結成半年、CoD:WWIIで日本一に輝いたLibalent Vertex【前編】

【この記事は約9分で読めます】
2018年4月21日より行われた、プロチーム6団体による「コールオブ デューティワールドウォーII」(以下、CoD:WWII)を用いたesports大会“CoD:WWII プロ対抗戦”。今回、インタビューを行ったLibalent Vertexは、このリーグ戦のグランドファイナルにて劇的な逆転を見せ、名実ともに日本一に輝いたチームだ。
本稿では、結成わずか半年の同チームがいかにして優勝までに至ったのか、普段の練習方法やチームプレイ時に意識するポイントなど、様々な側面から伺った内容をお伝えしていく。なお、インタビュー時には選手のほか、リザーバーのWENGER 9氏が同席してくれた。
※E3NCOUNT選手は遠方の愛媛在住のため、インタビューには惜しくも欠席。質問にはメールで答えていただいた。
リーダーであるNicochaaaaaaaann(写真中央)を中心に、Inaba UR(写真右)、E3NCOUNT、sitimentyooo(写真左)の4名で構成されたチーム。チーム名の由来は、ローマ神話における自由の女神”Libertas”と、才能のある人という意味の”talent”から取られ、ゲームの才能を持つ人々が伸び伸びと活躍できる舞台を創るという想いが込められている。また、Vertexは頂点を意味する。
■選手
名前:Nicochaaaaaaaann(ニコチャン)
Twitter:@_prqr
YouTube:L.V. Nico
好きな武器種:ライトマシンガン
CoD歴:6年
名前:Inaba UR(イナバユーアール)
Twitter:@InabaURr
YouTube:LV Inaba
好きな武器種:アサルトライフル、スナイパーライフル
CoD歴:7年
名前:sitimentyooo(シチメンチョウ)
Twitter:@sitimentyo1
YouTube:L.V七面鳥
好きな武器種:アサルトライフル
CoD歴:6年
名前:E3NCOUNT(エンカウント)
Twitter:@E3NCOUNT
YouTube:エンカウント
好きな武器種:タクティカルライフル
CoD歴:9年
■リザーバー
名前:WENGER 9(ウェンガーナイン)
Twitter:@suimasen_desia
YouTube:Japanese小池
好きな武器種:サブマシンガン
CoD歴:8年
唯一無二の個性が光るチームメンバーの面々
――:そもそもLibalent Vertexはどのような経緯で結成されたのでしょうか。
Nicochaaaaaaaann(以下、ニコチャン):
現在の前身となるチームから始まり、Libalent Vertexになる際にチームの力を上げるため、外部の強力なプレイヤーを勧誘する形でどんどん強くなっていきました。
流れとしては、まずE3NCOUNT(以下、エンカウント)を誘い、そのあとLibalentが出来るタイミングでInaba UR(以下、イナバ)、プロ対抗戦が始まったあとにsitimentyooo(以下、シチメンチョウ)が加わり、現在の形になりました。
――:お互い初めて会ったときはいかがでしたか?
シチメンチョウ:
会う前から名前(プレイヤー名)は聞いていたり、僕の場合はイナバと同じチームで戦ったこともあって、初対面という感じはなかったですね。
――:互いのプレイスタイルや印象に関して聞かせてください。
ニコチャン:
シチメンチョウさんは後方から、前線の僕たちを支援してくれます。あまり目立たない立ち位置かもしれませんが、チームにとって重要なポジションをひとりで担ってくれる、非常に頼りになるアサルトライフル使いですね。
イナバはサブマシンガンを用いて、最前線でチームを引っ張ってくれます。1人で対処しなければいけない場面が多いですが、突破力があるイナバは、その状況下でも存分に暴れてくれるので、とても頼りになりますね。また、サーチ(※ゲームモード「サーチ&デストロイ」の略語)ではスナイパーライフルを使用し、その強さのおかげでチーム全体が助かるという場面も多かったです。
シチメンチョウ:
ニコチャンは、自分の知らない知識を豊富に持っているので、素直に尊敬しています。イナバは……なんだろう。掴みどころがないです(笑)。
イナバ:
シチメンチョウに関しては、ゲーム上で会ったとき、とても頭が切れるプレイヤーだなと思いました。今となっては恥ずかしい話ですが、彼が一躍有名になった『コール オブ デューティ ゴースト』のプレイ動画を見たときは、本当に「こいつはバケモンだな」と思い、尊敬すらしていましたよ。でも、リアルで会ったら「なんだニワトリじゃん」って。
シチメンチョウ:
それはゲーム関係ない(笑)。
イナバ:
