「戦う選手の表情が見たい」――世界2位のjupiが願うシャドバ大会の理想像

キズグチアロエ

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「Shadowverse」(以下、シャドバ)では、「RAGE Shadowverse」などの大会を勝ち抜いた世界各国のプレイヤーが集結し、その年の世界一を座をかけて戦う「Shadowverse World Grand Prix」(以下、WGP)が2017年から実施されている。

本稿では、WGP2019で準優勝したjupi選手の世界大会の振り返りからプレイスタイルまでを紹介する。

WGPで連敗を止めた2PickがDay1突破のカギ

――最初に、WGP2019の振り返りをから話を聞かせてください。

jupi:
最低でもDay1は突破したいと考えてましたが、その後はとにかく勝つことだけを意識して戦いました。結果は準優勝と悔しい結果で終わりましたが、後悔はまったくありません。

ですが、2020年もWGPに出場してリベンジを果たしたいという気持ちはありますね。

あと、配信を見返していて思ったことがあるんですが、僕って勝利したときのリアクションがかなり薄いですよね?

――控えめな方だったとは思います。

jupi:
やっぱりそうですよね。ガッツポーズなどで喜びを表現している選手と比較すると、僕はなんて静かに試合を終えているんだろうと感じました。ですが、心の中ではすごく喜んでいるんですよ。それこそ、飛び跳ねたいぐらいに(笑)。

――緊張されていたんでしょうか?

jupi:
いえ、そうではないです。僕は普段からあまり感情を表に出すタイプではないんですよ。

WGP2019では緊張せずに、できるだけ普段どおりの実力を発揮できるように、試合前に「いつもどおりに戦えば勝てる」と自分に言い聞かせて試合に臨みました。その結果、Day1の最終戦以外は大きなミスをすることなく試合を終えることができました。

――WGP2019の最大のピンチは?

jupi:
Day1でいきなり2連敗してしまったことですね。次の試合で負けてしまうとDay1を突破することができないので、かなり追い込まれていました。でも、そこから全勝してDay1を突破することができたんです!

最初の2戦の対戦フォーマットは構築で、3試合目は2Pick(※)での対戦だったんですが、僕はWGP2019に出場している選手の誰よりも2Pickを練習したと自負していて、相当偏ったリーダー提示がないかぎり勝てると考えていました。

実際に2Pickは快勝でして、勢いそのままに残りの試合も勝つことができたので、本当に2Pickを重点的に練習をしてよかったなと思いました。もし構築の調子が悪くても気持ちを切り替えることができるので、今後WGPに挑戦する人は2Pickの練習を怠らないほうがいいと思います。

※提示される2枚組カードのうちいずれかを選択していき、30枚のデッキを組み上げて戦うフォーマット

――サブマリンでのDay1突破、そして決勝戦まで勝ち上がったんですね。

jupi:
そういうことになりますね。

Day1を突破してからは賞金額が50万円になりますし、そこで1勝するだけで50万円から400万に賞金額が跳ね上がります。賞金がすべてではないですが、1勝の重みがすごかったですね。

――マークしていた選手はいますか?

jupi:
海外選手だと「Shadowverse韓国地域大会」を勝ち抜いたTsubaki選手と、「Pan-Amerika Shadowverse Open」を勝ち上がったVetu選手をマークしていました。

そして、「RAGE Shadowverse」を勝ち抜いている日本の選手は全員強敵でしたが、その中でも「RAGE Shadowverse Pro League」に参加している福岡ソフトバンクホークスゲーミングのキャプテンであるたばた選手の勢いがすごかったですね。Day1も首位で突破していましたし、本当に強い選手でした。

あとは、kyon選手もかなり強敵だと考えていたのでマークしていました。

――決勝戦で対戦したsasamumu選手はノーマークだったと。

jupi:
まったく意識していませんでしたね。sasamumu選手と対戦して感じたことなんですが、sasamumu選手はかなりプレイにむらがあると思います。実際に、決勝戦でも比較的わかりやすいリーサルを逃してしまうという大きなミスをしていました。

でも、むらがある分、してやられたなと思うような上手いプレイもありました。僕はできることをすべてしましたが、あと一歩及ばずでしたね。

大会で勝つ喜びを味わって競技的に取り組みを

――カードゲームはいつからプレイしていますか?

jupi:
最初にカードゲームに触れたのは小学生のときでしたが、がっつりハマっていたわけではなく、すでにデッキが完成した状態で販売されているストラクチャーデッキを買って、友だちと対戦する程度のやり込み具合でした。

ですので、競技的に取り組んだカードゲームはシャドバが初になります。僕はいろんなゲームをプレイするのではなく、1つのゲームにどっぷりとハマるタイプなんですが、これまでハマってきたゲームの中でもシャドバには手ごたえを感じていて、上位プレイヤーを目指せるなとも考えていました。

