鉄拳 プロチャンピオンシップ優勝者、ノロマ選手の心境に迫る

まさかり仁

プロライセンス制度が導入され、早2カ月。ちょうど、そのひと月ほど前に「鉄拳」初の公式プロトーナメント「鉄拳 プロチャンピオンシップ」が開催された。

この大会に集まった8人の猛者。その中で見事優勝した“鉄拳修羅の国の覇者”、ノロマ選手にインタビューを行った。彼が何を考え、技を振っているのか。そして、何を思い、試合に臨んでいったのか。
 

ノロマ:長崎県出身。鉄拳シリーズのジャック神。しかし、三島家キャラクターも使いこなす器用派プレイヤー。2017年の「Tekken World Tour Korea」では、韓国の強豪Saint選手やJDCR選手を破り、優勝。”鉄拳修羅の国の覇者”となる。今作、彼の操る「ジャック」と「デビル仁」には期待がかかる。

名前:ノロマ
Twitter:https://twitter.com/TLaionsan
Twitch:https://www.twitch.tv/cooas_games
YouTube:COOASGAMESTV

大会成績
2017年 Tekken World Tour Korea 優勝
2017年 TOKYO TEKKEN MASTERS 5位
2017年 鉄拳ワールドツアー 東アジアオンライントーナメント 5位
2017年 TWFighter Major 2017(台湾)7位
2017年 South East Asia Major 2017 準優勝
2017年 闘神祭2017 Champions Cup ベスト4 【GLORY】 タイカレー(フェン)/のろま(ジャック)/チクリン(豪鬼)
2017年 TEKKEN World Tour Finals 5位
2017年 MASTERCUP.9 ベスト4 【GLOBAL GLORY】 のろま(ジャック7)/チクリン(仁)/まふゆ(フェン)/ケイスケ(一八)/タイカレー(フェン)
2018年 EVO Japan 2018 4位

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優勝までの道程、その時の心境は…

――:優勝おめでとうございます。率直な感想をお願いします。

ノロマ:
みんながみんな100%の状態で来たのかな、という疑問はちょっとあって、調整しきれてないんじゃないか、やりこみ不足もあったんじゃないか、と。そう言っている僕自身も、すごくやり込んだわけではなく優勝しちゃったので。もちろん、やりこむことが強さにつながるとは思います。でも、大会の強さと段位戦の強さは、僕は全然違うものだと思ってるんですね。

やりこむことで、段位戦は強くなる。けど、逆に大会で硬くなりすぎて勝つことができなくなったりするんじゃないかなっていう自論があって。やった分だけ読み合いが強くなるのでやった方が、もちろん良いと思います。2先や3先というのは、かなり短いじゃないですか。普段は10先とかでやってるのに。だからこそ、2先や3先ではバカになったほうが強いと思うんですよね。

優勝はしましたけど、正直これからだなと思います。プロライセンスの大会も増えていきますし、この「8人」という人数も、また増えると思います。序盤で勝った嬉しさはもちろんあります。めちゃくちゃうれしいですけど、ちょっと喜ぶにはまだ早いんじゃないかなと正直思ってます。
 
 
――:今回の大会で1番きつかった相手は?

ノロマ:
AO選手かノビ選手ですね。
 
 
――:AO選手についてうかがわせてください。

ノロマ:
「Tekken World Tour」の東京予選もそうでしたが、対戦経験が一番多い人なんです。戦ってみると僕のことをめちゃめちゃ対策していて、ヤバいなって思わされました。その後に聞いた話では、僕のことを動画ですごく見て対策をしてきていたけれど、それでも勝てなかった、と。ただ、個人的に対策をしてもらえてたという事実が、すごくうれしかったですね。

8人っていう少ない人数に絞られていることもあり、対策していこうって思うのかもしれない。でも、対策をされたってことに、ちょっとときめいちゃって(笑)。今までは対策する側だったというのもあって、なおさらです(笑)。

結果的に勝てて良かったんですけど、ノビ選手とAO選手の2人で比べたら、やりにくかったのはAO選手でしたね。
 
 
――:1試合目を獲られた時、どのように思いましたか?

