LJLで見るものを魅了するYutapon チームメイトを頼れるようになったきっかけ

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Yutapon――。
League of Legends Japan League(以下、LJL)ファンなら誰もがそのプレーに目を奪われたことがあるでしょう。
高校生だったLJLの最初期2014年からDetonatioN FocusMe(DFM)のエースであり続け、日本一に輝いた数は7回。国際大会でも実績を残したスター選手。そして何より、まったく異質の角度からゲームを勝利に導くプレイング。
……と、経歴やプレーぶりは誰もが知るところですが、その注目度に対して、Yutaponについて流通している情報の量は控えめなものでした。
それもそのはず、彼はこの3月まで愛知で大学生をしつつ東京でプロゲーマーをする二重生活を送っていたのです。
しかしこの春、ついに東京のゲーミングハウス入りを決意しました。
大学卒業、22歳の春。今、Yutapon選手が考えていることを聞きにいきました。
ぶっちぎりで優勝するチームでの立ち位置
――まずはLJL2019 Spring Splitでの優勝おめでとうございます。
Yutapon:
ありがとうございます、ほっとしました。
――優勝の直後も「安心した」という表現でしたよね。試合前は不安だったということですか?
Yutapon:
不安でしたねぇ。正直に言うと、チームの状態には自信があったんですよ。今のDFMは強いんで。でも勝てると思ってたのは去年の春も同じで、そしたら0-3で負けたので、自信があること自体が不安になっちゃうという感じでした。
――確かに、シーズンを独走してもファイナルで……というのが続いてましたよね。でもやっぱりチーム状態には自信があったんですね。今年のDFM、特にYutaponさんのパフォーマンスは凄まじかったです。
Yutapon:
そうやって言ってもらうのはありがたいんですけど、僕自信は別に自分が変わったと思ってないんですよね。チームの方針とかスタイルが変わったことで、そう見えてるだけじゃないかなと。
――BOTのパートナーも代わりました。
Yutapon:
Gaengはすごいアグレッシブなんで、レーンで僕がアグレッシブになったように見えてるとしたら、彼に引っ張られて変化した部分もあると思います。
――ちなみに、Yutapon自身のスタイルというのはあるんですか?
Yutapon:
スタイルとかには僕はあまりこだわってなくて、その時その時で一番効果的なプレーをしようっていうのを心がけてます。チームに合わせて動きを変えるのも割と得意ですね。
――センス型に見られがちですけど、実は器用なタイプでもあるのはなんとなく感じてました。いつか聞いてみたいと思ってたんですが、一番得意なロールはADCということでいいんですよね?
Yutapon:
ええっと、正直あやしいんですよね……(笑)。
――え……(笑)。TOPレーンが好きだった、とかですか?
Yutapon:
今シーズンはMIDとADCでやってますね。Gaengと一緒のときはBOTに行くんですけど、他の人と組むと感覚が崩れることがあるんで、1人の時はMIDをやることが多いです。
――確かに、BOTのコンビネーションは繊細そうです。ちなみに、チャンピオンは何を使ってるんですか?
Yutapon:
ツイステッド・フェイトとタロンのほぼ2択です。どっちもお手本にできる人がたくさんいるので、動画で勉強して。レート的にはADCと同じくらいですね。
個性が強いDFMの人間関係とYutapon
――ゲーミングハウスに入って、練習環境は変わりました?
Yutapon:
思ってたよりは変わらない、かな。練習環境とかあんまり気にならない方なので、愛知の実家でもゲーミングハウスでも、まだそこまで大きな変化は感じてないです。
――共同生活のストレスとかはなさそうですか?
Yutapon:
1人部屋ですし、この家広いじゃないですか(笑)。なので大丈夫そうだなって思ってます。
――共同生活で一番プラスだったことは何でしょう。
Yutapon:
練習そのものは変わらないんですけど、反省会で顔が見えるのは大きいですね。表情っていうか、どういう雰囲気でその言葉を言ってるかが見えるので、その選手が何を考えてるかもわかるし。あとやっぱりメンバー同士で話すことは増えたかな。
――チームだと誰と話すことが多いんですか?
