Overwatchからシャドウバースに転身 異色のプロゲーマー・keisuke3【後編】

ランダムだからこそ奥深い keisuke3を虜にする2Pickの魅力
――:シャドウバースでは、やはり多くの方が構築フォーマットがメインだと思います。そんな中で2Pick担当になった理由はなんでしょうか。
keisuke3:
2Pickは独特のランダム要素が面白いなと感じたからです。飽きずにずっとやっていられるフォーマットだと思ったので、やるなら2Pickがいいなと思いました。
――:keisuke3さんをそこまで引き込む、2Pickの魅力とはなんでしょうか。
keisuke3:
ピックするカードが4つのカードパックからカードが選ばれるので、すべてのカードを覚えておいて「今これをやられたら厳しい」「あのカードは優先順位が高いからケアしよう」みたいな、ランダム要素を含んだ読み合いの多さが魅力だと思います。
たとえば、デッキ作成タイミングで強いカードが出たとすると、やはり相手もそれを取るはずなんです。でも、そもそも出現してない可能性もあるわけで、それをどこまでケアするのか、しないのか……という、2Pick独特の読み合いがあるのです。
――:2Pickの運要素では、あまりストレスを感じることもないのでしょうか。
keisuke3:
そうですね。2Pickではあんまり……あ、でも自分が弱いデッキになってしまうのはストレスを感じちゃいますね(笑)。
――:そういうときに限って、相手のデッキがすごく強いんですよね。
keisuke3:
そうなんですよ! そのときは頭を悩ませますが、逆に吹っ切れて楽しくプレイさせてもらっています。
――:2Pickでは環境ごとに各リーダーの強さが大きく変動すると思います。それに対しての練習方法はどのようなものを用意しているのでしょうか。
keisuke3:
この前の2ndシーズンの試合では、新カードパックが出てから間もなくの試合だったので、時間の関係で上位5つのリーダーに特化して練習を重ね臨みました。
その理由として、評価がワーストのリーダー3つが揃って出る確率が2%のため、その2%を捨てて、上位5つのリーダーに寄せて練習したのです。その中でも特に、1位と2位はより練習する……という感じです。
――:「十禍絶傑(じゅっかぜっけつ)」(※)の環境はkeisuke3さんから見ていかがでしょうか。
※十禍絶傑:シャドウバースの第10弾カードパック。合計114枚のカードで構成されており、2018年9月末にまず97枚と「リーダースキン付きカード」2枚が追加され、11月中下旬に第10弾アディショナルカードとして17枚が追加される。
keisuke3:
ロイヤルだけ頭1つ抜けていて、おかしい強さです……。相手がロイヤルを選択していたら、こっちもロイヤルで対抗しないとだいぶキツイですね。リーダーの評価は毎環境変動するので、こういった環境ごとのリーダーの強さを読むところも大事ですね。
――:今回は下3つのリーダーは割り切ったとのことですが、こうした低評価のリーダーも練習することはありますか。
keisuke3:
新弾が出た直後は上位5つに絞る練習方式を取っていますが、それ以降の試合ではある程度時間の余裕もできるので、すべてのリーダーでカードの優先順位を覚える練習をするようにしています。
――:お話を聞いていると、構築フォーマットをやる機会は少ないようですが、そちらは今後やる予定はありますか。
keisuke3:
今は触っている時間はそこまでないですね。ただ、やはり「RAGE」には参加した方がいいなと思ったので、今後は両立して練習していこうと考えています。もちろんメインになるのは2Pickのほうになりますが。
――:最近ではプロリーグやGAMEBOXのレート対戦の影響もあり、プレイヤーの2Pickへの関心が高まってきていると思います。これから2Pickを本格的にやっていこうと考えている方に対して、伝えたいことはありますか。
keisuke3:
まず勝てないときは勝てない、という点は、構築フォーマットでも理解してもらいたいです。それを踏まえた上での魅力として、2Pickでは試合がひっくり返る大逆転劇が結構あることです。
たとえば、2枚の別々のカードを組み合わせて場を破壊しようとしたとき、その採用されたカード2枚を予測するのは、相手からするとなかなか難しいんですよね。
構築フォーマットだと、デッキごとに採用されるカードがある程度わかってしまうのですが、2Pickはそれが入っているかどうかわからないですから。相手からしても何がくるかわからないドキドキ、自分もそれを引けるかどうかのドキドキ。そういうドローの興奮は2Pickのランダム要素があるからこその面白さだと思います。
――:単刀直入に、2Pickで強くなるには、何を考えて試合に臨めばいいのでしょう。
keisuke3:
これは構築と同じですが、相手が次のターンにすることに対して、されたら嫌なことをするってことですね。ほかには、デッキ作成でカードを選択するとき「本当にこのカードは自分のデッキに必要なのか?」と考えることですね。
――:何も考えずにピックしていると、考えなしに強いカードがある方を取ってしまいがちですが、そうではないと。
keisuke3:
「プロトバハムート」(※)みたいな1枚で単純に強いカードがあるのですが、ピックする前に、それは本当に自分のデッキに必要で、反対側の2枚は必要ないのかと考えるのです。それを1つ1つ考えるようにすれば、ピックが上手くなるのではないかと思います。