――シャドバを競技的に取り組んだきっかけは何ですか?

jupi:
非公式アプリの「Ratings for シャドウバース」というシャドバのマッチングアプリに取り組んだことです。

このアプリは、レーティング制を採用いるだけでなく、シャドバの競技シーンの標準形式であるBO3での対戦を行えるのが特徴です。シャドバを競技的に取り組んでいる人が多く利用しているため、対戦相手は強者ばかりで、どの試合も熱が入りました。

しかも、「Ratings杯」に出場するための予選を突破するだけでなく、格上の出場者しかいない本戦でも勝ち越すことができて、自分の実力に自信が持てるようになりました。

また、大会で勝つことの楽しさも味わえたことで、その後もシャドバを競技的に取り組もうと意識するようになり、RAGEにも出場するようになりました。

――そこから本格的にシャドバにハマったんですね。シャドバ以外に趣味などはありますか?

jupi:
特にないんです。実は現在ハマっているシャドバのプレイ時間もそこまで多くはなくて、プレイすると集中してしまい他のことが手付かずになってしまうので、片手間でシャドバのプレイ動画を見ています。

あとは、僕が所属しているアマチュアチームの「Qwert」のメンバーとシャドバについて語り合ったり、全然関係ないことを話すのが楽しいですね。そして、まだ入金されていないので実感はありませんが、WGP2019の賞金が手元にくれば何かにハマるかもしれないです(笑)。

――jupi選手の様子を配信で見たかぎりだと、かなり真面目な方なのかなと感じました。実際のjupi選手とのギャップはありますか?

jupi:
真面目なほうだとは思いますが、かなり抜けてるところもあると思います。物忘れだったり、おっちょこちょいな面だったりが結構あるんですよね(笑)。

実はこれはシャドバにも出ています。「未知の求道者・クラーク」の効果で残りppを回復しようと考えていたのですが、場に「土の印」が出ていたので望んだ効果を発動させる条件が揃っておらず、プレイしたら負けてしまう状況だったので、ターンエンドせざるを得なかったと状況に陥ったことがありますね(笑)。

eスポーツでは観客の盛り上がりとゲームのわかりやすさが重要

――jupi選手はeスポーツの魅力は何だと考えていますか?

jupi:
実はあまりeスポーツについて考えたことがなくて、自分の中でハッキリとした答えを持っておらず、少しふわふわとしています。でも、eスポーツについては自分の考えを持っておきたいと思っていたので、せっかくなのでこの場でまとめさせてください!(笑)

――ぜひお願いしたいです。

jupi:
eスポーツについてのワードが頭の中に何個か浮かんでいるんですが、その中で特に大事だと感じているのは……大会観戦者の盛り上がりの有無でしょうか。

プレイに対して歓声が上がれば、出場者は1人でゲームをしているだけでは味わうことができない高揚感を経験できると思うので、観客の盛り上がりはeスポーツには必要不可欠だと思いますね。

僕はスマブラの大会配信もよく見ているんですが、スマブラは対戦相手を画面外に飛ばすというルールだけ知っていれば楽しめますし、見ていて熱くなれるんですよ。こういった、ゲーム性のわかりやすさもeスポーツにおいて重要な要素だと考えてます。

やっと、自分の中でeスポーツに対する考えがまとまった気がします!(笑)

――それでは、もっと踏み込んだ質問をさせてください。現在のシャドバ大会がさらに盛り上がるためには、何が必要だと思いますか?

jupi:
決勝大会ともなると、対戦している選手が防音室に入って試合をするので、カメラ越しでしか選手の表情を見ることができません。これはすごくもったいないなと思ってます。難しいとは思うんですが、どうにかして試合をしている選手の表情を直接見られるような環境を作ってほしいですね。

そうすれば選手も観客からの声を直に聞くことができますし、応援しがいもあります! 僕はeスポーツやゲームではみんなが同じ場面を見て一緒に盛り上がれる点が楽しいと感じているので、もっと選手と観客の距離が縮まった大会環境になることを期待しています。


連敗に対するケアを忘れずしていたおかげでDay1を突破し、世界大会で準優勝という結果を残したjupi選手。シャドバではゲーム内のケアはもちろんのこと、大会におけるケアも重要なのではないだろうか。

後編ではjupi選手のシャドバにおける強みや、RAGEにかける愛をお届けする。

写真・大塚まり

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記者プロフィール
キズグチアロエ
「#コンパス」にどっぷりハマり、「#コンパス」に人生を捧げると決めた、傷口だらけのアロエ。
「#コンパス」に携わるクリエイターたちと、仲良くなりたいフリーライター。
どんなヒーローでもそこそこ扱え、特定のヒーローというよりもヒーロー全員が好き。

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