ノロマ:
1戦目はあまり考えずにやっていました。何も考えずにやって負けたので、これはやばいなと思い、ミンティアを食べながら、最近よく見ていたときど選手の動画を思い出していました。

ときど選手の動画にあった、「基本に忠実に」という言葉がすごく頭に残っていました。こういう時こそ基本に忠実になって戦おうと決め、気がついたら6ラウンド連取していました。基本に忠実になってから、やっぱり勝てるようになりましたね。
 
 
――:「基本に忠実」とは、具体的にはどういうことですか?

ノロマ:
ジャックVSアリサであれば、個人的にはジャック側が有利だと思っています。ジャックがジャブを置いているところに、アリサ側が近寄ろうとすると、スラッシュやスライディングのような、空中で拾えちゃう技が多いんです。ジャブを置いているところにアリサ側がアッパーのようなリスクが多い技を、カンで入れ込まなくちゃいけない。

アリサの接近戦での守りとしては、ハイキックかライトゥーの2つくらいしかないと個人的には思っています。ハイキックとライトゥーにだけ気をつけて動くアリサはけっこうきついんじゃないかな。待つだけでは勝負が決まりづらいので攻めることになるんですが、その中でもハイキックとライトゥーだけもらわないようにしていました。1試合目が終わった後から、頭の中で考えがいろいろ駆け巡りましたね。
 
 
――:ノビ選手についてもお聞かせください。

ノロマ:
今回、ノビ選手が、僕との試合でラースを選択したのに驚きました。あとで本人から聞いたのですが「ノッキング※」が今でもあると思って選んだそうです(笑)。前作のTAG2までラースが持っていた優秀な中段技ですが、今作は無いんですよ。そんな大事なことを忘れるほど、ノビ選手を僕のデビル仁が追い込めたんだなぁと思うと嬉しかったです。

※ノッキング:鉄拳7では削除されてしまった、ラースの主力技の1つ。
 
 
――:ノビ選手との試合でメインキャラのジャック7ではなくデビル仁を選んだのはなぜでしょうか?

ノロマ:
「FINAL ROUND 2018」というアメリカの大会で 、KNEE選手対JDCR選手で、ドラグノフVSデビル仁をやっていました。結果は、デビル仁を使用したKNEE選手の勝利。デビル仁を出したのは、この大会を見たからですね。昔から、人のコピーでうまくなるタイプだと感じてましたから。実を言うと、中段と下段の振り分けは、ほぼすべてKNEE選手から盗んだもの。横ステップの速さとかは、操作精度になると思いますけど、技の出すタイミングとか技の当て方はまねしてるうちに何で当たるかわかっていくんですよ。それこそ、僕の「奈落払い(下段)」や「飛魂蹴(中段)」の振り分けは、彼のデビル仁のコピーです。ノビ選手との試合では、KNEE選手の動きを模倣しても、ギリギリの勝負になってしまいました。
 
 
――:今大会では、ジャックとデビル仁はどう使い分けていましたか?

ノロマ:
「鉄拳7 FATED RETRIBUTION」(以下、鉄拳7FR)というゲームで、「三島一美」「ドラグノフ」「デビル仁」は個人的にTOP3に強いキャラクターだと思っています。ドラグノフでノビさんを越えられる気はしないし、一美も使える気がしない。ノビさんとジャックで対戦した時に、勝ち越しているイメージもない。そして、「BO5(3勝すれば勝ち)」ルールということもありました。一度負けてもいいから、デビル仁を出してみる、というスタンスを取れたことも良かった点の一つでした。
 
 

彼のプレイスタイル、そして環境について

――:中下段の択をかけるとき、何を見ていますか?