ニコさんは、ゲーム内だと”鬼軍曹”と言われてて、リバーブのCoroKanTok(以下、コロカントク)やE3NCOUNT(以下、エンカウント)からも「めっちゃイジメられる」と聞いていたので、やべぇ人なのかな思っていました。
でも、実際に会ってみたら「本当に鬼軍曹なのか?」と思うくらい優しくて、良い人です。実際、今一緒に住んでいても、そう思いますね。上下関係は出来ているかもしれませんが。
――:お話を聞いているだけで、仲の良さがうかがえました。では、結成から半年という短期間で優勝を果たしましたが、具体的にどういう練習を行っていたんですか。
ニコチャン:
練習自体は、一般的な方法と変わらないと思います。時間帯は大体21:00~1:00ぐらいまで、遅いときは2:00頃という感じで、平均4~5時間程度の練習を行っています。
それ以外は、個人でゲームをプレイするのはもちろん、僕の場合は海外の有力プレイヤーのプレイ動画やキャプチャーした自分の動画、他チームの交流戦の動画などを見て、自分たちと何が違うかを考察した上で、その情報を21:00から仲間と共有するようにしています。
――:結成した当初から、ずっとそのスケジュールなのでしょうか。
ニコチャン:時間帯はほぼ一緒ですね。今年の5~6月にかけては、自分たちがやる気に満ち溢れていたので、深夜3:00~4:00までプレイしていたこともあります。
――:個人的な練習内容について、詳しく聞かせてください。
シチメンチョウ:う~ん、僕もニコさんとあまり変わらないですね。
WENGER 9(以下、Japanese小池):
そう? 僕から見たらまったく別のことをしているなって思うよ。シチメンチョウはグレネードの研究をよくするし、イナバはひたすらBOT撃ち(※CPU相手に戦うこと)で感度調整(※コントローラーの操作における感度を設定する)するし、ニコチャンは研究量がとんでもないし。多分、本人たちは気付いていないかもしれないけど。
シチメンチョウ:
そうですね。確かに、僕の場合は動画などでグレネードの使い所やポジションを見て、みんなに共有する役目になっています。
――:グレネードの研究というは具体的にどういったものでしょうか。
シチメンチョウ:
たとえば、スタート時に敵が最速で向かう特定のポイントがあるなら、その場所にグレネードを投げるという感じですね。自分たちにとって嫌なポジションを取られないようにするプレイを心がけています。
そしてそれを仲間に共有して、カスタムマッチで全員できるようになるまで反復練習する。ニコチャンはすぐ習得するんですが、イナバとエンカウントは全然終わらないこともありますね(笑)。
イナバ:
グレネードの扱いに関しては、僕の操作するキャラクターの肩が弱いだけなので。
一同:
(笑)
シチメンチョウ:
そうだったのかー。
Japanese小池:
ちなみに、その反復練習はチーム練習の終わりにやるんですよ。練習前に1人で研究してくれたシチメンチョウが、「こんなグレネードがあるけど、練習してみないか?」と言うと、ニコチャンが「いいよ、やろう」とすぐに反復練習に入ります。
――:イナバさんの個人的な練習について教えてください。
イナバ:
BOT撃ちでエイムの調整をひたすらやっていますね。あと、僕は人の立ち回りを盗むのが好きで、他のプロプレイヤーのプレイ動画を見て、これは良さそうだと思ったものをひたすら研究します。もし、その動き自体が対策されたら、さらに対応できる新たな立ち回りを考えたりと、そういう面の個人練習はしていますね。
――:プレイしている時、「あ、対策された」とすぐにわかるんですか?
イナバ:
はい。メチャクチャわかります。”CoD:WWII プロ対抗戦”のDAY3だったかな、僕のところにコンカッション(※)が3つ飛んで来たことがあって。相手のAIiceWonderIand選手は「あ~、たまたまだよ」って言ってたけど、あとで別の選手が「うん、対策した」と言っていました(笑)。
※:相手の視界を奪い、一時的に機動力を下げるスタングレネード。
個人、チームとしての立ち回り 背中を預ける各々の練習方法
――:ニコチャンさんには先程もお聞きしましたが、やはり動画での研究が個人練習のメインとなっているのでしょうか?
ニコチャン:
そうですね。チームの動きをより良くするために動画を研究して、どのタイミングでどこのポジションを取るのか。逆に相手に場所を取られたときは、どういう動きで取り返しているのか。やはり現状は海外のプレイヤーのほうが進んでいるので、そちらの動画を参考にしています。
決してそのまま真似するのではなく、その行動の意味をちゃんと理解・分析して、自分たちに合う動きを模索する。そして、自分の中である程度考えたあとチームメイトに説明して、交流戦で試してみるというのが僕のやり方です。“CoD:WWII プロ対抗戦”に関しては、このやり方が上手くいったかなと思います。
――:なるほど。お互いの情報共有は実際の練習前に行う感じですかね?