※プロトバハムート:ニュートラルカードの大型フォロワー。高いスタッツと全体にダメージを与える能力を持っており、小型フォロワーを一掃する。(画像はシャドウバース ポータルサイトより – プロトバハムート)
――:最近のカードパックでは「暗黒の召喚士」(※)や「唯我の絶傑・マゼルベイン」(※)など、2Pickを意識した能力のカードが登場していますよね。2Pick担当として、そのあたりの率直な感想をお聞きしたいです。

※暗黒の召喚士:デッキが20枚以下の場合のみ発動する能力を持ったカード。初期デッキ枚数が少ない2Pickでより強力なカードとなる。(画像はシャドウバース ポータルサイトより – 暗黒の召喚士)

※唯我の絶傑・マゼルベイン:デッキに同名カードが存在しない場合のみ発動する能力を持ったカード。カードの種類がばらける2Pickで重宝されている。(画像はシャドウバース ポータルサイトより – 唯我の絶傑・マゼルベイン)
keisuke3:
2Pickを意識したカードに関しては、ほとんどがピックや対戦をする上でゲームを楽しませてくれる要素になっていると思います。ほかにも、エルフの「神箭の射手・スーテラ」のような、構築では使われなくても、2Pickではすごい良いスタッツと能力で、器用貧乏なカードが活用できるのも2Pickの面白いところです。
ただ「暗黒の召喚士」だけはちょっと壊れ性能だったかなと思いますけどね(笑)。そこらへんの調整だけ注意してもらえればなと思います。
悔しさ残るSEASON 01.を終えて
――:「RAGE Shadowverse Pro League」(※)も現在SEASON 02.を迎えています。最後まで全チーム接戦を繰り広げたSEASON 01.では、「よしもとLibalent」は惜しくも4位という結果でした。この結果を踏まえて反省点などはありますか。
keisuke3:
自分がもっと早くから上手くなっておけば……とは今でも思います。もちろん成長できた部分もありますが、そういうところを見ると、あのときはもったいないことをしたなという思いが強くなります。後悔というわけではありませんが、チームへの申し訳なさが残りますね。
※RAGE Shadowverse Pro League:シャドウバースを題材とした「RAGE」初のプロリーグ。2018年5月から8月までをSEASON 01.、10月から1月末をSEASON 02.として、各シーズンの優勝チームを争い、最後はシーズン毎の優勝チームによる「LEAGUE CHAMPIONSHIP」を開催し、年間チャンピオンの座を決定する。さらに各リーグでは総額5,000,000円のインセンティブが用意されている。
――:keisuke3さんから見て、SEASON 01.で一番伸びた選手は誰でしょう。
keisuke3:
「レバンガ☆sapporo」の真春選手ですね。彼とは元からすごく仲が良くて、プロリーグが始まる前から一緒に調整したりしていました。彼はプロリーグの途中で、自ら声をかけて良いコーチを見つけたのですが、そこからの上達はすさまじかったです。
keisuke3:
最初はレバンガ☆sapporoも2Pickの担当を分けていたのですが、それだとダメなことに気が付いて担当メンバーを決めるようになりました。真春選手は、そこでさらに良いコーチに出会って、自分自身も上手くなっていましたから。そういう快進撃というのはすごいと思いました。
――:2Pickの試合だけ見ると、序盤は名古屋OJAのさに選手が連勝していて、後半に他のチームも2Pick担当を決めて追い上げる形でしたね。
keisuke3:
そうですね。自分の中でも、SEASON 01.の目標はさに選手を超えることでした。やっぱり他の選手が2Pick専門だったわけではないので、そういう意味ではさに選手は神格化されていましたね。
SEASON 02.からは各チーム2Pick担当を用意して、新チームも2Pickを続けて来た人を採用しているので、もうその差はなくなってきたかなと思います。第1節では、どの試合もSEASON 01.では考えられないハイレベルな試合でしたし。さに選手とも「SEASON 02.からはいい試合を見せられそう」という話をしました。
――:シャドウバースの配信視聴者はお互いのハンドを見れる“神の視点”(※)である理由から、プレイの評価について様々な意見があります。keisuke3さんは、自分のプレイに対する意見をどう受け止めていらっしゃいますか。
※神の視点:配信では両プレイヤーの手札が公開されているため、選手よりも観戦者の方が得られる情報が多い。その視点を表現した言葉。
keisuke3:
自分は途中からブログを書くようになって、プレイや選択の理由をまとめて発表するようにしました。最初の方はいろいろありましたが、ブログにまとめるようになってからは自分の考えを理解してもらえるようになったと思います。
