選手の “プロさ”を表現するゲームキャスター岸大河の実況論【後編】
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class="p-emBox">esports番組「eGG」立ち上げの経緯
――岸さんがご出演されているesports番組「eGG」(※)は、どういった経緯で出演に至ったのでしょうか?
岸:
まず最初に、日テレさんの子会社であるアックスエンターテイメント(※)の方から熱いオファーをいただいたんですよ。
代表の方や番組のプロデューサー、スタッフの皆さんが昔からゲームが好きだという方たちで、番組を企画した際に、僕のことを必要としてくれたとのことでした。実際に喫茶店で打ち合わせをしたときも熱い思いを感じましたね。
一方で僕自身も、自分の利益だけでなくて、地上波で視聴者がゲームに触れる、特にesportsに触れるきっかけに、僕がなれればいいなと考えていました。
esportsと視聴者の橋渡しができるのなら、僕はとてもうれしいし、誰かのためになれるならやろうと思い、出演を受けたというのが経緯になります。
※eGG:日本テレビのesports番組(月1回放送)。DAIGO、生駒里奈、岸大河、佐藤梨那(NTVアナウンサー)出演
※アックスエンターテインメント株式会社:日本テレビ傘下のesports事業を手がける企業
――実際に番組に携わってみて、自分の役割を果たせている感触はありますか?
岸:
番組をやっていくうちに、僕が考えていることより番組スタッフの皆さんが考えていることのほうが、テレビにおいては長けている部分が多いのはよく感じます。お茶の間に広げる力がすごいんですよ。
僕はコアゲーマー畑で育ってきて、今はゲームを伝える人として活動していますけど、テレビ業界においては自分の考え方は硬すぎるというかコアすぎる部分があるのかなと。
それをどうやって崩していくかは、考えに考え抜いて提案することもありますが、その提案をしたときには、彼はすでにそこまで考え抜いている。つまり、僕よりレベルの高い人たちなんです。
なので、僕が何かアドバイスすることよりも、もっと細かいアドバイスを求められる機会があるという感じです。番組作りのノウハウがあって、さらに根っからのゲーマーだというのは一緒にやっていてうれしいし、頼もしく感じます。
お茶の間代表DAIGO、生駒里奈との番組作り
――DAIGOさん、生駒里奈さんとは、どんな雰囲気で共演されているのでしょう?
岸:
僕がeGGに出演するにあたって考えているのが、DAIGOさんと生駒さんに、どれだけゲームを理解していただいて、どれだけ楽しんでいただけるかということです。
毎回新しいゲームを取り上げて、中には難しいゲームもあるんですけど、僕が上手さを披露するとか、誰かの上手さを喋るというよりかは、まずはゲームそのものを楽しんでもらう。
その先に、競技性だったり選手だったり、大会が成り立っているシーンだったりを、段階を踏んで理解していただきたいなと思っています。
2人が理解できないとお茶の間の人たちにも理解できないはずですから、それが僕の役目です。
――これまで収録をやってきて、2人の反応は?
岸:
徐々に、ゲームへの理解が深まっているのを感じますね。
生駒さんは、もともとゲームを遊ばれてなかったみたいですし、DAIGOさんはゲーム好きではありますが番組で扱うような対戦ゲームはあまり経験がなかったみたいです。
実際に興味を持たれているのはすごく感じていて、収録の合間に、最近どんなゲームが流行っているのか話しかけてくれる。ゲームへの興味が強まっているのは間違いないです。
――番組では2人が実際にプレイしますよね?
岸:
ゲームの腕前も上達していますよ。
体の動かし方を覚えれば、ある程度走れるし、サッカーができるし、野球もできるようになるのと同じで、ゲームってどれだけ経験しているかで、新しいゲームへの取り組みが変わってくるじゃないですか?
特に生駒さんは、ゲームにおける体の動かし方みないな部分を知らない状態だったのが、収録を重ねて徐々に覚えてきているのが目に見えてすごく嬉しいですね。
初心者の生駒さんと、昔からゲームが好きなDAIGOさんというキャスティングは面白いなって思いますし、ぴったしハマってる。現場も和やかで楽しいです。
――現場にいて印象深かったシーンって何かありますか?
岸:
「鉄拳」の回ではプロゲーマーのノビ選手、ユウ選手にそれぞれが教わって、最後に対戦するという流れだったのですが、その場で成長が見られるのは面白いですし、すごく必死に練習している姿を見ると、ゲームをしっかりやってくれてるのを感じて嬉しいですね。
どの回にも当てはまりますが、初心者でも本気で勝ちにいく姿というのは視聴者にも伝わっていると思いますし、ゲームの楽しみ方を表現できている番組なのではないかと思います。
ゲームキャスターとして社会人として大切にしてること
――eGGもそうなんですが、最近はOooDaさんとラジオバラエティ番組「岸大河・OooDaのスタングレネード」も続けています。これを始めたきっかけは?
岸:
もう少しローカルなところからゲームやesports、僕らの活動を発信したいという気持ちがありまして、編集や収録を手伝ってくださっている会社の方と食事した際に、「ラジオとかやりたいですね。」と話したらトントン拍子に事が進みました。
一緒にやるならやはりOooDaさんだと思って彼にも提案して、その1週間後にいきなり始まった感じですね。それがもう50回も続いているとは。
――トークテーマはかなり幅広くて、けっこうな下ネタが展開されることもありますよね(笑)。
岸:
正直、ネタはなんでもいいんですよ。
しっかり真面目にキャスターとして仕事する自分やOooDaさんとは違う、裏の部分を見せていければいいなと思いますし、別に隠しているとかではないんです。
そういうところも楽しんでもらいたいという思いはありますね。ただ、真面目なところは真面目なトーンで話すので、そこも1人の人間として見ていただければと。
あとはゲストの方に来ていただくこともあって、いろいろな方の話を深掘りできるのは我々の強みではあるので、今後もいろいろなゲストさんに来ていただきたいですね。
岸:
そういうわけではないですね。
僕は何か他の人と特別違うところはないと思うし、生き抜くために何か考えているというのはあんまりないです。
周りが見る自分と、自分が思う自分というのがそもそも違うものだと思うので、周りの皆さんが感じている「岸大河が他の人と違う部分」がその答えになると思います。
ただ、1つ言えるのは、自分が周りと違うということは、周りも自分と違うということ。
今のキャスター界で、自分より上の人ってたくさんいるんですよ。そう考えたときに、そこと比較してもしょうがないですし、必要以上に意識したことはありません。
何よりも、関わった人たちに感謝することですね。
僕たちみたいなキャスターが注目されるのは、それを支えてくれる方がいて、イベントの現場でも設営だったり映像、照明を仕上げている方だったりがいる。皆さんのおかげであって、僕1人の力ではないんです。
僕の露出が増えていく中で、成長した姿を見ていただくことが1つの恩返しだと思いますし、今後、現場でご一緒したときに何かトラブルがあっても僕がフォローできるところはしっかりやっていく。
いい仕事ができて、ばっちり決まって終えられたときに、お互いによかったなと思える人間関係を築けているようにしていきたいですね。
esportsにチャンスを見出し、参入する企業やビジネスパーソンが続々と現れる中、岸氏は「僕はどちらかというとビジネスは度外視してやっている」と語る。
成長段階の市場で活躍する彼自身もまた、TCGの実況の仕方で悩み成長し続けているところなのだ。
「esportsは選手が主役、選手ありき」のものであるとはよく言われるが、キャスターのように脇を固める人たちも欠かすことができない。
写真・大塚まり
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