ニコチャン:
そうですね。大会の2~3ヵ月前だと、21:00~22:00の間はみんなで動画を見て研究したり、話し合いをする時間を設けていました。
――:メンバーは実際に集まってプレイやミーティングを行うのですか?
ニコチャン:
現状、エンカウントが愛媛に住んでいるため、みんなで集まるのが厳しい状況にあります。基本的にオンラインで通話しながら練習を行っています。
――:ルームメイトのイナバさんとは直接会話も?
ニコチャン:
いえ、同じ家を使っているだけで、生活空間はまったく別ですね。冷蔵庫や洗濯機などの共有の物はありますが、基本的には部屋と部屋が完全に隔離された空有という認識です。だから練習しているときも、隣の部屋にはいる状態ですがオンラインで通話していますね。
――:次に、チームプレイにおいて気を配り、意識しているポイントについて教えてください。
ニコチャン:
僕は味方が「こうしてくれたらうれしいな」と思っているであろうことを察して、その人から指示や報告をする前に動くというのが理想だと思っています。たとえば、イナバが前に出ているとき、「ヤバイ、敵が来そう。カバーしてほしい」と思っていそうな状況だと判断したら、すぐ行動に移す。味方のために素早く動くことで、チーム全体のカバー力が上がると思っています。
――:イナバさんはいかがでしょうか?
イナバ:
僕も似たような意見ですが、敵を倒す動きより、味方を楽にする動きを意識して動いています。……あとはニコチャンに言われたのでないです。
シチメンチョウ:
イナバはこういうとき、すぐ「全部言われたからないです」って言うんですよ(笑)。
イナバ:
そういうスキル持ちです。
――:(笑)。シチメンチョウさんはいかがですか?
シチメンチョウ:
自分の場合は、やりたいことは言うし、してほしいことは聞きたいタイプなんです。「なにしてほしいの?」ってすぐ聞いちゃいますね。
ニコチャン:
もちろん僕も、味方が何をしているか、何をしてほしかったか不明だった場合は、試合後に直接聞くようにしています。そこがわからない限り、自分もどう動いて良いかわからないままなので。そのままにしておくと、僕が勝手に「あの味方はこうしてほしいはずだ」と判断して、結局無駄な動きになりかねないですからね。
カバーする力は大事ですが、意味のない動きが一番無駄です。無駄なものを徹底的に削ぎ落とした上で、大事な行動だけを凝縮していく。そうすることでチーム全体の連携力が良くなると思っています。
シチメンチョウ:
本当にコミュニケーション面は重要視していますね。大会へ向けた練習も、後半になると連携の確認や報告をメインにしていました。
イナバ:
僕はあまり考えずに前に出ていたので、よく注意されました。どうもサブマシンガンを持つと、脳細胞が……。感覚に任せて前に出てしまう(笑)。
ニコチャン:
実は、さきほど話した21:00~22:00に行っていた話し合いの時間には続きがありまして。もともと、前日他のチームと対戦した動画を見直して、各個人&チームで何が悪かったか、どうすべきだったかを話し合うために設けた時間だったんですよ。
でも、今は基本的に僕とシチメンチョウさんが意見を出す感じになっています。ただ、この部分に関しては、イナバやエンカウントにとっては言いにくい環境だったのかなと。
Japanese小池:
いや、イナバはいつも「ニコチャンさんに全部言われちゃいました」って言ってたよ。
一同:
(笑)
Japanese小池:
そういえば昔、ミーティング前に前日の動画を見て、1人3つ改善点を挙げようとしていたよね。
ニコチャン:
イナバとエンカウントにも言うように伝えていたんですけど、あんまり発言しなかったですね。「イナバなにか改善点言った?」って聞いても、とぼけた声で「え?」って(笑)。
シチメンチョウ:
「いや~、言おうと思ったんですけど、先に言われちゃいました」ってね(笑)。
イナバ:
ふう、逃げ文句なのが完全にバレてますね。
――:ただ、結果的にチームが成り立っているのであれば、ニコチャンさんとシチメンチョウさんがチームを引っ張っていくスタイルが合っているのかも知れませんね。
ニコチャン:
やはり意見があまり思いつかなくて、言われたとおりに動きたいという人もいると思います。そういう人に無理やり発言させるのも違うかなって、理解するようになりました。
僕とシチメンチョウさんがある程度意見を出し合って、もしそこにズレが生じた場合はチーム全員で話し合う。このスタイルでも、チーム全体の向上には繋がったと思います。
――:なんて良い上司……!
仲の良さと妥協しない練習方法が印象的なLibalent Vertex。記事後編では、リーグ序盤下位のスタートから大逆転の優勝を果たした“CoD:WWII プロ対抗戦”の舞台裏をはじめ、各々の今後の目標について聞いた。
class="p-emBox"> 写真・大塚まり