ノロマ:
「体力ゲージ」です。相手の体力ゲージを見て、振り分けています。奈落払いという下段の技は、コンボとしてあまり減らないんですよ。ただ減らないけど、壁まで運べる。だからこそ、相手の体力ゲージを見て、相手がまだ食らっても大丈夫だなと思っているところから読み合い始まっています。

大会中の中下段の振り分けは、「下段6:中段4」の割合です。ただし、相手の体力が減っている時は中段の比率を上げます。理由は、リスクを減らしたいから。逆に自分の体力が減っている時は、振り分けの割合を変えずに、タイミングだけ変えて撃ちますね。
 
 
――:多彩なキャラを使い分ける秘策やコツはありますか?

ノロマ:
「鉄拳」って技は多いんですけど、振る技は6個くらいしかないんですよね。僕のデビル仁を見てもらえればわかるように、振る技を絞ってるんですよ。その使う技の中で、さらに状況別で振るか振らないかを、動画とかを見て学びます。

でも、僕も苦手なキャラはいっぱいいます。多彩なキャラを動かせる人というなら、それこそノビ選手がいます。彼は全キャラの強いところを引き出せていると思いますね。
 
 
――:他のプロ選手が使用しているキャラを練習することはありますか?

ノロマ:
対策をするなら、使ってみるのが一番早いですよね。実際に自分で使ってみて、オンラインの相手にされた嫌な行動を学んでおく。次は、自分のキャラクターでその行動をすれば良いので。
 
 
――:ライバルは誰ですか?

ノロマ:
ノビ選手です。理由は、国内で戦っている中で一番戦績が悪いから。ただ、ライバルだとは思っていますが、同時に先生だとも思っています。リスペクトしているからこそ、これからも倒したいですね。
 
 
――:韓国と日本の違いについて教えてください。

ノロマ:
大会慣れがあまりにも違いすぎる。この経験の差が、とてつもなく大きい。韓国では、賞金制のシングルマッチが基本なんです。でも日本では現状、鉄拳のシングル戦ってあまりないじゃないですか。だから、経験の差が生まれてしまう。しかし、ライセンス制度によって、今回の大会のようなシングル戦が増えていってくれるのではないかと期待しています。シングル戦が増えていくのは本当にうれしいですね。

あと、これでシングル戦が増えれば、韓国との差がどんどん縮まっていくだろうと感じますね。僕は12歳くらいから大会に参加していますが、海外に行くと22歳になった今でも手が震えます。「いつ慣れるのか?」と思うくらい緊張します。でも昔は、「どうしよう勝てるかな」と思っていたんですが、今は「もう俺がやるしかねえな」って思うようになりました。
 
 
――:なぜ今、九州が強いのでしょうか?

ノロマ:
みんなを育ててくれた、レジェンドプレイヤーのおかげだと思います。それこそ僕も、多くのレジェンドプレイヤーに叱られ褒められて育ててもらいましたし。九州人の気質として負けず嫌いであるというのも関係してると思います。

関東方面では、新規のプレイヤーがけっこう出てくるじゃないですか。九州は、昔からずっとプレイしている若手のプレイヤーが育ってきてます。僕と同じくらいの年齢が、生え抜きのプレイヤーとして強いんです。特に僕らの世代って、負けたらとことんやり続ける人が多いというのも大きいですね。
 
 
――:応援してくれる人たちへメッセージをお願いします。

ノロマ:
浅く応援してくれたらいいなと。自分ばかりじゃなく、周りの人も強い。もちろん自分を見てほしいですけど、日本にもうまいプレイヤーがいっぱいいるんだよって知ってもらいたいですね。

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記者プロフィール
まさかり仁
バンダイナムコエンターテインメント「鉄拳」シリーズの世界最高峰5on5大会「MASTERCUP」主催者。無類の大会好きで、鉄拳&ソウルシリーズをこよなく愛する。自身も鉄拳歴24年のプレイヤーであり、メインキャラは風間仁。

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