気で取り組む100cmのもっちりヒップ、尻職人グラドルゲーマー。14歳でゲーム配信者デビューをし、格ゲーマーとの交流が深い。自宅のゲーミングスペースにはPCやゲーム機に加え、雀卓も完備。ストVでの使用キャラは、レインボー・ミカ。

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