ブログを読んでくれる人もいて、きちんと全て考えがあってのプレイということが伝わっているので、プレイに対する批判の声も少なくなったと感じています。
メンバーを信頼して、目指すはただ1勝
――:SEASON 02.は、チームとしてどういう気構えで挑もうと考えていますか。
keisuke3:
第1節では、ふぇぐは引きも弱くて、さらに対戦相手は上振れし、本当に苦労しました。この運の悪さは、もはや何か(悪いものが)憑いているのではないかと思うほどでした。でも、他の3人の練習風景を見たりすると「やっぱり上手いな」と感じるので、自分の方から特に言うことはなく、ただ信頼しています。自分は自分の仕事をこなすために、2Pickの練習をするしかないです。
そこを任せられるという点では、自分が練習に集中できるようになるので、やはり3人にはとても助けられています。
――:試合に集中するため、日ごろから行っているルーティンのようなものはありますか。
keisuke3:
実は、ステージに上がるときと試合部屋に入るときは、必ず右足から入るようにしています。あとは、ピックが始まるときと試合が始まるときは、必ず祈るようにしています。ピックのときは「自分が上振れますように!」。試合のときは「相手が下振れますように」って(笑)。
やっぱり、こういうのをやると多少なりとも心に余裕ができるんですよね。違いは微々たるものかもしれませんが、そのちょっとでも良いことがあればいいかなと思います。
――:SEASON 02.からは新に2チームが参戦しましたが、印象はどうでしょう。
【新参戦した2チーム】
・日本テレビ傘下の「AXIZ」
・プロサッカーの名門チームの「横浜F・マリノス」
keisuke3:
2Pick担当の選手に関しては、2人とも自分と仲の良い選手です。コーチであるじゅんさんの「VOP」というアマチュアチームで元から交流がありました。とくに「AXIZ」のROB選手は、その中でも一番上手いと思っているプレイヤーです。
――:交流がある選手ともなれば、既に手の内も知れていたり、逆に知られていたりっていうこともあるんでしょうか。
keisuke3:
ありますね。たとえば、シーマン選手は1枚のパワーカードを中心に据えたピックが特徴です。逆に、自分やROB選手は、デッキに合わせてピックをしたり、パワーカードに関してもマナカーブを意識して2コストを優先したりする、先を見据えて勝率の平均値を求めたピックをします。
――:SEASON 01.から意識して変えた部分はありますか。
keisuke3:
自分の癖として、SEASON 01.では素直なプレイが多かったと思います。相手が進化をしたら、それを進化で返す……みたいな。自分の強い動きを意識して、それを押し付けるプレイをしていたんです。
ですが、これまでの試合で経験値を得て、これからは相手の手札を読んだプレイを意識するようにしました。「相手がこう除去したってことは除去スペルはないな」とか「じゃあそれが無いならこう動く」とかですね。SEASON 02.では、これまでよりはそういったプレイができるようになりました。
――:SEASON 01.を経てレベルアップを遂げたということで、SEASON 02.ではそれを発揮できるかどうかというところですね。
keisuke3:
自分は練習環境がとても恵まれているので、それをプレイに活かせるようにしたいです。SEASON 02.の第1節は、対戦卓に着席してからすごく落ち着いてやれたなと思っているんですよね。これも成長した部分かなと思っていて、難しい選択が来ても考えられそうだなという安心感があります。
――:最後に、SEASON 02.に向けての意気込みをお願いします。
keisuke3:
やはり、優勝しか見えてないです。そのために自分が1勝でも多くすると決めています。第1節は負けてしまいましたが、その試合もちゃんと振り返りをしましたし、これからもとにかく1勝をすること考えて挑みたいと思っています。「自分が勝つから構築組は1勝してくれれば大丈夫」という形を作れるように頑張りたいです。
Overwatchからシャドウバースに転身を遂げたkeisuke3選手。その異質な来歴の裏側には、忘れられない挫折と、それを糧にした固い決意があった。彼の決意の固さ、そして勝利への執念の強さは、再びプロゲーマーとして舞台に立ったその姿を見ればわかってもらえるだろう。
彼が二度目のステージでどう輝くのか。これから彼の歴史にどのようなページが増えるのか。引き続き、異色のプロゲーマーの今後の活躍を追っていきたい。
プレイヤー/実況解説/大会主催者、3つの“職業”で「ドラゴンクエストライバルズ」を盛り上げるトシの次なるコマンド(取り組み)は?【前編】

プレイヤーとして、大会主催者として、実況解説者として、それぞれの視点からトシさんの内面に切り込んで話を伺った。彼がなぜここまで多方面に活動をつづけているのか、その心境を赤裸々に語ってくれた。