Yutapon:
みんな喋るけど、やっぱり付き合いが長いCerosさんと話すことは多いですね。内容はLoLの話が多いですね。どのキャラが強いとか、あの試合見たか、とか。あとはCerosさんがソロランクで使ってるキャラがほんとおかしいんで、「あれはないでしょ」みたいにいじったり。
――ソロでもやっぱりCerosさんが変なのは面白いです(笑)。
Yutapon:
話を聞くと「こういうところが強いと思って試してみた」とか一応ちゃんと理由があるんですよ。で、納得することも多いんですけど……、まぁ変は変ですよね(笑)。
――他のメンバーはどうでしょう。
Yutapon:
Eviさんは会話のイニシエートがほんとすごくて、TOPレーナーってうるさい人が多いのかな(笑)。Stealももう完全に日本語で喋ってるし。
RamuneとGaengは2人が仲いいんですよね、だからこれからたくさん話そうかなと思ってます。
――ゲーム内だとコール役というか、誰がコミュニケーションをリードしてるんですか?
Yutapon:
今はドラフトのタイミングでコーチのかずーたが大まかなプランを話してくれて、試合が始まったらEviさんがレーンの有利不利を上から確認していって、Stealに動き方を聞いて、って感じでゲームの進め方を意思統一してますね。このやり方はかずーたが来てから始めたんですよ。
――ゲーム内でも司会役はやっぱりEviさんなんですねぇ。以前Cerosさんに「チームの調子を測るなら、Yutaponが喋ってるか笑ってるかどうかを見てください」って言われて以来、チームの雰囲気は結構Yutaponさんが作ってるのかなと思ってたんですが、それってどうですか?
Yutapon:
どうなんだろう。自分ではわかんないですけど、まぁ確かに、試合中に喋ってるかどうかは結構大きいところなのかなと。黙っちゃうときって勝つためのプランが見えてないというか、ゲームの勝ち方が見えないときなんですよ。で、喋ってるときはたとえ不利でも、勝ち筋が見えてるとき。
――こうやって勝とう、みたいな。
Yutapon:
LoLってプランがないと本当に勝てないゲームなんですけど、それが見えない状況だと「とりあえず集団戦してみる?」みたいになって、そういうときは大体負けるんですよ。なので、喋ってるときはチーム状態が悪くないっていうのはまぁそのとおりかもしれないですね。
――そういうゲームプランはYutaponさんが出すんですね。
Yutapon:
負けてるときに、状況を変えるワンプレーを生み出すのが得意だっていう風に言われることはありますね。
――メンタル的にはかなりタフな方ですか?
Yutapon:
んー、どうかな。相手の方が上だなって思っちゃうと、「勝てないんじゃないか」っていうループにハマることがあるんですよね。「勝てない」って思ったところから勝つ方法を探すのってきっついんですよね……。
韓国人選手がもたらしたインパクトとYutoriMoyashiへの思い
――チームの中で「この人メンタル強いな」っていう人はいますか?
Yutapon:
やっぱり、Cerosさん。どんな相手でも変わらないっていうか、たとえ相手が自分より強くても「こいつうまいわー」みたいな感じ(笑)。
内心は焦ることもあるのかもしれないですけど、プレイもコールもいつもと同じようにしてくれるんで、頼もしいっていうか安心感ありますよ。
――確かに、Cerosさんは変わらなさそうです(笑)。これは完全にファン目線の想像なんですけど、もしかしたらメンバーも心のどこかで「Yutaponがキャリーしてくれるはずだ」って頼りにしてるんじゃないかと思うんですけど、感じることありますか?
Yutapon:
どうだろうなぁ、さすがに自分ではわかんないです。全員で作るチームゲームだと思ってるし、なんならむしろ僕が他のチームメイトを頼りにしてるので。
――重ねてちょっと答えづらい質問だと思うのですが、「チームの中で俺が一番うまい」って思ったことはありますか?
Yutapon:
うーん正直に言っちゃうと、最初の頃だけはちょっと思ってたかもしれないですね。LJLがまだ4チームだったような頃です。
全然勝てなくて負けに負けてて、自分と同じレベルの仲間が5人揃ってればって思ったことはあります。でもそこからチームメンバーも変わって環境が整ってきて、考え方は結構変わりました。
――Yutaponさんのキャリアを思い返すと、「チームのエース」という時期が長かったように思うんですが、レート的に日本人ダントツのEviさんが加入したりする中で、自分の立ち位置みたいなものって変化ありましたか?
Yutapon:
それで言うと、Eviさんが入ったときというより、韓国人選手がLJLに来るようになったときが大きかったですね。DFMにも韓国から選手が来てくれて、彼らのレベルの高さを実感して、俺なんてゴミだなって思ったというか。
――確かに、韓国人選手は衝撃的でしたよね。LJLを去ったあとに韓国でプロになった選手も結構いますし。
Yutapon:
チームメイトで言うと、2016年に来たCatchとviviDがインパクト大きかったですね。チームゲームなのに、1人でどうにかしちゃうというか。でも一緒にやって彼らの上手さを実感できたことで、見て学んで僕たちがこのレベルに追いつけたらいいんじゃないかなって思うようになりました。
――プライド的なものが刺激されたりはしませんでしたか?
Yutapon:
んー、彼らのおかげでLJLのレベルも上がったし、日本人選手も韓国人選手と戦えるようになってきましたよね。今はすごい韓国人プレーヤーが来ても、1人で試合をキャリーすること減ったじゃないですか。でもそれ自体が彼らのおかげだから。日本っていう国を選んでくれて、同じチームに来てくれたことに対しては、なんていうのかな……感謝っていうか、そうですね、感謝以外の気持ちはないですよね。
――確かに、わざわざ日本でプレーしようと思ってくれたわけですもんね。
Yutapon:
そういえばCatchはいま韓国の2部チームにいて、1部との入れ替え戦に出てましたよ。みんなで見ながら応援してました。やっぱり元チームメイトなんで、がんばってほしいですよね。
――チームメイトや他のプロ選手ってYutaponさんにとってはどんな存在ですか?
Yutapon:
チームメイトは移籍してもずっと仲間ですね。それは間違いないです。ただ、それ以外の選手については、どうなんですかね……。
ちょっと言いづらいんですけど、対戦しても個人的に話したことがない選手は、そこまで連帯感があったりっていうわけではないかもしれません。対戦相手の1人っていう感じかな。
――なんでそんなことを聞いたかというと、この間BurningCoreのYutoriMoyashiさんが引退を表明したときに、SNSで「来季寂しいね」と発言していて、Yutaponさんがそういうこと言うの珍しいなと思って。
お疲れ・・日本人ADで一番張り合いがあった相手だから来季寂しいね
— yutapon (@yutapongo) March 29, 2019
Yutapon:
Moyashiさんは結構特別っていうか、ファイナルとかで対戦する機会も多かったですしキャリアも長かったので。他の人とは違う思い入れがありますね。
――感情としては「寂しい」が近いですか?
Yutapon:
何でやめちゃうのかな、もったいないんじゃないかなっていうのが個人的な感想でした。日本でトップクラスの選手なことは間違いなくて、確かに今シーズンはうまくいかなかったかもしれないけど、それでやめちゃうのはもったいないなって。
もちろんMoyashiさんもいろいろ考えただろうし、事情もあるんでしょうけど、僕から見たら続ければいいのにって思う選手だったので。
――そういうことがあると、自分の将来について考えたりしますか?
Yutapon:
たまに考えたりもするんですけど、結論としては考えてもまったくわからないんですよね(笑)。
だから、考えてもしょうがないかなって。とりあえず選手をやれるところまで突き詰めて、後のことは後で考える。そんな感じですね。
後編では、「選手一本でやっていこう」というキャリア選択、そのきっかけになった試合、そしてプロゲーマーという仕事について……と大きな話になっていきました。
写真・大塚まり
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